研究グループ(3) 白皮症・白斑の病態解明と治療法の開発
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研究内容
■眼皮膚白皮症の病態解析と治療にむけた研究
チームリーダー:深井和吉
眼皮膚白皮症にはいくつかのタイプがあります。チロシナーゼ遺伝子異常によるOCA1A型は、メラニン合成がみられず、髪の毛は真っ白となり、視力障害も重症となることが知られています。チロシナーゼのミスセンス変異では、チロシナーゼ蛋白がmisfoldingを起こしています。本来なら、正常なチロシナーゼ蛋白は、小胞体からゴルジ装置、さらにメラノゾームにチロシナーゼは輸送されていくべきところ、misfoldingを起こしたチロシナーゼは小胞体にとどまっていることがわかっています。日本人のOCA1では、R77Q、P431L、R239W、D383N 、R295Sなどのミスセンス変異が知られています。
私はチロシナーゼ遺伝子の多型が常染色体優性眼白皮症の原因であることを示し(Nature Genet 1995)、OCA1の変異解析(Human Mutation 1997)も行ってきました。P遺伝子が原因遺伝子であるOCA2についても研究成果があります。(Genomics 1995, Am J Hum Genet 1995, Human Mutation 1997, J Med Genet 2000, Am J Med Genet 2001, J Dermatol Sci 2003, Am J Med Genet A 2003, Am J Med Genet A 2004)。またOCA4 (Br J Dermatol 2005, Pigment Cell Res 2005)、Hermansky-Pudlak 症候群(Hum Mol Genet 1995, Nature Genet 1996, J Invest Dermatol 1997, Br J Dermatol 2000) 、Chediak-Higashi症候群(J Dermatol 1993, Am J Hum Genet 1996, Am J Med Genet 2002)についても病態解析を行ってきました。しかしながら、白皮症の治療についてはこれまで非常に難しく、遺伝子治療やiPS細胞による治療についても、細胞をどのように全身の皮膚や眼に分布させるか、非常に高いハードルがありました。
最近Gaucher病などのリソゾーム病で、ケミカルシャペロン療法が試みられつつあります。ケミカルシャペロンは、小胞体内でのmisfolding をおこした変異タンパク質を正常蛋白と同じようにfoldingさせる働きをする小さな化合物です。小胞体内は「中性」環境であり、リソゾーム内は「酸性」環境で、酸性の環境下ではmisfoldingを起こした蛋白は正常なfolding形態をとることができます。メラノゾームは、リソゾーム由来の細胞内小器官であって、その内部は「酸性」であることが知られていますので、Gaucher病と同様に眼皮膚白皮症(OCA1)でもケミカルシャペロン療法が有効であると考えています。
チロシナーゼの基質である、チロシンと構造的に似た化合物で、チロシナーゼと「ゆるく」結合できる化合物はケミカルシャペロンとして機能することが想定されます。このような候補化合物がケミカルシャペロン効果を示し、メラニン合成を復活させることが出来るかどうかについて、基礎実験を行っています。「眼皮膚白皮症が飲み薬でよくなる」 そんな時代を信じています。
ケミカルシャペロンによる白皮症治療
チロシナーゼ変異によるOCA1のうち、ミスセンス変異を起こしているチロシナーゼはER(小胞体)にたまり込んでいます。ここにケミカルシャペロンが加わると、変異チロシナーゼと結合することにより、変異チロシナーゼは正常な折りたたみ構造となり、ゴルジ装置を経由してメラノゾームへと送られることになります。小胞体は中性の環境であるものの、メラノゾームは酸性の環境であり、この環境では変異チロシナーゼは正常な折りたたみ構造をとることができ、酵素活性を発揮し、メラノゾーム内部にメラニンを形成することが出来るようになることが期待されます。白皮症が内服薬で治療できると考えています。

より改定