研究グループ(4) 光線力学療法 (PDT)による感染症治療の研究
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研究内容
■光で感染症を治療する:光線力学療法 (PDT)による感染症治療の研究
チームリーダー:小澤俊幸
研究紹介:近年、生活習慣病の増加に伴う糖尿病性皮膚潰瘍および下腿壊疽の患者さんが急激に増加する傾向にあります。下腿壊疽は、治療に難渋すると切断を余儀なくされ、患者のQOLが著しく低下してしまいます。治療を難渋させる大きな原因の1つは潰瘍の細菌感染で、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症を代表とする多剤耐性菌です。下腿壊疽に限らず、全身熱傷などの場合は、創部がMRSAに感染しコントロール出来なければ、敗血症となり死亡するという結果となってしまいます。通常の細菌感染は抗生物質の投与などでコントロールが可能ですが、MRSAは多剤耐性を獲得していますので通常の抗生物質は効果がありません。現在、MRSAに有効な抗生物質が日本には数種類ありますが、乱用すればその抗生物質に対する耐性をMRSAが獲得する可能性があるため、使用には十分な注意が必要です。私たちは、現在のMRSA感染の患者さんの治療のための抗生物質の投与で、将来のMRSA感染患者さんのリスクを上げてしまうというジレンマに陥っている状況です。
これらの問題を解決するために、我々は光線力学療法 (PDT)で感染症を治療することを目標に研究を行っています。
まずPDTとは、生体内に光感受性物質を注入し、標的となる生体組織に、ある特定の波長の光を照射して光感受性物質から活性酸素を生じさせることで、癌や感染症などの病巣を治療する術式全般のことをさします。
我々は光感受性物質として5-アミノレブリン酸(ALA)を、光源として波長410nmLEDを使用し、MRSAに対するPDTを行っています。ALAは現在、脳外科領域で脳腫瘍摘出時における術中蛍光診断で使用される希少疾病医薬品として保険収載されており、安全性が確立されているアミノ酸で、健康食品や化粧品にも配合されています。このALAというアミノ酸は悪性腫瘍や細菌に取り込まれると代謝され、プロトポルフィリンIX(PPIX)に変化し蓄積します。正常の細胞ではPPIXは蓄積されないので悪性腫瘍や細菌に対する特異性が高いことが特徴です。このPPIXに特定の波長の光(我々は波長410nm)を照射すると細胞および細菌内で活性酸素が発生するため細胞及び細菌は死滅します。細菌に対しては、抗生物質とは全く異なった機序で殺菌しますので、耐性菌は生じないとされています(下図)。
figure1
Fig 1
これまでに報告されてきた細菌に対するPDTは、細菌に対して直接ALAを塗布する軟膏治療が主なものでした。この場合、面積が大きな潰瘍や全身熱傷患者には応用するのが難しく、処置が煩雑なることが予想されました。そのため、我々は潰瘍モデルマウスの腹腔にALAを注射し、あたかも抗生物質の全身投与ようにALAを投与するPDTを考案し、良好な結果を得ることが出来ました(Fig2)。(日本レーザー医学会総会賞受賞 2013年)



Fig 3 PDTによるMRSA潰瘍の縮小率
Fig 2 PDTによるMRSA潰瘍の縮小率

今後は、多剤耐性緑膿菌に対するPDTの研究をすすめ(特許取得中)、光で感染性潰瘍全般を治療する研究を進めたいと考えています。