アポリポ蛋白 E (Apolipoprotein E)


1) アポリポ蛋白Eって何?
 アポリポ蛋白E(ApoE)はVLDL、IDL、HDLなどのリポ蛋白を構成している主要なアポリポ蛋白の一つである。ApoEは第19番染色体上に遺伝子がコードされ、317個のアミノ酸からなる蛋白質として合成されるが、N末端18個のアミノ酸からなるシグナルペプチドが切り離され、299個のアミノ酸からなる成熟蛋白(分子量:約34,000)として細胞外に分泌される。構造上の特徴としてC末端側の202-299位に脂質結合部位があり、140-160位にLDL(Low Density Lipoprptein)受容体への結合部位があると考えられている。
 ApoE遺伝子にはε2、ε3、ε4の3つの対立遺伝子(アリル)があり、それぞれに対応するE2、E3、E4の3つのアイソフォームがApoEには存在する。これらのアイソフォーム間には、112位と158位のアミノ酸に違いがある。
 ApoE3は正常型(Wild Type)であり、ApoE4はアルツハイマー病(AD)の危険因子と見なされている。又、ApoE2は受容体との結合力が低く高脂血症の原因となる。

2) ApoEの機能は・・・
 ApoEは主として肝細胞で産生され、全身の他の臓器へのコレステロールや脂肪酸の運搬に関与している。つまり、細胞外に排出されたApoEは脂質と複合体を形成したリポ蛋白として存在し、細胞表面のApoE受容体(LDL受容体、VLDL受容体、LRP受容体)に結合し細胞外の脂質を細胞内へ運び込む際のリガンドとして機能している。その一方で、ApoEは細胞からコレステロールやリン脂質などを引き抜く作用を有する。従って、これら双方の機能から、ApoEは脂質代謝を制御していると考えられている。
 中枢神経系では、アストロサイトやミクログリアで産生され、これらの細胞から分泌されたApoEは脳脊髄液中のリポ蛋白と結合し、神経細胞表面に存在するApoE受容体を介して神経細胞内に取り込まれる。中枢神経系での機能としては、中枢神経系の発達時期や神経細胞損傷後の修復期に必要なコレステロールなどの脂質の神経細胞への輸送に関与していると考えられている。
 その他の機能としては、ApoEは抗酸化作用をもっており、アイソファーム別の強さはE2>E3>E4であるという報告がされている。

3)アルツハイマー病との関連についての知見
 1991年、NambaらによりADの剖検脳からその病理学的特徴である老人斑や神経原線維変化にApoEが免疫組織科学的に検出された。この結果から、 ApoEがADの病態形成に際し何らかの役割を果たしている可能性が考えられた。更に1993年、CorderによりApoEの対立遺伝子ε4(表現型:アポE4)の頻度が家族性AD患者で高いこと、またε4の遺伝子数が増加するほどADの発症年齢が低下し、発症率が増加していることが報告された。その後、家族性だけではなく、孤発性も含め広くAD患者全般において高いことが明らかとなった。しかし、ε4以外の遺伝型を持つアルツハイマー病患者が存在すること、又、ε4を持っていても発症しない場合があることから、ε4の遺伝型を持つこと、つまりApoE4はAD発症の直接的な原因ではなく、強力な遺伝的危険因子として理解されている。
 しかし、その発症メカニズムに関与する明確な解答は未だ得られていない。私達はApoEと老人斑の主要成分であるアミロイドベータ蛋白(Aβ)との結合能にApoEのアイソフォーム間で違いがあることに着目して、この観点からAD発症に原因について研究を行っている。

 (by Kanemitsu)