大阪公立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室

(旧 大阪市立大学)

脳血管障害グループ
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脳血管障害

脳卒中の原因となる脳血管の病気その1 (未破裂脳動脈瘤)

未破裂脳動脈瘤とは?  
破裂していない動脈瘤を未破裂脳動脈瘤といいます。しかし、一旦破裂すると、くも膜下出血を生じます。

未破裂動脈瘤は治療すべきか?
理論上、未破裂のうちに発見して治療すれば、くも膜下出血の予防治療になります。しかし、未破裂脳動脈瘤はすべて破裂する訳ではありませんし、未破裂脳動脈瘤の治療にもリスクが伴います。ここに、くも膜下出血に対する予防治療の難しさがあります。
未破裂脳動脈瘤を放置したら(自然経過)どうなるでしょうか?
この疑問を解決せずに、未破裂脳動脈瘤に対する正しい治療方法の解決はありません。未破裂脳動脈瘤の自然経過については不明の点がありますが、現在までのところ次のように考えられています。
いろいろな原因で亡くなった人を解剖して調べると、約5%の人に未破裂脳動脈瘤が見つかります。すなわち10万人中5000人に見つかります。
未破裂脳動脈瘤は毎年0.7〜2%の割で破裂します。すなわち、100人の未破裂脳動脈瘤患者さまの中で1−2人が毎年破裂します。10年間では7〜20人が破裂するという勘定になります。
未破裂脳動脈瘤は大きいもの程破裂しやすいことが分かっています。破裂脳動脈瘤を調べると、大きさの平均は約8mmで、約70%は直径が1cm以下、15%が5mm以下でした。
手術により良好な結果を得ることができるのは全体の約10% です。

未破裂脳動脈瘤に対する現在の治療方針は?
日本脳ドッグ学会のガイドラインでは、〈大きさが5mm前後以上、年齢が70歳以下、その他の条件が手術を妨げない〉と記載されています。
3mm〜5mmの未破裂脳動脈瘤の手術は様々に報告されています。
大きいもの、形が不整なものでは治療が望ましいと考えられています。
患者さまの全身状態も、治療方針を決める上で重要です。

未破裂脳動脈瘤の治療方法は?
開頭術(脳動脈瘤ネッククリッピング術)と血管内手術(コイル塞栓術、フローダイバーター留置術)があります。いずれも破裂を予防するための手術です。それぞれの治療には長所・短所があり、双方の治療技術を高く保つことでお互いの欠点を補いあうことができます。脳動脈瘤の部位と形状などを詳細に検討した上で決定しています

代表症例1
右中大脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術
クリッピング前

クリッピング後


代表症例2
大型内頸動脈瘤に対するフローダイバーター留置術

脳卒中の原因となる脳血管の病気その2 (脳動静脈奇形)

脳動静脈奇形とは?
原因は明確には解明されておらず、奇形と言う名前がついていますが、遺伝する病気ではありません。血液は心臓から動脈へ送り出され、各臓器で毛細血管に分布し、そこから静脈を介して心臓へ帰るという大きな流れがあります。脳動静脈奇形は、脳の一部分に異常血管(脳の動脈と静脈の間に細かな異常な血管ができたり、動脈と静脈が直接つながったり)があり、そこを介する動脈と静脈の間に短絡(異常な連絡)があるという病態です。動脈と静脈に様々な変化が起き、脳内出血あるいは脳梗塞を起こし、意識障害、痙攣、言語障害、手足の麻痺、顔や眼の障害などをもたらし、死にいたることもある怖い病気です。

脳動静脈奇形はなぜ出血するか?
出血の確率は1年間に1〜2%(報告によっては4%)といわれています。なぜ出血するか、どこから出血するかは現在いろいろ検討されていますが、明確なものはありません。しかし、脳動静脈奇形の中にある小さな動脈瘤から出血する、または動脈と静脈の間の異常血管が破綻して出血するなどと言われています。

脳動静脈奇形は治療すべきか?  
脳動静脈奇形は再び脳内出血や脳梗塞を起こす危険性があります。これを予防するためには、異常な部分を少なくしなければなりません。保存的に観察した場合と治療を行った場合の危険性を充分に考慮して治療方針を決定します。

脳動静脈奇形の治療は?
治療には手術摘出、血管内手術(塞栓術)および定位放射線治療があります。単独もしくはこれらの組み合わせによる最適な治療方法を検討します。

脳卒中の原因となる脳血管の病気その3 (頸部内頸動脈狭窄症)

頸部内頸動脈狭窄症とは?
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの基礎疾患および動脈硬化危険因子を有する方の中で、頸部内頸動脈の動脈硬化によって、血液の通り道が細くなる場合があります。50%程度であれば、危険因子の管理とともに、抗血小板剤(血液をサラサラにするお薬)の内服など内科治療が優先されます。しかし、狭窄が進んでいくと、脳血流が不足する、あるいは動脈硬化の起こった血管壁の一部がはがれて脳血管を閉塞させて、脳梗塞の原因になります。
狭窄の度合いや血管壁の状態、全身状態を考慮して脳梗塞発生や再発予防のために血管を修復する手術を検討します。
頸動脈狭窄症に対する外科治療は、直達手術(頸動脈内膜剥離術)と血管内治療(ステント留置術)があり、やはりそれぞれの利点と欠点があります。十分な検討の上で治療方針を決定しています。

代表症例
左頸部内頸狭窄症に対する頸動脈内膜剥離術
術前造影CT                   術後造影CT


当科で取り扱っている主な血管内治療

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