大阪市立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室
機能性疾患グループ
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難治性てんかん

抗てんかん薬を規則正しく服用しているにもかかわらず、発作が認められるような難治性てんかん例を対象としています。MRIなどの画像所見、頭皮脳波で発作の焦点部位を推定し、さらに発作型を確認して手術治療の適応があれば手術を行います。もっとも手術治療の良い適応になる側頭葉てんかんについては発作完全消失率が75%を超え、発作軽減例を加えると90%以上の患者さまに満足して頂いてます。

基本治療方針

当施設のてんかん手術治療の特色
1999年11月から約7年間で265例のてんかん手術を行いました。
そのうち側頭葉てんかん患者が92例と半数以上を占めています。側頭葉てんかんの手術は側頭葉を切除することが一般的治療でありますが、当施設では側頭葉を切除することなく、側頭葉内側部(海馬・扁桃体)を選択的に切除する手術を行い、脳機能の温存を試みています。もちろん発作消失率は側頭葉切除術と比べて勝るとも劣らない結果を得ています。

外来での検査(てんかん外来:毎週月曜日)

頭皮脳波検査を行って、てんかん波の有無とその異常波が出ている部位について調べます。つぎに脳内にてんかん発作の焦点になるような異常所見の有無を調べ、所見があればそれが頭皮脳波の異常所見と一致するかどうかを確認します。てんかん発作が抑制されていないと脳高次機能(知能、記憶力)が障害されるため、術前の患者さまの知能指数や記憶力検査を行います。さらにてんかん焦点部位の診断に有用な補助検査であるPET検査も行います。

入院での検査

つぎに約2週間の予定で入院の上、検査を行います。入院中の検査でいちばん重要なものが発作―頭皮脳波ビデオ同時モニタリングで、その他にレントゲン (CTなどを含む)、血液検査、脳血管の状態を調べるMRAやMRVなどの脳神経外科手術患者に行う一般的な検査を行います。外来での検査と合わせててんかん焦点を診断し、手術で治療が可能かどうかを判定します。検査結果および治療方針を患者さまとご家族にお話しし、手術治療を行うかどうかを決定します。手術治療を行うことになれば、手術予定日を決めた上で一旦、退院となります。

手術入院

当施設のてんかん手術治療例の半数を占めている側頭葉てんかんを例にあげますとMRI、頭皮脳波および発作型でてんかん焦点が診断できた場合は一回の手術で治療を行います。この場合は特に女性患者に喜んで頂けるよう、手術創に沿って部分的に髪を剃るのみで髪を切らずに手術を行っています。しかしながら、これらの検査でも焦点診断が不十分と判断した場合は頭蓋内電極を留置した上で発作―皮質脳波ビデオ同時モニタリングを行い、発作焦点の同定を行います。この場合は全剃毛が必要となり、手術も電極植え込み術と焦点診断後の焦点切除術あるいは電極抜去の2回の手術が必要となります。手術後は約2週間で退院となります。

「てんかん外科」専門診療

大阪市立大学脳神経外科では、1990年後半よりてんかんに対する手術治療の専門診療を開始しました。2000年代には、森野准教授(現東京都立神経病院てんかん総合診療センター長)を中心としたてんかん外科診療チームにより、年間50件を超えるてんかん外科手術が行われ、全国でも有数のてんかん外科施設となりました。
(→「てんかん外科」専門診療について

顔面痙攣・三叉神経痛

顔面痙攣

顔面痙攀は、顔面神経の異常活動によって顔面筋(眼の周り、頬の辺り、口の周りなど)がピクピクと勝手に動く病気です。頭蓋骨内で脳血管が顔面神経を圧迫することによって生じます。原因のほとんどは脳血管による顔面神経圧迫ですが、脳動脈硬化、解離性動脈瘤、動静脈奇形、脳腫瘍等による圧迫も原因になります。
発生する機序については2つの説が報告されています。

  • 顔面神経を覆う髄鞘(電線を覆うビニールに相当)が血管の圧迫によりはがれ、血管拍動で直接異常電流が流れるために顔面痙攣が生じる。
  • 髄鞘がはがれた部分から異常刺激が顔面神経の神経核(電流を流す中枢)に働き、異常電流が流れるために顔面痙攣が生じる。

基本治療方針

顔面痙攣は、命を脅かす病気ではありません。しかし、患者さまの日常生活を不快にさせる疾患です。
  • 保存的治療:抗痙攣剤の投与あるいはボツリヌス毒素の局所注射が可能です。投薬による治療には限界があり、また完全に顔面痙攣を消失させることはできません。投薬による改善が得られない場合、あるいは投薬による副作用(多くはふらつき)がでる場合には、手術について検討します。ボツリヌス毒素注射は非侵襲的ですが、おおよそ3ヵ月毎の注射が必要なことと多数回の注射により効果が減弱することが欠点です。
  • 手術治療:顔面神経への圧迫を解除します。そのためには、全身麻酔による開頭術が必要となります。(1)脳血管と脳幹との間に特殊な人工補綴物を挿入して顔面神経から血管を浮かせる方法(挿入法)と、(2)脳血管を直接移動させる方法(吊り上げ移動法)とがあります。手術しないで放置した場合、改善することはありません。手術治療では、開頭術に伴う合併症発生の危険が伴います。当科では、手術適応について患者さまと十分に相談し、適応があると判断されたときは安全確実な手術治療を行っています。

三叉神経痛

三叉神経は脳幹から出る脳神経の一つで、顔面の感覚と咀嚼運動を担当しています。この神経が脳幹を出たすぐのところで、脳血管により圧迫を受けることで、耐え難い顔面の痛みが生じます。また脳腫瘍で生じることもあります。食事の際、洗顔時、冷気にあたったときなどに、短期間の激しい痛みが顔面に走ります。誤診で歯を抜くこともあります。命を落とす病気ではありませんが、痛みが強くなると日常性に大変な障害を起こします。

基本治療方針

  • 保存的治療:まず鎮痛剤を投与して経過を見ます。またブロック注射をすることもあります。これらの治療により経過を観察できる場合もあります。上記の保存的治療が無効の時、薬剤による合併症が出た場合には、手術を検討します。
  • 手術治療:三叉神経への圧迫を解除します。そのためには、全身麻酔による開頭術が必要となります。(1)脳血管と顔面神経との間に特殊な人工補綴物を挿入して血管を浮かせる方法(挿入法)と、(2)脳血管を直接移動させる方法(吊り上げ移動法)とがあります。手術しないで放置した場合、痛みが改善することはありません。著効例では術直後から痛みは消失します。手術治療では、開頭術に伴う合併症発生の危険が伴います。当科では、手術適応について患者さまと十分に相談し、適応があると判断されたときは安全確実な手術治療を行っています。

顔面痙攣や三叉神経痛の再発とその予防

顔面痙攣や三叉神経痛に対する神経血管減圧術の手術後に、一旦改善した症状が再発することが知られています。患者さまも担当医師もがっかりします。この再発は、血管と神経との間に直接人工補綴物を挿入した場合(挿入法)に生じやすいことが知られています。この手術方法では、挿入した人工補綴物が経時的に変形・癒着し、血管の圧が再び神経に加わるようになるため再発します。現在、理想的とされている手術は、圧迫している血管を吊り上げて移動させる、吊り上げ移動法です。この方法では、神経には何も接しないため、癒着も生じようがなく、再発の可能性は極めて低いものになります。しかし、この手術には高度な技術が必要です。当施設では、三叉神経痛ではほぼ全例に、顔面痙攣には安全にできうる限り、この理想的な手術を行っています。
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当科で取り扱っている主な機能性疾患

  • この分野で取り扱っている主な機能性疾患の情報は「脳と神経のデータベース」のコーナーにもありますのでぜひご覧ください。