一過性脳虚血発作とは?
脳血管が一時的に閉塞した状態で、急に眼が見えなくなったり、手足に力が入らなくなったりします。数分―数時間(通常は24時間以内)で閉塞した血管が再開通しますので、症状は回復します。このような状態は、どこかに血管が一時的に閉塞する原因があります。重篤な症状に至る予兆と考えなければなりません。
脳梗塞とは?
脳の血管が詰まってしまい、脳組織の一部が壊死します。脳梗塞には3つのタイプがあります。
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心臓あるいは大血管にできた血栓が流れて脳の血管に詰まるもの(脳塞栓症)。
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脳の太い血管が動脈硬化により詰まるもの(脳血栓症:アテローム血栓性脳梗塞)。
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脳の細い血管が動脈硬化により詰まるもの(脳血栓症:ラクナ梗塞)。
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これらはそれぞれに治療が異なり、迅速かつ的確な診断が重要です。
頸部頚動脈狭窄症とは?
脳梗塞の原因として頭蓋外の頸動脈狭窄病変が注目されています。頚部頸動脈に動脈硬化が進行し、一過性脳虚血発作あるいは脳梗塞の原因になることが知られています。大切なことは、症状発現前に発見して、治療(予防策)を開始することです。治療は、抗血小板剤の内服あるいは手術治療(頚動脈内膜剥離術)が有効とされています。
脳梗塞の急性期治療は?
当科では内科治療(内服薬や注射薬)だけでなく、血管内手術(脳血管血栓溶解術、経皮的脳血管形成術、経皮的頚部内頚動脈血管拡張およびステント留置術、経皮的頭蓋内内頚動脈血管拡張およびステント留置術)や外科手術(脳血管吻合手術、頚動脈内膜剥離術)を積極的に行っています。
脳内出血の治療は?
脳の動脈が破れてしまい、脳組織に血が溢れてしまいます。基本的には血圧管理で保存的に治療を行いますが、出血が大きい場合は救命目的で外科手術(開頭血腫除去術、定位的血腫吸引術)を行うことがあります。
くも膜下出血とは?
脳動脈瘤や脳動静脈奇形が破れ、脳の表面のくも膜下腔に出血することです。脳腫瘍からの出血でも生じます。原因の多くは脳動脈瘤の破裂です。
くも膜下出血の発生率・死亡率について
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毎年人口10万人あたり約12人に発生
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動脈瘤が破裂し、クモ膜下出血がおこると約33-50%の患者さまが、出血そのものや合併症のため死亡します。
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放置すれば、残りの50〜60%の患者さまが再び出血し、その内30〜40% が死亡します。
したがって、全体の約30%の患者さまのみが手術できる状態ということになります。
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手術により良好な結果を得ることができるのは全体の約10% です。 |
くも膜下出血の診断は?
MRIのFLAR法がもっとも鋭敏にくも膜下出血を検出します。一般的には、CTで診断し、脳血管撮影でその原因(脳動脈瘤や脳動静脈奇形)について詳しく検索します。
くも膜下出血の急性期治療は?
再破裂すると生命に関わる危険が非常に高くなるため、緊急で再破裂の予防処置を行います。当科では、開頭術(脳動脈瘤ネッククリッピング術)だけでなく血管内手術(コイル塞栓術)も行っています。