大阪市立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室
腫瘍性疾患治療
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主な対象疾患

  • 神経膠腫、上衣腫、乏突起星細胞腫、髄芽腫
  • 聴神経腫瘍、三叉神経鞘腫、頚静脈孔部神経鞘腫 など
  • 髄膜腫 ■血管芽腫 ■悪性リンパ腫 ■胚細胞腫、胚芽腫 など
  • 頭蓋咽頭腫、ラトケ嚢胞、コロイド嚢胞 など  ■下垂体腫瘍 ■脊索腫、軟骨肉腫 など
  • 転移性脳腫瘍  ■脳動静脈奇形、海綿状血管腫

脳腫瘍、脊髄腫瘍

当科で取り扱っている主な脳腫瘍、および脊髄腫瘍
(小児から成人、高齢者の、すべての種類の良性および悪性脳腫瘍)

神経膠腫、上衣腫、乏突起星細胞腫、髄芽腫

  • 神経膠腫(グリオーマ)と総称され、成人大脳に発生する星細胞腫(アストロサイトーマ)が代表的腫瘍です。
  • 星細胞腫は、脳組織の神経細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍で、脳浸潤度により悪性度が異なります。
  • 成人脳腫瘍では、比較的頻度の高い腫瘍です。好発年齢は25-49歳とされています。約3割は前頭葉に発生し、残りは側頭葉、頭頂葉、後頭葉の順番です。
  • 治療方針
  • 画像診断で神経膠腫が疑われた場合には、腫瘍を可能な限り摘出あるいは部分摘出します。腫瘍発生部位により、手術摘出度が異なります。摘出した腫瘍を組織解析し、腫瘍悪性度を決定します。
  • 腫瘍悪性度に従い、術後放射線治療あるいは化学療法を組み合わせて治療計画を立てます。放射線治療は、放射線治療専門医と相談の上で計画します。

聴神経腫瘍、三叉神経鞘腫、頚静脈孔部神経鞘腫

  • 神経鞘腫が代表的腫瘍です。多くは聴神経に発生します。その他には、三叉神経(顔面感覚)あるいは舌咽・迷走神経(咽頭機能)に発生することがあります。
  • 聴神経は前庭神経および蝸牛神経から成ります。聴神経腫瘍の多くは、前庭神経から発生する良性脳腫瘍です。
  • 前庭神経とは、平衡機能に関する神経であり、耳の奥(内耳)にあり、脳幹部からでると顔面神経と蝸牛神経(音を聴くための神経)と伴走しながら、内耳道(耳の奥にある骨のトンネル)入ります。この腫瘍は神経を包む鞘から発生する腫瘍です。
  • 聴神経腫瘍の症状は、ふらつき、耳鳴り、聴力低下、聴力喪失、顔面のしびれ、小脳失調症の順位に症状を出します。時に水頭症を伴い、痴呆症状、視力障害を来します。また晩期になると脳幹の圧迫症状が出現します。
  • 治療方針
  • 基本的には外科切除です。手術では、腫瘍を直接見ながら切除しますので、もっとも確かな方法です。手術で全部とれれば、その時点で治癒したことになります。手術による合併症を十分に理解して受けて下さい。
  • 定位放射線治療;小さい腫瘍によく行われており、効果があります。全身の状態の悪い人、高齢者によく行います。手術に比べて、直後の合併症は少なく、安全に行うことが可能です。但し、放射線を照射しますので、後になって放射線の合併症が出る危険性があります。
  • 経過観察;定期的に脳検査をして経過を観察します。さらに大きくなった段階で手術します。但し、大きくなればなるほど、手術は難しくなります。

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髄膜腫

  • 髄膜腫が代表的腫瘍です。
  • 良性脳腫瘍のひとつで、脳を包む膜(髄膜)から発生し、脳を局所的に圧迫します。
  • 多くは良性で、女性に多く発症します。髄膜は脳の全周を包んでいますから、脳表の何処からでも発生します。
  • しかし、髄膜腫の中にも組織学的に悪性型があります。悪性型では、多臓器にも転移することがあり注意が必要です。
  • 治療方針
  • 髄膜腫は見つかればすぐ手術するわけではありません。何らかの症状がある場合には、個人の社会的背景、神経症状の程度等を全体的に考慮します。症状がなくても、徐々に大きくなっている場合、小さくても脳深部にある場合には、症状がなくても手術適応となります。
  • 手術治療による腫瘍切除が最も効果的な治療方法です。腫瘍サイズ、部位、正常血管(動脈および静脈)との関係などにより、手術難易度が異なります。特に、頭蓋底に発生した髄膜腫は治療困難です。手術にて腫瘍が完全に切除できない場合には、術後に定位放射線治療を追加する場合があります。

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血管芽腫

  • 血管芽腫が代表的腫瘍です。
  • 血管芽腫とは小脳、延髄あるいは脊髄に多く発生する良性の腫瘍です。遺伝する場合と遺伝しない場合の2型があります。また、他臓器にも発生する場合と脳・脊髄に単発する場合の2型があります。
  • 多発性の場合には、脳・脊髄のいろいろな場所に発生します。時間をおいて発生します。
  • 治療方針
  • 良性腫瘍ですから、いずれの場合にも手術により切除します。全摘出すれば、その部分の腫瘍は治ります。
  • 延髄あるいは脊髄に発生した場合には、頻繁に脊髄空洞症を合併すします。血管芽腫を摘出すれば、脊髄空洞症は自然に消退します。

脳原発悪性リンパ腫とその関連疾患

  • 悪性リンパ腫が代表的腫瘍です。
  • 脳原発のリンパ腫で、脳以外の他臓器にはリンパ腫が見られない節外性リンパ腫と定義されます。
  • 脳原発の悪性リンパ腫は稀で、脳腫瘍全体の0.8-1.5%程度とされています。しかし、免疫不全の患者さまでは、その頻度は高くなります。
  • 好発年齢は50-70歳であり、僅かに男性に多いとされています。しかし、免疫不全の患者さまでは、若年者での発症も報告されています。
  • 単発と多発の両方の発生が知られています。前頭葉、視床―基底核、頭頂葉あるいは脳室周辺に好発します。
  • 組織学的には、多くはB型リンパ球由来の瀰漫性リンパ腫で、T型リンパ球由来は稀です。
  • 治療方針
  • 手術により組織型を決定する必要があります。そのために、手術による腫瘍部分摘出あるいは生検術(腫瘍をごく微量採取する方法)を行います。当科では、コンピューターガイド定位生検術が可能です。
  • 組織型が決定した後は、血液内科専門医および放射線治療専門医と相談の上で、化学療法あるいは放射線治療を組み合わせて治療計画をたてます。

胚細胞腫、胚芽腫

  • 小児期と青年期に発生する稀な脳原発腫瘍です。
  • 男児に圧倒的に多く、女児には稀とされています。
  • 胚細胞腫瘍は、様々な組織形態を示す腫瘍群の総称で、胚腫、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、成熟奇形腫、未熟奇形腫および混合性胚細胞腫瘍に分類されます。この中で最も多いのは胚腫です。
  • 好発部位は、視床下部・下垂体後葉および松果体です。
  • 腫瘍発生部位により様々な症状を呈します。視床下部・下垂体後葉発生では視力・視野障害あるいは内分泌障害で発症することが多く、松果体発生では脳脊髄液の灌流障害による水頭症で発生することが多いとされています。水頭症で発症した場合には、頭痛、嘔気・嘔吐、歩行障害さらには意識障害を呈することもあるため、注意が必要です。
  • 治療方針
  • 診断は、血液検査、髄液検査あるいは画像検査を総合して判断します。しかし、手術による腫瘍摘出あるいは生検術により、腫瘍の組織型を決定する必要があります。
  • 腫瘍の組織型に従い、化学療法さらには放射線治療を計画します。

頭蓋咽頭腫、ラトケ嚢胞、コロイド嚢胞

  • 頭蓋咽頭腫が代表的腫瘍です。
  • 頭蓋咽頭腫とは脳正中部の下面に生ずる良性腫瘍で、視力・視野障害あるいは内分泌障害などで発症します。
  • 頭蓋咽頭腫は、頭蓋底正中部に発生するため、重要な神経や血管に挟まれています。脳神経外科の領域ではもっとも手治療が難しい脳腫瘍のひとつです。腫瘍の上面には視床下部という、人間が生きるに必要な機能を司る脳があります。視床下部の役割は、体温の調節、体内時計、モルモンの中枢、記憶の中枢、食欲の中枢、性欲の中枢、意欲の中枢等です。腫瘍の下には脳下垂体があり、視床下部に連続してつながっています。脳下垂体は、ホルモンの司令塔です。また、腫瘍の前方には視神経が、側方には頚動脈、後側方には動眼神経(眼球を動かし、瞼を持ち上げます)、後交通動脈(視床下部を養う血管です)、後方には脳幹部、脳底動脈が走っています。
  • 治療方針
  • 外科切除が一番です。手術困難な例や、取り残した場合には放射線治療で対応できることもあります。手術は何回かに分けて行うこともあります。
  • 外科切除:第1選択の治療方法です。しかし、手術による合併症を十分に理解しておく必要があります。
  • 手術だけでは治せないときには、放射線手術を組み合わせます。しかし、腫瘍の周囲の脳組織は重要なものばかりであり、放射線によるこれらの脳組織の障害が懸念されます。
  • 定位放射線治療:周囲の正常神経組織にできるだけ障害が加わらないように、腫瘍にのみ放射線を照射する方法を採用します。放射線による一定の抗腫瘍効果は期待できます。放射線治療の合併症は、周囲の正常脳組織への障害です。照射後に徐々に出現し、一旦生じると放射線障害を治すことはできません。具体的には、視力視野障害、痴呆症などが出現する危険性があります。

下垂体腫瘍

  • 下垂体腺腫が代表的腫瘍です。
  • 脳下垂体は、脳の中心部下面から下方に垂れ下がり、頭蓋骨のくぼみ(トルコ鞍といいます)に収まっている内分泌ホルモン系の司令塔です。大きさは僅か0.5g程度のものですが、重要な役割を果たしています。脳下垂体は前葉と後葉とからなり、下垂体腺腫は前葉から発生します。
  • 前葉から分泌されるホルモンは、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモン等で、後葉からは尿の量を減らす抗利尿法ホルモンが分泌されます。
  • 下垂体腺腫にはホルモンを分泌するタイプ(機能性下垂体腺腫)とホルモンを分泌しない非機能性下垂体腺腫とがあります。
  • 機能性下垂体腺腫は内分泌障害として発症します。分泌されるホルモンにより症状は異なります。
  • 非機能性下垂体腺腫は大きくなることにより、下垂体機能を低下させ、さらに上方にある視神経を圧迫して症状(視力・視野障害を出します。
  • 治療方針
  • 無症状の場合には、下垂体機能検査を行い定期経過観察することがあります。しかし、腫瘍が大きく、視神経への影響が心配される場合には手術治療を考慮します。
  • 手術治療では、脳下垂体を傷つけないように腫瘍を丁寧に切除して完全治癒させることができます。腫瘍の性状、大きさあるいは進展範囲などにより、経鼻的下垂体腫瘍摘出術か開頭腫瘍摘出術を選択します。手術によっては、神経内視鏡あるいはコンピューターナビゲーション装置を使用します。
  • 薬物治療は、機能性下垂体腺腫の中でも乳汁ホルモンあるいは成長ホルモン分泌下垂体腺腫に有効です。その他の下垂体腺腫には有効な薬物治療はありません。
  • 放射線治療はすべての脳腫瘍に有効ですが、周囲の脳組織に障害を併発するため、第一選択の治療にはなりません。特に良性脳腫瘍では避けるべきです。但し、どうしても切除できない部位の腫瘍には行います。
  • 定位放射線治療と言ってピンポイントで腫瘍に放射線を照射することが可能です。下垂体腺腫の場合には、手術では切除困難な部位に術後照射を予定します。

脊索腫、軟骨肉腫

  • 脊索腫が代表的腫瘍です。
  • 脊索腫は胎生期における脊索組織の遺残組織から発生する腫瘍であり、発生頻度は0.05−0.08/10万人程度と極めて稀な腫瘍です。
  • 発生部位としては、脊索が遺残する可能性がある神経軸のどの部位でも発生する可能性がありますが、多くは頭蓋底あるいは脊椎(特に仙骨)に発生します。
  • 緩徐に発育する腫瘍ですが、一般的には手術治療を行っても完全治癒させることは難しく、局所再発を繰り返します。
  • 治療方針
  • 手術治療による摘出が第1選択とされています。しかし、骨浸潤性に発育する腫瘍であり、全摘出は困難です。残存した腫瘍からの再発が多く、予後は決して良好ではありません。従って、初回手術で完全に切除できない場合には、術後に放射線治療あるいは重粒子線治療を追加します。

転移性脳腫瘍

  • 癌細胞が原発腫瘍から分離して遠隔臓器へ運ばれ、そこで自立性に増殖する状態を転移と言います。転移の発生には次の4つの経路が考えられています。
    1.リンパ行性転移
    2.血行性転移
    3.隣接臓器との接触転移
    4.播種性転移
  • 転移性脳腫瘍の臓器別頻度:全国脳神経外科専門医認定施設にて治療を受けた症例の臓器別頻度では、肺癌の治療頻度が最も高く、全体の約50%を占めています。
  • 転移のほとんどは、脳実質内転移です。血行性転移によるもので、脳のいずれの部位にも発生します。多くは、境界明瞭、球形で、時に袋状に増殖します。大脳80%、小脳16%、脳幹3%の割合です。症状は、転移した部位により異なります。
  • 一般的には、脳血管障害と異なり緩徐進行性です。主な症状は、頭蓋内圧亢進症状(腫瘍により頭の中の圧が高くなり、頭痛、嘔吐および意識障害が出現します)、てんかん発作、精神症状、言語障害、脳神経症状および運動感覚障害などです。
  • 治療方針
  • 転移性脳腫瘍の治療として考慮すべき点は、転移した癌の種類、サイズ、部位、患者さま本人の状態(神経症状および全身状態)などです。これらを総合的に考慮して、患者さまごとに治療方針を決定します。
  • 手術治療、定位放射線治療および通常放射線治療が可能です。3センチを超える転移性脳腫瘍では、多くは手術治療が適応とされます。手術を行った場合には、放射線の後療法を行います。
  • 定位放射線治療あるいは通常放射線治療のどちらにするかは、手術治療後の検査も参考にして、放射線治療専門医と相談して決定します。

脳動静脈奇形、海綿状血管腫

  • 動静脈奇形あるいは海綿状血管腫が代表的です。
  • 海綿状血管腫とは、異常に拡張した血管の集まりからなる、先天性血管奇形といわれています。繰り返す出血により徐々症状が悪化し、最終的には致命的になる患者さまもおられます。
  • 海綿状血管腫は人口の0.3-0.4%に見つかります。その5−20%が小脳や脳幹部に発生します。出血により症状を呈しますが、出血の発生率は0.25%−5%/人/年と言われています。しかし、一旦出血した場合の年間出血率はさらに高くなります。脳幹部の海綿状血管腫は他の部位よりも出血率が高く、より症状を呈しやすいことが分かっています。
  • 治療方針
  • 海綿状血管腫の部位、サイズなどにより治療方針は異なります。
  • 無症候性の例や頭痛やめまいなどの軽症の場合は、多くは経過観察の方針です。若年者で症状の悪化や血管腫の増大が観察されれば手術治療が考慮されます。繰り返す出血あるいは脳幹部に発生した場合には、出血あるいは再出血した場合の危険性を総合判断して、手術治療を決定します。
  • 定位放射線治療では、治療後に徐々に悪化する放射線障害の頻度が高く、現時点では経過観察あるいは手術治療に劣るため、治療適応は限定されます。