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理念

神経膠腫(グリオーマ)は数十種もの分類があり、その治療方針は様々です。手術のみで寛解が見込めるケースもありますが、手術単独での根治は困難で、集学的な治療を要することもあります。神経膠腫の治療は、手術、化学療法、放射線療法で構成されます。当院での神経膠腫の治療方針は手術で最小限の侵襲かつ最大限の摘出を目指し、組織病理や遺伝子情報を用いて確実な診断を行い、化学療法、放射線療法を症例毎に適切に選択することを理念としております。

手術

手術に先立って精密な病態の評価を行います。頭部CTやMRIで腫瘍の局在、性質を判断し、メチオニンPETなどの核医学検査で腫瘍の悪性度、活動性の評価を行います。術式の選択として、顕微鏡下での開頭腫瘍摘出、内視鏡下での腫瘍摘出、定位的な検体の採取があり、術前診断にあわせて決定します。また、術前の神経学的所見、神経心理検査はもとより、機能的MRI(functional MRI)、Wada testなどを必要に応じて施行し、脳の機能的な評価も行います。腫瘍の摘出を行う上で、手術サポートシステムも充実しており、ナビゲーションシステム、神経内視鏡、術中蛍光診断、3Dシミュレーションモデル、MEP、SEPを含めた術中モニタリングシステムなどの機器を備えております。運動野や言語野への進展が疑われる腫瘍に対しては、覚醒下手術を行い、神経症状を確認しながら、腫瘍の摘出を行います。また、術中病理診断で悪性神経膠腫の所見が確認された症例では、摘出腔に脳内留置用抗悪性腫瘍剤であるギリアデル(BCNU wafer)の留置を行うこともあります。

覚醒下手術について

特に神経膠腫の手術において最大限の腫瘍摘出が生存期間のみならず無増悪生存期間といって症状が悪くならずに安定して期間を延長させることが知られています。しかしながら脳にはそれぞれの部位に機能があり、腫瘍がその部位(機能野)に浸潤してしまっているあるいは機能野の近傍に存在する場合には腫瘍摘出と機能温存のバランスに悩む場合も少なくありません。機能を最大限温存しながら最大限の腫瘍摘出を目指すにはそれらの機能を術中にチェックしながら腫瘍を摘出していく必要があります。この方法の一つに、覚醒下手術があります。この方法は、患者さんに手術中に麻酔薬を途中で中止し、覚醒状態とし、脳に電気刺激をしながら電気刺激を行なった部位に機能があるかないかを確認し、大事な機能があれば摘出限界と考え、また大事な機能がなければ腫瘍摘出を進めるというものです。「痛みは感じないのでしょうか?」と手術を受ける患者さんには聞かれることも多いのですが、腫瘍摘出中には痛みを感じることはなく、会話をしながらまた手足を動かしながら手術を進めることができます。実際に覚醒下手術を行うことにより、機能を温存しながら最大限の腫瘍摘出を行なえ得ることが様々な施設から報告されています。
しかしながら「機能温存をしながら最大限腫瘍を摘出する」というと一見聞こえはいいのですが、神経膠腫の大部分は悪性腫瘍であり、腫瘍を残存させた場合には進行のスピードの差はあれど腫瘍が段々と大きくなりいつかは命に関わることも少なくありません。我々は患者さんの年齢や職業、悪性度や機能低下が起こってもその症状が一過性であるか否かなどを考慮し、患者さんと術前に話し合いながら摘出範囲を決めていきます。機能温存を優先しすぎて腫瘍が大きく残存するということをなるべく避けるためにも場合によっては、一過性の、あるいは永続しても軽微であれば機能野に存在する腫瘍の最大限の摘出を行うこともあります。
現在では、大部分の人に言語野が存在すると言われている左の大脳半球(優位半球)だけでなく、右の大脳半球(非優位半球)の病変においても我々は積極的に覚醒下手術を行っています。これは脳には言語や運動の機能だけでなく、色々な部位に色々な機能があり、視野、空間認知、遂行機能、計算、記憶などの機能が覚醒下手術中にも検出できるようになったからです。患者さんのニーズおよび腫瘍を残存させた場合の生命予後などを総合的に検討した上で手術を行っていきたいと考えています。

診断

診断によって追加治療の選択は大きく異なるため、正確、精密な診断が必要となります。診断には、組織診断と遺伝子診断が必須です。現在ところ病理組織診断は当院の病理診断科で行い、遺伝子診断は「関西中枢神経腫瘍分子診断ネットワーク」に症例登録を行い、診断を行っています。解析遺伝子はMGMTメチル化、IDH1/2、TP53、TERT、H3F3A、HIST1H3Bなどです。

化学放射線療法

病理組織学的診断、遺伝子学的診断を踏まえ、必要な場合には追加の治療を行います。放射線治療には、局所分割放射線療法、全脳照射、定位放射線治療などがあります。化学療法には、テモゾロミド(テモダール)、PCV療法、ICE療法、ベバスチマブ(アバスチン)などがあり、適切な治療を症例毎に検討していきます。放射線治療科、小児科、代謝内分泌科など各科と連携して治療を行っております。

先進医療

腫瘍電場療法であるNovo TTFを導入いたしました。NovoTTFを検討されている方は担当医までご相談ください。光線力学的療法であるPDTは今後、導入予定です。その他の先進医療についてはその適応につき症例毎に相談させていただき、当該施設に紹介いたします。

最後に

『神経膠腫(グリオーマ)をとる』ということはもちろん大事ですが、『腫瘍を治す』『元気で健康的な生活が長く営めるように尽力する』ということにも力を入れています。神経膠腫(グリオーマ)の治療は集学的治療だけでなく、精神的ケアやリハビリテーション、生活支援、場合によっては緩和などの包括的なサポートを要します。関係各部門と共に患者さんの治療に携わらせていただければと存じます。