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バイキンズ®シアター

バイキンに関係するムービーのコレクションです。
 2017年2月24日〜25日、神戸で開催された第32回環境感染学会総会・学術集会に参加しました。多剤耐性菌感染制御委員会企画「いまさら聞けない薬剤耐性グラム陰性菌の基礎知識」で、「楽しく学ぼう!超基本の薬剤耐性メカニズム」の演者を担当いたしました。沢山の方にご覧いただき、ご好評をいただきました。
 その時の講演内容を動画に変換しましたので、新しくバイキンズ®シアターというコーナーを設け公開することに致しました。
 これを機に、様々な動画を公開していきたいと考えておりますので、どうぞ楽しみながらご活用いただければ幸いです。

「楽しく学ぼう!超基本の薬剤耐性メカニズム」

 ※動画をご覧になるには再生ボタンを押してください。
  キースライド資料はこちらをご覧ください。

概要  

 薬剤耐性菌のメカニズムについて、オリジナルキャラクター「バイキンズ®」を使い、楽しく勉強するための初学者向けツールとしてまとめ、公開することとしました。 第32回環境感染学会総会・学術集会での多剤耐性菌感染制御委員会企画「いまさら聞けない薬剤耐性グラム陰性菌の基礎知識」で講演した内容です。ESBL、CREなどの略語についても、可能な限り分かりやすく説明しました。

詳細  

はじめに
 薬剤耐性菌(AMR)は、国際的な問題であるとともに、国家的に取り組むべき課題として2016年4月にはアクションプランが策定されました。特に、近年増加し、治療の選択肢が少なくなっているグラム陰性桿菌の耐性化は深刻化しつつあります。 G7で取り上げられ、新聞でも報道されるようになり、身近な話題としてもぜひ理解しておきたい内容です。
 とはいえ、感染症以外にもさまざまに変化し続ける医療現場で習得すべき知識も増え、耐性菌だけとはいえ勉強する時間はあまり確保できないのが現状です。 環境感染学会の多剤耐性感染制御委員会では、多剤耐性グラム陰性桿菌のポジションペーパーを更新する機会に、第32回環境感染学会で特別企画を実施しました。 本企画の機会を利用し、特技の一つである「イラスト」を使って楽しく、かつ短時間で耐性菌を理解するためのツールを作成しました。
 詳細についてはビデオを見てもらえばよいですが、特にキーとなるスライドは別途PDFにまとめました。また、しっかり知っておくべき内容は、以下に参考文献とともにまとめました。 前述のポジションペーパーにも詳細な作用機序を掲載しましたのでご覧ください。

耐性機構  

 耐性には、本来の菌の特徴として耐性を示す場合(一次耐性)と、後天的に耐性が付与される場合(二次耐性)があります。Clostridium difficileや緑膿菌が一次耐性の代表ですが、その他の多くの場合は二次耐性が問題となります。 尚、緑膿菌の場合には一次耐性に加えて、二次耐性も問題となっています。通常、耐性菌といえば、二次耐性を示すことが多く、二次耐性のメカニズムを理解することが必要です。二次耐性とは獲得することによる耐性ですが、獲得するメカニズムには大きく2つに分類されます。 1つは突然変異による耐性であり、もう1つは耐性遺伝子の獲得によるものです。前者の代表例が、キノロン耐性で、使えば使うほど耐性菌が出現しやすいという特徴があります。いわば鍛えられて強くなるタイプと言えるでしょう。 一方、後者は、プラスミドなどの伝達性因子を介して、耐性因子という「アイテム」を手に入れて強くなるタイプです。しかも、グラム陰性菌の場合、多くのアイテムはやり取りすることが可能で、かつ、菌の種類が変わっても使えるという特徴があり、複数の菌種に耐性が拡大しやすいと言えます。 やり取り可能なアイテムを持つ耐性菌の代表が、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)です。尚、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)とカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、ややニュアンスが異なるので用語の使い方には注意が必要です(詳しくはスライド参照)。 緑膿菌やアシネトバクターなどのブドウ糖非発酵菌でも、薬剤耐性菌が問題となりつつありますが、腸内細菌科細菌に比べて、健常者への感染や定着は少ないため、耐性機構が類似していても、感染制御上の対応が異なってきます。そのため、薬剤耐性のグラム陰性桿菌を理解する際に、どの細菌(腸内細菌科orブドウ糖非発酵菌)が、どのような耐性(ESBLなど)を、どのように獲得したの(突然変異orアイテム)か、を知ることが重要となります。

覚えておきたい抗菌薬の基礎知識  

 順序が反対になりましたが、今回ぜひ覚えていただきたい抗菌薬として、3つを取り上げました。β-ラクタム系、キノロン系、アミノグリコシド系です。頻用される抗菌薬であるとともに、多剤耐性菌の基準となる薬剤としてしばしば使用されるためです。 また、β-ラクタム系は、ペニシリン系、セフェム系(主にセファロスポリン系)、カルバペネム系に分類され、後ろにいくにしたがって抗菌スペクトルが広くなります。また、β-ラクタム分解酵素(β-ラクタマーゼ)に対する安定性も後者ほど高くなります(分解されにくくなります)。 作用機序については、スライド中の模式図をご覧ください。
  1. 石井 良和. 基礎・臨床の両面からみた耐性菌の現状と対策 2 基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌. モダンメディア. 2007; 53: 98-104.
  2. 石井 良和. β-ラクタマーゼの機能分類. 日本臨床微生物学雑誌Vol 24 No 3 2014. 2014; 24: 171-79.
  3. 荒川 宜親. カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae,CRE)等新型多剤耐性菌のグローバル化と臨床的留意点. 日本化学療法学会雑誌. 2015; 63: 187-97.
  4. 矢野 寿一, 平潟 洋一, 賀来 満夫. 海外における薬剤耐性グラム陰性桿菌の動向. 日本化学療法学会雑誌. 2011; 59: 8-16.
  5. 荒川 宜親. 腸内細菌科菌種におけるカルバペネム耐性メカニズムとその特長および動向. IASR. 2014; 35: 283-84.