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- 真菌とは?
真菌とは、俗に言う「カビ」の総称である。以下で述べるごとく、ヒトと同様真核生物である。真菌類には、キノコ類も含まれているが、真菌症を起こす病原真菌の主体は、糸状菌と酵母様真菌である。一般的に我々が目にする病原真菌は、この2種類のうちの何れかの形態であるが、糸状菌と酵母状真菌の両方の性質を持つ真菌(二形性菌という)が少数知られており、重要な病原真菌が含まれている。また、Pneumocystis jiroveciiという、かつては原虫に分類されていた特殊な真菌もある。
真菌は、環境中の様々な場所に存在しており身近な微生物であるが、表在性皮膚真菌症(いわゆる水虫など)を除けば、健常者に感染する真菌は少なく、多くは日和見感染症の病原体である。しかしながら、一旦発症すると治療に難渋することが多い。
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細菌、哺乳類細胞との比較
真菌は、哺乳類細胞と同様、核膜に囲まれた核を持つ真核生物である。ミトコンドリアや小胞体などの細胞内小器官も有する。細胞膜は、リン脂質二重膜と数%のエルゴステロールから構成される(真菌学ダイジェストの表を参照)。エルゴステロールは、抗真菌薬の標的の一つとなっている。ヒトのステロールであるコレステロールと構造的に類似している。細胞壁は、グルカン、マンナン、キチン等の多糖類が主成分であり、グルカンも抗真菌薬の標的の一つとなっている。多くの真菌は、1,3-β-D-グルカン>1,6-β-D-グルカンであるが、クリプトコックスやトリコスポロン等の担子菌類は1,3-β-D-グルカン<1,6-β-D-グルカンである。
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真菌の分類
酵母様真菌と糸状菌
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増殖様式
酵母は二分裂または出芽によって増殖することが多い。一方、糸状菌は菌糸と胞子の形成が特徴となる。
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真菌の構造と抗真菌薬の作用機序
深在性真菌症に対する主な抗真菌薬は、ポリエン系薬、アゾール系薬、キャンディン系薬。併用薬として核酸系の5-FCがある(表1)。
。
*表在性皮膚糸状菌に対する抗真菌薬としては、アリルアミン系(エルゴステロールが標的)がある。
主となる薬剤 | 核酸系 |
ポリエン系 | アゾール系 | キャンディン系 |
アムホテリシンB リポソーマルアムホテリシンB |
フルコナゾール ホスフルコナゾール ミコナゾール イトラコナゾール ボリコナゾール (ポサコナゾール) |
ミカファンギン カスポファンギン (アニデュラファンギン) |
5-FC |
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A
カンジダ(Candida)属
B
アスペルギルス(Aspergillus)属
C
クリプトコックス(Cryptococcus)属
D
ムーコル(Mucor)
以前は、接合菌やムコールなどとも呼ばれていたが、現在はムーコルで統一されている。接合胞子を形成する複数の属の菌種を含んでいる。
E
トリコスポロン(Trichosporon)属
病原性は低く、侵襲性の感染症としては日和見感染症を起こすことがあるが、健常者にもアレルギー(夏型過敏性肺臓炎)を起こすことがある。クリプトコックスと同様、担子菌であり、細胞壁はβ-1,3-グルカンよりもβ-1,6-グルカンを多く含み、β-1,3-グルカン合成酵素に作用するキャンディンには一次耐性を示す。侵襲性感染症では、グルクルノキシロマンナン(GXM)抗原が上昇することがある。
キャンディン使用中のブレークスルー感染症を起こす病原体としても知られる。
F
ニューモシスチス イロベチー(Pneumocystis jirovecii)
特殊な真菌。以前は原虫に分類されていた。通常の抗真菌薬が無効。疾患はニューモシスチス肺炎に限られる。AIDSの指標疾患であり、いきなりAIDS
*の原因として最多。
治療の第一選択薬はペンタミジンまたはST合剤で、これらが無効または副作用で使用できない場合には第二選択薬としてアトバコンが使用される。
*AIDS(Acuired immunodeficiency syndrome)
HIV(Human immunodeficiency virus)による感染症で、CD4陽性T細胞の減少に伴って、カンジダ症、クリプトコックス症、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス肺炎等の日和見感染を発症した状態。
G
輸入真菌症病原体
- Coccidioides immitis、C. posadasii
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Paracoccidioides brasiliensis
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Histoplasma capsulatum
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Blastomyces dermatitidis
-
Penicillium(Talaromyces) marneffei
H
皮膚真菌症病原体
- 皮膚糸状菌:Trichophyton rubrum, T. tonsulans, T. mentagrophytes
-
皮膚真菌症:Malasezzia furfur
I
その他
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2020年8月19日開設 2020年8月19日更新