B アスペルギルスCandida

臨床的分類
糸状菌、子嚢菌類

概要
 糸状菌の代表である。本属の真菌は、環境生育菌であり、菌糸と胞子形成が特徴で、空気中に浮遊している胞子の吸入によって生体内に入る。通常、健常人に発症することはなく、肺に器質的疾患を有する患者や全身性の免疫力の低下した患者などに発症する。アスペルギルス症の好発臓器は肺であり、肺アスペルギルス症と呼ばれ、いくつかの病型に分類される。
 アスペルギルス症の原因菌は、ほぼ4菌種に限られ、Aspergillus fumigatusA. flavusA. nigerA. terreusが症例全体の95%を占め、特にA. fumigatusによる症例が最も多い。抗真菌薬の感受性から、A. fumigatusとnon-fumigatusに分けることもある。まれな菌種として、A. nidulansA. restrictusA. versicolorなどがある。いずれも環境菌。環境からの胞子の吸入により感染する。外因性感染。病原性は弱く日和見感染。A. fumigatusはnon-fumigatusに比べ、発育可能な最高温度が高い。発育可能な温度が、ヒトへの病原性に関与していることが示唆されている。

UpToDate〜隠蔽種(Cryptic species)


 隠蔽種とは、形態学的に区別することが困難な菌種を指し、主に、A. fumigatusの隠蔽種が臨床的に問題となっている。比較的よく知られている隠蔽種としては、A. lentulusA. novofumigatusA. viridinutansA. udagawaeなどがある。隠蔽種の特徴として、胞子のつきが悪い、発育温度がA. fumigatusよりも低いなどがあるが、これらの特徴だけでは鑑別することがしばしば困難であり、遺伝子検査によって確認することが推奨される。
 一般に、A. fumigatusより、アソール系薬などに耐性を示すことが多いことから、治療薬を選択する上で注意が必要である。特に、糸状菌の感受性検査は、通常の検査室では実施されないことから、治療反応性が悪いことなどを指標に、より専門的な機関に同定を依頼することも考慮する。

2020年8月24日開設 2020年8月24日更新