グラム染色では染まりにくく、抗酸菌染色(≒Ziehl-Neelsen染色。抗酸性染色とも)という特殊な染色法が必要であることにちなむ。臨床的および細菌学的観点から、結核菌群、非結核性抗酸菌群、らい菌の3つに分類すると理解しやすい。結核菌群の代表は、Mycobacterium tuberculosisであり、結核の原因菌である。空気感染によりヒト-ヒト感染する菌で、感染症法の2類感染症に定められている。ウシ型結核菌Mycobacterium bovisの弱毒菌がBCGと呼ばれるもので、結核のワクチンとして使用される。多くの細菌性感染症が急性感染症であるのに対し、結核は慢性感染症である。増殖速度が一般的な細菌に比べると極めて遅く、培養に時間がかかるとともに、免疫応答も細胞性免疫が主体であり、慢性の経過をとりやすい。抗酸菌に対する治療薬は、抗結核薬とも呼ばれ、一般的な抗菌薬とは異なる点が多い。細菌の治療は、単剤治療が一般的であるが、結核の場合、治療が長期に渡るため単剤治療では耐性化しやすい。したがって、3剤以上で治療を開始するのが一般的である。最初に選択される薬剤は、INH、RFP、EB、SM、PZAである。
 非結核性抗酸菌群の代表は、Mycobacterium aviumMycobacterium intracellulareであり、両者は簡易的な検査法では鑑別できないため、しばしばMycobacterium avium complex(MAC)と呼ばれる。その他に、Myocobacterium kansasiiMycobacterium ulceransなどがある。MACとMyocobacterium kansasiiは呼吸器病原体であるが、通常は、ヒト-ヒト感染はないと考えられている。
らい菌は、Mycobacterium lepraeで、人工培養ができない菌種である。ハンセン病の原因菌で、かつて隔離政策などによって差別が問題となった菌である。


もっと詳しく
主な抗酸菌
大分類 Runyon分類 別称 主な特徴
Mycobacterium
マイコバクテリウム
結核菌群 tuberculosis
ツベルクローシス
結核菌、ヒト型結核菌 肺結核など。
bovis
ボービス
ウシ型結核菌
microti
ミクロティ
ネズミ型結核菌
africanum
アフリカヌム
canettii
カネッティ
caprae
カプレ
非結核性結核菌群 I群菌
光発色菌
kansasii
カンサシ
marinum
マリヌム
II群菌
暗発色菌
gordonae
ゴルドネ
III群菌
非発色菌
ulcerance
ウルセランス
ブルーリ潰瘍。
avium
アビウム
NTMの代表。中年女性に多い。肺MAC症、中葉舌区症候群。
intracellulare
イントラセルラーレ
NTMの代表。中年女性に多い。肺MAC症、中葉舌区症候群。
IV群菌
迅速発育菌
abscessus
アブセッサス
培養不能 leprae
レプレ
らい菌 ハンセン病

2020年3月26日開設 2020年8月14日更新