すてーじ

7月のお題

ベロを出し 町内暴れ 大出血

7月の標語

 

解説

町内会(腸内界)の暴れん坊、ベロダシ
 大腸菌は、その名前の通り、大腸から発見された菌で、腸内細菌の一つです。また、腸内細菌の一部を含め、ある共通点を持った菌の集団を「腸内細菌科」と呼び、大腸菌は、腸内細菌科細菌の代表でもあります。今回は、町内会の暴れん坊、ベロダシこと、腸管出血性大腸菌をご紹介します。

 我々の腸内には、約1015個(1000兆個)の腸内細菌がすんでいます。体積換算では約1L、重量換算では約1kgです。もはや体の一部と言ってよいでしょう。このように、体の一部になってしまった細菌たちは、通常無害であり、元々腸内にいる大腸菌も同様に無害です。
  ところが、我々にとって危険な毒を持った大腸菌もいます。そのうち最も危険な大腸菌が、腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli、EHEC)で、「ベロ毒素」と呼ばれる毒素を産生します。赤痢菌が産生する毒素とほぼ同じもので、腸からの出血、つまり血便を起こすことが、菌の名前の由来となっています。
  腸からの出血が特徴ですが、血便にならない軽症例もあり、知らないうちに感染源となっていることがあります。一方、腸の病気だけでなく、溶血性尿毒素症候群(HUS)という重篤な症状を引き起こすことがあります。ベロ毒素が、腸だけでなく、全身の血管を傷つけるために起こる合併症で、赤血球が壊れ(溶血)、腎臓の血管が傷つくことで尿が出なくなる(尿毒症)状態を指します。幼児や高齢者では重症化しやすいといわれており、HUSになると数%程度が死に至ります。
  元々腸内にいる大腸菌が毒を出すようになるのではなく、毒をもった大腸菌に汚染された食べ物や飲み物を摂取する事で感染します。腸の中で増えるのに時間がかかるため、摂取してから2〜3日(潜伏期)後に発症します。感染源は、汚染された食肉、生野菜、水等ですが、原因を特定できない場合もあります。温かいところで増えやすい菌で、感染のピークはちょうど今頃で、6〜8月頃に多く発生します。熱や消毒には比較的弱いので、しっかりと火を通すこと、また衛生環境に注意することが予防のために重要です。
  EHECに限らず、大腸菌は、細菌表面(血清抗原)の違いで、「O(オー)××」と1番から番号がついています。特定の番号の大腸菌がEHECである場合が多く、有名な番号はO157(オー・いち・ご・なな)です。新聞などでよく見かける番号ですから、ご存知の方も多いでしょう。EHECによる感染症は、感染症法の三類感染症(危険な方から三番目)で、診断した医師は全て届け出る必要がありますので、全数が把握されています。集団発生以外では、あまりニュースにならないので、まれな感染症と思われがちですが、毎年3000件〜4000件の報告があります。
  夏場に多い感染性胃腸炎・食中毒の原因は、今回ご紹介したEHECの他に、4月にご紹介した芽胞形成菌の一部、5月にご紹介したビブリオ属などもあります。これらの細菌にとっては快適な時期となります。ご用心を。

季節の標語シリーズ  

お正月 豆まき
ひな祭り 春
こどもの日 梅雨
腸内 海賊船
月見 ハロウィン
秋 クリスマス