語源

「汗散るコリン」の話

 もちろん、アセチルコリン(acetylcholine)の話である。アセチルコリンは、コリンの酢酸エステル(acetyl- + -choline)という意味である。アセチルは酢酸(acetate)を意味する接頭辞で、acetateは、食酢(vinegar)を表すラテン語のacetumに由来する。酸(acid)は、酸っぱい(sour)を表すラテン語のacidusに由来しており、同じ語源である。ちなみに、acetateの語尾の-ateは、陰イオンにつけられる接尾辞であり、特に、-ic acidという酸の場合の語尾につけられる。acetate(acetic acid)以外に、boronate(ボロン酸、boronic acid)などがある。
 次に、cholineについて調べてみる。cholineは、胆汁から単離されたため、ギリシア語のcholeに由来して、cholinと命名されている。ちなみに、chol-やchole-を接頭語に持つ語は多く、胆石から分離されたステロールとしてコレステロール(cholesterol)、胆汁酸のうち代表的なものがコール酸(cholic acid)、二次胆汁酸のデオキシコール酸(deoxycholic acid)、胆嚢炎(cholecystitis)、胆石症(cholelithiasis)などがある。なお、胆嚢はgall bladder、胆石はgallstoneである。また、落ち込んだ気分のことをメランコリー(melancholy)というが、黒胆汁という意味である。melan-は、黒色色素であるmelaninや黒色腫という意味のmelanomaにも使われている。胆汁のことをbileと呼ぶので、cholineの別名としてビリノイリン(bilineurine)が知られているようだが、これまでに聞いたことがなかった。
 cholineは、acetylcholineのほか、フォスファチジルコリン(phosphatidyl choline)として細胞膜の脂質二重膜に用いられている。phosphatidyl cholineは卵黄にも多く含まれる。 acetylcholineは、「汗が散る」ことに由来しているわけではないが、汗腺にはacetylcholineの受容体があり、汗が出る。文字通り、「汗散るコリン」である。偶然とはなんと恐ろしいのか。 acetylcholineは、様々な用途で全身で使われており、acetylcholineを分解する酵素コリンエステラーゼも全身にある。acetylcholineは、分泌される傍から速やかに分解され、酢酸とコリンに分解されるという儚い運命であるが、この酵素を阻害すると、acetylcholineの量が増加する。アルツハイマー型などの認知症ではacetylcholineが神経伝達物質として関与しており、少ないことが記憶障害などの症状があらわれる原因の一つとなっている。そのため、認知症の進行を遅らせる薬として、コリンエステラーゼ阻害薬が用いられている。そこで、予想されるのが、全身的な副作用である。acetylcholineは、神経のみならず、複数の組織や器官ででも重要な役割を果たしているため、コリンエステラーゼ阻害薬によって多くなりすぎると、下痢や吐き気といった消化器症状や動悸などの循環器症状が出現することがある。

つながるのが「えん」

 -eneは二重結合を示す言葉で、脂肪酸などでは不飽和結合とも呼ばれる。alkeneの-eneである。長崎では、「そこにあるから」という意味で、「そこにあるけん」というが、そっちの「あるけん」ではない。また、「歩けない」という意味でももちろんない。ダジャレはさておき、この-eneが重要であることを示す例をいくつか挙げてみよう。
 ロイコトリエン(leukotriene)は、leuko(白)+tri(3つの)+ene(二重結合)の合成語である。白血球(leukocyte)から産生されている物質の一つである。文字通り、3つの二重結合を持っている。ロイコトリエンは、イコサノイドの一種で、アラキドン酸から合成されるプロスタグランジンを元に合成される。尚、アラキドン酸は、20(イコサ)の炭素鎖+4つ(テトラ)の二重結合(5,8,11,14位)という意味で、5,8,11,14-イコサテトラエン酸と呼ばれる。
 健康食で話題になった不飽和脂肪酸、IPAやDHAも、それぞれ5,8,11,14,17-イコサペンタエン酸(icosapentaenoic acid)、4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)の略である。文字通り、IPAは5つのエン(pentaene)を、DHAは6つのエン(hexaene)を持っている。
 ちなみに、抗真菌薬として用いられるアムホテリシンBは、ポリエン(polyene)系と呼ばれるが、二重結合がたくさんついていることに由来する。-eneがこんなにも沢山の化学物質の語源となっていることをいまさらになって知った。
 eneも、円も、縁も、全てつながっており、人にとってなくてはならないものであると気づく今日この頃である。

セロトニンとメラトニンと仕事人

 なんとなく名前が似ている3つを並べてみただけだが、意外や意外、関係有りなのだ。
 まず、セロトニン(serotonin)、心のバランスを整える作用から「安心のホルモン」とか「幸せホルモン」とも呼ばれる。幸せだなんて、私にピッタリ。なんか親近感さえわいてくる。それはさておき、セロトニンは、5-HT(5-hydroxytryptamine)とも呼ばれ、アミンの一種である。アミノ酸のトリプトファン(tryptophan)から、5-HTP(5-hydroxytryptophan)を経てセロトニンになる。
 名前は、sero(血清)+tone(緊張)が元になっており、血管の緊張を調節するという意味らしい。ふと、「セロトニンは、どこで作られているのだろう?」と思い、調べてみたところ、安心のホルモンだけあって、脳から分泌されるに違いないと思っていたが、90%は腸で産生されるそうな。「へ〜」。
 また、セロトニンからは睡眠を促すメラトニン(melatonin)が作られる。幸せな気分の後は、寝るだけってことだろうか。幸せな気分に浸ったままお眠りなさい、ってことだろう。
 いつもイライラしている仕事人にはセロトニンとメラトニンが必要かもしれない。  

荒木ドンさん

 もちろん、アラキドン酸(arachidonic acid)の話である。「初めて聞いた時、人の名前かと思いました」って思う人は、私以外にはいないと思うが、今回、アラキドン酸について調べてみた。
 別名は、5,8,11,14-イコサテトラエン酸(icosatetraenoic acid)である。不飽和脂肪酸の一つで、文字通り4つの二重結合(tetraene)を持つ、20個(icosa)の炭素からなるカルボン酸である。ちなみに、二重結合が全てないと、アラキジン酸(arachidic acid)である。「荒木ドンさん」と「荒木仁さん」に聞こえてくるのは私だけか。arachid-は、ピーナツを表すラテン語arachisに由来する。ピーナツ油に含まれる飽和脂肪酸の一つである。同じ語源として、arachinという蛋白が知られており、ピーナツに含まれる主な蛋白である。アラキジン酸の別名は、エイコサン酸(eicosanoic acid)*で、今度は、「栄子さんさん」に聞こえてきた。幻聴か。
 アラキドン酸は、お肉に多く含まれている。前回、幸せ物質としてセロトニンを紹介したが、アラキドン酸から合成される幸せ物質として、アナンダマイド(anandamide)というものも知られている。アナンダマイドは、別名、アラキドノイルエタノールアミドとも呼ばれるが、anandamideと命名された。joyやbliis(完全な幸せ)を意味するサンスクリット語のanandaに由来しているようだ。幸せ物質らしいネーミングである。「ああ、なんだ、毎度」(つまらない)と言われないよう努めよう。
 さて、肉を食べると幸せな気分になるのは、肉に含まれるアラキドン酸が、脳内でアナンダマイドに変化するから、という噂がある。アナンダマイドは、脳内にあるカンナビノイド受容体に作用するが、カンナビノイドは大麻(カナビス)の多幸感成分として知られている物質である。私の幻聴も、アナンダマイドがカンナビノイド受容体に作用している影響かもしれない(もちろん冗談です)。近年は、食糧問題として、代替肉の大豆ミートが知られるようになったが、大豆ミートにアラキドン酸が含まれれば幸せな気分になるのだろうか。肉好きなので、アラキドン酸入り大豆ミートによって、「だいたい肉」から「ほとんど肉」に変化する日を期待したい。
*icosa = eicosa(20の意味)なので、5,8,11,14-イコサテトラエン酸(icosatetraenoic acid)は5,8,11,14-エイコサテトラエン酸(eicosatetraenoic acid)と、エイコサン酸(eicosanoic acid)はイコサン酸(icosanoic acid)と同義である。

網野さん

 幻聴がまだ続いているようだ。もちろん、アミノ酸の話である。アミノ基(amine)とカルボン酸(carboxylic acid)を持っているからアミノ酸。カルボン酸は次回に回すとして、アミノ基についてさらに調べてみる。窒素一つの周りに、水素(hydrogen)がくっついている。だから、NH3つまり、アンモニア(ammonia)と関連していることは、容易に想像がつく。どちらが先かであるが、アンモニアが先である。
 アンモニアの語源について調べてみると、古代の太陽の神、アンモーン(ammon)に由来することが分かった。神殿の近くから、アンモニア塩が取れたことに由来している。アンモーンがなぜアンモーンかは不明であるが、ここまで行き着けば十分だろう。
 でも、やっぱり気になるので、さらに調べてみる。アンモーンは、アメン(amen)、アムン(amun)とも書かれている。「隠れた者」という意味らしい。amenは、お祈りのアーメンと同じつづりだ。偶然だろうか?
 アンモーンは羊の角(くるくる巻いた形)を持っている。ということで、アンモナイト(ammonite)の語源も同じらしい。
 ちなみに、「待つわ」で有名な「あみん」は、amingとつづられる。元はさだまさしさんの曲に出てくる喫茶店の名前「安眠」からとったらしい。
 「アミノ酸」と「あみん」はさすがに関係ないかと思ったが、アミノ酸の中には安眠に良い、セロトニンやメラトニンがある、ということで関連していた。。。
 では、お後がよろしいようで、、、

カルボンさん

 アミノ酸の片割れカルボン酸(carboxylic acid)。カルボン酸は、カルボキシ(carboxyl)基(以前はカルボキシル基とも)を持った酸である。カルボキシル酸もしくはカルボキシ酸と訳してくれたらよかったのにと思うのは私だけだろうか。
 それはさておき、カルボキシ基は、カルボニル(carbonyl)基とヒドロキシ(hydroxyl)基を合わせたものである。カルボニル基とは、炭素と酸素が二重結合した官能基で、ヒドロキシ基は酸素と水素が結合した官能基である。
 カルボニル基のcarbo-は、炭素(carbon)に由来する。carbonは、元々、炭、すす、という意味らしい。木などを燃やしてできる木炭(charcoal)も関連語である。charcoalの方が言葉としては先らしいので、元々はcharcoalに由来することになる(と思う)。
 次に、ヒドロキシ基について調べてみよう。水素(hydrogen)、酸素(oxygen)に由来することはすぐわかる。hydrogenは、水(hydro)を産生(generate)させることに由来する。つまり、水素を燃焼させると水になるので、文字通り「水の素」である。hydroの語源は、どうもギリシア神話に出てくる湖に住む9つの頭を持つ蛇、ヒドラと関係してそうだ。ただし、hydroに由来して、ヒドラかもしれないので、どっちが先か分からない。でもなんとなく、怪獣みたいな名前のヒドラが先っぽい気がする。うーむ。これ以上は調べきれず、断念。ちなみに、ヒドラって言う生き物がいることがわかった(ヒドラ)。ギリシャ神話に出てくる怪獣のような生物である。
 なお、炭素が4つ以上ある直鎖のカルボン酸は、中性脂肪に含まれる成分なので、脂肪酸(fatty acid)とも呼ばれる。炭素が6以下を短鎖脂肪酸(short chain fatty acid, SCFA)と呼び、最近、腸内細菌叢(腸内フローラ。今風に呼ぶならmicrobiomeといってもいいかもしれない)との関連が注目されている。カルボン酸のうち、炭素が1〜6個までのものを順に並べると、ギ酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、酪酸(butylic acid)、吉草酸(valeric acid)、カプロン酸(capronic acid)となる*。脂肪酸の定義が、炭素4つ以上のカルボン酸なので、その定義なら、最後の2つ(吉草酸とカプロン酸)だけが短鎖脂肪酸となるはずである。しかし、本来、脂肪酸ですらないはずの、酢酸、プロピオン酸、酪酸までを短鎖脂肪酸に含めている場合がある。分類は人間の都合で変更されるものである。
 カルボン酸のことを考えていたら、カルボナーラが食べたくなってきた。「カルボン酸とカルボナーラは関係ないよね」と思いきや、カルボナーラは炭焼き職人というような意味らしい。語源は奥が深いね。
*ギ酸(formic acid)はメタン酸(methanoic acid)、酢酸(acetic acid)はエタン酸(ethanoic acid)、プロピオン酸(propionic acid)はプロパン酸(propanoic acid)、酪酸(butylic acid)はブタン酸(buthanoic acid)、吉草酸(valeric acid)はペンタン酸(pentanoic acid)、カプロン酸(capronic acid)はヘキサン酸(hexanoic acid)とも呼ばれる。

フレ〜フレ〜!カラダ!

 今回はカテコラミン(catecholanine)の話。
 カテコラミンは、アドレナリン(adrenaline)、ノルアドレナリン(noradrenaline)、ドパミン(dopmine)など、交感神経系の神経伝達物質である。副腎(adrenal gland)からも産生される。アドレナリンのネーミングはご想像の通りである。
 ちなみに、ad-は上という意味の接頭語で、-renalは腎臓の形容詞形である。レニン(renin)というホルモンは腎臓から分泌されることに由来する。アドレナリンは、エピネフリンepinephrineとも呼ばれる。epi-も上という意味の接頭語で、nephrineは腎臓に由来する言葉である。ちなみのちなみに、ネフローゼ(nephrosis)という言葉も、腎臓疾患である。また、nephrinは腎臓の機能に重要な蛋白の一つである。
 カテコラミンに戻ろう。カテコール(catechol)とアミン(amine)である。アミンは前回出てきたアミノ基。合成経路を見ると、まず最初にフェニルアラニン(phenylalanine)があって、そこからチロシン(tyrosine)が合成され、次にDOPA、ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンへと進む。通常はアドレナリンが最終産物である。
 カテコールは、語尾が-olなので、アルコール(alcohol)類っぽいが、フェノール(phenol)類の一種である(ま、似たようなものだが)。フェノールはベンゼン環にヒドロキシ(hydroxyl)基(-OH)が一つだが、カテコールはヒドロキシ基が2つ隣あっている。ポリフェノール(polyphenol)に含まれる単位の一つである。カテコールのcate-は、ポリフェノールとして有名なカテキン(catechin)に由来する。
 カテキンは、殺菌効果もあるので、「勝て!菌に!」という意味・・・ではなくて、インドに産するマメ科アカシア属の低木ペグノキ、カテチュー(catechu)に由来する。ようやく今回も行き止まり。
 catecholanineは、戦闘態勢でも分泌される。「勝て、コラ、みんな」、という意味ではもちろんないが、カラダの応援団なんだなあ。
 学生の頃、生化学苦手だったが、こうやって自分で調べてみると意外に面白いかも、、、

グリシン(glycine)とアラニン(alanine)

 アミノ酸各論編、グリシン(glycine)とアラニン(alanine)。グリシンは最も単純なアミノ酸で、アラニンはその次に単純なアミノ酸である。そして、単純な私が最初に覚えたアミノ酸でもある。
 グリシンは、甘いという意味の、gl-が接頭語についているように、甘いアミノ酸である。語源的には、グルコースとも関連している。アラニンは、プロピオン酸の2位のところがアミノ基に置換されたものであるとも言えるので、2-アミノプロピオン酸(2-aminopropionic acid)とも呼ばれる。アラニンのal-は、アルデヒド(aldehyde)に由来し、アミノ酸っぽく変形したものらしい。天然に発見される以前に、アセトアルデヒド(acetoaldehyde)から合成されたためである。アルデヒドはアルコール(alcohol)から脱水(dehydro)したものという意味である。アルコールの語源は、諸説あるので、深めないことにする。悪しからず。
 フェニルアラニン(phenylalanine)はご推察の通り、アラニンにフェニル(phenyl)基がくっついたアミノ酸である。フェニルアラニンが蓄積して精神障害を起こす病気が知られている。フェニルケトン尿症と呼ばれる先天性の疾患である。フェニルアラニンからは、チロシン(tyrosine)が合成されるが、この合成がうまくいかないためである。したがって、フェニルアラニンが蓄積するだけでなく、チロシンが不足する病気でもある。チロシンが不足するということは、チロシンから合成されるカテコラミンも不足することになる。ちなみに、チロシンは、4-ヒドロキシフェニルアラニン (4-hydroxyphenylalanine) とも呼ばれる。チロシンは、ギリシア語でチーズを意味するtyriに由来するらしく、チーズのカゼイン(casein)から発見されたアミノ酸である。カゼインは元々「乾いた乳」という意味でチーズ(cheese)と語源的にもつながる。カゼインが出たところで、乾酪壊死(caseous necrosis)も関連語として紹介しておこう。ご存知の通り、結核に特徴的な病理像で、チーズのように黄白色の壊死を起こすことに由来する。なんとなく、自分の専門の細菌学に結びついた。しかも、フェニルアラニンとチロシンまで制覇してしまった!!!
 各アミノ酸の語源は下記にも多く記載されていたので、参考までに。なお、内容は十分確認できていませんので、あくまで参考です(アミノ酸の語源)。

アルブミン

 albuminのalbum-は、「白い」という意味で、albuminは卵白を意味していた。尚、写真を入れるalbumは、もともと「white tablet」つまり「白い小板」という意味である。alb-もしくは-albを、接頭辞もしくは接尾辞に用いている用語として、他に、先天的にメラニン色素の合成遺伝子に異常があり肌が白いalbino(もしくはalbinism)、白いコロニーを形成する酵母様真菌のCandida albicans、白いマウスの系統であるBalb/cなどがある。
 さて、アルブミンであるが、血漿タンパク(血清タンパクもほぼ同義)の主成分で、約60%を占める。血漿タンパクの基準値が7.6〜8.3 g/dLで、アルブミンはおよそ4〜4.5 g/dLである。酵素活性は知られておらず、主な機能は膠質浸透圧の維持である。その他、種々の化合物と結合することが知られており、薬剤の血中濃度(タンパクに結合していないフリーの薬剤濃度)やビリルビンなどの不溶性の化合物の血漿への溶解性に影響する。他の多くのタンパクと同様、肝臓で合成される。
 なんとなく、知識の羅列になってしまい、面白みに欠ける記事になってしまった。決してアルブミンには責任はなく、うまく調理できなかった私の力量不足によるものです。悪しからず。。。

キナーゼ

 キナーゼ(kinase)は、リン酸化酵素であり、ATPなどの高エネルギーリン酸結合を持つ分子から、標的となる基質にリン酸基を転移する。「りんさん、こちらに来なーぜ」である。キナーゼという発音は、ドイツ語に近く、英語の発音に寄せると、カイネースとなる。
 最も代表的なものが、プロテインキナーゼであり、多くの酵素が含まれる。また、プロテインキナーゼは、リン酸化する部位のアミノ酸残基により分類される。例えば、チロシンキナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼがあり、これらの水酸基(ヒドロキシル基)にリン酸基が転移される。哺乳類では、セリン/スレオニンキナーゼがほとんどを占めるが、細菌などの原核生物では、ヒスチジンキナーゼが多く、特に二成分制御系(ヒスチジンキナーゼ-レスポンスレギュレーター)などでしばしば認められる。