大阪市立大学大学院医学研究科細胞機能制御学教室


大学院入学を希望する人たちへ

 

僕が大阪市立大学・大学院医学研究科に赴任してから8年目に入りました。我々はヒト中枢神経系の形成不全である滑脳症の研究に取り組んでいます。滑脳症の原因遺伝子・LIS1は当初、血小板活性化因子という脂質の代謝にかかわる遺伝子であると考えられてきましたが、コウジカビの一種であるアスペルギルスの研究からモータータンパク質である細胞質ダイニンの制御因子であることが明らかになってきました。この間、遺伝子の機能に迫ることの難しさと、また驚くべき進展を実感してきました。そして研究の進展とともに新たな技術の開発、新しい遺伝子の機能解析法の導入など、積極的に先端的な研究スタイルの確立に努めてきました。これらは意図して取り入れたものもあれば困難の克服の過程で確立されたものもあります。

我々は幸いにも、現在世界的にも高く評価される研究業績と潤沢な研究費に恵まれています。これらは多くの困難という礎のものに築かれたものです。一方で我々の立場も常に進化、深化していかなければなりません。なぜなら、一瞬の無為無策はこれまでの多大な努力のもとに築かれた評価を失うのに十分だからです。これから大学院の選択を考えている人たちに伝えたいことは、研究は自分で遂行するものであり、その過程で多くの本当に生きた勉強ができるということです。大学院の選択に当たっては、是非そのような緊張感のある研究体験を共有しましょう。若くエネルギーに満ちた人材が多く集まることを切に希望します。

 

 

大阪市立大学・大学院医学研究科

細胞機能制御学

広常真治