大阪市立大学医学部病理部初期研修医カリキュラム

<選択科目 8ヶ月> 

一般目標(General Instructional Objective, GIO

将来病理診断学を専攻する医師のための研修プログラムである。また将来内科や外科に進む場合でも病理学的な素養を身につけることができる。病理診断、細胞診、剖検診断を実際に行い、指導医にチェックを受けることにより、病理診断に必要な知識と技術を身につける。研修期間2年で解剖医の資格を取得できる。また2年の研修期間終了後研究医として研修を継続することにより、認定病理医、細胞診指導医試験の受験資格を得ることができる。

 

各項目別行動目標(Specific Behavioral Objective, SBO)および学習方略(Learning Strategy, LS

評価法 研修医の到達度評価(4段階):

A: とりわけ優れている

B: 優れている

C: 平均的レベルに到達している

D: 不十分なレベルに留まっている

 

1.剖検

SBO

1)臨床的な問題点を把握でき、各症例にそくして剖検の必要性を説明できる。

2)剖検の意義を理解し、自らその必要性を認識した上で、家族に説明し、剖検の承諾が取れる。

3)病理解剖の執刀ができる。

4)マクロ写真をとることが出来る。

5)的確な切り出しを行うことが出来る。

6)顕微鏡所見をとり、マクロ所見、臨床所見と関連づけることが出来 る。

7)剖検所見をもとにして、臨床経過、問題点をチェックできる。

8)文献検索を的確に行うことが出来る。

9)臨床所見、剖検所見を含めた個々の患者の病気の全体像をとらえる訓練を行う。

10)剖検診断、所見をまとめることが出来る。

11)CPC、症例報告などで病理所見を発表できる。

LS 研修期間の初期に10例程度の剖検症例を担当し、研修期間中に、指導医の指導の下に剖検、肉眼所見記載、各臓器切り出し、顕微鏡的観察、剖検診断書作成、文献検索、剖検報告会、CPC等を担当する。

 

2.手術摘出臓器病理組織検査

SBO

1)肉眼所見の取り方を学習し、肉眼所見を取り、記録することができる。

2)頻度の高い疾患についてその肉眼所見の特徴を理解する。

3)適切な肉眼写真をとることができる。

4)各種固定法について知る。

5)電顕や凍結標本の採取の仕方を知る

6)適切な切り出しができる。

7)光顕所見および病理診断

8)臨床的な要望を理解できる。

9)病理診断および所見の記載ができる。

10)臨床所見と病理所見との関連を理解することが出来る。

11)各種特殊染色の意義について理解する。

12)酵素抗体法、蛍光抗体法の意義を理解し、判定を行うことが出来る。

13)超微形態および分子病理学的診断、研究

14)電顕、フローサイトメーター、遺伝子検査等の意義適応について判断できる。

15)酵素抗体法、蛍光抗体法、電顕、フローサイトメーター、遺伝子検査を行うことができ、 患者の診断および医学研究に用いることが出来る。

16)CPC等で病理所見を発表できる。

17)症例報告で病理所見をまとめることができる。

 

経験するべき疾患

食道癌

胃進行癌

胃早期癌

胃早期癌EMR材料

胃良性潰瘍

膵癌

胆道癌

慢性肝炎

肝硬変

肝癌

結腸癌

急性虫垂炎

炎症性腸疾患

肺癌

腎癌

膀胱癌

前立腺癌

胚細胞腫瘍

子宮頸部CIN円錐切除材料

子宮頸癌

子宮筋腫

子宮体癌

胎盤

卵巣腫瘍

乳腺浸潤性乳管癌

乳腺線維腺腫

乳腺症

甲状腺乳頭癌

甲状腺濾胞腺腫

骨腫瘍

LS

適当な症例について割り当て、指導医の指導の下に、各取り扱い規約に準拠して、肉眼所見の記載、切り出しを経験する。

 

3.生検診断

SBO

1)各組織の生検診断の意義適応を理解できる。

2)光顕所見および病理診断

3)臨床的な要望を理解できる。

4)病理診断および所見の記載ができる。

5)臨床所見と病理所見との関連を理解することが出来る。

6)各種特殊染色の意義について理解する。

7)酵素抗体法、蛍光抗体法の意義を理解し、判定を行うことが出来る。

8)電顕、フローサイトメーター、遺伝子検査等の意義適応について判断できる。

9)頻度の高い疾患での形態的特徴を列記できる。

経験するべき生検。

食道生検

胃生検

結腸生検

気管支鏡生検

子宮頸部生検

子宮内膜生検

腎生検

前立腺生検

乳腺腫瘍生検

リンパ節生検

LS

3000例の生検診断を経験し、実際に診断を行い、指導医のチェックを受ける。

 

4.顕微鏡診断

SBO

 1)顕微鏡を適切に扱うことができる。

 2)顕微鏡写真をとる事ができる。

 

LS

日常の病理診断業務、カンファレンスの準備の中で指導医の指導の下に行う。

 

5.特殊染色、酵素抗体法

SBO

 1)各特殊染色の特徴、目的、適応を理解できる。

 2)各酵素抗体法の抗体の特徴を理解し、目的、適応を理解できる。

 3)酵素抗体法の各染色方法の原理を理解し、適応を理解できる。

 

LS

日常の病理診断業務の中で、指導医の指導の下に各特殊染色のオーダー、酵素抗体法のオーダーを行い、これについても診断を行う。

 

6.術中迅速顕微鏡診断

SBO

1)術中迅速顕微鏡検査の意義適応を理解できる。

 

LS

指導医と共に術中迅速顕微鏡検査をおこなう。

 

7.細胞診

SBO

1)細胞診の意義適応を理解できる。

2)細胞診標本の提出までの適当な処理ができる

 

LS

指導医と共に細胞診の診断を行う。

 

8.病理診断

SBO

 1)病理業務は言うまでもなく、診断である。診断をする上で、鑑別診断は重要である。鑑別診断のリストを作成し、各疾患病態の特徴を理解し、鑑別の方法をあげることができる。

2)病理診断は確定診断であるので、これにもとづいて治療が行われることになる。各疾患の予後、治療法に関する知識は重要である。予後、治療法との関係を考えた上で病理診断を行うことができる。

LS

剖検診断、病理診断業務、カンファレンスの中で、指導医と検討する。

9.超微形態および分子病理学的診断、研究

1)電顕、フローサイトメーター、遺伝子検査等の意義適応について判断できる。

2)酵素抗体法、蛍光抗体法、電顕、フローサイトメーター、遺伝子検査を行うことができ、患者の診断および医学研究に用いることが出来る。

LS

日常の病理診断業務の中で、指導医の指導の下各種検査の適応を決める。

10. 病理所見の発表

1)CPC等で病理所見を発表できる。

2)症例報告で病理所見をまとめることができる。

3)病理学的な研究方法を知る。

LS

院内CPCにおいて指導医の指導の下、自分の担当した症例について発表する。

 

スケジュール

月〜金 9-12時 手術症例切出し、病理組織診断チェック

月 13-14時 剖検症例マクロカンファレンス

 14時- 剖検症例切出し

火 16時- 皮膚科カンファレンス

水 12-13時 脳神経外科・放射線科・病理部合同カンファレンス  

   16時 剖検症例報告会(定期CPC)

金 13時- 医局勉強会