|
病理診断は文字どおり確定診断で、これに基づいて治療方針、手術術式などが決定されます。例えば、乳腺の腫瘤の一部を取って調べた時、病理診断が癌であれば、乳房切除術などが行われ、癌でなければ、そのまま経過観察になったりします。手術中には術中迅速顕微鏡診断が行われ、この結果により手術の術式が変わることになります。手術後にはこの手術が適当であったのかどうかの判定のためや、今後の治療方針の決定のために摘出した臓器の病理診断がなされます。特に癌の診断は必ず、病理診断を必要としますので、癌の患者さんや癌の疑いのある患者さんは全員病理診断を受けていることになります。特に現在の医療においては正確で迅速な診断が求められています。このためには病理診断がキーとなるため、病理診断件数は増加の一途であり、当病理部では病理診断は年間となっています。
病理解剖とは、司法解剖が事故や他殺の疑いのある時に行われるのに対して、病死の時に行われる解剖です。司法解剖が死因を問題にするのと同じように、なぜ患者さんが亡くなったのか、死因を明らかにするのが目的です。この場合、犯人は病気です。癌の患者さんであっても癌で亡くなるとはかぎりません。最後の直接死因は感染であったり、出血であったり、場合によっては治療が原因であったりします。病理解剖は患者さんが受けることの出来る唯一で、最後の、最も正確な診断の機会です。この中で、経過中の患者さんに対する診断や治療が適当であったのかどうか等が検討されます。病理解剖の結果は多数の医師による症例検討会で報告され、次の患者さんを治療するときに役立てられます。従って、病理解剖が積極的に行われている病院ではそれだけ良い医療を受けられることになります。
|