そこが知りたいホントの話

 
     
  春の大学病院は研修医が多い?

大学病院の臨床研究ってなに?

大学病院は検査待ち時間が長い?

大学病院の内視鏡研修は人体実験?

バリウム検査と内視鏡検査どっちがよいの?

インフォームド・コンセントについて

■同意書

   ●上部消化管内視鏡検査

   ●下部消化管内視鏡検査

内視鏡検査の受け方

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春の大学病院は研修医が多い?

 
 

大学病院の臨床研究って何に?

 
 

大学病院は検査待ち時間が長い?

【検査の予約状況】 現在の検査予約待ち期間は以下の通りです。

通常上部消化管内視鏡観察

すぐ

静脈瘤観察

すぐ

上部消化管ポリペクトミー

すぐ

レーザー治療

すぐ〜1週間

カラードップラー超音波内視鏡

12週間

直腸鏡

12週間

逆行性膵胆管造影検査

12週間

下部消化管内視鏡

4週間

※検査はすべて予約制になっており、緊急性のある場合以外は当日の検査は受け付けておりません。

 

 →戻る

 

 
 

大学病院の内視鏡研修は人体実験?

 

平成16年度から厚生省の方針により医師の卒後研修制度が改正されました。このことにより、これまで基本的に大学病院や限られた施設でのみ行われていた卒後研修が、研修指定をもつ多くの市中病院でも行われるようになりました。すなわち、研修医をあずかる病院が今まで以上に増えることになったのです。それぞれの病院によって多少の差はあるものの、研修医は厚生省の方針に則って一定の研修を指導医のもとで行い、医師として必要な知識や技量を身につけ、今後のよりよい医療のために経験を重ねていきます。内視鏡研修もその一貫です。したがって、大学病院のみならず、他の病院で内視鏡を受けても一定の確立で研修医に遭遇し、そして研修医があなたに内視鏡を施行します。もちろん研修医は指導医のもとでしか検査を行いませんので、内視鏡操作、診断、処置に関して心配する必要はありません。尚、研修医もできるだけ患者さんに苦痛なく安全にそして正確に検査を施行できるよう、模型の胃を使用しながら日々努力しています。現在医療現場にいる医師は全員こういった研修を経て今に至ります。皆様のご理解、ご協力を希望致します。

 

 

→戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリウム検査と内視鏡検査どっちがよいの?

 

どちらかひとつを受けるなら内視鏡検査です。その理由は、

1.これが一番大切なことですが、バリウム検査ではとらえられないような小さな病変をみつけることができる。

2.病変を見つけたその場で病変を採取して組織検査をすることができる。バリウム検査で病変が見つかった場合、あらためて内視鏡検査が必要になる。

3.出血をしている場合には内視鏡を使って止血することができる。

などです。

以前はバリウム検査が主流でしたが、内視鏡の器機の進歩や内視鏡医の技術の向上により微小な病変を発見することができるようになり、病院では内視鏡検査が主流になっています。しかし、バリウム検査の役割が終わったわけではなく、バリウム検査は、消化管が狭窄しているため内視鏡がとどかない部位の診断や内視鏡では把握しずらい大きい病変の全体像をみるために用いられています。

また、一般の診療所でも内視鏡検査を行っている施設もあり、さらに、人間ドックなどの健診専門の施設においても内視鏡検査を選択できる施設が増えてきています。           

 

→戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インフォームド・コンセントについて

●緊急時消化管出血の病体と治療

・総論

インフォームド・コンセント

大阪市立大学医学部附属病院 消化器内科

                                                        斯波 将次、樋口 和秀、荒川 哲男

インフォームド・コンセントの必要性;

内視鏡検査に限らず、今日の医療においては、患者が自己決定を行い医療従事者と共同して疾患を克服する視点が重視され、インフォームド・コンセント{専門家側の十分な説明(この説明で医療従事者と患者の間に良好な信頼関係が築かれることが重要)による行為を受ける側の理解と納得に基づく自発的な同意}の理念に基づく医療の重要性が強調されている。インフォームド・コンセントは、患者の権利を守るために生まれたものであり、患者は、「平等な医療を受ける権利」や、「最善の医療を受ける権利」、「医療における自己決定権」、「説明や報告を受ける権利」等を有する。このような観点から、1997年に医療法に「医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。」(第1条の4第2項)との規定が盛り込まれ法律上の努力規定とされた。

 

インフォームド・コンセントの前提;

インフォームド・コンセントの前提条件は(表1)1)のとおりである。診て貰いたい医師を選んだり、医師に納得できるまで説明を求めることや十分な説明を受けた後に,治療を受け入れることもできるし,逆に拒否することもできる、また、医師に同意をあたえた後でも,考えが変った場合には同意を撤回したり変更したりすることができるのは、患者の基本的な権利である。この前提のもとにインフォームド・コンセントは成り立っている。

 

インフォームド・コンセントの方法;

インフォームド・コンセントを行うために、まず、患者が医療方針を自己決定できるために必要十分な情報を提示しなければならない(表2)2)。この中には、「患者の現在の医学的状態(治療が行われない場合に生じるかもしれない経過予測を含む)」、「予後を改善するかもしれない介入(医学的介入に伴うリスクと利益とそれらが発生する確率予測を含む)」、「患者が選べる他の選択肢についての医師としての意見」、「医師の最善の臨床的判断に基づく勧告」などが含まれる.次に、提示した情報を患者に理解してもらわなければならない。できる限り医学用語は避け、具体的に図表などを用いながら情報を提示するなどの工夫が必要である。一方、患者の理解度に関しては、患者が自己決定できる能力があるかどうかを判断しなければならない。内容が理解できたかどうか復唱させたり、治療のリスクと利益の合理的な評価ができているかを確認する必要がある。自己決定能力がなければ、患者の近親者などの代理人による判断が必要である。

患者の同意;
 
インフォームド・コンセントの同意は必ずしも同意書という形をとる必要はない。また、判例上,同意書が医師のミスの免責にはならないが、医師の説明義務を果たした証拠としての同意書は必要である。同意書のスタイルとしては、33)のようなスタイルが推奨されるが、同意の署名が得られたかどうかではなく理解と納得に基づく自発的な同意であったかどうかが重要である。

緊急消化管出血時のインフォームド・コンセント;

緊急時におけるインフォームド・コンセントは平時におけるそれとは若干異なったものとなる。患者が重症で自己決定できるほど内容を理解できない状況では、家族などの近親者による代理判断ということになるが、緊急時には家族も気が動転しており内容を十分に理解できない場合や、緊急対応に人手がとられ話に十分な時間をかけられない場合もあり、必ずしも十分なインフォームド・コンセントを行えないことがある。しかしながら、重症患者でも意識があって理解・判断のできる患者に対しては、理解できる言葉でわかりやすく、治療方法の内容と長所・短所を正確に説明した上で、いくつかの選択肢を提示し、可能であれば患者の判断で1つを選択してもらうほうがよい。また、家族に対しても、特殊な状況であることを理解してもらい、時間の許す限り上述のインフォームド・コンセントの方法に従い平時と同様のインフォームド・コンセントを行うべきである。

 筆者の施設では、緊急内視鏡検査に対しては、24時間オンコール体制をとり、年間400件以上の緊急内視鏡が行われている。実際、夜間や休日などは対応できるスタッフの数も限られており治療前には必ずしも十分なインフォームド・コンセントを行えないこともあるが、できうる限り平時と同様のインフォームド・コンセントを行うように心がけ、また、治療中であっても、治療方針を大きく変更する場合や患者に変化があった場合は、その度に家族に治療方針の変更や経過を報告するようにつとめている。

緊急時に患者の状態によっては、選択できる治療法も限られ、患者や家族に自己決定権はあるものの医師の意見が重視されがちであるため、治療後は患者の状況や治療選択の理由、予想される経過等々について家族が納得するまで繰り返し説明を重ねて行くことも重要である。

 

 ポイント;

     インフォームド・コンセントでは、十分な説明がなされることにより医療従事者と患者の間に良好な信頼関係を築くことが重要である。

     同意の署名が得られたかどうかではなく、患者の理解と納得に基づく自発的な同意であったかどうかが重要である。

     緊急時でもできうる限り平時と同様のインフォームド・コンセントを行うように心がけることが重要である。

参考文献

1,厚生省医務局医事課監訳「アメリカ大統領委員会生命倫理総括レポート」篠原出版,p24―27

2,星野一正 丸善ライブラリー「インフォームド・コンセント」丸善,東京,1997

3,日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡ガイドライン第2版 医学書院 2002

 

(表1)インフォームド・コンセントの前提条件


1)意思決定能力がない場合の代理決定ができる
2)患者は医師へ質問する自由がある
3)患者が同意した医療であっても実施上の責任は医師にある
4)患者は選択権と同意拒否権を持つ
5)患者は同意撤回権を持つ
6)患者は治療拒否権を持つ
7)患者は医師を選ぶ権利がある
8)患者の医療の選択権にも制限がある
(例えば,患者が人工妊娠中絶を希望しても,宗教上などの理由から医師が断った場合,患者は医師に強制することはできない)
9)真実を知る権利を持つ患者は,その権利を放棄する自己決定権も持つ


 

本文に戻る

 

 

(表2)インフォームド・コンセントの理論構成と具体的方法


a.適切な情報の開示
 (1)患者の現在の医学的状態(無治療の場合の経過予測)
 (2)予後を改善するかもしれない介入(そのリスクと利益)
 (3)患者が選べる他の選択肢についての医師としての意見
   (そのリスクと利益)
 (4)医師の最善の臨床的判断に基づく勧告
b.情報の患者による理解
c.患者の自己決定能力の有無
   法的判断力(法律的な観点からの判断力)
   意思決定能力(自分の身体に対し行われる行為に対し自己

決定できる能力)
   代理同意
    代理判断(患者に意思決定能力があった時の判断を知っ

ている代理人による判断)
    最善利益(患者の意向がわからず,分別のある人間が同

じ状況で選ぶであろうという判断)
   事前指示(自分の自己決定能力がなくなった時の事前指

示)
d.患者が決定を行う際の自由意志・自発性の尊重
e.患者の同意


本文に戻る

                          

 

  

                        (表3説明書および承諾書のスタイル


1,説明文と承諾(同意)書を組み合わせたスタイル

2,検査・治療についての説明に重点をおいたスタイル

3,説明した日時、医師名、同席者名を記載できるスタイル

4,管理責任者が明記されているスタイル

5,記録が残るスタイル(複写式)

6,同意に対して署名を得るスタイル(捺印はいらない)

7,誓約書タイプ(意義申し立てをしない旨)の承諾書は

  避ける

           本文に戻る

 

→戻る
   
■同意書 ●上部消化管内視鏡検査
 

●上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けられる方へ

上部消化管内視鏡(胃カメラ)は太さが人差し指程度で診断と治療を行うためのものです。食物が胃内にあっては検査ができません。また、治療中の病気(脳梗塞、心臓疾患、糖尿病など)によっては検査に注意が必要です。そのため、上部消化管内視鏡検査を受ける方に検査の内容について十分理解していただき、注意事項を厳守していただかなくてはなりません。

 この説明書と一緒にお渡しした検査同意書をお読みいただき、記入のうえ、外来主治医あるいは、看護婦にお渡しください。

1 目的:食道・胃・十二指腸(一部)の病気の診断と治療を目的に行われる検査です。

2 前準備

(1)午前の検査の場合          

   検査前日の夜9時以降絶食し、薬も飲まないでください。ただし、心臓や血圧の薬は服用指示に従ってお飲みください。

(2)午後の検査の場合

検査当日の朝より絶食です。朝10時までならお茶、スポーツドリンクを飲まれても結構です。ただし、朝食後の薬は服用指示に従ってお飲みください。また、心臓や血圧の薬は、朝食後、昼食後とも服用指示に従ってお飲みください。

3 検査の実際

(1)前処置:胃の泡を消す薬を飲み、麻酔の薬でうがいをして頂きます。次にベッドに横になり、  麻酔の薬をのどの奥にためていただきます。麻酔の薬をはきだしていただいた後、消化管の動きを抑える注射をします。この注射により、眼がぼやけたり、気分が悪くなったり、ドキドキしたり、口が渇くことがありますが、数時間でだんだんおさまってきます。

(2)検査の方法

      体の左側を下にし、マウスピースをかんでいただき、内視鏡を口より入れます。のどを通る時、違和感がありますが、徐々に軽減します。内視鏡を進めていくとともに空気を入れますので、おなかがはってきます。すべてを観察した後、胃内の空気を抜き、終了します。検査は約10分から30分ですが、場合によりもう少しかかる事もあります。

4 合併症

     粘膜の一部を採取する際わずかに出血しますが、自然に止まります。まれに血が止まりにくい事もありますが、その様な時は内視鏡的に止血処置を行います。極めてまれですが、検査後にふらふらしたり、黒い便がでた時は受診科までご連絡ください。

5 検査後

     約1時間(のどの麻酔が切れるまで)は、絶飲食です。タバコもお控えください。

     医師の判断により、薬を処方する場合があります。指示どおりお飲みください。

   6 その他

     検査にはおなかをゆるめられる服装でお越しください。

検査時の注射などにより、眼がぼやけることがありますので、お車での来院はお避けください。

     検査結果は後日主治医よりご説明いたします。

     治療中の病気のある方は検査に注意が必要となりますので申し出てください。

     なお、疑問点は主治医や内視鏡室のスタッフにお尋ねください。 

消化器内視鏡検査同意書

内視鏡検査はあなたの消化管の中を直接内視鏡にて観察し、細心の注意を払いながら診断を行う方法です。

☆検査中に何か異常が見られたり、また、疑われた場合には必要に応じ次の様な事が行われます。

1)病気の診断を確定するために、粘膜組織の一部を鉗子でつまみとり(生検)、組織の検査を行うことがあります。

  問1  心臓の病気、脳梗塞などで、血液を固まりにくくする薬を服用している場合や、出血しやすい体質の方は生検により通常より高率に出血がおこります。

あなたはそれらの薬を服用していますか。   【はい(薬名           )いいえ】

          また出血しやすい体質ですか。                        【はい       いいえ】

2)病変部位に安全な色素を散布し(色素散布)、病変を明瞭にして診断の助けとすることがあります。

3)出血が見られた場合、または出血する可能性のある場合には内視鏡下に止血操作を行うことがあります。

 

☆内視鏡検査による危険性としては次の様な事が報告されています。

1)カメラや大腸カメラがこすれてできる傷からのわずかな出血

2)粘膜組織の一部を鉗子でつまみとること(生検)による出血

3)前処置の薬剤によるアレルギー(皮疹、血圧低下など)

4)治療中の病気(脳梗塞、心臓疾患など)の悪化。

(ただし、以上の事が起こらない様に細心の注意を払い内視鏡検査は施行されます。)

万一、緊急事態が生じた場合には、当院医師はその対応に責任を持って当たります。

 

なお、検査の前に行うのどの麻酔薬や注射は以下の方には注意が必要なのでお教え下さい。

  問2    緑内障ですか。(眼の眼圧が高くなる病気)           【はい              いいえ】

  問3   心臓の病気ですか。(不整脈など)                 【はい              いいえ】

  問4   前立腺肥大ですか。(男性の病気で尿がでにくくなる。)    【はい   いいえ】

  問5   糖尿病ですか。                               【はい              いいえ】

  問6   のどの麻酔薬(塩酸リドカイン)アレルギーですか。 

例(歯医者での麻酔の注射で気分が悪くなった。)    【はい              いいえ】

本院は、国内外の臨床研修医の教育研究機関に指定されています。

患者さんの御理解と御協力お願い致します。

 

検査同意書

私は   科 主治医              より説明を受け、また内視鏡検査の目的、方法及び合併症などの説明文(別紙)と上記の記載事項を読み、内視鏡検査を受ける事に同意します。

平成   年   月   日

 

患者署名                  代理人署名                          

 

 

                                 大阪市立大学医学部附属病院内視鏡部 

                                         06-6645-2341(8:30〜16:45)

                                                   H13/5/16

→戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
■内視鏡検査の受け方

内視鏡検査には、大きくわけて、@気管支鏡、A上部消化管内視鏡(胃カメラ)、B下部消化管内視鏡(大腸カメラ)があります。基本的には、@に関しては第一内科、ABに関しては、第三内科、第一外科、第二外科、総合診療科の外来を受診していただき、主治医が必要だと判断した場合これらの検査の予約が行われます。尚、特殊な検査(内視鏡下の胆管、膵管検査、カラードップラーが装備された超音波内視鏡、超音波内視鏡下の生検など)は第三内科でしか予約できません。検査予約時に、問診表と承諾書を医師から渡されますので、署名をし検査当日にこれらを持参して頂きます。

 

<上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査の実際>

@     まず、胃の中の泡を消すために白っぽい液体を飲んで頂きます。

A     その後、表面麻酔薬でうがいをして頂きます。

B     @Aが終了すると、検査台に仰向けになりもう一度表面麻酔薬を口に含み喉の奥にためて頂きます。3分後麻酔薬を口から出して頂いたら(施設によっては飲んで頂くところもあります)、前処置完了です。(施行医師によっては、その後、再度表面麻酔を追加することがあります。また、胃の動きを抑え観察しやすくするための注射を行うことがあります。)

C     さあ、ここからが本番です。カメラの挿入です。体ごと左横向きになり少し顎を前へ突き出して頂きます。肩と喉の力を極力抜いて頂くことが、楽にカメラを飲むコツです。カメラが喉を通過します。この時、個人差はありますが大なり小なり、おえっという嘔吐反射が起こります。しかし、この嘔吐反射は一時のことで続くものではありません。カメラが食道の中部を通過する頃にはこの反射はなくなることが多いでしょう。この間、絶対呼吸はできます。大きくゆっくりため息をつくように呼吸すると、早く慣れ楽になります。

D     カメラは食道から胃、そして十二指腸へと進んでいきます。当然の事ながら、カメラが奥へ進んでいきますのでお腹が押し下げられるような感覚があります。また、検査中は空気を送り込んで胃のしわを広げますのでお腹がはった感覚があります(検査終了時には空気を抜きますので安心してください)。検査中は唾を飲み込まず、だらだら外に流して頂きます。唾を飲み込むとむせることがあります。

E     カメラ挿入後約510分かけて胃や十二指腸に病変がないかを観察した後、必要があれば生検(粘膜の一部を鉗子でつまみ取り、その組織を顕微鏡で詳しく調べてもらいます)を施行します。

F     ここまで来たら検査終了まであと少しです。胃にたまった空気を抜いて、食道を観察します(もちろん必要あれば生検を施行します)。

G     食道(可能な限り咽頭も観察します)観察終了後、カメラを抜きます。最後に喉を通過する際、またおえっとなることがありますので、抜ける瞬間は息を止めて頂いた方がよいでしょう。

H     これで検査終了です。検査後は喉の麻酔がとれるまで約1時間は飲食をひかえてください。

 

<下部消化管内視鏡(大腸カメラ)検査の実際>

@     検査当日は、検査予約時に処方された下剤を服用し、何度も排便して腸内に残便がない状態にして頂きます。透明な水様液になれば前処置完了です。

A     検査開始時には、必要があれば腸の動きを抑える注射を施行します。

B     検査台に上がると体ごと左横向きになりお尻を少しつきだして頂きます。肛門には表面麻酔のゼリーを塗り、カメラ挿入時できるだけ痛みが少ないようにします。

C     いよいよカメラ挿入です。カメラは直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸まで進みます。少量の空気を送り込みながら、腸を折りたたむようにカメラを挿入していきます。必要に応じ、体位を変えて頂きます(仰向けや右横向きなど)。ここで、残念なお知らせがあります。はっきり言って、腸(特にS状結腸、横行結腸)が長い方、腸の曲がりの角度が急な方、産婦人科領域を含む腹部の手術後の方、腸に憩室(腸にできた部屋のようなくぼみ)のある方は、検査に痛みを伴うことがあり、また検査時間も他の人に比べると長い可能性があります。しかし、このような方には、鎮痛剤や鎮静剤などを使用させて頂く方針をとっていますので安心してください。尚、これらの要素がない方は、比較的痛みも少なく短時間で終了します。

D     盲腸まで挿入されたカメラは、必要に応じもう少し奥(回腸末端)まで進みます。

E     基本的に大腸カメラは、抜くときに観察をします。というのも、挿入時はできるだけ送り込む空気量を少なくして挿入しているので、小さな病変は見えない状態なのです。従って、盲腸(あるいは回腸末端)からカメラを抜いて行く際は、腸に空気を十分送りひだを広げ観察しながら抜いていきます。ほとんどの患者さんはお腹がはった感覚を覚えます。この際は、遠慮なくガスを出してください。ガスといっても、いわゆるおならではなく、検査時に送り込まれた空気なのでご安心ください。

F     観察あるいはポリープ切除などの処置を終え、肛門までカメラが戻ってきます。最後に、必要に応じ、内側の痔(内痔核といいます)を観察するためカメラを反転させます。可能な範囲で腸の空気を抜いたら、検査はすべて終了です。これらの行程は、通常、検査のみなら約30分、処置が加わるなら30分〜60分(処置するポリープの数により差があります)で終了します。但し、前述した挿入困難な患者さんに関しては、はっきりとした所用時間はお伝えできません。従って、大腸カメラを受ける患者さんは、検査後の予定を入れないことをお薦めします。

G     検査後は、十分ガスを出して下さい。できれば少し病院のトイレなどに残って、お腹の張りがとれる程度にガスを出して頂いた後に帰宅された方がよいでしょう。

H     検査後は、基本的に食事は通常通りとって頂けます。但し、ポリープ切除など処置を行った際は、場合によっては食事に制限がありますので、検査施行医に相談してください。

→戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上部消化管透視造影検査

はじめに

              日本の消化管形態学の進歩は2重造影を中心としたX線造影検査の画像解析と共 に進んできた。しかしながら、内視鏡検査の全国的な普及1)に伴ってX線検査の必要性自体が論じられるようになった2)。今日では、内視鏡検査を主体として検査が行われるようになっており内視鏡検査を消化管検査の第1選択とする施設も多々見受けられる。しかしながら、元来、X線造影検査と内視鏡検査は、相互補完しなければならない要素もあるためそれぞれの検査の特徴を把握し疾患や病態 に応じて取捨選択することが重要である。

現状(検査の概要)

              消化管のX線検査は、病変を発見するためのルーチン検査と病変の詳細な情報(サイズや進達度など)を得るための精密検査がある。ルーチン検査には、集団検診で行われる間接X線検査と一般医療施設で行われる直接X線検査とがある。精密検査は、病変の存在部位があらかじめ内視鏡検査等で指摘されている必要がある。

X線検査法の実際 

 ■前処置

              現在、消化管造影検査の前投薬には、臭化ブチルスコポラミンを含む抗コリン剤が広く用いられている。しかしながら、心疾患、緑内障、前立腺肥大などを有す    る患者には禁忌であり、高齢化社会を向かえこれらの疾患を有する患者も多く見    受けられる。内視鏡検査でも消化管の蠕動により検査が不十分となる場合がある が処置以外では使用しなくてもさほど問題にならない。しかし、内視鏡検査以上に消化管造影検査では蠕動が問題となる。一般的に消化管の検査では、抗コリン剤が使用できない場合、グルカゴン製剤を使用している。グルカゴン製剤は、抗    コリン剤と比較して使用効果に差がない3)とする報告もあるが、グルカゴン製剤は、 抗コリン剤に比べて硬化であり、今後はコストの問題も考慮する必要がある。

 ■食道・胃ルーチンX線検査法の手順

           食道・胃ルーチンX線検査法の手順を以下に示す。

              @食道造影;(1)バリウムを(200300cc)飲ませながら撮影を行う。(2)立位第1斜位で食道上部と下部に分ける。(3)立位第2斜位で食道上部と下部に分ける。A   立位充盈像 B発泡剤(26g)投与 C腹臥位充盈像 D背臥位2重造影第1斜位    (体位変換を行いバリウムを胃粘膜に十分にのせた後に撮影する。) E背臥位2重造影正面像 F背臥位2重造影第2斜位像 G背臥位2重造影(4分割で2枚)(1)前庭部から胃体下部の2重造影 (2)噴門部〜胃体中部の2重造影 H半立位第2   斜位像 I再立位第1斜位像 J圧迫像(4分割で2枚)(1)胃体下部〜胃角部 (2)  前庭部〜幽門部4)

    上述の手順に従い充盈像、2重造影像を基本にして胃の輪郭、壁の柔軟度、欠損、突出を描出する。空気量が少なめのレリーフ像、2重造影では粘膜ひだと胃小区    が読影できるように描出しておくことが必要である。

適応と禁忌

              腸閉塞や潰瘍の穿孔、腹膜刺激症状のある急性腹症などの場合はバリウムによる造影検査は禁忌である。消化管の閉塞や術後の造影には、場合により水溶性ヨード剤を用いる。また、高齢者や痴呆などの理由により体位変換が困難な場合やバリウムを誤嚥する可能性が高い場合は内視鏡検査を優先すべきである。一方、消化管出血の緊急検査時では内視鏡検査を優先した方がよい。

上部消化管透視造影検査の利点と問題点

 ■透視造影検査の利点

              一般的な利点としては(1)粘膜像、充満像、2重造影像、圧迫像などを組み合わせることにより粘膜の表面のみではなく粘膜下層から壁全体にわたり描出が可能で    ある。(2)側面変形の分析で客観的な深達度の推測が可能。(3)圧迫や変形に対して客観的な存在診断が可能である。(4)内視鏡の視野全体に広がる病変では、存在範囲の認識が困難である。(5)内視鏡が通過不能な部位も描出できる。(6)切除標本と  1対1の対応を行う際に有用である。(7)内視鏡検査に比して侵襲が少ない。 などがあげられる。しかしながら、内視鏡検査においても深達度診断は可能であり、また、侵襲に関してもバリウムとは違い検査後も排便に悩まされることもないため最初から内視鏡検査を希望する患者も少なくない。

 ■透視造影検査の問題点

               内視鏡検査と比べて透視造影検査の描出能に関する問題を指摘する報告がある5)この報告によると間接および直接胃透視における敏感度・特異度は、早期癌(敏    感度79.4%、特異度78.7%)、進行癌(敏感度90.1%、特異度82.9%)であるのに   対して内視鏡検査では、敏感度98%、特異度98%と描出能に優れていることが理解できる。さらに、34病変中、胃カメラで指摘できたが透視造影検査で描出困難  なものが5病変(前壁2例、小弯2例、後壁1例)あったとの報告もある6)。近年、高濃度・低粘度造影剤によって胃液の造影障害による描出能低下の問題が改善されるようになったが、病変の局在部位や、大きさによっては造影効果を減退 させる胃液を細径カテーテルや胃ゾンデを用いて排出して行う精密検査の手技が    必要とされる局面も少なくないという報告もある7)。したがって、透視造影検査も 精度を追求しようとすれば、その侵襲は増大する。また、被爆の問題も避けては通れない。

内視鏡検査の利点と当院における現状

              内視鏡検査では、粘膜の性状や色調を直接観察することが可能である。また、観察だけではなく直接、組織を採取して病理検査を行うことが可能である。したがって、検査時に確定診断や場合によっては治療が可能となる。透視造影検査では、確定診断ができないため何か病変が見つかれば内視鏡検査を受ける必要があり、過去にスクリーニングで造影検査を施行後に内視鏡検査を受けた患者の中には、二度手間を避けて最初から内視鏡検査を希望する患者も少なくない。当院でも図 1の様に1996年にはX線造影検査の数を内視鏡検査数が上回った。

偶発症

         X線造影検査の偶発症については、おもにバリウム剤に起因するものが多く、誤嚥による気道閉塞や肺炎8)、バリウム腹膜炎9)、排泄遅延によるイレウス10)、直腸バ リウム肉芽腫11)、大腸穿孔12)等が報告されている。また、高齢者などの場合は、透視台からの落下も注意すべき偶発症である。誤嚥以外では、バリウムを速やかに排泄させることが重要である。排便を促進させる目的においてセノコット顆粒の有用性12)やバリウムでイレウス症状を呈した場合では、ラクツロースによる排便促進が有用13)であるという報告もあるが、バリウム排泄を目的とした下剤の投薬による副作用も報告されており投薬には十分な注意が必要である。バリウムにより穿孔が生じた場合、腹腔内に散布されたバリウムを除去することは困難であり診断や治療が遅れれば致死的な結果を招く場合がある14)ので十分な注意が必要である。

症例

 ■症例1

              58歳、男性。検診で胃カメラを施行し胃体上部小弯にUc病変を指摘され紹介となった。組織生検検査で未分化型の腺癌であった。術前に透視造影検査を施行したが粘膜の不整が指摘されたものの詳細な描出は困難であった(図2、図3)。

       考察:内視鏡検査では、色調の変化として認識すれば病変の同定はさほど困難なものではない。しかしながら、透視造影検査では、アレアを描出する必要があり    撮影条件によっては描出困難な場合もある。

 ■症例2

              58歳、女性。腹痛にて近医受診し胃カメラにて胃体中上部前壁から小弯の広範囲なUC病変が認められ手術目的に紹介となった。術前の透視造影検査にて小弯側の壁不整が指摘されたものの病変を描出することができなかった(図4〜図7)。    

      考察:内視鏡検査では、やはり色調の変化として認識すれば一目瞭然であるが、透視造影検査では、前壁病変の描出に苦慮する場合もあり注意が必要である。

 ■症例3

              52歳、女性。食欲不振にて内視鏡検査を施行され胃体中部に狭窄を(癌性)指摘され紹介となった。術前の透視造影検査では、胃体中部から前庭部にわたる壁の    硬化と狭窄が認められる(図8、図9)。

              考察:内視鏡検査では、狭窄により全体像の描出が困難だったが透視造影検査では全体像の把握が容易であった。

おわりに

              筆者らは、患者から特別な希望がなければ上部消化管内視鏡検査を勧めている。 もちろん、胃の内腔の広がりを評価したり、狭窄の範囲や程度を同定する目的や、もしくは術前検査には透視造影検査も併用しているが、内視鏡は検査と同時に組織生検で最終診断を下せることや診断能の観点から基本的には、内視鏡検査を優先し透視造影検査は補助的に用いている。今後、内視鏡自体のさらなる細径化や従来の内視鏡と比べて侵襲の少ない経鼻内視鏡の改良などにより上部消化管内    視鏡検査の適応が拡大していくものと推測される。

→戻る


 参考文献

(1)金子栄蔵、原田英雄他:消化器内視鏡関連の偶発症に関する第4回全国調査報告−1998年yより2002年までの5年間、Gastroenterological Endoscopy, Vol. 46(1), lan. 2004.

(2)胃癌の診断にX線検査は必要か. 胃と腸. 33(4): 547-661, 1998

(3)中村守秀、佐藤武夫他:消化管造影検査前投薬としてのグルカゴン製剤の有用性、診療と新薬・第40巻 第1号、2003

(4)能正克彦他 :消化器病診療−良きインフォームド・コンセントに向けて. 2123、日本消化器病学会、2004

(5)杉森裕樹、吉田勝美他:職域における癌検診導入の医療経済的評価、Health Sciences Vol.13 No1. 1997

(6)加藤正美、留奥 誠他:早期胃癌発見の動機と胃透視による限界、中勢病院誌、Vol. 10. 21-23.1991.

(7)馬場保昌、吉田論史ほか:胃X線検査のポイント、胃と腸、第38巻、第6号、2003

(8)斉藤英昭、玉熊正悦:レントゲン検査と偶発事故. 救急医学、48991981

(9)Norman, Zheutlin, et al:Clinical studies on effect of barium in the peritoneal cavith following rupture of the colon. Surgery, 32 : 967, 1952.

(10)Prout, B. J. et al. : Colonic Retemsion of barium in the Elderly after Barium Meal Examination and its Treatment with Lactulose. Br. Med. J.4:530, 1972.

(11)山森積雄他:直著バリウム肉芽腫の1例. 臨床外科、 382771983.

(12)日野一郎、余田みどりほか:ドッグ検診胃透視後下剤投与の意義、医学と薬学、22巻、1号:229-2311989

(13)Prout,B.J.et.al : Colonic Retension of barium in the Elderly after Barium Meal Examination and its Treatment wiyh Lactulose. Br.Med.J.,4 : 530, 1972.

(14)操  尚、大西明生、他:胃透視に発生したバリウム塊による下行結腸穿孔の1例、外科診療、p11851188


図1

図2(症例1)

図3(症例1)

図4(症例2)

図5(症例2)

図6(症例2)

図7(症例2)

図8(症例3)

図9(症例3)

→戻る