身近な遺伝の話
~メダカの体色と遺伝~
今年に入ってからコロナの影響で外出できない日々が続き、おうちでも楽しめるような趣味を始められた方も多いかと思います。私の家でもステイホーム期間を楽しむために、アクアリウムを始めました。
ホームセンターの熱帯魚コーナーへいくと、昨今の「メダカブーム」もあってなのか、多種多様なメダカが販売されています。淡い黄色の「ヒメダカ」、黒色の「クロメダカ」、白色の「シロメダカ」、少し青みがかった「アオメダカ」などがありますが、これらのメダカの色にはそれぞれ遺伝子型が決まっており、また子メダカへの色の伝わり方については、メンデルの法則を用いて説明することができます。
メダカの色を決定づける遺伝子には、“黒色素の遺伝子”と“黄色素の遺伝子”の2種類があります。仮に、黒色素遺伝子の優性形質を「B」、黄色素遺伝子の優性形質を「Y」とします。
例えば、小学校の理科の授業でも登場する「ヒメダカ」は、黄色色素の遺伝子は持っていますが、黒色色素の遺伝子は持っていません。つまり、ヒメダカは【bbYYもしくはbbYy】の遺伝子型をもっていることがわかります。アオメダカは、黄色色素の遺伝子は持っていませんが、黒色色素の遺伝子は持っています。このことから、アオメダカは【BByyもしくはBbyy】の遺伝子型をもつと推測することができます。
クロメダカは、黒色色素の遺伝子と黄色色素の遺伝子の両方を持っています。つまり、それぞれの色素遺伝子が優性形質であることから【BBYY・BbYY・BBYy・BbYy】のいずれかとなり、一方でシロメダカはどちらの色素遺伝子も劣性形質をもっているので【bbyy】となります。
さて、ここまでの話で「優性」「劣性」と出てきましたが、このメダカの話からも想像できるように、優性だから能力が勝っているとか、劣性だから能力が劣っているとか、そういうわけではありません。
「b」の形質よりも「B」の形質のほうが見た目への影響が出てくることから、かつては、表現型に強く出てくる形質を優性、そうでない形質を劣性と呼んでいました。
しかし、劣性という言葉がネガティブイメージを連想させることから、近年では、このようなイメージがされにくいように「顕性(優性)」「潜性(劣性)」とカッコをつけて両方の表記をすることが推奨されているそうです。
今回はメダカの色について焦点をあてましたが、ほかにもカラダにラメが入るような形質やダルマのように丸くなるような形質など、メダカの体質にもいろいろあるといわれています。今年の冬は寒くなりそうなので、飼育中のメダカが冬を乗り切れるか不安ですが、来年こそはこのような変わりメダカの飼育にも挑戦してみたいと思います。
認定遺伝カウンセラー 浄弘裕紀子(じょうぐゆきこ)
がんゲノムパネル検査って何?
2019年6月からがん遺伝子パネル検査が保険適用されました。これは、がんのもつ遺伝子の特徴を調べて、その特徴に合わせた治療薬の選択を行うための検査です。個人に合わせて、より効果があり副作用が少ない治療薬が選べると聞くと、夢のような検査だと思われるかもしれません。
検査には必ず限界がありますが、このがん遺伝子パネル検査にも限界があります。まず、検査をしたとしても治療薬選択の参考になるような特徴が見つからないことの方が多いことです。また、見つかったとしても、治療薬が保険適用されていなかったり、治験(新しい治療薬の研究)を実施している施設が遠方だったりすると、経済的・体力的に負担がかかってしまう可能性もあります。こういった状況から、検査を受けても治療につながる確率は10%程度だと言われています。
また、がんになりやすい体質であることが分かる場合もあります。その体質は血縁関係のある家族で共有している場合もあるため、ご家族も同様の体質を持っているか後から調べることも可能です。体質を知ることを不安に思われることもありますが、その一方で、事前に知っていれば定期検査を受けて早期発見や予防に努めることができるというメリットもあります。体質について知らせてもらうかどうかは検査を受ける際に選択できます。
がん遺伝子パネル検査の意義や限界に納得した上で受けていただくことが大切です。もしご不安な点があれば、遺伝カウンセリングで検査についてご説明し、患者さん・ご家族にとって納得できる選択ができるようお手伝いさせていただきます。
(2020年3月3日 認定遺伝カウンセラー 馬場)