教授ご挨拶
2014年10月に大阪市立大学大学院医学研究科、臨床感染制御学の教授を拝命しました。
2013年4月に長崎大学より本学へ赴任しましたが、前任地で学んだ呼吸器感染症や感染制御の知識や経験を活かして、本学に貢献したく存じます。
「感染制御の文化を創る」
私は附属病院では感染制御部に属しています。
感染制御部の仕事は、患者さんが「安全」に「安心」して過ごしていただくために、環境を整えることです。また、医療スタッフも「安全」と「安心」なくしては、十分な医療行為は行えません。
そのためには院内の環境整備、感染伝播を防ぐ手指消毒、適切な抗菌薬選択等を実践することが重要ですが、まだまだ十分とはいえません。
私は、院内に「感染制御の文化を創る」ことを目標として掲げています。
すなわち、ひとりひとりが感染制御の重要性を理解し、基本を自然に身につけて実行できること、「感染制御が文化として院内に育つ」ことを目指しています。
一方で、「文化」は一朝一夕には完成しないでしょう。
その文化の創造には「臨床」と「教育」、「研究」の足元をしっかり固めていくことが重要と考えます。
「臨床」
適切な感染症の診療は私達の使命です。院内では感染症コンサルトを中心に診療をしています。
それ以外にも毎朝、血液培養の結果や耐性菌の検出状況、抗菌薬の使用状況等をチェックして、時には当方から主治医のもとへ連絡をさせていただいています。
一方で、感染症の問題は院内だけの問題ではなく、地域を含めた対策が必要です。
本院は大阪市唯一の大学病院であり、地域への情報発信基地として人材育成や診療のレベルアップを目指します。
感染症は医療技術の進歩やグローバル化によって多様化しています。
時代のニーズに合わせて変化に迅速に適応できる感染症診療を目指します。
「教育」
感染制御の礎は、感染症の基礎知識です。
「鉄は熱いうちに打て」と言われますが、卒前教育は最も重要です。
その一環として、2014年7月より医学部5年生を対象に週1回、ILOHA(Infection Lecture at Osaka City University Hospital and Affiliates)という感染症の勉強会を細菌学教室の教授 金子幸弘先生と一緒に始めました。
通常の学生講義では十分に伝えられない最新の医学情報も発信していきます。卒後教育として研修医対象には「研修医のための感染症予備校」を定期開催中です。
将来の感染症専門医を育てることが目標です。もちろん新人教育だけを重視しているわけではありません。
ベテランスタッフに対しても実践に役立つ情報発信を心がけます。
「研究」
細菌学教室の金子幸弘先生と共に臨床のニーズを基礎医学の力を借りて明らかにする研究を進めています。
数年前にある学会で、長崎大学出身で2008年に「緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見と開発」の功績でノーベル化学賞を受賞された下村 脩先生の講演を拝聴しました。
何度も挫けそうになりながらも研究を続けられた下村先生のお話に感銘を受けましたが、その時のご講演のタイトルであった「探求する心」を忘れずに精進します。
当教室名の英語表記は、「Infection Control Science」です。
当教室のロゴマークには、その頭文字「I」、「C」、「S」を使用しました(図)。
「世界へ羽ばたくICS」を目指して、感染症診療に役立つ研究を展開していきます。
最後に
私は医局の仲間達ひとりひとりが、幸せになれるように手伝いをしたく考えます。
良い仕事は、心地よい人間関係と働きやすい職場環境から生まれてくるものと信じます。
スタッフのキヤリアアップだけではなく、家庭的に、そして人間性豊かに成長していくことを応援したく存じます。
感染症専門医を目指して、私達と一緒にScienceやりましょう。