御挨拶

 本学はわが国で数少ない公立の総合大学であり、1880年(明治13年)の大阪商業講習所の設立から135年を迎えます。医学部は1944年(昭和19年)4月の大阪市立医学専門学校設立から創立70周年を迎え、現在大阪市にある唯一の大学医学部です。耳鼻咽喉科学教室は設立当初から開設され、これまで、初代後藤松一教授(昭和19年〜)、第2代長谷川高敏教授(昭和23年〜)、第3代山本 馨教授(昭和32年〜)、第4代中井義明教授(昭和52年〜)、第5代山根英雄教授(平成11年〜)と受け継がれ、この度、平成27年4月1日付で、私、井口広義が大阪市立大学医学部医学科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学、大学院医学研究科感覚・運動機能医学講座耳鼻咽喉病態学の第6代主任教授ならびに大阪市立大学医学部附属病院耳鼻いんこう科診療部長に就任いたしました。伝統ある当教室を主宰する機会をいただきましたことは非常に光栄であるとともに、責任は重大であり、身の引き締まる思いがいたします。

 耳鼻咽喉科・頭頸部部外科学の守備範囲は非常に広く、感覚器および自己表現機能に関する器官を対象とし、その障害は直接人間生活の質の低下につながるという重要な部位を担当していることから、非常にやりがいのある科であるといえます。また、手術が好きな医師は手術を極めることも可能ですし、手術はちょっと苦手という医師には神経耳科などの内科的アプローチが中心となる疾患も扱うことができるという、大きく2つの選択肢が可能です。さらに、一般外科に比べ短時間で一人前になれる、というメリットもあります。実は私の耳鼻咽喉科選択動機の1つにはこれがありました。全国的に耳鼻咽喉科に入局する女性医師が増えていることからみても、産休・育休問題も含め女性も選択しやすい科、という点も大きいと思います。

 大学医学部および大学院医学研究科、医学部附属病院の3つの使命として、常に教育、研究、診療が挙げられます。現在、当病院はがん拠点病院であることから、頭頸部がんが研究、診療の主体となっておりますが、2つ目の柱として神経耳科(聴覚、平衡覚)を掲げています。また、当大学は公立大学であることから、4つ目の使命として私は病院運営も重要視しており、「市民に託されている」という気持ちを常に抱き続けたいと考えています。したがいまして、われわれの仕事がまず市民のための医学、市民への高度な医療の提供に寄与することは当然として、さらには臨床研究の成果が直接臨床に還元できるものとなり、市民の枠を越え、全国のまた世界中の患者様に役立つものであることを目指して、医局員一丸となって教育、研究、診療に携わっていきたいと考えています。

 本学医学部の基本理念は「智」(高度な知識とすぐれた技術の習得)、「仁」(深く温かい心を持つ)、「勇」(医療を実践するための決断の勇気)」の3つで、温かい心を持つ高度な医療を実践する医療人を育成するとともに、最先端の創造的な医学研究を達成できる指導者を育てることを目指しています。当教室もこの基本理念に則って運営しています。

 現状、耳鼻咽喉科医(特に勤務医)は需要に比して供給が充足しているとは言えません。さまざまな病院から医師の派遣依頼があるものの、常勤医を派遣できない状態で、いわゆる引く手数多状態です。われわれは次世代の真の医療人である耳鼻咽喉科頭頸部外科専門医の育成を目指しています。医学部学生や研修医にとって、将来の専攻科を決める動機は、多くの場合、「早く1人前になりたい」、「開業しやすい科がよい」、「比較的まだニーズの高い科がよい」、「あの手術をみてすごいと思った」、「学生時代に医局の先生に世話になった」、「あの先生と最寄り駅が同じ」、など些細なことが多いのではないでしょうか。このように、耳鼻咽喉科・頭頸部外科に少しでも興味を持った医学生・研修医の諸君、いつでもわれわれの医局に遊びに来てみてください。将来の耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の発展のため一緒に頑張りましょう。

大阪市立大学医学部医学科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
大阪市立大学大学院医学研究科感覚・運動機能医学講座耳鼻咽喉病態学
大阪市立大学医学部附属病院耳鼻いんこう科
主任教授・診療部長 井口広義