こちら


最新文献紹介(抄読会)
戻る

2010年以前はこちら

2011年はこちら

2013年はこちら

2014年はこちら

2015年はこちら

2016年はこちら

2017年はこちら

2018年はこちら

2019年はこちら

2020年はこちら

2012年

Clinical significance of hemophagocytosis in BM clot sections during the peri-engraftment period following allogeneic hematopoietic SCT

同種造血幹細胞移植後の生着前後における骨髄クロット中の血球貪食像の臨床的意義


マクロファージの活性化が同種造血幹細胞移植(allo)の予後に与える影響に関して、 血液疾患に対し初回のalloを受けた70人の成人患者で調査した。day14±7における骨 髄クロット標本中の血球貪食像の数をカウントし、その後の転帰に及ぼす影響を分析 した。47/70人では血球貪食像の増加が見られなかったのに対し(=nonHP群)、23/70人 では増加を認めた(=HP群)。HP群は、急性あるいは慢性GVHDの発生率の増加とは関連 していなかったが、nonHP群と比較して血球回復が遅かった。2年OSはHP群で30%、non HP群で65%と有意にHP群が悪く(P<0.01)、また2年NRMもHP群で48%、nonHP群で27%と有 意にHP群が悪かった(P<0.01)。多変量解析においてもHP群ではOSがより低い傾向にあ り(HR=2.3, 95%CI, 1.0-5.4, P=0.048)、またNRMがより高い傾向にあった(HR=4.0, 95%CI, 1.6-9.9, P<0.01)。加えて、HP群では生着不全や(P<0.01)、SOS、TAM等の 移植関連血管内皮障害による死亡(P=0.01)が多い結果となった。このように、マクロ ファージの活性化は、allo後の転機に負の影響を持つ合併症であると言える


平成24年12月17日
坂部真奈美

 

HLA-Mismatched Stem-Cell Microtransplantation As Postremission Therapy for Acute Myeloid Leukemia: Long-Term Follow-Up

寛解期急性骨髄性白血病に対するHLA不適合マイクロ移植の長期フォローアップデータ


*Purpose**:*現在の最新の治療においても、約半数の第一寛解期AML(AML-CR1) 患者は、HLA一 致ドナーがいないために再発している。HLA不一致のstem-cell microtransplantationが、 このような患者の新たな寛解後療法として、予後を 改善するのかは未だ明らかとなっていない。

*Patients and Methods**:*4施設において101人 のAML-CR1患者(9-65才)が、大 量AraC前 処置後GVHD予防を行わずに、G-CSF誘 導のHLA不一致末梢血幹細胞を輸 注された。ドナーキメリズム、マイクロキメリズム、WT1+CD8+ T細 胞が解析さ れた。

*Results**:*6年leukemia-free survival(LFS)およびoverall survival(OS)は 低リスク群で84.4%、89.5%であり、中間リスク群で59.2%、65.2%だった(2群間に 統計学的有意差なし)。 毎回1.1×10^8 /kg以 上のCD3+ T細胞を輸注された患者 の6年LFS/OSは76.4%/82.1%で あり、1.1×10^8 /kg未 満のCD3+ T細胞輸注患者の 49.5%/55.3%に 比べ、有意に高かった(/p/=0.091、/p/=0.041)。いずれの患者に おいてもGVHDは 認められなかった。ドナーのミクロキメリズムは女性患者の23 人中20人で、Y染 色体検査により確認された。HLA-A02:01を持つ39人 の患者の うち33人において、WT1+CD8+ T細 胞が有意に上昇していた。

*Conclusion**:*寛解後療法としてのmicrotransplantationはAML-CR1患者の予 後を改善し、GVHDの 発症を避けうる。


平成24年12月10日
中嶋康博

 

Does iron overload really matter in stem cell transplantation ?

鉄過剰は造血幹細胞移植において本当に問題なのか?


鉄過剰が骨髄破壊的移植において予後不良因子であることを示唆するエビデンスが増 えてきているが、 殆どの報告は鉄過剰のサロゲートマーカー、特にフェリチンを使っており、そして後 方視的な研究である。 このグループは急性白血病/MDSの患者で骨髄破壊的移植を受ける例に前向き観察研究 を行った。 対象は45例、1年までのフォローアップを行った。 移植前、6カ月後、1年まで連続的に、鉄パラメータ(フェリチンや肝臓・心臓のMRI によるiron content測定)測定を行った。 移植前に比べて12カ月後で、特にフェリチン、心臓/肝臓のiron contentの増加は見 られなかった。 移植前フェリチン高値は既報告通り予後予測因子であったが、 (iron content測定で評価した)移植前の肝臓の鉄過剰は、死亡率、再発率、GVHDと 関連が見られなかった。 これは移植前の高フェリチン血症が鉄過剰とは違う要素で予後不良の結果をもたらし ている可能性が示唆される。


平成24年12月3日
中前美佳

 

Age-adjusted recipient pretransplantation telomere length and treatment-related mortality after hematopoietic stem cell transplantation

移植前の患者テロメア長が治療関連死に関連する


テロメアの減少は細胞の老化とアポトーシスを誘導する。我々は年齢で調整したテロ メア長が、TRMの予測因子になるかもしれないと仮説を立てた。2000年から2005年の 間に178例(血液悪性疾患 N=153)の患者が、HLA一致の同胞からの骨髄破壊的移植を 行った。血液のリンパ球のテロメア長は定量PCRで移植前に測定した。年齢で調整し た移植前のテロメア長と予後の関係を解析した。テロメア長と生着、GVHD、再発の間 に有意な関係は見られなかった。5年の全生存率は62%であった。51か月のフォロー アップの中央期間のうち、43例がTRMで亡くなった。TRMの割合はテロメア長と逆相関 した。テロメア長が最も短い群は、もっとも長い群に比べて有意にTRMが多かった (P=0.017)。多変量解析では患者の年齢、年齢で調整したテロメア長が独立したTRM の予後因子であった。テロメア長は独立した同種造血幹細胞移植後のバイオマーカー の可能性がある。


平成24年11月26日
中前博久

 

Outcome of relapsed adult lymphoblastic leukemia depends on response to salvage chemotherapy, prognostic factors, and performance of stem cell transplantation

サルベージ治療に対する反応、予後因子、幹細胞移植による再発成人リンパ芽球性白血病の予後


初回治療の改善にも関わらず、再発成人ALLの治療についてこれまで報告された結果では、いまだ予後は不良である。German Multicenter Study Group for Adult ALLの今回の後方視的解析の目的は、予後因子および予後改善のための選択を見極めることであった。初回再発をきたした547人の患者 (診断から18ヶ月より短い人と長い人は406人 vs 141人)、年齢中央値33歳(range, 15-55)、が評価された。Salvage治療の目的は、続く造血幹細胞移植のためにCRに到達することであった。Ph染色体かBCR-ABLが陰性のALLでCNS浸潤のない患者のうち化学療法後の再発に対する初回salvage治療(n=224)のCR率は42%であり、初回salvage失敗後(n=82)の2nd salvage 治療のCR率は33%であった。SCT後の再発患者(n=48)では、初回salvage 治療のCR率は23%であった。再発後の生存期間中央値は8.4ヶ月、3年生存率は24%。生存に関する予後因子は再発部位( 時期の誤り?)、salvage治療に対する反応性、SCTの施行、年齢であった。OSは過去の報告に比べ明らかに良かった。これは、本研究では高率(75%)にSCTを施行していたからであろう。より早期の再発が発見でき、その早期再発に対する試験的治療対策がおこなえれば、さらなる改善が達成できるだろう。本研究はNCT00199056 とNCT00198991としてwww.clinicaltrials.govに登録されている。


平成24年11月19日
廣瀬朝生

 

Impact of high risk cytogenetics and achievement of molecular remission on long-term freedom from disease after autologous-allogeneic tandem transplantation in patients with multiple myeloma .

多発性骨髄腫患者に対するtandem auto allo移植で分子寛解が得られた場合は高リスク染色体異常に関係なく、長期生存が可能


前向き研究でtandem auto allo移植を行った73人の多発性骨髄腫の患者においてmCRとhigh risk 染色体異常に関して調べた。寛解導入療法を行った後に,MEL(200mg/m2)の前処置から自家移植 を受け,その3か月後にFLU(180mg/m2)+MEL(140mg/m2)による前処置後に同種移植をうけた。16 人の患者がhigh riskと定義されたdel(17p13),t(4;14)のFISHが陽性であった。全体として,66% がCR/nCRを達成し,41%がmCRを達成できた。一方でsustained CR(少なくとも4回連続してのmCR) を得ることができたのは15人(21%)のみであり,high riskの染色体異常の有無は関与しなかった (0.7)。フォローアップの中央値は6年で,5年PFSは29%で17p13やt(4;14)の染色体異常の有無 にかかわらなかった(24% vs 30%,P=0.7)。移植後の病期による5年間のPFSは,PR,CR,mCR,sus tained mCRで17%,41%,57%,85%であった。これらの結果からtandem auto alloによる移植はde l(17p13)やt(4;14)による予後不良因子の効果を消失させることができ,mCRの達成が長期生存を 可能とする。


平成24年11月12日
南野 智

 

Concurrent Expression of MYC and BCL2 in Diffuse Large B-Cell Lymphoma Treated With Rituximab Plus Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine, and Prednisone.

R-CHOPで治療を受けたDLBCLにおけるMYCとBCL2の共発現


<目的> DLBCLはR-CHOPで60%が治癒可能である。MYC遺伝子の転座が、BCL2遺伝子転座の有無によらずDLBCLの予後不良と関係するとされてきた。診断時に、BCL2蛋白の発現の有無と合わせてMYC蛋白の発現でリスク層別化をはかれるか検証した。
<患者と方法> 免疫組織染色で評価したMYCとBCL2蛋白の発現とR-CHOPで治療されたDLBCL患者の生存コホートの関係を調査した。さらにMYC蛋白発現とMYCmRNAの高発現またはMYC遺伝子転座の有無が関係しているか検証した。2つの独立したコホートを用いて評価した。Training cohort(n=167)ではMYC蛋白は29%、BCL2蛋白は44%の患者で高発現がみられた。両者の高発現は21%でみられた。MYC蛋白はMYCmRNAの発現やMYC転座と関係していた(P<0.001)が、MYC転座は11%と検出率は低かった。MYC蛋白発現はBCL2と共発現しているとOS、PFSとも劣る結果となった。(p<0.001)MYCとBCL2共発現は、140人のDLBCLでの独立したvalidation cohortでも明らかに予後不良と関係し(p<0.05)重要なことに、他の高リスク因子であるIPI高値、activated B-cell molecular型、MYCBCL2の転座の両者の存在との多変量解析でも独立した予後不良因子であった。
<結論> 免疫染色でのMYCとBCL2蛋白発現は、DLBCL患者のリスク層別化において、安定し、迅速で安価なアプローチである。


平成24年11月5日
稲葉晃子

 

Final results of a multicenter trial addressing role of CSF flow cytometric analysis in NHL patients at high risk for CNS dissemination.

CNS浸潤が高リスクのNHLにおける髄液フローサイトメトリーの役割:多施設研究の最終結果

新規に発症した高悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)174人を対象に、髄液中の腫 瘍細胞の有無をフローサイトメトリー(FCM)検査と細胞診(CC)で調べ、両検査の診断 的価値や予後予測価値について前向き比較研究を行った。FCMで悪性所見を認めたの (FCM+患者)は174人中18人(10%)で、CCで悪性所見を認めたの(CC+患者)は7人(4%)のみ であった。つまり11人(6%)はFCM+/CC-患者であった。フォローアップ中央値は46ヶ月 で、64人にリンパ節再発を認め、10人にCNS再発を認めた(2人はリンパ節とCNSの両方 に再発)。FCM-患者はFCM+患者より2年PFS(62% vs 39%)と2年OS(72% vs 50%)は有意に 良好で、2年CNS再発率(3% vs 17%)は有意に低かった。またFCM+/CC-患者はFCM-/CC- 患者よりもCNS再発率は有意に高かった(HR 8.16)。 結語)高悪性度NHLにおいて髄液FCM+患者は有意にCNS再発のリスクが高く、予後不良 であった。髄液FCM+患者のCNS再発を防ぐためには、CNSへの移行性が良好な抗癌剤に よる化学療法と髄注を組み合わせることが望ましいと考えられる。


平成24年10月29日
萩原潔通

Improved survival with inhibitory killer immunoglobulin receptor (KIR) gene mismatches and KIR haplotype B donors after nonmyeloablative, HLA-haploidentical bone marrow transplantation.

抑制型KIR遺伝子不一致またはKIRハプロタイプBドナーからの移植による骨髄非破壊的前処置を用いたHLA半合致移植後の生存率改善

NK細胞の同種反応性は、同種造血幹細胞移植(HSCT)のGVL (graft-versus-leukemia)効果に寄与する可能性があり、ドナーNK細胞上のKIRs (killer-cell immunoglobulin-like receptors)とそれらのリガンドであるレシピ エントAPCs上(antigen-presenting cells)のHLA(human leukocyte antigen) class I分子の相互作用の影響を受ける。NK細胞の同種反応性を予測する異なるモデ ルがあり、それらはレシピエントとドナーのKIRとHLA遺伝子座(これらは異なる常染色体上に存在し、それぞれハプロタイプとして独立して継承される)のタイピング情報を組み入れているかどうかの点で異なる。個人はAとBの2つのKIRハプロタイプの遺伝的形質または個人のKIR遺伝子発現において異なるかもしれない。本研究で、我々は、移植後に高用量CY(cyclophosphamide)を用いる骨髄非破壊的(NMA; nonmyeloablative)、HLA半合致HSCTを受けた86名の進行期血液悪性腫瘍患者におい て、ドナーとレシピエントの双方のKIRとHLA遺伝子型の移植後アウトカムへの影響を調べた。KIR遺伝子が一致したドナーからBM(bone marrow)を受けたレシピエントと比較して、抑制型KIR(iKIR; inhibitory KIR)遺伝子が不一致のBMを受けたレシピエントはoverall survival (OS)(hazard ratio [HR]=0.37; confidence interval [CI]: 0.21-0.63; P=0.0003)、event-free survival (EFS)(HR=0.51; CI: 0.31-0. 84; P=0.01)、再発率(cause-specific HR, SDHR=0.53; CI: 0.31-0.93; P=0.025) で良好であった。KIR”A”ハプロタイプ(一つだけ活性型KIRをコードしている)が ホモの患者は、ドナーが少なくとも1つのKIR Bハプロタイプ(いくつかの活性型 KIRsをコードしている)を発現している場合に、OS (HR=0.30; CI: 0.13-10.69; P=0.004), EFS (HR=0.47; CI: 0.22-1.00; P=0.05), nonrelapse mortality (NRM; cause-specific HR=0.13; CI: 0.017-0.968; P=0.046) の改善を認めた。レシピエン トのHLAタイピング情報を組み入れたモデルは、ドナーHLAタイピングの有無に関わらず、本研究の患者コホートにおいてはアウトカムの予測はできなかった。よって、 NMA前処置とT細胞非除去を用いた、ドナー・レシピエント間のiKIR遺伝子不一致の、 またはKIR BxドナーからのBMをKIR AAレシピエントに移植するHLA半合致HSCTは再発とNRMの低下、OSとEFSの改善と関連していた。これらの結果は抑制型KIR遺伝子またはハプロタイプ不一致に基づくドナー選択が必要である可能性を示唆している。


平成24年10月22日
康 秀男

 

Bortezomib-Based Graft-Versus-Host Disease Prophylaxis in HLA-Mismatched Unrelated Donor Transplantation.

HLA不一致非血縁ドナー移植におけるボルテゾミブによるGVHD予防


Purpose:HLA不一致非血縁ドナー(MMUD)からのHSCTはGVHD増加および生存率の低下に関連して いる。RICにおいて、ATG等のT細胞除去は十分には移植予後を改善しえない。プロテオソーム阻 害剤であるBortezomibは免疫改変作用があり、T細胞非除去HLA不一致移植におけるGVHDのコント ロールに有用である可能性がある。 Pts & Methods:我々は、MMUD RIC HSCTを受ける血液悪性疾患患者において、PBSCT後、標準的 なTac+MTXに加え、day1・4・7にbortezomibを投与するGVHD予防レジメンのP I/II研究を行った。 45人の患者(HLA-A・B・C・DRあるいはDQにおいて、40人(89%)が1座不一致、5人(11%)が2 座不一致)の結果を報告する(観察期間中央値:36.5m(range:17.4-59.6m))。 Results:day180までの2-4度のaGVHDの累積発症率は22%(95%CI:11-35%)。1年までのcGVHDの 累積発症率は29%(95%CI:16-43%)。2yr NRM:11%(95%CI:4-22%)、2yr relapse rate:38% (95%CI:24-52%)。2yr PFS:51%(95%CI:36-64%)、2yr OS:64%(95%CI:49-76%)。自施設 での同時期のHLA一致RICとの比較では、NRM、aGVHD、cGVHD、生存は同等であった。CD8+T細胞や NK細胞の再構築といった免疫回復はbortezomib使用群の方が早かった。 Conclusion:bortezomibをベースとしたGVHD予防レジメンはMMUD RIC HSCTの生存の低下を改善 し、免疫再構築を早めうる。前向き無作為化比較試験で評価をするに値すると思われる。


平成24年10月15日
中根孝彦

Outcome of high-risk acute myeloid leukemia after allogeneic hematopoietic cell transplantation: negative impact of abnl(17p) and -5/5q-

abnl(17p)と-5/5q-の異常があるAML患者は、同種移植後成績は極めて悪い


European LeukemiaNet (ELN) は不均一な染色体異常をAdverse-risk群と定義している。今回の研究目標はAML患者のHSCT後、明確なハイリスク染色体異常と移植後成績との関連を調べることである。2005年1月から2008年12月の間に、HLA一致の初回alloHSCTを受けたハイリスクAML 患者の成績をretrospective cohort analysisを用いて236人の患者を解析した。年齢中央値は55歳。 複雑染色体異常complex karyotype, (CK), -5/5q-, abnl(17p)は重複するので、abnl(17p)や-5/5q-の有無で分類する方法を発展させた。abnl(17p)患者の2年EFSは11%(95% CI, 0-25%), abnl(17p)がなく-5/5q-がある患者の2年EFSは29%(95% CI, 14-44%)、この2つの染色体異常はないAML患者の2年EFSは49%(95% CI,39-59%)である。 結論として、adverse-riskである-5/5q-とabnl(17p)による分類は、AML患者の移植後成績を効率的に判定する予後因子となりうる。


平成24年10月1日
吉村卓朗

Treatment of Older Patients with Mantle-Cell Lymphoma

高齢者マントル細胞リンパ腫の治療

[背景] 高齢者MCLの長期予後は不良である。免疫化学療法の効果としてCR率は低く、さらに 多くの例が再発する。我々はフルダラビンを含む寛解導入レジメンがCR率をどれだけ 改善させ、リツキシマブ維持療法がどれだけ効果を維持させるかを検討した。

[方法] 60歳以上の病期U〜W期の初発MCL例でASCTの非適応例を6サイクルの R-FC(Rituximab、Fludarabine、Cyclophosphamidを28日おきに投与)群とR-CHOP群(21 日おき)に割り付けた。寛解導入療法に奏効例をRituximab とIFN-αのいずれかによ る維持療法群に割り付け、それぞれの維持療法は増悪するまで続けた。

[結果] 560 例が登録し,そのうち532 例を効果の intention-to-treat 解析の対象とし, 485 例を効果の主要解析の対象とした。年齢中央値は 70 歳であった。CR率は R-FC 群 と R-CHOP群 とで同等であったが(それぞれ 40% vs. 34%,P=0.10),増悪(PD) は R-FC群 のほうが高かった(14% vs. R-CHOP 5%)。全生存期間は R-FC群 のほう が R-CHOP群 よりも有意に短く(4 年OS 47% vs. 62%,P=0.005),R-FC 群のほう が最初の寛解導入治療中に死亡した患者が多かった(10% vs. 4%)。血液毒性は R-FC 群のほうが R-CHOP 群よりも高頻度に発現したが,grade 3 -4 の感染症の発生 率は同程度であった(それぞれ 17%と 14%)。維持療法に無作為に割り付けられた 316 例のうち,主要解析の対象となった 274 例では,Rituximabにより増悪または死 亡のリスクが 45%減少した(4 年後も寛解にあった患者の割合:58% 対 IFN-α29%, 増悪または死亡のハザード比 0.55,95%信頼区間 0.36〜0.87,P=0.01)。R-CHOP による効果が認められた患者では,Rituximabによる維持療法で全生存期間が有意に 延長した(4 年生存率:87% 対 IFN-α63%,P=0.005)。

[結語] R-CHOP による寛解導入とその後のRituximabによる維持療法は,高齢MCL患者に有効 である。


平成24年9月24日
寺田芳樹

 

Up-Front Autologous Stem-Cell Transplantation in Peripheral T-Cell Lymphoma: NLG-T-01

末梢性T細胞リンパ腫におけるUp-Frontの自家造血幹細胞移植:NLG-T-01試験

Purpose 全身性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCLs)は既存の治療に対する反応はよろしくない。 PTCLにおいて、up-frontの大量化学療法(HDT)および自家造血幹細胞移植(ASCT)を地固め療法と して行う、治療強度を上げたアプローチの有効性を評価するため、Nordic Lymphoma Group(NLG) は、未治療全身性PTCL患者における大規模な前向き第2相試験を行った。これは、5年の中央追跡 期間のNLG-T-01試験の最終報告である。 Patients and Methods 18-67歳(median57歳)の未治療PTCL患者。ALK陽性の未分化大細胞リンパ腫は除外した。寛解導 入レジメンは、6サイクルのbiweekly CHOEP(cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, et oposide, prednisone)を投与した。(60歳以上の患者ではetoposideは省いた。)もし完全寛解 ないし部分寛解が得られれば、患者は地固め療法としてHDT/ASCTを行った。 Result 166人の患者が登録。160人の患者が病理組織学的にPTCLが確認された。大多数が進行期であり、 B症状があり、LDHが上昇していた。全部で115人の患者がHDT/ASCTを行い、移植後3ヶ月の時点で 90%が完全寛解となった。初期の寛解導入不良例が26%に認められた。治療関連死亡は4%であっ た。中央追跡期間60.5ヶ月で、83人の患者が生存していた。地固め治療を受けた患者の5年全生 存率は51%(95%信頼区間:43-59%)、無病生存率は44%(95%CI:36-52%)であった。最も良い 結果は、ALK陰性ALCL患者で得られた。 Conclusion 治療強度を上げた寛解導入療法後に引き続いてHDT/ASCTを行う方法は、未治療のPTCL患者におい て、優れた忍容性があり、長期のPFSを導いた。これは、特に年齢の中央値が高値であったこと やハイリスクな患者群であったことを踏まえると有望な結果である。それ故、治療強度を上げた 寛解導入療法後にHDT/ASCTを行うことは、移植の適応のあるPTCL患者において理にかなったup-f rontの戦略である。


平成24年9月10日
康 史朗

 

Blockade of Lymphocyte Chemotaxis in Visceral Graft-versus-Host Disease

内臓GVHDにおけるリンパ球走化性の阻害

【Background】 移植片対宿主病(GVHD)は,同種造血幹細胞移植(HSCT)の成功を阻む重大な障害と なっている。ケモカイン受容体 CCR5 が同種反応性に関与していると考えられる。わ れわれは,CCR5 の遮断がヒトにおいて安全であるのかどうか,また GVHD を抑制す るのかどうかを検討した。

【Methods】 CCR5 拮抗薬マラビロクのリンパ球の機能と走化性に対する in vitro 効果を検討し た。続いて,マラビロクと標準的な GVHD 予防法を併用して行う骨髄非破壊的同種 HSCT の単群第 1/2 相試験に,高リスク患者 38 例を登録した。

【Results】 マラビロクは,T 細胞の機能を障害したり造血細胞のコロニー形成を阻害したりする ことなく,in vitro で CCR5 の細胞内移行とリンパ球の走化性を阻害した。評価し えた 35 例では,グレード II〜IV の急性 GVHD の累積発生率(±SE)は低く,100 日目に 14.7±6.2%,180 日目に 23.6±7.4%であった。急性肝 GVHD ・消化管 GVHD は 100 日目まで認められず,180 日目まで頻度は低く,結果,180 日目のグレード III または IV の GVHD の累積発生率は低かった(5.9±4.1%)。1 年時点の無再発 死亡率は 11.7±5.6%で,再発率・感染率は予測の範囲を超えなかった。マラビロク 投与患者の血清は,in vitro で CCL5 による CCR5 内部移行を阻止し,T 細胞走化 性を遮断したことから,抗走化作用の根拠が示された。

【Conclusions】 この試験では,リンパ球輸送の阻害は臓器急性 GVHD に特異的であり,予防に有効な 可能性のある,新たな戦略であることが示された。


平成24年9月3日
岡村浩史

 

Revised International Prognostic Scoring System (IPSS-R) for myelodysplastic syndromes

MDSのrevised IPSS

IPSSは標準的な未治療MDSの予後予測モデルである。IPSSを改善するため各国の施設からの、より大きなdatabaseを用いて解析した(IPSS-R:n=7012、IPSS:n=816)。統計学的に重み付けした複数の臨床徴候を用いて新たなモデルを構築した。骨髄の染色体異常、骨髄blast、血球減少は新たなモデルでも基本要素となった。この解析での変更点は、染色体異常の分類はよりマイナーな異常を含めた従来の3つから5つの分類に、また骨髄blastを低水準で分割、血球減少の程度を分割した。このモデルでは従来のIPSSの4つから5つのリスク群を定義した。年齢・PS・フェリチン・LDHは生存に対しては有意な付加情報であったが、AML転化には影響がなかった。このモデルは複数の臨床徴候を集約しており、IPSSより的確にMDSの予後を予測する。IPSS-Rは未治療MDSの予後予測に有用であり、臨床試験のデザイン・解析の補助となり得る


平成24年8月27日
相本瑞樹

 

Haploidentical Transplantation Using T-Cell Replete Peripheral Blood Stem Cells and Myeloablative Conditioning in Patients with High-Risk Hematologic Malignancies Who Lack Conventional Donors Is Well Tolerated and Produces Excellent Relapse-Free Survival: Results of A Prospective Phase II Trial.

再発リスクの高い造血器腫瘍に対する骨髄破壊的前処置を用いたハプロ一致ドナーからのT細胞を含む末梢血幹細胞移植は良好な無再発生存が得られ、治療選択肢となり得る

ハプロ移植はほぼすべての患者に移植の機会を与える移植法である。我々はブスルファンをベースにした骨髄破壊的前処置による、末梢血幹細胞をソースとした、postCYを用いたハプロ移植のtrialを行った。適格基準は骨髄非破壊的前処置によるハプロ骨髄移植では再発リスクの高い患者に限った。20例がenrollした。(11例が再発/不応群、9例が移植時CRの標準リスク群)。20例全例で生着。day30までにTcell、骨髄系いずれもフルドナーとなった。Grade2-4 aGVHDは30%、grade3-4 aGVHDは10%であった。cGVHDの累積発症率は35%。DAY100と1年時のNRMはいずれも10%。標準リスク群に限れば0%であった。フォローアップ中央値20カ月で、1年OSが69%、1年DFSが50%であった。標準リスク群に限ると、それぞれOS 88%とDFS 67%であった。骨髄破壊的前処置を用いたハプロ移植は良好な生着率、GVHD率、NRM、DFSであり、timelyに適格なドナーがいない高リスク患者の選択肢となる。


平成24年8月20日
西本光孝

 

Reduced intensity conditioning is superior to nonmyeloablative conditioning for older chronic myelogenous leukemia patients undergoing hematopoietic cell transplant during the tyrosine kinase inhibitor era.

TKI治療下の高齢者CML患者に対する同種造血幹細胞移植ではRICがNMAに勝る


チロシンキナーゼインヒビター(TKI)と緩和的(reduced-intensity condioning; RIC)/骨髄非破壊的(non-myeloablative; NMA)な前処置を用いた同種骨髄移植(HCT)によって、慢性骨髄性白血病(CML)患者の治療指針に変化がもたらされた。我々は、2001年-2007年にthe Center for International Blood and Marrow Transplant Researchから報告された40歳以上のRIC/NMA HCTを施行された306人のCML患者を対象に、移植後の成績を検討した。117人(38%)は40-49歳、119人(39%)は50−59歳、70人(23%)が60歳以上であった。大部分(74%)はHCT前にimatinibを投与されていた。HCTに際して、chronic phase(CP)1 の割合は40-49歳群で74%である一方、60歳以上の群では31%であった。また、血縁ドナーの割合は40−49歳群で56%である一方、年齢が高い群では非血縁の割合が高くなった。核群ともに大部分は末梢血幹細胞を使用し、前処置としてRICを行った。3年OS(54%, 52%, 41%)、day100のgradeU-Wの急性GVHDの発症率(26%, 32%, 32%)、慢性GVHDの発症率 (58%, 51%, 43%)、1年以内の治療関連死(18%, 20%, 13%)は年齢間で差は認めなかった。3年以内の再発率(36%, 43%, 66%)、3年無病生存率(35%, 32%, 16%)で、60歳以上の群では劣勢が認められた。CP1の患者に関しては、無病生存期間は年齢に関わらず似通っていた。CP1が維持できているTKI使用下の高齢のCML患者に関しては、RICは毒性が低く、生存率を見込め、再発コントロールが可能な治療選択である。


平成24年8月13日
長崎譲慈

 

Donor mesenchymal stem cells trigger chronic graft-versus-host disease following minor antigen-mismatched bone marrow transplantation

ドナー由来の間葉系幹細胞はマイナー抗原不一致骨髄移植後の慢性GVHDを誘発する


Nature 2012

慢性移植片対宿主病(chronic graft-versus-host disease:cGVHD)は骨髄移植後 の合併症であり、様々な臓器で自己免疫疾患様の病体を呈する。その原因はTリ ンパ球の制御異 常であり、ドナー由来の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)がその免疫修飾に関わっている可能性が考えられる。マイナー 抗原 不一致のマウス骨髄移植モデルにおいて、抗原不一致MSCsの移植はcGVHDを引き 起こし、線 維化・IL-6の上昇さらに、末梢血でのFoxp3+制御性T細胞の減少と Th17の増加を伴った。 抗原不一致MSCs単体での移植でもcGVHDを引き起こすに十 分であり、一方でドナーMSCsを取り除くとcGVHDは軽減された。Rag2ノックアウ トマウスがレシピエントケースではcGVHDは発症せず、これ はホストのT細胞が 関わっている事を示唆している。わずかに残ったホスト由来のT細胞の数は、実 際 にcGVHDを発症したヒトの患者で有意な差をもって多かった。結論として、ド ナーMSCsはわずかに残存し たホストのT細胞に反応し、cGVHDの発症の一因と なっている。


平成24年8月6日
中嶋康博

 

Impact of Concordant and Discordant Bone Marrow Involvement on Outcome in Diffuse Large B-Cell Lymphoma Treated With R-CHOP

R-CHOP治療を受けたDLBCL患者におけるConcordant/Discordantな骨髄浸潤が予後に与 える影響について


DLBCLにおいて、過去の報告でconcordantな骨髄浸潤はdiscordantな骨髄浸潤と比 較して予後不良因子と言われている。本研究は、DLBCL における骨髄浸潤細胞の質に ついて後方視的に検証したコロンビアとニュージーランドのStudyである。  無作為に抽出された全795人の患者のうち、670人(84.3%)は骨髄浸潤がなく、67人( 8.4%)はconcordantな骨髄浸潤が、58人(7.3%)はdiscordantな骨髄浸潤があった。観 察期間中央値の41カ月(幅1〜115ヶ月)において、PFSに関してはconcordant群,discor dant群いずれも骨髄浸潤群に比較して有意に不良であったが(P<.001, P=.019)、OSに 関してはconcordant群のみが有意に不良であった(P<.001)。IPIを加えた予後因子を 評価する多変量解析では、concordant群のみがPFS、OSいずれにおいてもIPIと独立し た予後不良因子であった(P<.001, P=0.007)。discordant群は、高齢、高LDH、ステー ジ、節外病変数と関連しており、IPIと独立した予後不良因子とはなり得なかった。  DLBCLのconcordantな骨髄浸潤は予後不良の指標となる可能性が示された。DLBCLの 骨髄浸潤の正確な病理学的評価が望まれる


平成24年7月30日
坂部真奈美

 

Effect of gemtuzumab ozogamicin on survival of adult patients with de-novo acute myeloid leukaemia (ALFA-0701): a randomised, open-label, phase 3 study

新規発症成人急性骨髄性白血病の生存に対するゲムツズマブオゾガマイ シンの効果:ランダム化比較試験


カリケアマイシン結合抗CD33モノクローナル抗体製剤であるゲムツズマブオゾガマイ シン (以下GO)の臨床試験の結果は、AMLの標準一次治療への併用のPhase 3研究で相 反する結果となっている。フランスの急性白血病研究グループALFAは、標準初回治療 にGOを併用する際にGOを低用量分割投与することによって、過度の毒性無しに結果の 改善をもたらせるかどうかの研究を行った。 方法: Phase 3、オープンラベル、フランスの26の血液疾患センターにて行われた 臨床試験。 対象症例は50-70歳の初発のde novo AML。コンピュータで1:1の比率(ブロックサイ ズ4)で、コントロール群(標準治療、ダウノルビシン60mg/m2をDay 1〜3、シタラ ビン200mg/m2、Day 1〜7)とGO併用群にランダム割付けされた。標準治療に併用する GO投与量は、初回寛解導入療法時は3mg/m2をDay1、4、7 に投与、地固め1コース目と 2コース目は3mg/m2をそれぞれDay1に投与、計5回で累積投与量15mg/m2である。 プライマリーエンドポイントは無イベント生存率(EFS), セカンダリーエンドポイ ントは生存率(OS)と無再発生存率(RFS)と安全性。 解析はIntention to treat解析。臨床試験の事前登録はEudraCTにて行っている。 結果: コントロール群140名、GO併用群140名で、両群とも139名が解析対象。寛解 導入治療で寛解(CR)またはCRp(血小板回復が不十分だがそれ以外はCR基準満た す)を達成した率は、コントロール群75%、GO併用群81%で両群に有意な差はなし。 プライマリーエンドポイントである2年EFSはコントロール群17.1%に対してGO併用群 では40.8%、セカンダリーエンドポイントであるOSとRFSは、OSはコントロール群41. 9%、GO併用群53.2%、RFSはコントロール群22.7%、GO併用群50.3%と、どれもGO併 用群が有意に改善していた。(EFS:HR0.58; 95%CI 0.43〜0.78; p=0.0003. OS: HR0.69; 95%CI 0.49〜0.98; p=0.0368. RFS: HR0.52; 95%CI 0.36〜0.75; p= 0.0003。) 血液毒性はGO併用群で多く認めたが(GO群22名 (16%) vs. コントロール群4名 (3%) ; p<0・0001)、毒性による死亡の増加は認めなかった。 まとめ: 低用量分割GO併用療法は、安全性の面で許容でき、累積投与量を高用量に することでAML治療成績の改善をもたらした。 この研究の結果から、AML標準一次治療としてのGO治療を再度評価することが正当で ある。


平成24年7月23日
中前美佳

 

Graft-versus-host disease disrupts intestinal microbial ecology by inhibiting Paneth cell production of α-defensins

GVHDはでパネート細胞のα-defensin産生抑制により生理的な腸管細菌叢が破壊される

GVHDと感染症は同種移植後の主な合併症であるが、その密接な関係が議論されてきて いる。 我々はマウスモデルを用いて、この二つの関係を調べた。腸管における微生物群は抗菌ペプチドであるα-defensinsの分泌を通してpaneth cell(パネート細胞)によって活発に制御されている。我々は、パネート細胞がGVHDの標的になり、その結果、非共生細菌を殺菌して、共生細菌の保護に関わるα-defensinsの発現の著明な減少をも たらすことを発見した。 腸管における微生物群の分子プロファイルは、微小細菌叢の生理学的な多様性を消失 し、代わりに敗血症の原因となり、稀な細菌であるE.coliの圧倒的に増殖していることを示した。この変化は、前処置による腸管障害に関係なく、GVHDマウスに生じ、腸管の微生物叢の破壊程度とGVHDの重症とに関係していた。ポリミキシンBはE.coliの増殖を抑制して、GVHDを改善させる。これらの結果は、以前認識されていなかった GVHDと感染症と関係、腸管の細菌叢の共生細菌から病原菌の広がり方の注目すべきメ カニズムである。


平成24年7月9日
中前博久

 

Efficacy of bimonthly extracorporeal photopheresis in refractory chronic mucocutaneous GVHD

治療抵抗性慢性粘膜皮膚GVHDにおける月2回の体外フォトフェレーシスの効果

ECP(体外フォトフェレーシス)はステロイド抵抗性の慢性GVHDの治療として認識されるようになった。しかし、治療の最適の頻度と期間は、いまだ確立されていない。我々は毎月2回、2日連日のECP治療を行い、効果によって1ヶ月に1回にテーパリングするレジメンで治療をうけた、連続した82人の粘膜皮膚cGVHDの患者について報告する。患者はステロイド抵抗性、ステロイド依存性またはステロイド不耐容で、29人(35%)が多臓器に病変をみとめていた。治療期間中央値は330日(42-987)、ECPサイクル数の中央値は15回(1.5-32)であった。効果は6ヶ月後の臨床的効果と免疫抑制剤の減量で評価された。69/82人(84%)が6ヶ月のECPを完了し、そのうち65/69人(94%)が慢性GVHD症状の50%以上の改善をみとめた。6ヶ月のECP治療を完了した患者のうち77%の患者で免疫抑制剤の減量ができ、80%の患者でステロイドの減量が可能であった(うち、27.5%が中止、30%が75%以上減量、17.5%が50%以上減量、25%が50%未満の減量)。ECP開始から3年のOSは69%であった。本研究は慢性GVHDに対して毎月2回の治療をうけた患者の最も大規模な報告であり、ECPにより免疫抑制剤の減量が可能であることが確かめられた。


平成24年7月2日
廣瀬朝生

 

Growth factor-associated graft-versus-host disease and mortality 10 years after allogeneic bone marrow transplantation

造血幹細胞移植後、成長因子(G-CSF、GM-CSF)に関連する10年の死亡率とGVHD

9年以上のフォローアップが可能であった造血幹細胞移植後の患者における成長因子の効果を評価項目として解析した。HLA一致同胞ドナーからの骨髄破壊的前処置から骨髄移植をうけた成人急性白血病の1887人の患者1887人の患者のうち459人が成長因子の投与をうけた。成長因子は好中球の生着を高めるが(P<0.0001)、血小板数は減らす(P=0.0002)。
10年間のGVHD free survival(急性GradeU-Wおよび慢性GVHDのない状態)は、成長因子使用群は12±2%(SE)、コントロール群は17±2%であった。TBI使用の有無ではGVHD free survivalに有意差認めなかった。
非再発生存(NRM)はTBIの使用の有無に関係なく成長因子使用群でより高かった。[HR=1.48;95%CI:1.15-1.9,P-0.002;HR=1.59;95%CI:1.07-2.37;p=0.02]
両群間での白血病再発率は似たようなものであった[HR=0.96;95%CI:0.78―1.18;P=0.71]。
10年間の無病生存期間(LFS)は成長因子使用群は35±2%に対して、非使用群は44±1%であった。(HR=0.70;95%CI:0.60-0.82;P=0.00001)
成長因子使用による予防はGVHDのリスクを増やし、再発には影響しないが、TBIの有無にかかわらず造血幹細胞移植後10年におけるNRMを増やし、LFSを減らした。


平成24年6月25日
南野 智

 

The superiority of haploidentical related stem cell transplantation over chemotherapy alone as postremission treatment for patients with intermediate- or high-risk acute myeloid leukemia in first complete remission

CR1の中間または高リスク群のAML患者において、血縁者間HLA半合致移植は化学療法単独に優る

中間から高リスク群のCR1のAML患者において、血縁者間HLA半合致移植(HRD-HSCT)の化学療法単 独に対する優位性を検討するため、前向きのPatient self-selected studyを行った。419人の新 規発症のAMLの内、染色体で中間、高リスク群の132人の患者が第一寛解期に至り、寛解後療法と して74人が化学療法単独、58人が造血幹細胞移植を受けた。4年の累積再発率は37.5+/−4.5%で あった。4年のOSは64.5+/−5.1%、DFSは55.6+/−5.0%であった。HRD-HSCT群での累積再発率は1 2.0+/−4.6%で化学療法単独群の57.8+/−6.2%より明らかに低かった。(P<0.001)HRD-HSCTは化 学療法単独に比べ、生存で優っていた。(4年DFS 73.1+/−7.1% vs 44.2+/−6.2%;P<0.0001, 4年OS 77.5+/−7.1% vs 54.7+/−6.3%;P=0.001)多変量解析では寛解後療法(HRD-HSCT vs 化学療法単独)と診断時の白血球高値が再発、DFS、OSに対する独立したリスク因子であった。 この結果から、AMLの寛解後療法では化学療法単独より、HRD-HSCTを推奨する。

平成24年6月18日
稲葉晃子

 

Prognostic Index for Acute- and Lymphoma-Type Adult T-Cell Leukemia/Lymphoma

急性型またはリンパ腫型ATLのPrognostic Index(ATL-PI)

【Purpose】 急性型とリンパ腫型ATLの予後は不良であるが、生存に関する成績にはばらつきがある。本研究 の目的は急性型とリンパ腫型ATLの予後指標(ATL-PI)を開発することである。 【Patients and Methods】 2000年1月〜2009年5月までに急性型またはリンパ腫型ATLと診断された807人の患者についてレト ロスペクティブに解析を行った。まずtrainingサンプル(n=404)とvalidationサンプル(n=403)と にランダムに振り分け、multivariable fractional polynomial(MFP)モデルを用いてATL-PIを開 発した。 【Results】 807人のOS中央値(MST)は7.7ヶ月であった。trainingサンプルの解析よりAnn Arbor病期(?、? vs ?、?)、PS(0、1 vs 2〜4)、年齢、血清アルブミン値、sIL-2R値が独立した予後因子として同定 された。これらの予後因子を用いてリスク分類を考案し、validationサンプルで検証したところ、 高リスク、中間リスク、低リスクのMSTは3.6、7.3、16.2ヶ月であった(P < .001; χ2 = 89.7, 2 df; log-rank test)。さらに年齢を70歳、血清アルブミン値を3.5g/dl、sIL-2R値を 20000 U/ mlで二分することによりATL-PIを簡単に計算できる簡易化ATL-PIも開発した(P< .001; χ2 = 74 .2, 2 df; log-rank test)。 【Conclusion】 ATL-PIは急性型またはリンパ腫型ATL患者をリスク分類するための有望な新しい手段である。

平成24年6月11日
萩原潔通

 

Toll-like receptor 9, NOD2 and IL23R gene polymorphisms influenced outcome in AML patients transplanted from HLA-identical sibling donors

AMLに対するHLA一致同胞からの同種移植成績に対するToll-like receptor 9, NOD2 and IL23R遺伝子多型の影響

我々はTLR9 (T1237C; T1486C)、IL23R (A1142G)、NOD2 SNP8 (R702W), SNP12 (G908R), SNP13 (1007fs) の遺伝子多型の造血幹細胞移植アウトカムへの影響をHLA 一致兄弟ドナーからのT細胞非除去骨随破壊的移植を受けた142名AML患者の均一集団 において検討した。我々の後ろ向き研究において、position 1486のTLR9 gene variantが移植アウトカムに影響を与えていることが判明した。TLR9 geneの CC gene variantを有する患者の5年推定OSは70.2%であり、TC/TTを有する患者では44.8%で あった(P<0.027)。本研究集団ではNOD2やIL23R (A1142G)の遺伝子多型は5年OSには有 意な影響を与えなかった。5年治療関連死亡(TRM)はTLR9 geneの CC gene variantを 有する患者で最も低かった(7.8 vs 23.1%; NS)。grade III-IVの急性GVHDはNOD2 gene variantを有する患者においてより高かった(28 vs 12.8%; P<0.065)。一方、 IL23R gene variantを有するドナーから移植を受けた患者はgrade III-IVの重症急性 GVHDを発症しなかった(0 vs 18.4%; P<0.048)。しかしながら、多変量解析により NOD2 gene variantのgrade II-IVの急性GVHD発症への影響を確認した。本研究結果は TLR9、IL23R、NOD2の遺伝子多型が移植アウトカムへ影響していることを示唆する。

平成24年6月4日
康 秀男

 

Prophylactic rituximab after allogeneic transplantation decreases B cell alloimmunity with low chronic GVHD incidence.

同種移植後の予防的リツキシマブ投与がドナーB細胞免疫を弱め慢性GVHDを減少させる


B細胞は慢性GVHDの病態に関連している。我々は、「移植後2ヶ月に施行する予防的抗B細胞治療が同種反応を起こすドナーB細胞免疫を弱め慢性GVHDを減少させる」という仮説を立てた。患者 は高リスクCLL22名およびMCL13名。前処置はTLI80cGy×10日+ATG1.5mg/kg/day×5日。リツキサ ン(375mg/m2)は移植後day56、63、70、77に投与した。急性GVHDの発症頻度は6%、慢性GVHDの 累積発症頻度は20%、NRMは3%であった。移植後リツキサン投与はB細胞同種免疫を有意に抑制し、 女性ドナーから男性患者への移植において同種反応性H-Y抗体を完全に抑制した(p=0.01)。CLL 患者における4年OSおよびFFP(Freedom From Progression)は73%、47%、MCL患者では、69%、53% であった。

平成24年5月28日
中根孝彦

 

Progression in smoldering Waldenstrom macroglobulinemia: long-term results.

くすぶり形原発性マクログロビリン血症長期予後


・この研究の目的はsmoldering waldenstrom macroglobulinemia (SWM) の進行リスクと生存率を定義することである。
・SWMは臨床的にIgM>3 g/dLもしくは骨髄に10%以上のリンパ形質細胞浸潤のみで、貧血、過粘稠症候群、リンパ節腫脹、もしくは肝脾腫などの臓器障害はない疾患と定義されている。

・我々はMayo clinicの1974年から1995年のSWMの患者のデータを用いて研究を行った。48人のSWMの患者(中央値15.4年、285累積人年)の患者のうち、全員で36人(75%)が治療を必要とするWMを発症した。内訳は34人(71%)がWM、1人が原発性アミロイドーシス、1人がリンパ腫である。症候性WM、アミロイドーシス、リンパ腫への累積進展確率は1年6%、3年39%、5年59%、10年68%であった。

・増悪の主なリスクファクターは、骨髄内のリンパ形質細胞数(%)、血清M-spikeの大きさ、ヘモグロビン値であった。高リスクの患者の治験を今後考慮すべきである。


平成24年5月21日
吉村卓朗

 

Results of a Pivotal Phase II Study of Brentuximab Vedotin for Patients With Relapsed or Refractory Hodgkin's Lymphoma

再発・再燃HLに対するBrentuximab Vedotinの第2相試験

目的:Brentuximab vedotinはCD30陽性細胞を選択的に標的とする抗体・薬物複合体 (antibody-drug conjugate : ADC)である。第1相試験でCD30陽性再発・再燃MLに対 し高い有効性と良好な認容性を示した。 方法:今回の多国籍・非盲検・第2相試験では、ASCT後再発・再燃のHLに対し brentuximab vedotinの有効性・安全性を検討した。中央病理診断でCD30陽性HLと診 断された102例がbrentuximab vedotin 1.8 mg/kgを3週おきに静脈投与施行した。 Disease progressionと強い毒性がなければ最大16サイクルまで投与した。主要評価 項目は全奏功率(ORR)で施設判断での効果判定とした。 結果:ORRは75%でCRRは34%で、PFS中央値は全症例で5.6ヶ月で、CR例では奏功期間 (DR)中央値は20.5ヶ月であった。フォローアップ中央値1.5年で31例が無増悪生存中 である。主要な毒性は末梢性神経障害(PN)、嘔気、倦怠感、、好中球減少、下痢で あった。 結論:ADCであるbrentuximab vedotinはASCT後再発・再燃HLに対し高い忍容性を保 ち、奏功率75%の高い有効性を示した。CR例は約2年の奏功持続期間を認めた。今後 より早期での投与も望まれる。

平成24年5月14日
寺田芳樹

 

Bosutinib is active in chronic phase chronic myeloid leukemia after imatinib and dasatinib and/or nilotinib therapy failure

ボスチニブはイマチニブ、ダサチニブおよびまたはニロチニブ治療に失敗した慢性期慢性骨髄性 白血病に有効である

ボスチニブはSrc/Ablチロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)であるが、慢性骨髄性白血病(C P-CML)に対する有力な効果を示した。この第1/2相試験で、イマチニブに対して治療抵抗性ある いは不耐用のCML患者におけるボスチニブ(1日1回、500mg)の有効性および安全性を評価した。 本研究には、前治療としてイマチニブ治療後にダサチニブおよびまたはニロチニブ投与を受けた 118人の慢性期CML患者が参加した。観察期間の中央値は28.5か月であった。この部分母集団の中 で、大細胞遺伝学的奏功(MCyR)は32%の患者で得られ、完全細胞遺伝学的奏功(CCyR)は24%で 得られた。CCyRは3つのTKIで前治療を行った3人の患者のうち1名でも得られた。完全血液学的奏 功(CHR)は患者の73%で達成し維持された。治療中のAP/BCへの急性転化は5人の患者で起こっ た。2年の時点での、Kaplan-Meyer法による無増悪生存率(PFS)は73%、全生存率(OS)は83%で あった。治療に対する反応は、T315Iを除く、ダサチニブおよびニロチニブ抵抗性に関連するBcr -Abl変異があっても認められた。ボスチニブは許容可能な安全性を有していた。有害事象は主と して、対応可能なグレード1/2の、消化管イベントや発疹であった。グレード3/4の非血液有害事 象は2%以上の患者に起こったが、下痢(8%)や皮疹(4%)などがあった。ボスチニブは複数のTKIに よる治療後のCP-CML患者に対する新しい治療選択肢になるかもしれない。本試験はwww.clinical trials.govに、NCT00261846として登録した。


平成24年5月7日
康 史朗

 

Hematopoetic cell transplantation for primary plasma cell leukemia: results from the Center for International Blood and Marrow Transplant Research

原発性形質細胞白血病に対する造血幹細胞移植

進行性の形質細胞異常である原発性形質細胞白血病(pPCL)に対する造血幹細胞移植 (HCT)の報告は少ない。我々は1995年から2006年までに診断され、18ヵ月以内に自家 移植(n=97)、同種移植(n=50)を受けた147症例のpPCLの予後について報告する。 年齢中央値は自家移植例で56歳、同種移植例で48歳であった。3年無増悪生存率 (PFS)は自家移植群で34%(95%CI、23-46%)、同種移植群で20%(95%CI、10-34%) であった。3年累積再発率は、自家移植群で61%(95%CI、48-72%)、同種移植群で38% (95%CI、25-53%)であった。3年全生存率(OS)は、自家移植群で64%(95%CI、 52-75%)、同種移植群で39%(95%CI、26-54%)であった。3年無再発生存率(NRM) は、自家移植群で5%(95%CI、1-11%)、同種移植群で41%(95%CI、28-56%)であっ た。これらの結果から、自家移植はpPCL初発時の寛解導入療法後の地固め療法とし て、安全性と実現可能性があると思われる。同種移植は、低い再発率と関連していた が、高いNRMリスクにより、あまりOSに対する有益性はなかった。


平成24年4月23日
岡村浩史

 

JAK inhibition with ruxolitinib versus best available therapy for myelofibrosis.

JAK阻害剤(ruxolitinib)による骨髄線維症治療〜現行治療との比較〜

[背景]
骨髄線維症(MF)の治療は限られている。MF患者に対する選択的Janus kinase(JAK)1/2阻害薬の効果と安全性を、利用可能な最善の治療(best available therapy,BAT)と比較し評価した。
[方法
219人のint-2かhigh-riskのMF患者(原発性・PV或いはETからのを転化)を、ruxolitinib内服かBATに割り付けた。主要評価項目・keyの副次評価項目は48・24週でのMRI或いはCTによる脾臓の容積の35%以上の縮小率とした。
[結果
Ruxolitinib群の28%に48週で脾臓の容積の35%以上の減少を認め、BAT群では0%であった(P<0.001)。同様に24週では32%と0%(P<0.001)であった。48週で触知可能な脾臓の径の平均はruxolitinib群で56%減少したのに対し、BAT群では4%増加した。Ruxolitinib群では治療反応期間は中央値に到達せず、80%の患者が追跡期間中央値12ヶ月で依然治療反応が保持されていた。Ruxolitinib群では全ての測定によるQOLの改善を認め、MF関連の症状の改善を認めた。両群で最も多い血液毒性は血小板減少と貧血で、用量の調節・治療中断・輸血で対処可能であった。各群で1人が血小板減少のため治療を中止、貧血のため治療中止となった患者はいなかった。非血液毒性は稀で主にgrade1・2であった。BAT群で2人がAMLに転化した。
[結論
BATと比しruxolitinibは長期で持続的な脾腫の縮小、MF関連症状や身体機能・QOLの改善を認め、毒性も軽微であった。OSへの影響は見出せなかった。


平成24年4月16日
相本瑞樹

 

The Dynamic International Prognostic Scoring System for myelofibrosis predicts outcomes after hematopoietic cell transplantation.

DIPSSによる骨髄線維症患者の移植後の予後予測

IWGによる研究はDynamic International Prognostic Scoring System(DIPSS)によって骨髄線維症(MF)患者における予後が予測できることを示した。(DIPSSは年齢、症状、Hb、WBC数、末梢血Blast数によって分類される)我々はDIPSS評価可能であった170例のMF移植患者について評価した(血縁86、非血縁84)。DIPSSによりlow risk 21, intermediate1 48, intermediate2 50, high risk 51例であった。5年累積再発率、RFS、OS、NRMはそれぞれ10%,57%,57%,34%であった。Low risk群に比べてhigh risk群は移植後死亡率が4.11倍、NRMが3.41倍であった。フォローアップ中央値5.9年で、生存中央値はlow,intermediate1では“到達せず”、intermediate2,highではそれぞれ7年、2.5年であった。移植はMFの大部分の患者において治癒可能な治療法であり、移植成功の有無は移植前のDIPSS分類によっていた。

平成24年4月9日
西本光孝

 

Impact of FLT3 internal tandem duplication on the outcome of related and unrelated hematopoietic transplantation for adult acute myeloid leukemia in first remission: a retrospective analysis.

AML(CR1)患者に対する血縁および非血縁同種移植におけるFLT3-ITDの影響:後方視的研究

AMLでFLT3/ITD陽性の場合、化学療法のみでは予後不良であるが、造血幹細胞移植治療を用いた 場合の予後はまだ不確定である。今回は後方視的観察研究で、EBMT(ヨーロッパBMTグループ) データを用いた206名の解析。対象はHLA一致(血縁・非血縁)ドナーから、AMLのCR1で骨髄破壊 的前処置移植を受けた、診断時染色体正常の1467名のうちFLT3解析が可能であったものとした。 (FLT3/ITD陽性120名(58%)、FLT3/ITD陰性86名(42%))。FLT3/ITD陽性例では陰性群と比較して 診断時白血球が多いこと(5900 vs. 2100 /uL; P < .001)。CRに達した後移植までの期間が短い こと(87 vs. 99 日; P = .04).であった以外は、両群に差はなかった。移植後の成績としては2 年時点での再発率は、FLT3/ITD陽性で30%±5%、陰性では16%±5%と差がみられた(p=0.006)、LF Sで陽性群が劣っていた(58% ± 5% vs. 71% ± 6%; P = .04)。多変量解析を用いた結果では陽 性群で再発率が高かった(HR3.4, 95%CI:1.46-7.94、P=0.005)。(年齢(42歳以上)、寛解 導入に複数回コース、CR到達から移植までの時期が短い、女性、などの因子も、再発率が高いこ とと関連がみられた). FLT3/ITD陽性は、LFSの面で有意に劣っている(HR0.37, 95% CI, 0.19 to 0.73; P = .002)(年 齢、寛解導入までのコースが多いことも悪いLFSと関連があった)。まとめとして、FLT3/ITD陽性 は化学療法での予後と同様に、CR1での移植においても再発率が高くLFSが劣っている。しか しながら、移植後2年でFLT3/ITD陽性例での半数以上は生存している。この成績をより改善する ためには、移植前後でのFLT3阻害剤の使用などが検討されるべきである。

平成24年4月2日
中前美佳

 

Interleukin-2 and regulatory T cells in graft-versus-host disease.

GVHDにおけるIL-2と制御性T細胞

[背景] Treg細胞の機能異常は、慢性GVHDなどの様々な疾患で認められている。 IL-2はTreg 細胞の分化増殖、生存、活性に重要である。我々は低用量のIL-2が生体内でTreg細胞 を優先的に増殖させ、慢性GVHD症状を抑制するという仮説を立てた。

[方法] この観察研究では、糖質コルチコイドの治療抵抗性慢性GVHDの患者で、連日の低用量 の0.3×106から 3×106 IU/m2のIL-2皮下投与を8週間行った。エンドポイントは安全 性と臨床および免疫学的反応とした。反応が得られた患者は、4週間休薬ののち、投 与期間を延長した。

[結果] 29人が登録され、誰もGVHDの憎悪、再発を認めなかった。最大耐容量は1×106 IU/m2 であった。高用量では許容できない全身症状が持続した。評価可能23例のうち、12人 でmajor responseが得られた。Treg細胞は全例で増加し、ピークは4週目で8倍以上に 増加した(P<0.001)。通常のT細胞の数には影響しなかった。Treg:Tcon ratioは中 央値でベースラインの5倍以上であった(P<0.001)。Treg細胞数、Treg:Tcon ratio は8週まで持続して上昇していた。IL-2を中止したあとは減少した。FOXP3陽性Treg細 胞数の増加は通常のTconを抑制した。免疫学的、臨床的反応は投与延長期間も持続 し、投与により糖質コルチコイドの量を平均で60%減量できた。

[結論] 低用量のIL-2の連日投与は糖質コルチコイドの治療抵抗性の活動性の慢性GVHDの患者 で安全に投与できた。投与により生体内でTreg細胞を優先的に増殖させ、有意な数の 患者で慢性GVHD症状を抑制しえた。

平成24年3月26日
中前博久

 

The role of HLA antibodies in allogeneic SCT: is the ‘type-and-screen’ strategy necessary not only for blood type but also for HLA?

幹細胞移植におけるHLA抗体の役割:タイプ&スクリーンは血液型だけでなくHLAにも必要か?

造血幹細胞移植におけるHLA抗体の役割が注目されている、というのはHLAミスマッチ移植(臍帯血、ハプロ、非血縁移植)をうける患者が増加したからである。また、HLA抗体検査法の技術的進歩は特異的HLA抗体の定量化だけでなく、迅速、正確かつ客観性においても実現されてきた。最近の研究では、ドナー特異的HLA抗体の存在は、上記幹細胞ソースを使用したHLAミスマッチ移植における生着不全に関与しており、その影響は個々の移植で異なることが示唆されている。注目すべきは、多くの非血縁HLAマッチ移植で実際にはHLA-DPのミスマッチをみとめ、HLA-DPに対する抗体の存在は生着不全に関与すると報告されていることである。従って、HLA抗体は代替ドナーから移植を施行された場合、全ての患者で精査されるべきである。抗体陽性の患者で最も単純にHLA抗体による生着不全を防ぐ方法は、標的抗原を持つドナーを避けることである。もし、上記ドナーから移植しなければならない場合は、移植前にDSAに対する治療を行うことで生着する機会が増すだろう。

平成24年3月19日
廣瀬朝生

 

Different Risk Factors Related to Adenovirus- or BK Virus-Associated Hemorrhagic Cystitis following Allogeneic Stem Cell Transplantation

同種造血幹細胞移植後の出血性膀胱炎〜アデノウイルス関連とBKウイルス関連の違い〜

ウイルス関連の出血性膀胱炎は造血幹細胞移植後の死亡の大きな原因となる。 たくさんの臨床研究によってウイルス性出血性膀胱炎を生じやすい患者のリスク因子 を確認しようと試みられたが、そのリスク因子については議論があるところである。 私達は出血性膀胱炎に関連したリスク因子を確認しようと同種造血幹細胞移植後の26 6人を後方視的に解析した。この集団のうち、42人(15.8%)の患者がウイルス性の出血 性膀胱炎と診断された。そのうち、アデノウイルスが26人(9.8%)、BKウイルスが16人 (6.0%)であった。アデノウイルスによる出血性膀胱炎はTcell purgingにしばしば関 連し、急性GVHDをおこした患者は少なかった。 逆に、BKウイルスの出血性膀胱炎はGVHDや、PIR、HPSといった過剰な免疫反応をおこ した患者に頻繁に観察された。これらの観察研究からわかったことは、アデノウイル スとBKウイルスの出血性膀胱炎はリスク因子や病因が異なるかもしれないということ である。重篤な免疫不全状態がアデノウイルスの出血性膀胱炎に関連する一方で、免 疫過剰な状態がBKウイルスの出血性膀胱炎に重要な役割をはたすかもしれない。

平成24年3月12日
南野 智

 

Defucosylated anti-CCR4 monoclonal antibody (KW-0761) for relapsed adult T-cell leukemia-lymphoma: a multicenter phase II study

再発成人T細胞白血病/リンパ腫に対するCCR4抗体治療:多施設第II相試験

Purpose
ATLは従来の化学療法に抵抗性であり、他の治療法は非常に少ない。CC chemokine receptor 4(CCR4)は大半のATL患者の腫瘍細胞に発現している。このため、抗体依存性細胞傷害を顕著に賦活化する抗CCR4抗体は、再発のATL患者に対する治療として評価されている。
Patients&Methods
KW-0761の単剤での再発CCR4陽性高悪性度ATLLに対する有効性、薬物動態、安全性について検証するため多施設共同phaseU研究が計画された。Primary end pointはORRで、secondary end pointsはPFS、OS。患者はKW-0761を週1回、1.0m/kgで8週点滴投与された。
Results
登録された28人中、27人が少なくとも1回はKW-0761の投与を受けた。治療反応は評価できた26人中13人で得られ、8人はCR、ORRは50%であった。PFSの中央値は5.2カ月、OSの中央値は13.7カ月であった。8回目のKW-0761投与後の半減期は422+/−147時間であった。頻度の高かった有害事象はinfusion reaction(89%)、skin rashes(63%)であったが、いずれも全例で対処可能で可逆性であった。
Conclusion
KW-0761は再発ATLに対して、臨床的に明らかに抗腫瘍効果がみられ、毒性は許容範囲内であった。ATLや他のT細胞性腫瘍治療について、さらなるKW-0761の研究が求められる。

平成24年3月5日
稲葉晃子

 

Risk factor for acute GVHD and survival after hematopoietic stem cell transplantation

造血幹細胞移植後の急性GVHDと生存率に関するリスクファクター

1999〜2005年に血縁または非血縁から同種造血幹細胞移植を受けた成人患者について の急性GVHD、生存率、移植関連死亡(transplant-related mortality)のリスクファク ターが解析されIBMTRに報告された。移植レジメンが急性GVHDのリスクに与える影響 を評価するために、本研究では以下の6つの治療カテゴリーに分類し解析をおこなっ た[(1)骨髄破壊的前処置(MA)+TBI+PBSCs、(2)MA+TBI+BM、(3)MA+nonTBI+ PBSCs、(4)MA+nonTBI+BM、(5)reduced intensity conditioning(RIC)+PBSCs、(6) RIC+BM]。Grade B-D 急性GVHDの発症率は血縁(SD)で39%、非血縁(URD)で59%であっ た。SD移植ではMA+nonTBI+BM、RIC+PBSCsが他のカテゴリーよりも有意差をもって gradeB-D 急性GVHDのリスクが低かった。URD移植ではMA+TBI+BM 、MA+nonTBI+ BM、RIC+BM、RIC+PBSCsが他のカテゴリーよりも有意差をもってgradeB-D 急性GVHD のリスクが低かった。5年生存率はSD移植で46%、URDで33%であった。患者の治療方針 を決める際には、移植前処置の強度、TBIの有無、移植ソースが複合的に急性GVHDの リスクに影響を与えることを考慮しなければいけない。

平成24年2月27日
萩原潔通

 

Nonmalignant late effects and compromised functional status in survivors of hematopoietic cell transplantation

造血細胞移植生存者の非悪性後期合併症の発症 ならびに健康、機能状態

目的 我々の目的は造血細胞移植(HCT)の生存者の最近のコホートにおいて、非悪性後期合併症の発症 ならびに健康、機能状態との関連を調べることであった。 患者と方法 2004年1月から2009年6月にFred Hutchinson Cancer Research Centerで移植を受け、HCT後少な くとも1年以上生存している成人において、14の非悪性後期合併症を決定した。データはカルテ 調査と毎年の自己申告による問診票から得られた。 結果 本研究における1087名の生存者のHCT時の年齢中央値は53歳(21-78歳)、HCT後フォロー期間の中 央値は37ヶ月(12-77ヶ月)であった。移植前の有病率は0-9.8%であった。HCT後5年時点でいずれ の非悪性後期合併症の累積発症率は自家移植患者で44.8%、同種移植患者で79%であり、自家の2. 5%と同種の25.5%は3つ以上の後期合併症を持っていた。3つ以上の後期合併症を有する生存者は 身体機能ならびにKarnofskyスコアの低下を認め、終日の仕事や勉強に従事できる可能性が低下 し、日中活動において制限を受ける可能性が高かった。少なくとも一つの後期合併症の発症予測 因子は年齢50歳以上、女性、非血縁ドナーであり、前処置強度は予測因子ではなかった。 結論 現代の治療を用いて、相対的に短期間フォローアップでさえ、HCT後の非悪性後期合併症率は高 い。これらの後期合併症は健康、機能状態の低下と関連しており、HCT患者の綿密なフォローアッ プとこれらの合併症を調査する付随研究の必要性が重要である。

平成24年2月20日
康 秀男

 

EBV-associated T/NK-cell lymphoproliferative diseases in nonimmunocompromised hosts: prospective analysis of 108 cases

免疫不全症でない患者でのEBウイルス関連T/NKリンパ増殖性疾患

EBウイルス関連T/NK LPDは、「EBVに感染したTあるいはNK細胞のクローナルな増殖を特徴とする 全身性疾患」と定義付けられる。我々は、末梢血におけるEBV陽性T/NK細胞の増幅により証明さ れた、免疫不全症でない108人の患者を登録した(男性50人、女性58人。発症年齢中央値8歳(1- 50歳))。T細胞性64人、NK細胞性が44人であり、臨床的に4つの群に分類された。CAEBV:80例、 EBV関連血球貪食リンパ組織球症:15人、重症蚊アレルギー:9人、種痘様水泡症:4人。これら の臨床像はEBV陽性細胞の免疫表現型に密接に関連していた。フォローアップ期間中央値は44か 月であり、47人(44%)が重症臓器合併症により死亡した。13人が節外性NK/T細胞性リンパ腫お よびaggressive NK細胞性白血病として特徴づけられるリンパ腫、あるいは白血病に進展した。59人が造血幹細胞 移植をうけ、そのうちの66%が生存していた。発症時年齢8歳以上および肝機能障害が死亡に対す る危険因子であり、一方移植を受けることが予後良好因子であった。これらのデータは、全身性 EBV+T/NK−LPDの臨床的特徴を示しており、これらの疾患に対する診断および治療的なアプロー チに対する洞察を与えてくれるものである。

平成24年2月13日
中根孝彦

 

A novel therapeutic cytomegalovirus DNA vaccine in allogeneic haemopoietic stem-cell transplantation: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial.

同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルスDNAワクチン治療:無作為二重盲検第II相試験

【背景】サイトメガロウィルス再活性化は造血幹細胞移植後6か月で60-70%起こる。主要原因は移植による免疫抑制状態である。ウィルスに対するpre-emptive療法はサイトメガロウィルスによる疾患を減らすことができるが、毒性が問題となる。病気の発症を減らし、抗ウィルス薬の使用を減らすため、我々はサイトメガロウィルスDNAワクチンをプラセボと比較して安全性と効果を検証した。 【方法】この研究は二重盲検、phase2、donor-recipient pairが80人、umpaired recipientsが80人までで、HSCTをUSAの16の施設で受ける。
適格レシピエントはサイトメガロウィルス血清陽性、18―65歳、ハイリスクの原疾患がない、T cell depletionしていない、サイトメガロウィルスワクチンの前投与や自己免疫疾患がない。
ランダムに患者を振り分けた。サイトメガロウィルスDNAワクチンとプラセボ群は1対1で振り分けられ、移植前処置前、移植後1、3、6か月に投薬を受けた。ワクチンはサイトメガロウィルスのpoloxamer CRL1005と benzalkonium chloridで処理されたglycoproteinBとphosphoprotein65をコードしたプラスミドを含む。ランダム化はPocock and Simon’s methodを用いて行われ、ドナーとレシピエントのHLA一致状態とドナーのサイトメガロウィルス血清状態によって層別化された。
主要評価項目は臨床的に有意なウィルス血症を発症し、サイトメガロウィルス特異的抗ウィルス治療を開始することである。我々は有害事象の発症率もワクチン接種群とプラセボ群で調査した。この研究はClinicalTrials.gov, number NCT00285259に登録されている。 【結果】私たちは108人(94人がHSCTのレシピエントで14人がpaired donors)を2006年6月29日から2009年12月11日の間でランダムに振り分けた。
pareid armは2008年2月に論理的理由から登録を中止した。安全性は全ての参加者で評価された。効果は74人のunpaired レシピエントに制限された。それぞれの群は地理的、臨床的変数において均等である。40人中19人(48%)のワクチン接種レシピエントはサイトメガロウィルス特異的抗ウィルス療法を必要とした、コントロール群は34人中21人(62%)(P=0.145)。
しかし、フォローアップ期間中のワクチンはウィルス血症の発症と再発を減少させるのに重要であり、プラセボ群と比べてウィルス血症の時間事象を改善させた。このワクチンは忍容性がよく、一人の患者がアレルギーで中止したのみである。HSCT後のGVHDや二次感染などの有害事象発症率はグループ間で差はなかった。 【結論】我々はHSCTにおいて臨床的に重要なサイトメガロウィルスワクチン(TransVax)の効果を証明した。安全性と有効性はphase 3の発展をさらにサポートする必要がある。また、このphase 2ではプラセボ群と比較して、サイトメガロウィルス特異的抗ウィルス療法の使用減少は証明できなかった。

平成24年2月6日
吉村卓朗

 

Intensified chemotherapy with ACVBP plus rituximab versus standard CHOP plus rituximab for the treatment of diffuse large B-cell lymphoma (LNH03-2B): an open-label randomised phase 3 trial

びまん性大細胞リンパ腫に対するリツキシマブ併用ACVBP療法とCHOP療法の比較

【背景】DLBCLの治療予後は化学療法にCD20抗体のRituximabを加えることで大きく改善してきている。今回18-59歳の症例に対しdose-intensiveなRituximab併用化学療法とRituximab併用標準化学療法 を比較検討した。

【方法】R-ACVBP(ADR,CY, VDS,BLM,PDN)+地固め療法と、R-CHOPを比較するRCTを行った。適格基準は60 歳未満(18-59)の若年者でaaIPI 1点で、未治療DLBCL症例とした。主評価項目はEFSで、ITT解析 で行った。

【結果】 1例が同意を撤回し、54例が治療完遂できなかった。44カ月のフォローアップ中央値で、3年EFS はR-ACVBP群が 81% (95% CI [75-86)、R-CHOP群が67% (59-73)であった(HR 0.56, 95% CI 0.38-0.83; p=0.0035)。3年PFSは(87% 95% CI,[81-91] vs 73% [66-79]; HR 0-48 [0.30-0.76]; p=0.0015)で、3年OSは(92% [87-95] vs 84% [77-89]; HR 0.44 [0.28-0.81]; p=0.0071)でR-ACVBP群 が有意に良好であった。R-ACVBP群で42%(82例/196例)、R-CHOP群で15%(28例/183例)重篤な有害事象を認め、grade 3-4の血液毒性はR -ACVBP群で多く認め、R-ACVBP群の38%,R-CHOP群の9%が 経過中にFNを合併した。

【結論】標準R-CHOP療法と比べ、強化免疫化学療法R-ACVBP療法は18-59歳のIPI L-I risk群のDLBCL例の 生存予後を改善させる。血液毒性は強化療法で増強したが管理可能であった。

平成24年1月30日
寺田芳樹

 

Phase II Study of SMILE Chemotherapy for Newly Diagnosed Stage IV, Relapsed, or Refractory Extranodal Natural Killer (NK)/T-Cell Lymphoma, Nasal Type: The NK-Cell Tumor Study Group Study

新規発症IV期、再発、難治性の節外性NK/Tリンパ腫(鼻型)に対するSMILE療法

新規診断のW期、再発あるいは治療抵抗性の節外性NK/Tリンパ腫、鼻型(以下ENKL)に対するより有効な治療法を調査するために、我々はステロイド(Dexamethasone)、methotraxate、ifosfamide、L-asparaginaseおよびetoposide(SMILE)療法の第2相試験を行った。
<方法>
新規診断のW期、再発、あるいは治療抵抗性の患者で、Performance Statusが0-2の患者を適格とした。2サイクルのSMILE療法をプロトコール治療として行った。1次評価項目はプロトコール治療後の全奏功割合(ORR)とした。
<結果>
38人の適格患者が登録された。年齢の中央値は47歳(range, 16~67歳)で、男女比は21:17であった。疾患の状態は、新規診断のW期の患者が20名、第1再発が14名、初回治療抵抗性患者が4名であった。最初の2名の患者が感染症で死亡したため、適格基準にリンパ球数500/μLを加えるようプロトコールを改訂した。改訂後、治療関連死亡は1名も観察されなかった。2サイクルのSMILE療法後のORRおよび完全寛解率はそれぞれ79% (90% CI, 65%?89%)と45%であった。プロトコール治療を完遂した28名の患者のうち、19名は造血幹細胞移植(HSCT)を行った。 1年全生存率は55% (95% CI, 38%?69%)であった。Grade 4 の好中球減少症が92%の患者で認められた。最も頻度の高いgrade3か4の非血液学的併発症は感染症(61%)であった。
<結論>
SMILE療法は新規診断のW期や、再発、治療抵抗性のENKL患者に対する効果的な治療法である。治療中の骨髄抑制と感染症は慎重に管理すべきである。

平成24年1月23日

康 史朗

 

A randomized trial comparing standard versus high-dose daunorubicin induction in patients with acute myeloid leukemia
急性骨髄性白血病に対する標準量と高用量ダウノルビシンを用いた寛解導入療法のランダム化比較試験

60歳以下の若年成人の急性骨髄性白血病(AML)で寛解導入としてのdaunorbicin(DNR)の用量を比較する第三相ランダム化比較試験を行った。解析した383人中、189人に標準量のDNR(SD-DN,45mg/m2/day×3days)、194人に高用量のDNR(HD-DN,90mg/m2/day×3days)とcytarabine(Ara-C)200mg/m2/day×7daysを投与した。寛解(CR)導入率はSD-DN群で72.0%、HD-DN群で82.5%であった(P=0.014)。追跡期間中央値52.6ヶ月で全生存(OS)及び無イベント生存(EFS)はSD-DN群に比しHD-DN群が上回った(OS,46.8% vs 34.6%;P=0.030、EFS,40.8% vs 28.4%;P=0.030)。他の因子で補正後もCR率・OS及びEFSに有意な差があった(CR率,HR;1.802;P=0.024、OS,HR;0.739;P=0.032、EFS,HR;0.774;P=0.048)。HD-DNの生存に対する優越性は特に染色体異常の中間リスク群で明らかであった。両群の毒性は同等であった。若年成人のAMLでHD-DNはSD-DNと比しCR率及び生存を改善すると結論づける。この試験はNCT00474006としてclinicaltraials. govに登録された。

平成24年1月16日
相本瑞樹

 

戻る