最新文献紹介(抄読会)
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2011年

HLA mismatch direction in cord blood transplantation: impact on outcome and implications for cord blood unit selection
成人造血幹細胞移植におけるHLAミスマッチの方向:移植予後、臍帯血選択
への影響

HLAミスマッチレベルは、臍帯血移植の予後に影響する。許容可能なミスマッチを同定するために、我々は、1993年から2006年までの間、USの移植施設でNew York Blood Center National Cord Blood Programにてsingle臍帯血移植を施行した1202人の移植患者におけるHLAミスマッチの方向と移植予後についての関連を調査した。98のドナー/患者ペアは単方向のみのミスマッチであり、GVH方向のみが58ペア(GVH-0)、HVG方向のみ(R-0)が40ペアであった。GVH-0ミスマッチ患者は、1 locus両方向ミスマッチ患者に比べて生着がより早かった(HR=1.6, P=0..003)。加えて、GVH-Oの移植患者のTRM(HR=0.5, P=0.062)、OS(HR=0.5, P=0.019)、治療の失敗(HR=0.5, P=0.016)はより低く、結果としてマッチの臍帯血グラフトの予後と同等であった。反対に、R-Oミスマッチの生着は遅く、生着不全率と再発率は高かった(HR=2.4, P=0.010)。我々の所見に基づけば、臍帯血検索アルゴリズムは、単方向ミスマッチを認識するように修正すべきである。我々は、移植施設が可能であるならば、他のミスマッチよりもGVH-Oのミスマッチを優先し、R-0ミスマッチを避けることを推奨する。

平成23年12月26日
岡村浩史

 

Hepatitis viruses and non-Hodgkin lymphoma: epidemiology, mechanisms of tumorigenesis, and therapeutic opportunities
肝炎ウイルスと非ホジキンリンパ腫

過去20年以上にわたりHCV、HBVといくつかの血液悪性腫瘍、特にB cell NHLとの関連についてエビデンスが蓄積されている。このレビューで我々は、肝炎ウイルスがリンパ腫発生に寄与するメカニズムを取り上げ、この知識から得られる治療法を考察する。このエビデンスのほとんどはHCVについてのものであり、それがこのレビューの主要な焦点である。さらに我々は、もっとも頻度の高い血液腫瘍であり、肝炎ウイルスとの関連を最もよく調べられているNHLを取り上げる。他の血液腫瘍との関連についても簡単に取り上げる。

平成23年12月19日
備後真登

 

Large pericardial effusion as a complication in adults undergoing SCT
成人造血幹細胞移植合併症としての多量心?液貯留

【背景】心タンポナーデを引き起こす多量心嚢液貯留(Large pericardial effusion:以下LPE))は造血細胞移植後のまれな合併症であり、病態生理学的なメカニズムは不 明だが慢性GVHDの症状だと考えられている。現時点では、成人の造血細胞移植患者においてLPE の発生率、臨床的な発現様式、予後に関する系統的なデータの報告は認めない。 【方法】2005年から2008年の間に単施設で造血細胞移植を行った858名の成人患者(自家移植512 名、血縁同種148名、非血縁同種198名)における移植後LPEに関して後方視的な解析を行った。 【結果】7名(0.8%)がLPEを発症し、全員が非血縁同種移植患者であった。LPE発症までの移植後 日数中央値は229日(42-525日)であった。LPE検出時に漿膜炎以外のGVHD症状を示した者は認めな かった。心タンポナーデを来たした全ての患者に対して心膜開窓術が安全に施行され、ほとんど の患者で免疫抑制剤の増量が奏功した。

平成23年12月12日
吉田全宏

 

Intensive strategy to prevent CMV disease in seropositive unbilical cord blood transplant recipients
CMV血清陽性CBT患者におけるCMV合併症の予防強化

CMV血清陽性のCBTレシピエントはCMV合併症のリスクが増加する。CMV合併症を減少させるため、我々は移植前GCV(5mg/kg、day -8〜-2)、移植後高容量ACV(2g、1日3回)、preemptive therapyのために2週おきにCMV-PCRのモニタリングを行うこととした。ハザード率とCMV合併症の累積率を予防強化したレシピエントとhistorical cohortを比較した。72人のCMV合併症のうち29人(40%)が標準予防、43人(60%)が新たな強化予防を受けた。ハザード率は強化レジメンで行った群がCMV合併症が低く(HR 0.27, 95%CI 0.15-0.48, p<0.001)、1年以内のCMV感染が低かった(HR 0.11, 95%CI 0.02-0.53, p<0.006)、再活性化があった患者においても、CMV特異的治療が必要であった期間も短かった(42% vs 70%)。強化治療はCMV再活性およびCMV感染を有意に減少させる。

平成23年12月5日
西本光孝

 

A 2-step approach to myeloablative haploidentical stem cell transplantation: a phase 1/2 trial performed with optimized T-cell dosing
2段階ハプロ移植:至適T細胞数の検討

ハプロ移植におけるGVHDの発症の閾値T細胞数は、過去の研究で分かっているが、生着、免疫再構築、再発に関する至適T細胞数はほとんど分かっていない。これを解明するために27例の患者でTBIを用いた前処置で、T細胞数を固定した2 stepのハプロ移植を行った。前処置後、T細胞数を輸注し、CYでT細胞数の寛容化を行い、最後にCD34陽性細胞を輸注するという方法である。2x108/kgのT細胞輸注では、安定した生着、免疫再構築が得られ、GVHDも許容範囲であった。III-IVのGVHD, TRM, relapse-related deathは7.4%、22.6%、29.6%であった。28-56カ月のフォローアップ期間で、3年のOSは全体で48%、移植時CRの症例は75%であった。T細胞数を固定したハプロ移植は有望な成績で、特に、good-riskの成績が良かった。今後、2 step ハプロ移植のさらなる研究が待たれる。

平成23年11月21日
中前博久

 

Comparison of Unrelated Cord Blood Transplantation and HLA-Mismatched Unrelated Bone Marrow Transplantation for Adults with Leukemia
成人白血病における臍帯血移植とHLA一致非血縁骨髄移植の比較

本邦でのalternative sourceでの比較。351名のSingle CBT(0-2ミスマッチ)と、1028名のHLAミスマッチuBMT(1-2ミスマッチ)の比較。(ミスマッチは抗原レベルもしくはアリルレベル。)16歳以上の骨髄破壊的移植で疾患はALL,AML,MDS。結果は、HLA-DRミスのuBMTに比較して、CBTの死亡率のRRは0.85(95%CI:0.68-1.06, p=0.149)。CBTは好中球回復で有意に劣り(RR=0.50, 95%CI:0.42-0.60, p<.001)、TRMリスクは低かった(RR=0.68, 95%CI:0.50-0.92, p=.011)が、再発に関しては差がなかった(RR=1.28, 95%CI:0.93-1.76, p=.125。)CBTはHLA-DR1ミスマッチと同様のsurvival outcomeをもつ、reasonableな代替ソースである。

平成23年11月14日
中前美佳

 

A phase2 study of lenalidemide monotherapy in patients with deletion 5q acute myeloid leukemia:Southwest oncology group study
q-を有する急性骨髄性白血病に対するレナリドマイド単独治療

5q-の染色体異常をもつ高齢の急性骨髄性白血病の患者に対して標準的な化学療法を行っても予後不良である。今回のPhase2試験では標準的な治療を断念した5q-を持つ未治療の高齢の急性白血病の患者にレナリドマイドの単独投与を行い、その効果と安全性を確認した。患者は寛解導入療法としてレナリドマイド50mgを28日間投与した。その後、病気の進行や許容できない有害事象がでるまで維持療法として28日を1サイクルとし、そのうちの21日間レナリドマイド10mgを投与した。 37人の評価対象となる患者の、年齢中央値は74歳(範囲:60〜94歳)であり、21人が女性、19人( 51%)が先行病変としてMDSを認め、30人(81%)は治療前に中央センターで治療前の細胞遺伝学的研 究を評価された。 6人が5q-単独、1人が5q-・8+、23人が複雑核型、7人が5q−を局所的に認める細胞遺伝学的異常があった。 14人の患者(38%)が完解導入療法を達成できた。7人が完解導入療法中になくなり、8人が病状悪 化し、7人が非致死的な有害事象があり、1人がホスピスに入った。 8人の患者が維持療法を開始できた。 5人(14%)の患者がPRあるいはCRを得ることができた。その内訳は2人が5q-のみ、3人が複雑核型の患者であった。 RFSは5か月(0〜19か月)。OSの中央値は2か月であった。 結論として、レナリドマイドは5q-を持つ高齢の急性骨髄性白血病の患者に弱い効果しかもたらさない。

平成23年11月7日
南野 智

 

Allogenic stem cell transplantation for myelodysplastic syndromes with bone marrow fibrosis
骨髄線維化を伴うMDSに対する同種造血幹細胞移植

<背景>
MDSにおける骨髄線維化は予後不良因子であるが、線維化の程度が移植成績に影響するかどうかは不明である。
<試験デザインと方法>
同種造血幹細胞移植を施行したMDS患者のうち、組織学的評価された患者(721名)を線維化なし(483名)、軽度?中等度線維化(199名)、高度線維化(39名)に分類し、生着、治療関連死、再発および生存について解析した。
<結果>
線維化の程度と病状や染色体異常の関連はみられなかった。移植後30日の生着率は、線維化のない群で93%であり、軽度線維化群(89%)と高度線維化群(75%)は有意に低かった(P=0.009)。好中球生着は軽度線維化群(中央値17日)と高度線維化群(中央値20日)で線維化のない群(中央値16日)より有意に遅延した(p=0.002)。移植後3年時点での累積再発率は、高度線維化群(47%)で、軽度?中等度線維化群(28%)および線維化のない群(27%)より有意に高かった(p=0.04)。同様に3年無病生存率は高度線維化群(17%)で、線維化のない群(42%)および軽度?中等度線維化群(38%)より有意に低かった(P=0.002)。高度線維化は生存を低下させる独立した因子であった(HR 1.9、P=0.006)。
<結論>
MDS患者では、高度の線維化だけが同種移植後の生存に悪影響を与え、軽度〜中等度の線維化では線維化がない場合と予後に差はなかった。

平成23年10月31日
稲葉晃子

 

Long-Term Survival and Late Deaths After Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation
同種造血幹細胞移植後の長期生存と死亡

<目的>
 同種造血幹細胞移植は治癒をもたらす一方で致死的な合併症を引き起こすことがある。死亡の大多数は移植後2年以内に起こる。今回、移植後2年時点で生存していた症例の長期生存について検証を行った。
<患者および方法>
 CIBMTRに登録されている2004年までに行われた骨髄破壊的移植のうち、移植後2年時点で無病生存していた10632人(AML、ALL、MDS、リンパ腫、重症AA)について検討した。
<結果>
 観察期間の中央値は9年で、3788人の観察期間は10年以上であった。移植後10年生存率は85%であった。晩期死亡の主なリスクファクターは高齢と慢性GVHDであった。悪性疾患に対して移植された患者の最大の死因は再発であった。晩期再発の最大リスクファクターは移植時の疾患リスクが進行期であった。非再発死亡の主要なリスクファクターは高齢とGVHDであった。年齢、性別、国籍をマッチさせた一般集団と比較した場合、相対的な死亡リスクは年々減少していくものの、リンパ腫以外の疾患で晩期死亡は多かった。
<結果>
 移植後2年時点での生存者は長期生存が期待できるが、一般集団と比較すると生存率は低い。改善のためには早期の移植、GVHDコントロール、免疫再構築の増強、毒性の少ない移植レジメン、晩期合併症の予防や早期治療が必要である。

平成23年10月24日
萩原潔通

 

Voriconazole versus itraconazole for antifungal prophylaxis following allogeneic haematopoietic stem-cell transplantation
同種造血幹細胞移植における真菌感染症予防(VRCZ vs ITCZ)

同種造血幹細胞移植(alloHCT)レシピエントに対する抗真菌予防は侵襲性糸状菌感染、 酵母菌感染(IFIs, invasive fungal infections)を防ぎ、かつ忍容性の良いものでな ければならない。この前向き、無作為化、非盲検、多施設研究はalloHCTレシピエン トにおいてvoriconazole (234名)とitraconazole(255名)の有効性と安全性を比較検 討した。主要複合エンドポイントは予防の成功で、100日以上治療薬が投与可能(中断 は14日以内)でproven/probable IFIがなくday 180まで生存を必須とした。予防成功 はitraconazoleよりvoriconazoleで有意に高く(48.7% vs 33.2%, p<0.01)、voricona zole群でより多く100日間の忍容性があった(53.6% vs 39.0%, p<0.01; 総投与期間の 中央値 96 vs 68日)。最も多い(>10%)治療関連有害事象はitraconazoleで嘔吐(16.6%) 、嘔気(15.8%)、下痢(10.4%)、voriconazole で肝毒性/肝機能異常(12.9%)であった。 itraconazole群でより多く他の抗真菌剤を全身投与された(41.9% vs 29.9%, p<0.01)。 voriconazole群とitraconazole群のそれぞれにおいてday 180までのproven/probable IFI(1.3% vs 2.1%)の発症と生存(81.9% vs 80.9%)に差はなかった。主要複合エンド ポイントにおける差に基づき、alloHCT後の抗真菌予防としてvoriconazoleはitracon azoleより優れていた。voriconazoleは他の抗真菌剤の全身投与必要性をより低くで き、有意に長期間投与が可能であった。

平成23年10月17日
康 秀男

 

Donor-specific anti-HLA antibodies predict outcome in double umbilical cord blood transplantation
ドナー特異的抗HLA抗体は複数臍帯血移植の治療成績に影響する

ドナー特異的抗HLA抗体(DSA)に対する画一的な測定法を用いて、複数臍帯血移植における治療成績におけるDSAの効果を判定することを試みた。DSAはgraft failureの頻度の増加(DSAなし:5 .5%、1つのみDSA+:18.2%、2つともDSA+:57.1%、p=0.0001)、好中球生着日(DSAなし:21日、 DSAあり:29日、p=0.04)、および100日を超えての死亡又は再発(DSAなし:23.6%、一つのみDS A+:36.4%、2つどもDSA+:71.4%、p=0.01)と有意に関連した。DSA反応の強度はgraft failure と相関した(平均蛍光強度の中央値:17650 vs 1850、p=0.039)。両方のCBユニットに対するDS Aを有する患者とDSAを有さない患者間での長期PFSおよびOSにおいて有意差を認めた(3yr PFS: 0% vs 33.5%、p=0.004、3yr OS:0% vs 45%、p=0.04)。結論として、臍帯血移植を受けるレシピエントにおいてDSAの評価を行い、ホ ストに存在するDSAを含むCBユニットの使用は避けるべきである。

平成23年10月3日
中根孝彦

 

Cord colitis syndrome in cord-blood stem-cell trasnplantation
臍帯血移植時の臍帯血関連大腸炎症候群

Background
下痢は(hematopoietic stem cell transplantation)HSCTの合併症として頻度が高い。主要な下痢の原因としてはaGVHD,感染,薬物が挙げられる。臍帯血移植後に,我々は培養陰性で抗生剤に感受性があり,他のどの原因にも起因しない新しい症候群を観察した。
Methods
2003年3月から2010年3月の間に我々の施設の臍帯血移植を行ったすべての患者において,後方視的コホート研究を行った。
Cord colitis syndromeは臍帯血移植が行われた患者で,aGVHD,ウィルスや細菌感染症,その他特定できる要因が原因でない持続する下痢と定義される。
Results
我々の施設で臍帯血移植が行われた104人の患者のうち,11人(10.6%)がcord colitis syndromeを発症した。1年累積発症率は0.16、発症までの中央値は131日(88日-314日)である。すべての患者は10日から14日のメトロニダゾール単剤またはフルオロキノロン併用によるempirical therapyに反応した。11人中5人(45%)は抗生剤投与を終了した後,即座に再発したが,抗生剤再投与に反応があった。組織学的検査では,cord colitis syndromeを発症したすべての患者に,慢性活動性腸炎(chronic active colitis)の所見があり,11人中7人(64%)の患者に肉芽腫性炎症(granulomatous inflamation)が存在した。
Conclusions
Cord colitis syndromeは臍帯血移植後のaGVHDやその他要因の下痢とは臨床的にも組織学的にも明確に区別され,臍帯血移植後の患者に比較的よく認められる。Cord colitis syndromeは臍帯血移植後の原因がわからない下痢では鑑別に挙げられるべきである。

平成23年9月26日
吉村卓朗

 

ABVD versus BEACOPP for Hodgkin's lymphoma when high-dose salvage is planned.
ホジキンリンパ腫に対するABVD療法とBEACOPP療法の比較・・・再発・再燃時に自家 移植療法を計画した場合

背景:進行期ホジキンリンパ腫治療において,ブレオマイシン,エトポシド,ドキソルビシン,シクロホスファミド,ビンクリスチン,プロカルバジン,プレドニゾンを併用する強化レジメン BEACOPP療法は,ドキソルビシン,ブレオマイシン,ビンブラスチン,ダカルバジンの併用(ABVD)に代わる新たな標準治療として提唱されている。

方法:治療歴のない予後不良なホジキンリンパ腫患者 331例(IIB -IV 期,または国際予後スコア3以上)を,BEACOPP群,ABVD群のいずれかに無作為に割り付け,その後 必要に応じて局所放射線療法を行った。初回治療後に残存病変または進行病変PDが認 められた症例は,最新の高用量救済療法プログラムに沿って治療することとした。追跡期間中央値は 61 ヵ月であった。

結果:7年間初回増悪がみられない率は,BEACOPPによる初回治療を受けた患者では 85%, ABVDによる初回治療を受けた患者では73%であり(P=0.004),7年無イベント生存率はそれぞれ78%,71%であった(P=0.15)。65例(BEACOPP群 20例,ABVD群 45例)が計画されていたサルベージ・ASCTに至った。 最終的に,初回治療後に進 行または再発が認められた BEACOPP群の 20例中 3例と ABVD群の 45例中 15例 が無病生存していた。救済療法を含む計画された全治療の完了後,7年間 2回目の増悪がみられない率は,BEACOPP群で 88%,ABVD群で 82%であり(P=0.12),7年全生存率はそれぞれ 89%,84%であった(P=0.39)。重度の有害事象の発生頻度は BEACOPP群のほうが ABVD群よりも高かった。

結論 BEACOPP群では ABVD群と比較して初期の腫瘍コントロールは良好であったが,長期臨床転帰に両レジメン間で有意差は認められなかった。

平成23年9月12日
寺田芳樹

 

First line Treatment for primary testicular diffuse large B-cell lymphoma with rituximab-CHOP, CNS prophylaxis, and contralateral testis irradiation: Final results of an international phase II trial.
精巣原発びまん性大細胞リンパ腫に対するR-CHOP、中枢再発予防、対側精巣への放射線治療による初期治療

{目的}精巣原発リンパ腫(primary testicular lymphoma,PTL)は対側精巣・中枢神経(CNS)・節外再発を来たしやすく予後不良である。これらの再発を抑制するためCNS予防と対側精巣への放射線照射(radiotherapy,RT)を組み込んだ免疫化学療法の認容性と効果を検討する国際第二相試験(International Extranodal Lymphoma Study Group 10,IELSG-10)を計画した。本試験はIELSG及びItalian Lymphoma Foundationによって行われた。
{患者・方法}53人(年齢22〜79歳)のstageT/Uの未治療PTL患者に、6〜8コースの21日間隔のR-CHOP(R-CHOP21)・4回のmethotrexate(MTX)髄注(IT-MTX)・対側精巣への30GyのRTを施行、stageUの患者には病巣のリンパ節へのRT(30〜36Gy)も行った。
{結果}全患者にR-CHOP21を、50人にCNS予防を、47人に精巣へのRTを施行した。追跡期間中央値65ヶ月で、5年のprogression-free survival(PFS)・overall survival(OS)はそれぞれ74%(95%CI:59〜84%)・85%(95%CI:71〜92%)であった。10人が再発/病勢進行し、病変はリンパ節2人・節外臓器5人・CNS3人であった。5年の累積CNS再発率は6%(95%CI:0〜12%)で、対側精巣への再発は認めなかった。10人の患者が死亡し、死因はリンパ腫6人・二次性白血病2人・心不全1人・胃癌1人であった。Grade3/4の毒性は、好中球減少28%・感染4%・神経毒性13%であり、毒性による死亡は認めなかった。
{結論}本国際前向き試験は、PTL患者に対するIT-MTX・精巣照射を組み込んだR-CHOP21は良好な成績をもたらす事を示した。RTは対側精巣への再発を抑制するが、CNSの予防に関しては更なる検討が必要である。

平成23年9月5日
相本瑞樹

 

Influence of immunosuppresive treatment on risk of recurrent malignancy after allogeneic hematopoietic cell transplantation
同種造血幹細胞移植後の再発リスクに対する免疫陽性治療の影響

 血液悪性疾患に対してhigh intensityの前処置での同種造血幹細胞移植を受けた2856名の患者を登録し、再発と死亡の割合、時間依存共変量であるGVHD、免疫抑制剤で解析した。Adjusted Cox解析の結果、aGVHD、cGVHDが、共に18ヶ月以上経た後の再発リスクを有意に減らすことが示されたが、18ヶ月以内においては有意差はなかった。GVHDを伴った患者群において、GVHD寛解後に免疫抑制剤を中止することは、再発リスクの増加と関連しなかった。一方、GVHDを伴わない患者では、免疫抑制剤の中止は、最初の18ヶ月以内では、再発リスクの減少と関連したが、GVHDを伴った患者よりも有意に再発率が高かった。つまり、同種移植後のGVHDと再発の関連は、経時的に変化し、GVHDを伴わない患者において、早期に免疫抑制剤を中止することは、18ヶ月以内の再発を予防するかもしれない。18ヶ月以後の再発予防には、その他の何らかの介入が必要とされるかもしれない。

平成23年8月29日
岡村浩史

 

A phase 2 study of the safety and efficacy of rituximab with plasma exchange in acute acquired thrombotic thrombocytopenic purpura
TTP治療におけるリツキシマブの効果と安全性の評価

 急性TTPで入院3日間以内に標準的な治療(PEX、ステロイド)に加えて、rituximab 375mg/m2を週1回(×4)を投与することの安全性と有効性について評価した。臨床結果はrituximabを投与されなかったhistrical control(n=40)群と比較された。試験群は40人中15人がICUに入院が必要で、15%はtroponnin Tレベルが高く、挿管管理が必要であった。2回目のrituximab投与前に、68%はplt>50000/ulで38%はplt>150000/ulであった。rituximab群では非白人と比べて、白人で必要な血漿交換の回数がより少なかった(平均14 vs 21,p=.0095)。ICUに入室していない患者での入院期間は、historical control群と比べて7日であり(p=.04)、特に白人では平均7日間の短縮が見られた(p=.05)。historical control群の57%が中央値18カ月(3-60カ月)で再発したのと比較して、試験群の10%は中央値27カ月(17-31カ月)で再発した(p=.0011)。rituximab群では感染や重大な合併症は認められなかった。結論として、rituximabの安全性と有効性が示され、入院期間と再発は明らかにrituximab群で減少した。rituximabは急性TTPの標準的治療に加えて考慮されるべきである。

平成23年8月22日
備後真登

 

Horse versus rabbit antithymocyte globulin in acquired aplastic anemia
再生不良性貧血治療におけるウマATGとウサギATGの比較

(背景) 重症の後天性再生不良性貧血・造血不全は骨髄幹細胞・前駆細胞の免疫学的な破壊により引き起こされている.ATGとシクロスポリン(CyA)を用いた免疫抑制療法は造血細胞移植に代わる, 血球数と生存率を改善する効果的な治療法である.(USAでは)ウマATGが標準治療ではあるが, ウサギATGの方が末梢血リンパ球を破壊する力が強いためより好まれる傾向がある.
(方法) 2005年12月から2010年7月まで, 各々のATGを使用した標準的レジメンを用いてランダム化試験を単施設で行った.Primary outcomeは6カ月時点での血液学的反応とした. 有効率で25%の違いを検出できるように,
ウマ・ウサギATG各々の群に60名の患者を登録するようデザインした.
(結果) 6カ月時点の血液学的有効率はウマATG(68%: 95%CI 56-80)がウサギATG(37%: 95%CI
24-49)より大きく勝る(P<0.001)という予期しない結果が得られた.
造血細胞移植施行時点でデータ収集を打ち切った場合の3年全生存率はウマATG(96%: 95%CI 90-100)がウサギATG(76%:95%CI 61-95)よりも勝っており(P=0.04), 造血細胞移植を加味しなかった場合も同様にウマATG(94%: 95%CI88-100)がウサギATG(70%: 95%CI 56-86)よりも勝っていた(P=0.008).
(結論) 血液学的有効率と生存率に関して, 重症再生不良性貧血の初期治療としてはウマATGがウサギATGに優っていることが示された.


平成23年8月15日
吉田全宏

 

Percutaneous osteoplasty in the treatment of extraspinal painful multiple myeloma lesions..
脊椎以外の有痛性骨髄腫病変に対する経皮的骨形成術

 経皮的椎体形成術 (percutaneous vertebroplasty: PV) の技術的延長として,NSAID抵抗性あるいは医療用麻薬で治療されている,有痛性で脊椎以外の多発性骨髄腫病変に対する経皮的骨形成術 (percutaneous osteoplasty: PO) の有効性と安全性を評価する.2006年3月から2009年1月までの期間に,上記の病変を伴った39名 (女性:22名),年齢中央値 64歳 (48〜88) を対象とした.全例で技術的に成功した.Visual analog pain score (VAS) 平均値は8.4±1 (6〜10,治療前) から2.1±1.7 (0〜7,施術24時間値) まで改善した.6例 (15%) で完全に除痛が得られた. 16例 (41%) で鎮痛剤の投与継続を必要とした一方で,医療用麻薬で疼痛管理されていた17例 (43.5%) がNSAIDでのコントロールが可能となった.6例 (15%) では痛みの持続のため医療用麻薬を継続した.全例で少なくとも6箇月の経過観察期間をフォローし,長期フォローでのVAS中央値は2.4±2.1 (0〜9) へ低下した.5名 (13%) で完全な除痛が継続し得ており,術後18箇月時点においても再燃なく経過している.従来の治療に抵抗性であった脊柱以外の骨髄腫病変に対しての治療としてPOは安全で有効であり,長期の除痛を得ることで鎮痛剤減量が可能となることが本研究により示し得た.


平成23年8月8日
間部賢寛

 

Anti-HLA antibodies in double umbilical cord blood transplantation
複数臍帯血移植における抗HLA抗体
参考文献:The impact of anti-HLA antibodies on unrelated cord blood transplantations.Takanashi M et al.  Blood.116 2839-2846 2010

 最近、抗HLA抗体によるHVG alloreactionは同種造血幹細胞移植やシングル臍帯血移植において生着不全のリスクになることが示唆されている。本研究では126例のdCBTにおいて抗HLA抗体が生着に及ぼす影響を評価した。18例が少なくとも1つのCBTにDSA(donor directed HLA specific antibodies)を有していた。1つのUCBにDSAを有する12例中9例、2つのUCBにDSAを有する6例中5例で生着を認めた。累積生着率はDSAありなしで結果は同等であった(83% vs 78%)。我々のデータではCsA・MMFを使用したミネソタで用いている前処置レジメンにおいては抗HLA抗体は生着にnegativeな影響は示されなかった。またUCBの選択におけるルーチンでのHLAスクリーニングは議論がある。dCBTにおける抗HLA抗体の効果や移植予後に関する影響に関してはさらなる研究が必要である。


平成23年8月1日
西本光孝

 

Recovery of B-cell homeostasis after rituximab in chronic graft-versus-host disease.
慢性的GVHDにおけるリツキシマブ投与後のBリンパ球恒常性の再構築

 B-cell-activating factor of the tumor necrosis factor family(BAFF)およびBリンパ球に対 するリツキサンの効果を研究することで、慢性GVHDの病態生理におけるBリンパ球恒常性の意義 を検証できる。今回、リツキサン治療後の中央値が25カ月で、Bリンパ球総数がおおむね回復し ていた20例の慢性GVHDを吟味した。 55%の症例で慢性GVHDは安定/改善で、これらの患者群ではリツキサン治療抵抗群に比較してBリ ンパ球総数は有意に増加していた。リツキサン治療前のBリンパ球総数は、慢性GVHDの各グルー プ間に有意差がなかったが、治療後に安定/改善の経過となった群では、幼弱Bリンパ球分画の増 加を認めた。リツキサン治療後、すべての症例でBAFFレベルの上昇を認めた。安定/改善群では、 Bリンパ球の回復と同期して、BAFF/Bリンパ球数比およびCD27+B細胞分画の有意な減少を認め、 末梢性Bリンパ球プールは主にナイーブIgD+B分画で構成されていた。対照的にリツキサン治療抵 抗群では、BAFFレベルの高値が持続し、BAFF-R:low CD20:lowの表面抗原を有する活動性Bリンパ 球分画が有意であった。 ナイーブBリンパ球の再構築とBAFF/B細胞比の減少は、慢性GVHDにおけるリツキサン治療後の治 療反応性と関連している。


平成23年7月25日
林 良樹

 

Chronic immune stimulation might act as a trigger for the development of acute myeloid leukemia or myelodysplastic syndromes.
慢性的な免疫刺激がAMLやMDS発症のトリガーになるかも

 AMLやMDSにおける免疫刺激の役割の検討のために、過去の感染症や自己免疫疾患との関連について調査。スウェーデンの大規模疫学研究。9219名のAML,1662名のMDSと42878名のmatched control。結果は、過去の感染症歴はAML(OR 1.3、95%CI 1.2-1.4)とMDS(OR 1.3、95%CI 1.1-1.5)の発症リスクを増加させた。AMLの潜在期間を除くため、3年以上前の感染に区切って検討しても関連は残った。自己免疫疾患については、AMLでOR 1.7、95%CI 1.5-1.9、MDSでOR 2.1、95%CI 1.7-2.6であり、発症リスクを上げた。過去の慢性免疫刺激はAML、MDSのトリガーとして働くのかもしれない。


平成23年7月11日
中前美佳

 

Alternative donor transplantation: results of parallel phase II trials using HLA-mismatched related bone marrow or unrelated umbilical cord blood grafts
HLAミスマッチ血縁同種移植と複数臍帯血移植の比較

 BMT CTNで適切な血縁ドナーがいない白血病、リンパ腫患者を対象に2つのphase IIの並行試験を行った。RICを非血縁複数臍帯血移植あるいはハプロ移植に用いた。両方の移植前処置でcyclophosphamide、fludarabine+200 cGy TBI、GVHD予防はカルシニューリンとMMFを用いた。ハプロ移植ではpost-CYをday +3、+4に行った。1年のOS、PFSは、複数臍帯血がそれぞれ、54%と46%であた(n=50)、ハプロ移植は62%と48%であった(n=50)。Day56の好中球回復は複数臍帯血94%が、ハプロ移植96%であった。Day100のgrade II-IVのGVHDは複数臍帯血が40%、ハプロ移植32%であった。1年の非再発死亡(NRM)と再発率はそれぞれ、複数臍帯血が24%、31%、ハプロ移植7%、45%であった。この結果から、複数臍帯血、ハプロ移植は、いずれも代替ドナーソースとしての有効性が示された。現在、多施設共同のランダム化試験を準備中である。これらの試験はwww..clinicaltrials.gov under NCT00864227(BMT CTN 0604)、NCT00849147(BMT CTN 0603)に登録された。


平成23年7月4日
中前博久

 

Long-term follow-up of a comparison of nonmyeloablative allografting with autografting for newly diagnosed myeloma
多発性骨髄腫に対するタンデムASCT(自家移植)とASCT+同種移植の比較試験の長期フォロー研究

 新規薬剤(サリドマイド、レナリドマイド、ボルテゾミブ等)の導入以前に、HLA一致の血縁ドナーの有無にもとづいて、新規発症の多発性骨髄腫の患者に対する臨床試験を計画した。初回治療に腫瘍量の減量目的で自家移植を行った後、(TBI 2Gy単独での前処置による)骨髄非破壊的同種骨髄移植(tandem auto/mini allo)あるいはメルファランをベースとした2回目の自家移植(tandem auto)を行った。ここでは、長期間におよぶ臨床試験の結果を報告するとともに、多発性骨髄腫における最近の著しい治療の進歩を考慮してこの臨床試験の結果について論じる。
フォローアップの中央値は7年間であった。HLA一致の同胞がいた80人の患者において、OS(全生存)は中央値に達しておらず(p=.001)、EFS(無イベント生存)は2.8年であった(p=.005)。HLA一致の同胞がいなかった82人ではOSは4.25年で、EFS 2.4年であった。(ITT解析)
骨髄非破壊的同種骨髄移植をうけた58人の患者において、OSは中央値に達しておらず(p=.02)、EFSは39か月であった(p=.02)。一方で、2回の自家移植を受けた46人において、OSは5.3年で、EFSは33か月であった。(AT解析)
この2つのコホート(骨髄非破壊的同種骨髄移植をうけた群および2回の自家移植を受けた群)で完全寛解に達した患者は、それぞれ53%と19%が完全完解を維持した。 また、新規薬剤を用いて救援化学療法をされた再発患者においては、救援治療の開始からのOSは、骨髄非破壊的同種骨髄移植をうけた群は中央値に達していなかったが、2回の自家移植を受けた群では1.7年であった(p=.01)。
同種骨髄移植は長期生存が見込め、標準的な自家移植にくらべてDFS(無病生存)を延長する。


平成23年6月27日
南野 智

 

Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplas

初回治療の反応は良好であるが、短期間で再発する。up-frontでの同種移植により予後が改善する可能性がある。

平成23年6月20日
稲葉晃子

 

Cotransplantation of mesenchymal stem cells might prevent death from graft-versus-host disease (GVHD) without abrogating graft-versus-tumor effect after HLA-mismatched allogeneic transplantation following nonmyeloablative conditioning
骨髄非破壊的前処置を用いたHLAミスマッチ造血幹細胞、間葉系幹細胞の同時移植

 骨髄破壊的前処置を用いた同種造血幹細胞移植の際に間葉系幹細胞の同時移植を行うと、生着促進効果やGVHD予防効果が得られるという報告がある。本研究は、骨髄非破壊的前処置を用いたHLAミスマッチドナーからの末梢血幹細胞移植にて間葉系幹細胞の同時移植を行い、その安全性について検討した。血液悪性疾患患者20名に対して、第3者(造血幹細胞移植提供者とは別の非血縁ドナー)からの間葉系幹細胞同時移植を行った(Flu+TBI 2Gy, HLAミスマッチ非血縁PBSCT)。主要評価項目は安全性で、day 100での非再発死亡(NRM)35%未満と定義した。結果は1人が生着不全をおこしたが、残り19人全員生着した。Day 100のII‐IV aGVHDは35%、中等症/重症のcGVHDは65%に認めた。1年NRM 10%、1年再発率30%、1年OS 80%、1年 PFS 60%、1年のGVHD死亡またはGVHDに伴う感染症死亡率10%であった。この結果は16人のhistoric group(骨髄非破壊的前処置を用いたHLAミスマッチPBSCT)の結果より良好であった(1年NRM 37%(P=0.02)、1年再発率25%(NS)、1年OS 44%(p=0.02)、1年 PFS 38%(p=0.1)、1年のGVHD死亡またはGVHDに伴う感染症死亡率31%(p=0.04)。骨髄非破壊的前処置を用いたHLAミスマッチ造血幹細胞移植での間葉系幹細胞の同時移植は安全に行えると思われる。

平成23年6月13日
萩原潔通

 

Early human cytomegalovirus replication after transplant is associated with a decreased relapse-risk: evidence for a putative virus-versus-leukemia effect AML patients
同種造血幹細胞移植を受けた成人AML患者において、早期のCMV増殖が白血病再発を減らす

 同種造血幹細胞移植(alloSCT)を受けた成人AML患者(median 47, 18-73)266名において、早期のCMV増殖が白血病再発に与える影響について評価した(10/10高分解能HLA一致非血縁ドナー148例、血縁118例)。患者とドナーの移植前のCMVの血清状態から67%の患者(167例)がCMV再活性化のリスクにあった。77例において、pp65 抗原血症検査で同定された初回のCMV増殖はalloSCT後中央値46日(25-108)に認めた。関連ある競合リスク因子をすべて考慮に入れて、alloSCT後10年の血液学的再発の累積発症率(CIR)は早期の抗原血症がない場合に42%(95%CI:35-51)であったが早期抗原血症がある場合9%(95%CI:4-19)であった(p<0.0001)。早期CMV増殖に関連した再発リスクの実質的かつ独立した減少はgrade II-IV急性GVHDと慢性GVHD、pp65 抗原血症を時間依存性共変量として扱った多変量解析によって確認された(HR 0.2, 95%CI:0.1-0.4, p<0.0001)。これは成人AML患者の均質な集団において、早期CMV増殖後に白血病再発リスクが他の共変量に独立して実質的に減少したことを示す最初の報告である

平成23年6月6日
康 秀男

 

Tacrolimus and mycofenolate mofetil as GvHD prophylaxis following nonmyeloablative conditioning and unrelated hematopoietic SCT for adult patients with advanced hematologic disease
NIHクライテリアでaGVHDとcGVHDリスクを評価

 GVHD予防としてタクロリムスとMMFを用いた非血縁ドナーからのミニ移植(Flu 90mg/m2+TBI 2G)での同種移植50例を評価した。患者年齢中央値は51歳(25-67)。観察期間中央値は1123日(47-2729)で、20人(40%)が無病生存。OSは、57%(1yr)、47%(2yr)、39%(3yr)。移植前寛解であった患者、active diseaseの患者に比べ有意にOSが良かった(P=0.01)。II-IVおよびIII-IV aGVHDは54%(27人)、16%(8人)。注目点として、aGVHDの発症時期の中央値はday 66(12-119)と顕著に悪かった。評価可能であった46人において、cGVHD発症は56%(26人)、limitedが34%(16人)、extensiveが21%(10人)。非血縁移植に対する前処置+FK・MMFのGVHD予防は安定した生着、効果的なaGVHD、cGVHD予防をもたらす。とりわけ重症の早期発症aGVHDの頻度を減らす。

平成23年5月30日
中根孝彦

 

Attenuated immunochemotherapy regimen (r-miniCHOP) in elderly patients older than 80 years with diffuse large B-cell lymphoma: a multicentre, single-arm, phase 2 trial
80歳以上の超高齢DLBCLに対する減量CHOPに標準量のRituximab併用療法(R-miniCHOP)療法の多施設前向き研究

背景DLBCLは高齢者に多い悪性腫瘍である。若年者では標準治療が定まっているが、80歳以上の高齢者では前向き試験がほとんどされていない。超高齢者DLBCLに対して減量CHOPに標準量のRituximab併用療法の有効性と安全性を検討した。
方法80歳以上のDLBCLに対して前向き多施設single-arm phase2研究を実施した。フランスとベルギーの38施設(GELA)で実施され、全例6サイクルの.Rituximab併用の低用量CHOP(day1にRituximab 375r/m2、cyclophosphamide 400mg/m2、doxorubicin 25mg/m2、vincristine img/m2、day 1-5にprednisone 40mg/m2)を3週毎に施行した。主要評価項目はOS。
結果:2006年1月から2009年1月まで150例が登録され、149例が適格例で、intention to treat解析を行った。年齢中央値は83歳(80-95)で、フォローアップ中央値は20ヶ月(0-45)で、OSの中央値は29ヶ月で、2年OSが59%であった。多変量解析でAlb低値(35g/dL未満)が唯一OSに影響する因子であった(HR 3.2、95% CI 1.4-7.1、p=0.0053)。PFSの中央値は21ヶ月で、2年のPFSは47%であった。58例の死亡が報告され、33例は悪性リンパ腫の進行、12例は治療関連毒性であった。毒性は血液毒性が主でG-3以上の好中球減少は59例、FNは11例であった。

結論R-miniCHOP療法は80歳以上の高齢者に対して有効性と安全性においての折衷案を示している。R-miniCHOP療法は超高齢者DLBCL例の新規の標準治療となりうる。

平成23年5月23日
寺田芳樹

 

Imatinib mesylate versus allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for patients with chronic myelogenous leukemia in the accelerated phase
CML-AP(移行期)例に対する同種移植とimatinibの比較検討(コホート研究)

 移行期慢性骨髄性白血病(AP-CML)に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)とimatinibの相対的な有用性は過去に検討されていない。このコホート試験ではimatinib治療群(n=87)とallo-HSCT群(n=45)の治療成績の比較を目的とした。全患者群の多変量解析でCMLの罹患期間≧12ヶ月・ヘモグロビン<10mg/dl・末梢血の芽球≧5%が全生存率(OS)及び無進行生存率(PFS)に対する独立した負の因子であった。低リスク群(上記因子0)では両治療群とも同等の生存率であり、6年の無イベント生存率(EFS)OS・PFSは80%以上であった。中間リスク群(因子1)では両治療群でEFS及びOSは差がなかったものの、6年のPFSはimatinib群及びallo-HSCT群でそれぞれ55.7%及び92.9%(P=0.047)であった。高リスク群(因子≧2)ではimatinib群はallo-HSCT群にはるかに劣り、5年のEFS・OS・PFSはそれぞれ9.3%対66.7%(P=0.034)・17.7%対100%(P=0.008)・18.8%対100%(P=0.006)であった。高リスク及び中間リスク群のAP-CMLにおいてはallo-HSCTはimatinibと比し有意に生存率を改善するが、低リスク群では両治療は同等に有効と結論付ける。

平成23年5月16日
相本瑞樹

 

Dysglycemia Following Glucocorticoid Therapy for Acute Graft-versus-Host Disease Adversely Affects Transplantation Outcomes
同種移植後の急性GVHDに対するsteroid治療による糖代謝異常は移植予後に悪影響

 糖代謝異常は、同種幹細胞移植後の急性GVHDに対するグルココルチコイド治療の一般的な合併症である。急性GVHDに対するグルココルチコイド治療を行った幹細胞移植患者173例の予後における血糖異常の影響について調査した。147例の患者で幹細胞移植後12週のランドマーク解析を行った。急性GVHD発症日の中央値は移植後21日目(5‐79日)であった。グルココルチコイド治療期間の中央値は381日間(15‐1632)であった。血糖値はグルココルチコイド治療開始時から死亡または、最後のフォローアップまでの間得られ。全部で11588の血糖値が得られた。各個人毎のパラメーターの中央値(範囲)は最高血糖値292r/dL(128-694)、最低血糖値75r/dL(34-142)、平均142r/dL(86-327)であり、標準偏差は46r/dL(12-108)であった。基礎疾患としての糖尿病は有意に高い最高血糖値、平均血糖値、標準偏差値と関連した。フォローアップ期間の中央値は20ヶ月間(3-55)であり、OSの中央値は33.7ヶ月(16.4-生存)であった。多変量解析では最高血糖値、平均血糖値、標準偏差値がOSと関連し、最高血糖値、平均血糖値がNRMと関連した。0-60r/dLの間の最低血糖値は、OSの低下、NRMの増加と関連した。治療にもかかわらず、最高血糖値が200r/dL以上であった患者はOSの低下、NRMの増加と関連した。これらのデータは急性GVHDに対してグルココルチコイド治療を行う患者における血糖異常の独立した悪影響を示し、厳格な血糖コントロールの必要性を示している。

平成23年5月9日
岡村浩史

 

Fertility considerations and preservation in haemato-oncology patients undergoing treatment

造血器腫瘍患者の妊孕性

 悪性リンパ腫や白血病のような血液悪性腫瘍患者の生存率の改善により、注目される領域は治療による続発症の理解や予防にシフトしている。これらの中で、不妊は生殖年齢の患者にとって最も失望させる結果となるものの1つである。治療による性腺機能不全の頻度は、年齢、性別の違い、化学療法の用量や種類、腹部骨盤領域への放射線照射の蓄積量に依存する。興味深いことに悪性リンパ腫の男性患者の間では、治療前に妊孕性が低下していることもある。現在、妊孕性を温存する唯一確立された方法は、精子、卵子、受精卵の凍結保存と、放射線照射時の卵巣の転置である。性腺組織の凍結保存/再移植やホルモン抑制などの他のいくつかの方法は、まだ調査中である。思春期以前は患者では受精卵や精子の保存ができないため、妊孕性の温存については特別な補法がある。

平成23年5月2日
備後真登

 

Association between serum high-molecular-weight adiponectin level and the severity of chronic graft-versus-host disease in allogeneic stem cell transplantation recipients
NIHクライテリアでaGVHDとcGVHDリスクを評価

脂肪組織から分泌されるアディポネクチンが肥満関連疾患や自己免疫疾患において重要な役割を果たすという報告がなされている。26名の健康人と34名の同種造血幹細胞移植後の患者とでアディポネクチンの血中濃度を比較した。アディポネクチンの血中濃度は慢性GVHDを有する患者群では、有しない患者群と比較して有意に高かった(女性:21.7±11.0 vs 9.1±6.1μg/mL、P<0.001、男性:10.1±6.8 vs 4.3±2.9μg/mL、P=0.003)。多変量解析ではアディポネクチン高値は女性(β-coefficient 8.2、P<0.0001)、慢性GVHDの重症度(β-coefficient mild 6.6、moderate 12.7、severe 15.6、P<0.01)に関連していた。さらに、アディポネクチン値は慢性GVHDの進行に伴い増加し、改善に伴い減少し、病状が安定している場合は変化しなかった。アディポネクチンは慢性GVHDの重症度と関連があり、慢性GVHDの病態生理に何らかの役割を果たしている可能性がある。

平成23年4月25日
吉田全宏

 

Neutrophil/lymphocyte ratio predicts chemotherapy outcomes in patients with advanced colorectal cancer.
進行期結腸直腸癌患者における化学療法の成績は, 好中球/リンパ球比率で予測される

背景:転移性結腸直腸癌では治療の進歩により, この10年で生存率が大きく改善した. しかしながら反応性や毒性を予測可能で, 世界的に広く適用し得るbiomarkerは依然として同定されていない. 好中球/リンパ球比率 (neutrophil/lymphocyte ratio : NLR) のように白血球分画に基づいた炎症性指標は, 簡便かつ容易なbiomarkerとして利用し得る可能性がある.
方法2群のコホートから, 初回治療として緩和的化学療法を受けた計349名の切除不能転移性結腸直腸癌患者の臨床情報および検査結果が解析された. NLRを含む炎症性指標や治療反応性, 増悪および生存などの予後変数について調査した.
結果training cohortでは, combination-agent chemotherapy (p=0.001) およびNLR5 (p=0.003) が臨床上の改善に寄与した. 逆に, PS1 (p=0.002), NLR>5 (p=0.01), Alb血症 (p=0.03) および単剤治療 (p<0.0001) は増悪因子であった. PS1 (p=0.004), NLR>5 (p=0.002) OS悪化の予測因子であった. またNLRvalidation cohortにおいて独立したOS予測因子であると確認された (p<0.0001). 1コースの化療後にNLRが正常化した患者群ではPFSが改善する結果となった (p=0.012).
結論2つの独立したコホートで, NLRは炎症性biomarkerとして臨床経過を予測し得る可能性が示された. 転移性結腸直腸癌患者では, 慢性的な炎症反応が経過に影響を及ぼすことの重要性も認められた


平成23年4月18日
間部賢寛

 

Features of Epstein-Barr Virus (EBV) reactivation after reduced intensity conditioning allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
RIC allo-HSCT後のEBV再活性化

 RIC allo-HSCTを受けた175名の連続した患者におけるEBVの再活性化およびEBV関連LPDの発症及び予測因子について調べた。移植後6ヵ月でのEBV累積再活性化率は15%で、LPDは1人もでなかった。EBV量が1000コピーを2回以上超えた17名の患者はリツキサン治療を受けた。フォローアップ中央値は655日でEBV再活性化、非再活性化群で統計学的有意差はなかった。多変量解析で前処置にATGを使用した群が唯一のリスク因子であった。前処置でATGを使用することがEBV再活性化の高リスク群である。しかし、これは予後に影響するものではなく、EBV量のモニタリングと早期のpreemptiveなリツキサンの使用によってEBV関連LPDのリスクを減らすことができる

平成23年4月11日
西本光孝

 

Bortezomib Plus CHOP-Rituximab for Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma and Mantle Cell Lymphoma
初発未治療のDLBCLMCLに対するBortezomib+R-CHOP療法

 初発未治療のDLBCLMCLに対してR-CHOPBortezomibを加えた PhaseI/II studyBortexomib6cycleR-CHOPに加え0.7mg/m^2からDay14 に投与され、最終的には1.3mg/m2が許容された。効果は、MCLについてはR- CHOP単独のhistorical controlを上回る結果であったが、DLBCLについてはR-CHOPとの差異は見られなかった。ただし予後不良群であるnon-GCB typeの生存がGCB typeの生存と差がないことが注目される結果であった。
平成23年4月4日
井上敦司

 

Comparative analysis of risk factors for acute and for chronic graft-versus-host-disease according to National Institute of Health consensus criteria
NIHクライテリアでaGVHDとcGVHDリスクを評価
 II-IV aGVHDcGVHDリスクをNIHクライテリアで2941人で評価。(初回移植例、Fred Hutchinson Cancer Research Center単施設、myeloablative移植のみ。)多変量解析でaGVHDcGVHDのリスク因子は概ね類似していたが、相違点もみられた(Figure 2)。HLAミスマッチ移植と、非血縁移植はcGVHDよりもaGVHDのほうがリスク因子として関連が強かった。TBIaGVHDと強い関連がみられたがcGVHDとは有意な関連なし。一方Mobilizeされた細胞(PB)での移植、年齢(高齢)はcGVHDと関連していたがaGVHDとは関連なし。先行するaGVHDで調整しても、cGVHDに関連するリスク因子は変わらなかった。結果から、acute chronicのメカニズムは必ずしも一致しておらず、cGVHDaGVHDの末期というわけではないことが示唆される
平成23年3月28日
中前美佳

 

The graft-versus-leukemia effect is mainly restricted to NIH-defined chronic graft-versus-host disease after reduced intensity conditioning before allogeneic stem cell transplantation.
骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植後に生じるNIH基準慢性移植片対宿主病は主として移植片対白血病効果に関与する
 骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植後のNIH基準での慢性移植片対宿主病の非再発死亡率や再発率との関係は十分に分かっていない。我々はCoxモデルを用いて骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植を施行した造血器悪性腫瘍177例の連続した患者で慢性移植片対宿主病の非再発死亡率や再発率との関係を調べた。36ヶ月での慢性移植片対宿主病の累積発症率はシアトル基準の慢性移植片対宿主病の74%に対してNIH基準では54%であった。Coxモデルでは非再発死亡率は遅発性、持続性、再燃急性移植片対宿主病症例では有意に高かった。累積再発率はシアトルあるいはNIH基準での慢性移植片対宿主病症例は慢性移植片対宿主病のなかった症例に比較すると有意に低く、一方、遅発性、持続性、再燃急性移植片対宿主病は再発に有意な関係は認められなかった。NIH基準での慢性移植片対宿主病は移植片対白血病効果と関係があり、第100病日を越えた急性移植片対宿主病はすべてタイプで非再発死亡率と関係していた。
平成23年3月13日
中前博久

Thymic recovery after allogeneic hematopoietic cell transplantation with non-myeloablative conditioning is limited to patients younger than 60 years.
骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植後の胸腺回復は60歳以下の症例に限られる
 胸腺は加齢とともに退縮し、その構造、サイトカイン環境に変化が生じる。Steinmanらは107歳まで成人のリンパ性胸腺組織が存在することを報告している。いくつかの報告で胸腺が終生、T細胞を成熟させ、高齢でもTREC(T-cell receptor excision circle)を生成するT細胞を末梢循環へ排出できることが示されている。骨髄破壊的前処置を用いた同種移植では移植片に含まれるT細胞の成熟・拡張による末梢性(非胸腺経路)とドナー幹細胞からの新生T細胞生成による(胸腺経路)両方の経路でT細胞回復が形成される。骨髄破壊的同種移植後の若年者では初期の3-6ヶ月は非胸腺経路、100日を越えた時点から胸腺経路が循環するT細胞の構成に重要となる。骨髄非破壊的同種移植1年後における免疫再構築データでは非血縁者間移植およびドナー年齢が初期の免疫回復に影響し、16例の解析でTRECレベルは100日以降に有意な増加を示していた。このことは骨髄非破壊的同種移植の高齢者において胸腺経路が免疫回復に重要である可能性を示唆する。
[背景]骨髄非破壊的前処置を用いた造血幹細胞移植を受けた高齢成人での長期免疫回復については、未だ十分判明していない。今回、骨髄非破壊的同種末梢血幹細胞移植後の80例でリンパ球再構築と胸腺機能を調べた。
[対象と方法]移植時年齢中央値57歳(10-71歳)。前処置は全身放射線照射(2Gy、20例)、全身放射線照射+フルダラビン(46例)、全身放射線照射(4Gy)+フルダラビン(6例)、フルダラビン+エンドキサン(8例)。移植源は末梢血(56例)、CD8除去末梢血(19例)、CD34選択末梢血(5例)であった。免疫回復評価はsignal joint T-cell receptor excision circle(TREC)定量および表面抗原分析を用いて施行した。
[結果]sjTRECは50歳以下では移植後100日-1・2年まで増加を示し、51-60歳でも同様の傾向を示した。60歳以上では緩やかな増加に留まった。60歳以上では増加しなかった。同様にCD4陽性CD45RA陽性(native)T細胞数も50歳以下では移植後100日-1・2年まで増加を示し、51-60歳でも同様であったが、やはり60歳以上では緩やかな増加に留まった。多変量解析の結果、高齢、広汎慢性移植片対宿主病、広汎慢性移植片対宿主病の既往が移植後1年以上経過時点のsjTREC低値と関連していた。
平成23年3月7日
林 良樹

Eltrombopag for management of chronic immune thrombocytopenia (RAISE): a 6-month, randomized, phase 3 study.
慢性特発性血小板減少性紫斑病に対するeltrombopag治療:6ヶ月間ランダム化第3相試験.
eltrombopagは血小板減少症に使用される経口トロンボポイエチンレセプター拮抗薬である。我々の目的は慢性免疫性血小板減少症(chronic immune thrombocytopenia、以下慢性ITP)症例に対して6ヶ月間1日1回eltrombopag内服群とプラセボ群を比較することである。
[方法]本研究はphase III、二重盲検、プラセボコントロール試験である。6ヶ月間血小板数3万以下の成人慢性ITP患者を対象とした。患者はランダムに50mg/日のeltrombopag内服群とプラセボ内服群に2:1の割合で割り付けられた。ランダム化は中央のコンピュータで行われ、血小板数(1.5万以上)、他の治療の有無、摘脾の有無で階層化された。患者も研究者も誰がどちらの群に割り付けられたか分からないようにされた。血小板数の反応によって用量は修正された。治療反応は最初の6週間は1週間毎に評価され、その後は少なくとも4週間に1回評価された(治療効果あり=血小板数が5万-40万と定義)。primary end pointはeltrombopagとプラセボの治療反応のodds(差異)である。
[結果]2006年11月22日-2007年7月31日の間に197例が治療のランダム割り付けを受け、intention to treatで解析された。eltrombopag群:135例、プラセボ群:62例であった。eltrombopag群の106例(79%)が研究期間中に少なくとも1回治療効果ありと判定され、一方プラセボ群では17例(28%)であった。6ヶ月間の研究機関を通してeltrombopag群の方がプラセボ群よりも治療効果が高かった(OR(odds rate)8.2)。eltrombopag群の37例(59%)が併用治療量を減量され、プラセボ群は10例(32%)であった(p=0.016)。eltrombopag群の24例(18%)、プラセボ群の25例(40%)が救援治療を必要とした(p=0.001)。eltrombopag群の3例(2%)に血栓症が併発、プラセボ群には発症しなかった。eltrombopag群の2例(3%)にALTの軽度上昇、5例(4%)に総ビリルビン値の上昇が認められた。プラセボ群には総ビリルビン上昇を認めた症例はいなかった。プラセボ群4例(7%)に重症の出血イベントが起こり、eltrombopag群では1例(1%)のみであった。
[考案]eltrombopagは慢性ITPに効果的であり、特に摘脾や他の治療に反応がない患者に対して有益である。eltrombopagに関する潜在的リスクを考慮して、効果を期待すべきである。
[結果より抜粋]eltrombopag群では治療して1週間で血小板数中央値は1.6万(0.8万-2.2万)から3.6万(1.3万-7.4万)に上昇した。15日目以降は5.3万(2.2万-9.7万)から7.35万(3.2万-13万)の間に保たれていた。プラセボ群では25例(40%)が救援治療を受けていたにもかかわらず、血小板数中央値は1.75万(0.8万-2.9万)から2.3万(1.0万-4.0万)の範囲に留まった。
[考察より抜粋]@治療中eltrombopag群で認められた血栓イベントの起こる確率は研究期間が6ヶ月と長いにもかかわらず、3例(2%)であり、以前の報告(2.4-6.1%)と同等か、低かった。本研究ではeltrombopag治療中にみられる血栓イベントは最大血小板数とは関連がないものと考えられた。血栓イベントは直近の血小板数が5万以下の時に生じている。複数のリスクファクターを持つ3例の患者に共通した特徴は見当たらなかった。もう一つのopen-label studyではeltrombopag治療を受けた299例中13例(4%)にのべ16の血栓イベントが起きた。この13例にはすべて血栓の危険因子があった。イベント直近の血小板数、年齢、eltrombopag量、イベントの起こる時期に関連は見いだせなかった。血栓形成傾向のある症例にもeltrombopagを注意深く投与し、頻回にフォローを行うべきである。Aeltrombopag中止後2週間で血小板数は投与前の数値に戻る。慢性ITP症例ではいかなる治療でも少なくとも注し2週間後には血小板数を確認すべきである。この研究では骨髄中のレクチンについては調査していない。過去の研究では86例のITP症例について(18ヶ月治療)骨髄線維症または他の骨髄増殖性疾患と臨床症状に関連は見いだせないと報告されている。B消化不良、浮腫、高脂血症などのステロイド関連有害事象はeltrombopag群で有意に少なかった。eltrombopag群ではステロイド使用量が少なくすむためQOLも高くなる可能性がある。C以上のことより、摘脾で効果のない症例、ステロイドやグロブリン、リツキサンでも一時的な、あるいはわずかな効果しか得られない患者、出血症状の続く患者にとってeltrombopagは有用であると考えられる。
平成23年2月28日
相本 蘭

A decision analysis of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation in adult patients with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia in first remission who have an HLA-matched sibling donor.
HLA一致同胞ドナーを有する第一寛解期Ph染色体陰性急性リンパ芽球性白血病の同種造血幹細胞移植に関する決定解析
genetic randomizationを用いた臨床試験ではHLA一致同胞を有する成人フィラデルフィア染色体陰性急性リンパ性白血病(Ph陰性ALL)患者が第一寛解期に同種造血幹細胞移植(HSCT)または化学療法のどちらを受けるべきかについて正確に答えることができない。これらの試験においては同胞ドナーの以内患者は代替ドナーからの移植を受けるか、再発後も化学療法のみで治療を受けた。よって、我々はこの状況での適正な治療選択を決めるため決定解析を行った。推移確率と効用はJALSGの前向き試験、JSHCTのデータベース、文献から推定した。主要転帰はQOL(生活の質)補正あり、なしの場合の10年生存率であった。サブグループ解析として白血球数と染色体異常に基づくリスク分類による層別解析と年齢による層別解析を行った。QOL補正をしない解析において、第一寛解期の同種HSCTは全体とすべてのサブグループにおいて優れていた。QOL補正をした場合も同様の傾向が保持された。長期生存率の改善のため、HLA一致同胞を有する患者に対しては第一寛解期での同種HSCTが推奨される。

予測生存率
-QOL補正なし-
予測生存率
-QOL補正あり-
移植
化学療法
移植
化学療法
全症例
48.3
32.6
44.9
31.7
標準リスク患者
53.8
39.8
50.0
38.9
高リスク患者
38.0
25.0
35.4
24.1
35歳未満の症
53.1
32.9
49.3
31.9
35歳以上の症
40.7
33.4
37.8
32.8
平成23年2月24日
康 秀男

Pre-transplant imatinib-based therapy improves the outcome of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for BCR-ABL-positive acute lymphoblastic leukemia.
イマチニブをベースとした治療はBCR-ABL陽性急性リンパ芽球性白血病に対する同種造血幹細胞移植の予後を改善する
[医療関係者以外の方へ]フィラデルフィア陽性急性リンパ芽球性白血病は従来、予後不良因子の一つであるフィラデルフィア染色体を有する白血病であり、化学療法抵抗性でその予後は非常に不良と報告されていました(5年生存率10-20%)。慢性骨髄性白血病に対する治療薬であるイマチニブ(商品名グリベック)は慢性骨髄性白血病症例の予後を著しく改善しました。そこで各国でフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対する治療としてグリベックを使用、初発・再発・難治例に対して非常に有用であることが判明しました。しかしながら血液学的寛解に達するものの遺伝子異常が残存する症例を中心に再発する症例も多く、これに対して同種造血幹細胞移植の有用性を検証したのが本報告です。イマチニブを用いた治療を行い第一寛解に至り同種造血幹細胞移植を行った症例ではイマチニブを用いずに治療を行い第一寛解に至り同種造血幹細胞移植を行った症例と比較すると同種造血幹細胞移植後の再発率は明らかに低下することが判明しました。イマチニブの使用により同種造血幹細胞移植を受ける機会を増加させるとともにその予後も改善することが報告されています。
[抄録]イマチニブをベースとした治療を受けた新規発症フィラデルフィア陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)では高い寛解率が報告されるようになってきている。しかしながら同種イマチニブをベースにした移植前治療をすることによって同種造血幹細胞移植後の予後を改善するか否かについては評価が定まっていない。2002年から2005年にかけて新規発症Ph+ALL100例に対して、イマチニブを含む化学療法の第II相臨床研究が施行され、97例が完全寛解を達成した。このうち第一完全寛解で同種造血幹細胞移植をうけた51例(イマチニブ群)と対照群としてイマチニブを使用せずに第一完全寛解に達し、同種造血幹細胞移植を受けた122例(前イマチニブ群)の臨床成績を比較した。移植後3年全生存率はイマチニブ群では65%、前イマチニブ群では44%であり、多変量解析においてこれらの差は有意であることが確認された(p=0.005)。無病生存率(p=0.007)、再発(p=0.002)でも同様の傾向であったが非再発死亡率では有意差を認めなかった(p=0.265)。イマチニブを含む治療は同種造血幹細胞移植を受ける機会を増やすだけでなく、その予後も改善する可能性がある。
平成23年2月14日
中根孝彦

Pralatrexate in patients with relapsed or refractory peripheral T-cell lymphoma: Results from the pivotal PROPEL study.
再発・難治性末梢性T細胞リンパ腫に対する新規葉酸代謝拮抗薬Pralatrexateの有効性・安全性評価
[目的]Pralatrexateはジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、DNA合成を阻害する新規葉酸代謝拮抗薬である。腫瘍細胞で高発現する還元型葉酸キャリアにPralatrexateはメソトレキセートよりも高い親和性を持ち、細胞内に移送され抗腫瘍効果を発揮する(メソトレキセートよりも10倍以上の抗リンパ腫効果)。第I相、第II相試験で、再発難治性非ホジキンリンパ腫に対する有効性は31%(奏効率)であったが、B細胞性非ホジキンリンパ腫は5%、T細胞性非ホジキンリンパ腫は54%であった。次いで、再発難治性末梢T細胞性リンパ腫に第II相試験が計画された。
[患者ならびに方法]1つ以上の治療に難治性であった末梢T細胞リンパ腫例に対してPralatrexate 30mg/sq/週を静注で6週間投与、7週間を1サイクルとした。primary end pointは全奏効率、secondary end pointは奏効期間、無進行生存率、全生存率である。
[結果]115例が登録して、111例にPralatrexateを投与した。前治療数の中央値は3(1-12)で評価可能109例の全奏効率は29%(32/109)、完全寛解率11%(12例)、部分寛解率18%(20例)で奏効期間中央値は10.1ヶ月であった。無進行生存率、全生存率の中央値は3.5ヶ月と14.5ヶ月であった。主なグレード3・4の副作用は血小板減少(32%)、粘膜障害(22%)、好中球減少(22%)、貧血(18%)であった。
[結論]Pralatrexateは年齢、組織型、前治療数、自家移植歴に関係なく、再発・難治性末梢性T細胞リンパ腫に対して有効であった。

平成23年2月7日
寺田芳樹

Discontinuation of imatinib in patients with chronic myeloid leukaemia who have maintained complete molecular remission for at least 2 years: the prospective, multicentre Stop Imatinib (STIM) trial.
少なくとも2年間分子遺伝子学的寛解が持続した慢性骨髄性白血病例におけるイマチニブ投与中断:前向き多施設共同STIMトライアル
[背景]イマチニブは慢性骨髄性白血病患者の生存率を著しく改善したが、イマチニブ治療が長期的に安全に中止可能か否かについてはほとんど検討されていない。イマチニブ治療中で分子遺伝子学的完全寛解が得られている患者で分子再発なくイマチニブ中止可能かについて検討した。
[対象ならびに方法]この多施設共同前向き非ランダム化試験(STIM試験)では18歳以上でイマチニブ治療を2年以上受けており、分子遺伝子学的完全寛解が得られている患者でイマチニブを注しした。インターフェロンα以外の免疫調整療法、他の悪性腫瘍治療、同種造血幹細胞移植の既往のある患者は除外した。患者はフランスの19の酸化施設で登録された。この中間解析では12ヶ月以上の追跡がなされた患者についてRT-PCRで再発率を評価した。分子再発を認めた患者ではイマチニブを再導入した。
[結果]2007年7月9日〜2009年12月17日まで100例が登録された。追跡期間の中央値は17ヶ月(1〜30ヶ月)、12ヶ月以上の追跡(中央値24ヶ月、13〜30ヶ月)がなされたのは69例であった。69例中42例(61%)が再発(40例が6ヶ月以内、7ヶ月・19ヶ月が1例ずつ)した。この69例中、12ヶ月時点の分子遺伝子学的寛解維持率は41%であった。再発例は全例イマチニブ再導入に反応し、42例中16例はBCR-ABLレベルの低下を、26例は再度分子遺伝子学的寛解に達し、維持された。

平成23年1月31日
相本瑞樹

Benefit of consolidative radiation therapy in patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with R-CHOP chemotherapy.
R-CHOP療法を受けたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例に対する地固め放射線療法の有益性
 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は非ホジキンリンパ腫(NHL)の中高度悪性度リンパ腫であり、全成人NHL中の30-40%を占める。過去、20-30年で抗CD20抗体であるリツキシマブを加えたシクロフォッスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンからなるR-CHOP療法がDLBLC患者に対する標準治療となったが、そのサイクル数は施設によって異なる。多くの患者が初期治療に反応するにも関わらず、DLBCLの5年全生存率は45-82%と幅が見られる。これは疾患の不均一性を反映しており、代替化学療法や放射線治療の追加といったようなさらなる治療を念頭に置く必要がある。放射線治療は中高度リンパ腫に対する最初の治癒的治療であったが、DLBCLに対して役割を果たすかどうかは議論の余地があり、いくつかの研究が指示、不支持を示している。4つの無作為比較試験が放射線治療の有益性を確約することができなかった(主としてstage I、II症例)。化学療法後完全寛解が得られたstage IVの中高度リンパ腫でbulky病変を伴う341例における検討では地固め療法として放射線治療を受けた患者は、受けなかった患者に比べ優位に良好な5年無進行生存率(82%vs.55%)、全生存率(87%vs.66%)が得られたことが報告されている。今回の検討はR-CHOP療法を受けている症例における地固め放射線療法の有益性について後方視的に解析を行った。
[患者と方法]2001年1月から2007年12月までの間に病理組織学的にDLBCLと診断された469例の患者に対して治療が行われた。年齢、性別、Ann Arbor分類、Bulky病変、PETでのSUV、IPI、Ki67を変数とした。
[結果]469例中、190例(40.5%)がstage IまたはIIであり、279例(59.5%)がStage IIIまたはIVであった。327例(70%)が少なくとも6コースのR-CHOP療法を受け、142例(30.2%)が化学療法で完全寛解を得た後にinvolved-RT(30-39.6)を受けた。経過観察中央機関は36ヶ月(8-85ヶ月)であった。多変量解析では放射線療法、国際予後スコア、治療への反応性、6-8コースのR-CHOP療法の使用およびKi-67発現効率、PET SUV高値、bulky病変の3要素全ての存在、または全ての不在が全生存率と無進行生存率に影響した。R-CHOP療法6-8コースを施行したstage IまたはII(44例)あるいは全てのstage (74例)の患者でのmatched-pair解析では放射線治療が非放射線治療群に比べて全生存率と無進行生存率を改善することが示された(stege I、IIで放射線治療を受けた症例の5年全生存率、無進行生存率は92%、82%、放射線療法を受けなかった症例では68%、59%、stage I・IIでは92%、82%、受けなかった症例では73%、68%、stage III、IVでは89%、76%であり、放射線療法を受けなかった症例では66%、55%であった。
[結論]本研究はDLBCLに対してR-CHOP療法後に地固め治療として放射線治療を受けた患者の有意な全生存率と無進行生存率の改善が示された。

平成23年1月24日
岡村浩史

Screening, prevention and management of osteoporosis and bone loss in adult and pediatric hematopoietic cell transplant recipients.
成人および小児造血細胞移植患者における骨粗鬆症と骨量減少に関するスクリーニングと予防ならびに治療について
 造血細胞移植後の長期生存者は骨密度減少と骨粗鬆症の危機に晒されている。しかし造血細胞移植後の骨密度減少のスクリーニング、予防、治療に対する明確なガイドラインはない。今回、文献を調査し、この合併症のスクリーニングやマネージメントにったいするガイドラインを作成した。骨密度減少は自己あるいは同種造血細胞移植後の主に6-12ヶ月以内に生じる。骨密度の回復はまず腰椎に起こり、その後遅れて緩やかに大腿骨頚部に起こる。骨密度はステロイドやカルシニューリン阻害剤を継続している患者では基礎値へ回復しないかもしれない。全ての造血細胞移植患者で骨折のリスクを減らすためにカルシウム製剤やビタミンD製剤投与による介入が勧められるべきである。全ての成人自己あるいは同種造血細胞移植患者に対して移植後1年後にdual-energy X-ray absorptiometry(DXA)を勧めている。骨密度減少の高リスク患者(たとえば1日プレドニゾロン換算で5mg以上のステロイドを3ヶ月以上内服している、など)では、もっと早期にスクリーニングすべきである(例えば移植後3-6ヶ月後)。ビスホスホネートや、カルシトニンなどの他の骨吸収に対する薬剤は、成人造血細胞移植患者の骨粗鬆症の予防や治療に対して使用することができる。小児造血細胞移植患者においては骨密度減少の評価や治療に対して小児内分泌科医に意見が求められるべきである。成人あるいは小児造血細胞移植患者において、更にいくつかの研究が必要不確かな領域(骨密度減少に対するスクリーニングの最適なタイミングや頻度、骨密度減少と骨折の関係、治療介入する患者の適切な選択、骨吸収に対する薬剤の適切な用量と期間など)は残されている。

平成23年1月17日
備後真登


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