最新文献紹介(抄読会)
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2013年

Low-Intensity Therapy in Adults with Burkitt’s Lymphoma

成人バーキットリンパ腫に対する低容量化学療法

Burkittリンパ腫は小児や成人に発症する高悪性度悪性リンパ腫で、大多数は強度の 強い化学療法で治癒が望める。しかし、小児と比較すると成人や免疫不全の患者では 副作用が強く効果が劣る。そこで本研究では、未治療の成人Burkittリンパ腫に対し て強度の弱いEPOCH-R療法を試みた。HIV陰性の患者に対してはstandard dose-adjusted EPOCH-R(DA-EPOCH-R療法)を、HIV陽性の患者に対してはlow-dose short-course EPOCH with a double dose of rituximab(SC-EPOCH-RR療法)を施行し た。19例にDA-EPOCH-R療法が施行され、11例にSC-EPOCH-RR療法が施行された。患者 の年齢中央値は33歳で、患者の40%が40歳以上であった。全体の73%が中間リスクで、 10%が高リスクであった。発熱や好中球減少など主な毒性は、DA-EPOCH-R療法では全 サイクルの22%に認められ、SC-EPOCH-RR療法では全サイクルの10%に認められた。1例 に腫瘍崩壊症候群を認めたが、治療関連死亡は認めなかった。DA-EPOCH-R療法と比較 して、SC-EPOCH-RR療法ではドキソルビシン-エトポシドの累積投与量が47%少なく、 シクロホスファミドの累積投与量は57%少なかった。観察期間の中央値はDA-EPOCH-R 療法で86ヶ月、SC-EPOCH-RR療法で73ヶ月であった。PF率(rate of freedom from progression)とOSは、DA-EPOCH-R療法で95%と100%、SC-EPOCH-RR療法で100%と90%で あった。Burkittリンパ腫による死亡は認めなかった。  本研究の結果、低用量EPOCH-R療法は成人のsporadicまたは免疫不全関連のBurkitt リンパ腫に対して非常に有効と考えられる。

平成25年12月16日
萩原潔通

 

Galactomannan and PCR versus culture and histology for directing use of antifungal treatment for invasive aspergillosis in high-risk haematology patients: a randomised controlled trial.

高リスク血液疾患患者において侵襲性アスペルギルス症に対する抗真菌治療決定にはガラクトマンナンとPCRもしくは培養と組織検査のどちらが有用か

Background 抗真菌薬の経験的治療は侵襲性aspergillus症(IA)のリスクが高い血液 疾患患者においてしばしば行われている。我々は、この患者集団において抗真菌治療法の使用を方向づけるために、Standard diagnostic strategy(culture and histology)と迅速なBiomarker-based diagnostic strategy (aspergillus galactomannan (GM) and PCR)を比較した。 Methods 本オープンラベル並行群間ランダム化比較試験では、急性白血病に対して 同種造血幹細胞移植または化学療法を施行された成人患者で侵襲性真菌症の既往のな い者を適格とした。登録患者は、抗真菌薬による治療を決定するため、Standard diagnostic strategyとBiomarker-based diagnostic strategyのどちらに従うかコン ピューターにより1:1にランダムに割り付けされた。患者は26週間または死亡まで追 跡された。患者、治療医、研究者に対して、異なる診断法の使用のmaskingはできな かった。主要評価項目は登録後26週における経験的治療とした(Biomarker-based diagnostic strategyに対しては1回のGMまたはPCR陽性はIAの確定には不十分である と考え、この場合の治療は経験的治療とした)。アウトカムは試験の割り付けをmask された独立したデータ評価委員会によって評価された。解析はintention-to-treatに より行い、全ての登録患者を含めた。本試験はClinicalTrial.gov, number NCT00163722に登録されている。 Findings 2005.9.30と2009.11.19の間に6つのオーストラリアの施設より240名の適格 患者がリクルートされた。122名がStandard diagnostic strategy、118名が Biomarker-based diagnostic strategyに割り付けられた。Standard群の39名 (32%)、Biomarker-based群の18名(15%)が経験的抗真菌治療を受けた(difference 17%, 95% CI 4-26; p=0.002)。肝毒性と腎毒性作用を認めた患者数にStandard群と Biomarker-based群で有意差はなかった (肝毒性: 21 [17%] vs 12 [10%], p=0.11; 腎毒性: 52 [43%] vs 60 [51%], p=0.20) 。 Interpretation 治療決定のためのGMとPCRの使用は経験的抗真菌治療の使用を減少さ せた。この方法は高リスク血液疾患患者のIA管理において効果的な戦略である。

平成25年12月9日
康 秀男

 

Autologous transplantation as consolidation for aggressive non-Hodgkin's lymphoma.

アグレッシブ非ホジキンリンパ腫に対する自家移植

背景:IPIで中高あるいは高危険度のびまん性aggressiveリンパ腫患者に対するCR1での自家移植 の効果は未だ定まっておらず、リツキサン後では検証されていない。 方法:5コースのCHOPまたはCHOP-Rを施行されたAA-IPIでHまたはHIの患者397人を対象とした。 反応のあった患者は、寛解導入療法を続行するcontrol群と、1コースのケモ後、自家移植をする transplantation群に無作為割り付けされた。主要評価項目は2yrPFSおよびOSとした。 結果:370人の登録症例の内230例が無作為割り付けされた(transplantation群:125例、contro l群:128例)。T群の46例とC群の68人が疾患の進行または死亡し、2yrPFSはそれぞれ69%と55%で あった(HR:1.72(95%CI:1.18-2.51、p=0.005))。t群の37人、C群の47人が死亡し、2yrOSは 74%と71%であった(HR:1.26(95%CI:0.82-1.94、p=0.30))。探索的解析において、PFS、OS に対し共にリスクレベルによって異なった治療効果を示した(interaction:p=0.04(PFS)、p= 0.01(OS))。高リスク群では2yrOSはT群で82%、C群で64%であった。 結論:早期の自家移植は、寛解導入療法で反応のあった、HIあるいはHリスクの患者に対し、PFS を改善させた。OSの改善はなかったが、これはサルベージ療法として自家移植が施行された効果 によるものと思われる。

平成25年12月2日
中根孝彦

 

High Prognostic Impact of Flow Cytometric Minimal Residual Disease Detection in Acute Myeloid Leukemia: Data From the HOVON/SAKK AML 42A Study.

フローサイトで検出されるMRDはAMLの予後因子

Purpose
CRに至ったAML患者の半数は、いずれ再発する。治療抵抗性白血病細胞が残ることは当然のことである。多数の後方視的試験で、予後不良患者のMRDの検出は、独立した予後因子であることが示されている。後方視的に分子マーカーやデータ分析に注目している研究が多数ある。この研究は、特定のセンターで成人AML患者の検体採取と分析を行い、MRDの免疫形態学的検査を行う多施設共同臨床試験である。

Patient and Meshods
60歳以下の成人AML患者がHOVON/SAKK AML 42A studyに登録され、CRでの骨髄中MRDを評価された。164人は寛解導入療法1サイクル後、183人が2サイクル後、124人が地固め療法後である。

Result
全ての治療後において、MRD<0.1%であれば比較的予後がよく、MRD>0.1%であれば高率に再発しRFSとOSが悪かった。全ての患者群とintermediate-riskのサブグループでは、MRDは独立した予後因子であった。2サイクル後の多変量解析によると、地固め療法を行う決定をする時、high MRD (>0.1% of WBC)であれば、時間共変量解析調節後でも、より高リスクで再発する。また、high MRDはearlyもしくlater CRとも関連していた。

Conculusion
今後の研究では、初診時のリスク評価だけでなく、治療後の予後因子として、MRDもリスク評価に用いられるべきである。

平成25年11月25日
吉村卓朗

 

Rates and Outcomes of Follicular Lymphoma Transformation in the Immunochemotherapy Era: A Report From the University of Iowa/Mayo Clinic Specialized Program of Research Excellence Molecular Epidemiology Resource

リツキサン時代のFLの組織学的転化の頻度とその予後

【Purpose】本研究はリツキサン導入後に濾胞性リンパ腫(FL)の組織転化(HT)の頻度とそ の予後を前向きに観察研究した。

【Patients and Methods】 2002年から2009年に新規診断されたFL例を前向きにアイオワ 大学とメイヨークリニックの研究グループに登録し、治療と臨床的または病理学的に 組織転化や死亡を観察した。HTのリスク因子の検討は、死亡を競合リスクとして検討 した。

【Results】 新規診断のgrade1-3aのFL 631例が登録され、年齢中央値は60歳であった。 60ヶ月のフォローアップ中央値(11-110ヶ月)で、79例が死亡し、60例が組織転換した (51例が病理学的に診断)。組織転換する割合は5年で10.7%で、年間約2%であっ た。LDH上昇が組織転換のリスク因子であった。また、初回治療が無治療経過観察の 群では5年での組織転換が高率であり、一方初回治療がリツキシマブ単剤療法の群で は低率であった (14.4% v 3.2%; P = .021)。組織転換後のOS中央値は50ヶ月で、FL の診断後18ヶ月以降の組織転化例で予後が良かった (5年OS, 66% v 22%; P < .001).

【Conclusion】 Rituximab時代のFLの組織転換の割合は、組織転化なしの死亡の割合と同 等で、以前のRituximab登場前の報告よりも低かった。組織転化後の予後は過去の報 告よりかなり良くなってきている。FLの初回治療戦略が組織転換のリスクに影響を及 ぼすと考えられる。

平成25年11月18日
寺田芳樹

 

Flow cytometric detection of dyserythropoiesis: a sensitive and powerful diagnostic tool for myelodysplastic syndromes

フローサイトメトリーによる異型性の検出:MDS診断の強力なツール

いくつかのグループから骨髄異形成症候群(MDS)の診断や予後について、主に顆粒球・単球や リンパ球系細胞の成熟における免疫表現型の異常に基づいた、フローサイトメトリーの有用性が 報告されている。貧血は初期のMDSの最も頻度の高い症状であり、この研究の目的は赤血球異常 形成のマーカーを同定することである。この前向き研究には163人の患者が参加し、126人のMDS の疑いのある血球減少のある患者と46人のMDSのない比較対照群が含まれた。特異的なマーカー のある明白なMDS53人からなるlearning cohortでは、比較群に比べてMDS患者ではCD71とCD36の 平均蛍光強度の変化に有意な違いがあった。この2つのパラメーターとヘモグロビン値で作った RED-scoreは3点以上で強くMDSを示唆した。全コホートでRED-scoreを用いると80%のMDSと非MDS 患者が正確に分類できた。Ogataらのフロースコアと組み合わせると、この方法で88%の患者を 分類できる高い感度になった。

平成25年11月11日
康 史朗

 

Haploidentical, unmanipulated, G-CSF-primed bone marrow transplantation for patients with high-risk hematologic malignancies

高リスクの血液悪性腫瘍患者に対するHLA半合致、未処理、G-CSF前投与を受けた骨髄 移植について

高リスクの血液悪性疾患患者が家族のhaploidenticalドナーから、未処理のG-CSF primed BMTを受けた。患者は、1stCR、2ndCR(標準リスク群:n=45)、または2ndCR 以上、活動性のある状態(高リスク:n=35)で移植を受けた。GVHD予防は全員同じレ ジメンで行った。好中球生着は、93%±0.1%で達成した。100日までのaGVHD累積発症 率は、grade2-4で24%±0.2%、grade3-4で5%±0.6%であった。Extensive cGVHDの2年 累積発症率は、6%±0.1%であった。1年でのTRM累積発症率は、36%±0.3%であった。 18ヶ月のf/u中央値で、45%(36/80)の患者がCRで生存していた。3年でのOSは、標準 リスク群で54%±8%、高リスク群で33%±9%であり、DFSは、標準リスク群で44%±8%、 高リスク群で30%±9%であった。多変量解析においては、標準リスク群であること、 と2007年以降に移植を受けたことが、有意に良好なDFSの因子であった。家族のhaplo ドナーからの未処理G-CSF primed BMTは、生着、GVHD発症、生存について良好な結果 を出しており、HLA一致同胞ドナーがいなかったり、移植を急ぐ必要がある場合にお いて、高リスクの血液悪性疾患の適切で正当な代替ソースである、と我々は結論づけ る。

平成25年10月20日
岡村浩史

 

Risk factors for invasive fungal disease after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: a single center experience

同種造血幹細胞移植後の侵襲性真菌感染症のリスク因子

侵襲性真菌感染症(IFD)は造血幹細胞移植(HCT)後の主要な合併症であり、死因でもある。我々はレトロに271例の患者についてIFDの発症率とリスク因子について調べるとともにNRMやOSへの影響についても調べた。ドナーはHLAマッチの血縁が60%、非血縁が20%、ハプロが12%、臍帯血が8%であった。51エピソードのIFDが観察された。アスペルギルス(47%)が最も良くみられた微生物であり、カンジダ(43%)が次に続いた。IFDの多くはHCT後100日以降に発症した(67%)。多変量解析においてハプロ移植(HR3.82、P=0.005)とGrade3-4の急性GVHD(HR2.55、P=0.03)がIFDのリスク因子であった。逆にCD34の輸注細胞数が多ければ発症率が低かった(HR0.80、P=0.006、per 1.0*106)。IFD関連死亡率は33.3%。NRMはIFDを発症した群で有意に高く(P<0.001)、OSは有意に低かった(5.8months vs 76.1months, P<0.001)。

平成25年10月7日
西本光孝

 

Reduced-intensity allogeneic stem cell transplantation for patients aged 50 years or older with B-cell ALL in remission: a retrospective study by the Adult ALL Working Group of the Japan Society for Hematopoietic Cell Transplantation.

50歳以上の寛解期B-ALLに対する骨髄非破壊的同種移植の成績

第一or第二寛解(CR)の50歳以上のB-ALL患者118人に対し、Fluを含む骨髄非破壊的移植(RIST)を施行し、その結果ならびに結果に影響を与える移植前因子に関して、後方視的に検討した。80人の患者が非血縁からの移植で、78人がPh染色体陽性であった。Follow-up中央期間は18ヶ月で、2年の全生存率(OS)は56%。2年の累積再発率は28%、非再発死亡率(NRM)は26%であった。aGVHDのgradeU-W、V-Wはそれぞれ46%、24%で、2年後のcGVHD37%だった。移植前因子の多変量解析では、診断時のWBC3万/μL以上(危険率HR=2.19、P=0.007)、第二寛解(HR=2.02、P=0.036)がOS低下と有意に関連し、また第二寛解(HR=3.83、P<0.001)と血縁ドナーからの移植(HR=2.34、P=0.039)が再発率の増加と関連を認めた。Fluを含むRISTは、第一寛解の年輩B-ALLに対して有効な治療戦略と考える。

平成25年9月30日
中嶋康博

 

Outcomes in patients age 70 or older undergoing allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for hematologic malignancies

70歳以上の造血器悪性疾患患者に対する同種移植の成績

造血幹細胞移植は進行期の造血器悪性疾患の多くの患者に対して、寛解維持に達する ことのできる治療である。 70歳以上の移植の安全性については殆ど知られていない。 2007年から2012年に移植を受けた70歳以上の造血器疾患の移植患者連続54名について 検討した。 疾患の内訳はAML25名、MDS12名、CLL5名、NHL4名、ALL3名、MPN4名、CML1名。 生存者のフォローアップ中央値21カ月。すべての患者は前処置軽減した前処置(主に はブスルファン/フルダラビン)で移植を受けた。 全員が未処理の末梢血幹細胞移植をうけた。 44例はHLA8/8マッチの非血縁者間移植、8例は8/8マッチの血縁者間移植、2例は7/8 マッチの非血縁者間移植。 GVHD予防はすべての患者でカルシニューリン阻害剤ベースで行った。 移植年齢の中央値は71歳(70-76歳)で、HCT-CIスコアの中央値は1(0-5)であっ た。 結果は、2名が生着前死亡(1名生着不全、1名PD)で1名は生着前に再発したが、そ れ以外は全員生着し、ドナーキメリズムは移植後1カ月時点で中央値が94%ドナーで あった。 グレードII から IV の急性GVHDは13%、III からIV は9.3%。慢性GVHDの2年累積発 症率は36%。 2年での無増悪生存が39%、2年での生存が39%、2年での再発が56%だった。 非再発死亡率はDay100で3.7%、2年では5.6%であった。 よって、高齢者の同種移植治療は、70歳以上の慎重に選択された患者にとっては、安 全で有効な選択肢であると判断した

平成25年9月9日
中前美佳

 

Rituximab prophylaxis prevents corticosteroid-requiring chronic GVHD after allogeneic peripheral blood stem cell transplantation: results of a phase 2 trial

リツキシマブ予防投与が同種末梢血幹細胞移植後のステロイドを必要とする慢性GVHDを防ぐ:第2相試験の結果

B細胞は病態生理学的に慢性GVHDに関与する。そして、第2相試験ではB細胞除去により確立されたcGVHDの治療が可能であることが示唆されている。我々は移植後のB細胞除去はcGVHDを予防できると仮定し、65人の患者でrituximab(375mg/m2 iv)を移植3,6,9,12か月後に投与する第2相試験を行った。Rituximab投与では輸注に伴う重篤な副作用はなく、安全に施行できた。cGVHD、および全身コルチコステロイドが必要なcGVHDの2年累積発症率は各々48%と31%であった。これはいずれも、同時期のコントロールコホートに比べ低かった(60%,p=.1、48.5%,p=.015)。再発率に違いはなかったが、移植後4年の治療関連死亡率はコントロール群と比較し、治療群で明らかに低かった(5% vs 19%, P=.02)。そして、4年全生存率は治療群で優れていた(71% vs 56%,P=.05)。移植2年後のB-cell activating factor/B-cell ratioは明らかにcGVHDを発症しなかった人に比べ、発症した人で高かった(P=.039)。Rituximabは末梢血幹細胞移植後の全身ステロイドが必要なcGVHDを予防することができ、これは、前向きランダム化試験で確認される必要がある。本試験はwww.clinicaltrials.govに NCT00379587として登録された。

平成25年9月2日
廣瀬朝生

 

Low Paneth cell numbers at onset of gastrointestinal graft-versus-host disease identify patients at high risk for nonrelapse mortality

腸管GVHD発症時におけるパネート細胞数の減少は非再発死亡のハイリスク患者となる

急性腸管GVHDは同種移植後の致死的な合併症である。臨床的なGVHDの重症度と生死は関係するが,病理学的なGradingは診断時に臨床診断の確認のために使われるだけである。臨床的なアウトカムを予測しうる病理学的なGradingをつけることの問題点には移植センター間のgradingがばらつくことがあげられる。最近の実験モデルにおいて,小腸内にあるパネート細胞が抗菌ペプチドを分泌することにより消化管内の微生物群を制御し,そのような機能をもつパネート細胞の消失が重症のGVHDに関連するということがわかってきた。パネート細胞は光学顕微鏡により簡単に確認でき,数えることができる。我々は様々な臨床的なアウトカムをもった消化管のGVHD患者の診断時に得られた116検体の十二指腸生検標本におけるHPFあたりのパネート細胞の平均値を測定した。

パネート細胞の数はセンター間での再現性があった(r2=0.81,p<0.0001)。診断時のパネート細胞数が少ない方が臨床的に重篤なGVHDがおこりやすく,GVHDに対する治療への反応が得られにくかった(P<0.0001)。非再発死亡は,HPFあたり4細胞を閾値として層別化することができた(28% vs 56%)。結論としては,十二指腸のパネート細胞数の測定がGVHDの予後に関する重要な情報を与え,臨床的な疾患重症度に役立つ指標となる
平成25年8月26日
南野 智

 

Curability of patients with acute myeloid leukemia who did not undergo transplantation in first remission.

第一寛解期で移植しなかった急性骨髄性白血病患者の治癒可能性

Purpose:第一寛解期(CR1)で移植せずに再発した患者の救援治療の成績と,第二寛解期(CR2)での同種移植の成績をリスク群別に評価し,CR1で移植をするかどうか決める情報を与えること.
Patients and Method:MRCのAML10,AML12,AML15試験に登録された8909人の中で,CR1で同種移植を受けなかった16-49歳の患者3919人のうち1271例が再発した.5年生存率はCR1で移植せず再発した患者が19%であるのに対して,CR1で移植した後再発した患者は7%であった.全生存率(OS)とCR2での移植成績はMantel-Byar解析を用いて,集団全体と細胞遺伝学的リスク群別に評価された.
Results:CR1で移植せず再発した患者の55%(良好群82%,中間群54%,不良群27%,不明群53%)がCR2になった.5生率は良好群32%,中間群17%,不良群7%,不明群23%であった.CR2の患者の67%が移植を受け,移植しなかった患者と比べて生存率は42%vs16%と良好であった.解析により,CR2での移植は集団全体と中間群,不良群で有益であったが,良好群はそうでなかった.
Conclusion CR1で移植せず再発した患者の生存率は19%で,良好群以外は移植が予後を改善した.特に中間群では再発後の移植でも同等の成績が得られ,移植の回数を減らせるかもしれない.

平成25年8月19日
久野雅智

 

Donor Lymphocyte Infusion for Relapsed Hematological Malignancies after Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation: Prognostic Relevance of the Initial CD3+ T Cell Dose

同種造血幹細胞移植後に再発した血液悪性疾患に対するドナーリンパ球輸注:初期投与CD3陽性 細胞数と予後の関係について

DLI(ドナーリンパ球輸注)での初期投与細胞数が結果に与える影響は CML では既に知られてい るが、その他の血液疾患では十分に分かっていなかった。本研究では、前処置の強度を問わず同 種造血幹細胞移植後に再発した血液悪性疾患に対して行ったDLI において、初期投与 CD3陽性細 胞数がGVHDやOSに与える影響を評価した。225名の患者を、投与細胞数が分からなかった17名を 除いて、CD3陽性細胞数に応じて≦1×10E7/kg(n=84 groupA)、>1.0〜<10×10E7/kg(n=58 groupB) 、≧10× 10E7/kg(n=66 groupC)と分けたところ、DLI 後 12 ヶ月間の GVHD 発生率はそれぞれ、 gropuA 21% groupB45% groupC55%であった。多変量解析によると、初期投与CD3陽性細胞数≧10 ×10E7/kgの群ではDLI後のGVHD発症リスクが上がり(P=0.03)、 再発率を減少させず、OSも改善 させなかった。この結果から、同種造血幹細胞移植後に再発する血液悪性疾患に対する DLIでは、 初期投与 CD3 陽性細胞数を 10×10E7/kg 未満にすることが推奨された。

平成25年8月12日
幕内陽介

 

High-dose cyclophosphamide compared with antithymocyte globulin for treatment of acquired severe aplastic anemia

重症再生不良性貧血に対する治療:大量シクロホスファミド療法とATG療法の比較

重症または最重症の再生不良性貧血患者121人に対して、大量シクロホスファミド (CTX)+シクロスポリン(CyA)療法(CTX群:48人)またはATG+CyA療法(ATG群:73人)を 行った。早期死亡率はCTX群4.2%、ATG群8.2%と両群に有意差を認めなかった (p=0.312)。奏効率は、3ヶ月でCTX群54.2%、ATG群57.5%、6ヶ月でCTX群64.6%、ATG群 72.6%、12ヶ月でCTX群72.9%、ATG群78.1%と両群に有意差を認めなかった(P>0.05)。5 年生存率はCTX群81.2%、ATG群80.7%、event-free survival(EFS)はCTX群68.2%、ATG 群67.3%、といずれも両群で有意差を認めなかった(P>0.05)。一方、全医療費はCTX群 の方がATG群よりも54.8%低かった(p=0.000)。結語:重症または最重症再生不良性貧血に対するCTX+CyA療法はATG+CyA療法と同等 の効果があり、かつ低コストである。

平成25年8月5日
萩原潔通

 

CMV reactivation after allogeneic HCT and relapse risk: evidence for early protection in acute myeloid leukemia.

同種移植後のCMV再活性化と再発リスクの低下

CMV再活性化と再発の関連について、1995年から2005年に同種造血細胞移植(HCT)を施 行されたAML 761名、ALL 322名、CML 646名、lymphoma 254名、MDS 371名の大規模患 者コホートにおいて検討した。多変量モデルでは、CMV pp65 antigenemiaはAML患者 のday 100までの再発リスク低下と有意に関連していた (HR 0.56, 95%CI 0.3-0.9) が、ALL、lymphoma 、CMLやMDSでは有意な関連はなかった。その影響は、CMVウイル ス量、急性GVHD、ganciclovir関連好中球減少とは独立しているように思われた。HCT 後1年時点で、早期CMV再活性化はすべての患者で再発リスク低下と関連していたが、 どの疾患群に対しても有意差は認めなかった。また、CMV再活性化は非再発死亡増加 と関連していた (HR 1.31, 95% CI 1.1-1.6)が、全死亡とは全く関連はなかった(HR 1.05, 95% CI 0.9-1.3)。本報告は、大規模患者コホートにおいて、CMV再活性化は HCT後早期再発リスクの僅かな低下と関連するが、全生存においてはbenefitが得られ ないことを実証している。

平成25年7月29日
康 秀男

 

The impact of HLA unidirectional mismatches on the outcome of myeloablative hematopoietic stem cell transplantation with unrelated donors.

非血縁ドナーからの骨髄破壊的前処置での造血幹細胞移植におけるHLA不一致でのHLAホモの移植成績への影響

2687人の血液悪性疾患患者に対し施行された非血縁ドナーからの骨髄破壊的前処置での造血幹細 胞移植のoutcomeに対する、HLA不一致でのHLAホモのインパクトについて次の4群に分けて評価し た。 ・7/8HLA両方向不一致(ドナーおよび患者共にヘテロ、n=1393) ・7/8HLA HVG方向不一致(ドナーヘテロ、患者ホモ、n=112) ・7/8HLA GVH方向不一致(ドナーホモ、患者ヘテロ、n=119) ・8/8HLA一致(n=1063) 多変量解析では、7/8GVH MM群(p=0.001)および7/8両方向MM群(p<0.0001)が8/8一致群よりも TRMおよびDFSにおいて有意に予後不良であり、7/8 HVG MM群は有意差を認めなかった(p>0.01)。 7/8HLA MMの3群はgradeIII-IV aGVHDに対してのみ違いがあり、HVG MM群は両方向MM群およびGVH MM群に比べ有意にGVHDが少なく(HR:0.52、p=0.0016およびHR:0.43、p=0.0009)、8/8一致群 とは差がなかった(HR:0.83、p=0.39)。7/8群において、cGVHD、再発、好中球生着、graft fa ilureには差がなかった。GVH MM群は7/8両方向MM群と同等のリスクを示した。7/8 HVG MMは、7/ 8両方向不一致と比較して再発やgraft failureのリスクを増大させることなく、aGVHDのリスク を減らす。

平成25年7月22日
中根孝彦

 

Effects of spleen status on early outcomes after hematopoietic cell transplantation

造血幹細胞移植の早期成績に対する脾臓の影響

同種移植後の生着または早期死亡率に脾臓がどれほど影響しているかを評価するため、我々は2006年から1990年の骨髄破壊的前処置を用いて移植されたレシピエント9683人を解析した。
移植前に脾摘(SP)されたのは472人、脾臓の放射線照射(SI)されたのは300人であった。脾腫(SM)があったのは1471人、正常サイズ(NS)であったのは7440人であった。
好中球生着(NE)と血小板生着(PE)の中央値は、正常サイズ群で15日と18日、脾腫あり群で22日と24日であった。(P<0.001)
移植後day100での血球回復は、各群で差がなかった。しかし、SP群において移植後14日、21日でのNEとday28でのPEのオッズ比はそれぞれ3.29、2.25、1.28であった。SM群ではそれぞれ0.56、0.55、0.82であった。(P<0.001)
SM群では、PBSCがday+21での好中球生着を改善し、CD34陽性細胞>5.7×106/kgが血小板生着を改善した。
Cox回帰分析で変数を調節すると、GVHDとOSは各群で優位差はなかった。
SMは生着の遅延と関連する。移植前のSPは生着が早くするが、OSには影響を与えなかった。

平成25年7月8日
吉村卓朗

 

Targeting BTK with Ibrutinib in Relapsed or Refractory Mantle-Cell Lymphoma

再発、難治性マントル細胞リンパ腫に対するBTK阻害剤Ibrutinbの効果

[背景] Bruton’s tyrosine kinase (BTK) はB-cell receptorシグナル伝達経路のメ ディエーターであり,B細胞腫瘍の進行に関連している。BTK阻害薬の1つである Ibrutinibは第1相試験において様々なタイプのB細胞性NHLに対し抗腫瘍活性を示し, その中にはマントル細胞リンパ腫も含まれていた。 [方法] 今回の第2相試験において,著者らは再発・再燃マントル細胞リンパ腫患者 111人を対象としてIbrutinib (560 mg/日,経口)について検討した。患者はボルテゾ ミブ治療歴が2サイクル以上か2サイクル未満(ボルテゾミブ投与歴無しも含む)の2群 に分けられた。主要評価項目は全奏功率,副次評価項目は奏功期間,無増悪生存期 間,全生存期間,安全性とした。 [結果] 年齢の中央値は68歳,86%がMIPI中等度リスク以上で,前治療歴の中央値は3 回だった。治療に関連した有害事象で最も多かったのは軽度から中等度の下痢,倦怠 感,悪心で,grade 3以上の血液毒性は頻度が多くなく,具体的には好中球減少が 16%,血小板減少が11%,貧血が10%でそれぞれ認められた。奏功率は68%で,完全寛解 が21%,部分寛解が47%であった。また,ボルテゾミブによる治療歴は奏功率に影響し なかった。観察期間の中央値は15.3か月で,効果持続期間の推定中央値は17.5か月 (95% CI,15.8か月〜未到達),無増悪生存期間の推定中央値は13.9か月(95% CI,7.0 か月〜未到達)であり,全生存期間の中央値には到達しなかった。また18か月時点で の全生存率は58%と推定された。 [結論] Ibrutinibは単剤で再発難治マントル細胞リンパ腫に持続的な効果を示した。

平成25年7月1日
寺田芳樹

 

Allogeneic stem cell transplantation for chronic myelomonocytic leukemia: a report from the Societe Francaise de Greffe de Moelle et de Therapie Cellulaire

慢性骨髄単球性白血病に対する同種造血幹細胞移植

Objectives and methods:CMML(慢性骨髄単球性白血病)に対しては、造血幹細胞移植が唯一の治癒を目指す治療法である。
我々は、1992年から2009年にSFGM-TCに登録されたCMML患者73名において、移植後の予後因子を解明するための後ろ向き研究を行った。
Results:年齢中央値 は53歳で、うち36%の患者に触知可能な脾腫を認めた。IPSSでgood karayotypeが48人、 intermediateが13人、poor が9人であった。61%がCMML-1で、39%がCMML-2であった。41人がHLA一致血縁者、31人がHLA一致バンクドナー、1人がハプロ移植であった。43人が骨髄非破壊的前処置であった。中央値23カ月のフォローアップ期間中、21人にグレード2-4のaGVHD、25人にcGVHDが見られた。
3-year OSは32%、NRM(non-relapse mortality)は36%、EFS(event-free survival)は29%、CIR(cumulative incidence of relapse)は35%であった。移植時にCRか否か、移植時の骨髄中芽球率、前処置の種類、慢性GVHDの有無はOSに影響しなかった。多変量解析を行い、2004年以前の移植ではNRMがより悪いこと、2004年以前の移植と移植時の脾腫がより悪いEFSと関連すること、2004年以前の移植と移植時の脾腫が悪いOSと関連することが判明した。
Conclusions:造血幹細胞移植はCMMLの有効な治療方法であり、治療効果は2004年を境に進歩が見られている。脾腫はOS,EFSに対するネガティブファクターである。

平成25年6月24日
重坂 実

 

Randomized comparison of prophylactic and minimal residual disease-triggered imatinib after allogeneic stem cell transplantation for BCR–ABL1-positive acute lymphoblastic leukemia

Ph+ALLに対する同種造血幹細胞移植後、イマチニブの予防的治療とMRDをトリガーとした先制治療の比較


フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病に対する同種造血幹細胞移植後の微小残存病変(MRD)は再発の前兆である。移植に続けてイマチニブを投与することは再発を防ぐかもしれないが、投与スケジュールの役割と生存への影響は分かっていない。前向き多施設無作為比較試験で、我々は移植後のイマチニブの忍容性と有効性を、予防的治療群と先制治療群で比較した。イマチニブによる予防的治療は先制治療(MRDをトリガーとしてイマチニブを投与する方法)に比較して有意に移植後の分子再発を減らした。(40%vs69%, P<0.046) PCR陰性の中央期間はそれぞれ26.5ヶ月と6.8ヶ月であった。(P<0.065) 多くの患者で忍容性が劣っておりイマチニブを早期に中断したにもかかわらず、両治療群における5年生存率は高かった。(80%vs74.5%) 再発率はMRD陽性になった患者で有意に高かった。(P=0.017) 結論として、移植後のイマチニブはBCR-ABL陽性の急性リンパ性白血病の患者に対して、予防的・先制治療いずれであっても、低い再発率、長期の寛解、優れた長期成績をもたらした。移植後早期あるいは高レベルでのBCR-ABL転写産物の発現によって、イマチニブで十分利益のない少数の患者が識別されるが、それらの患者に対しては代替アプローチの開発が望まれる。

平成25年6月17日
康 史朗

 

MRD-directed risk stratification treatment may improve outcomes of t(8;21) AML in the first complete remission: results from the AML05 multicenter trial..

微小残存病変によるリスク分類別治療は、t(8;21)を伴う急性骨髄性白血病、第一 寛解期患者の予後を改善するかもしれない。AML05多施設研究の結果


我々は、RUNX1/RUNX1T1転写産物のレベルによって定義された微小残存病変(MRD)に 基づいてリスク別の治療を行うことで、1stCRのt(8;21)を伴うAMLの予後改善を狙 い、研究を行った。リスク別の治療には、高リスク患者にallo-HSCTを推奨するこ と、低リスク患者に化学療法/auto-HSCTを推奨することが含まれた。116名の患者に おいて、寛解導入後、地固め1コース後よりもむしろ、地固め2コース後のMRD状態 が、再発高リスク患者を判別した。(P=0.001)allo-HSCTは、高リスク患者におい て、化学療法よりも再発を減らし、生存率を改善し得た。(再発累積発症率: 22.1%vs78.9%, P<0.0001; DFS: 61.7% vs 19.6%, P=0.001)一方、低リスク患者にお いて、化学療法/auto-HSCTは低い再発率(5.3%)、高いDFS(94.7%)を達成した。多変 量解析では、MRD状態と治療選択が再発、DFS、OSに対する独立した予後因子であっ た。地固め療法2コース後のMRD状態は、治療選択の最適な時期かもしれない。また、 MRDに基づくリスク分類、治療はCR1のt(8;21)を伴うAMLの予後を改善するかもしれな い。

平成25年6月10日
岡村浩史

 

Adenovirus viremia and disease: comparison of T cell-depleted and conventional hematopoietic stem cell transplantation recipients from a single institution

アデノウイルス血症と感染症:T細胞除去移植と通常移植の比較


アデノウイルス(ADV)は造血幹細胞移植(HSCT)後の重要なウイルスである。T cell depleted(TCD)患者においてはウイルス感染のリスクが増大する。我々は自施設でのTCD患者とconventional(CONV)患者のADV血症およびADVdiseaseの発症率や成績に関して比較した。2006年1月から2011年3月までの間にMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerで行われた骨髄破壊的前処置によるHSCT患者624人(小児と成人)についてのobservational studyである。ウイルス培養やPCRは臨床的に疑われたときに提出した。PCRによるADV血症は1000copies/mlが1回以上検出されるか、2回以上連続での検出と定義した。移植後1年時点でのADV血症はTCDで8%、CONVで4%(P=0.04)であった。TCD患者においてはADV血症は小児で15%、成人で5%(P=0.008)であった。若年であること(HR:3.0)と急性GVHD(HR:3.2)がADV血症のリスク因子であった。ADVdiseaseはTCDの3.5%、CONVの0.4%(P=0.022)であり、27%の死亡率であった。TCD患者においてはGradeII-IVのGVHDがADVdiseaseのリスク因子であった(P<0.001)が、年齢はそうではなかった。ADVdisease症例の90%以上でviral loadが10,000copies/ml以上であった。ADVdiseaseの発症率はTCDにおいてCONVの10倍であった。Viral load 10,000copies/ml以上のTCD患者に対するpreemptive therapyの有用性はprospective studyで検証すべきである。

平成25年6月3日
西本光孝

 

Busulfan dose intensity and outcomes in reduced-intensity allogeneic peripheral blood stem cell transplantation for myelodysplastic syndrome or acute myeloid leukemia.

MDS、AMLに対する骨髄非破壊的移植における前処置のブスルファン量と治療成績


骨髄破壊的、非骨髄破壊的前処置(RIC)の比較は、再発と毒性を天秤にかけることである。RICの治療強度は様々であるが、それらは治療効果に影響を与えると考えられる。我々は、AML, MDSの移植患者を対象に、fludarabine+busulfanを用いたRICでのi.v. busulfanの量の違い(3.2 mg/kgまたは6.4 mg/kg)について比較検討した。対象は2004-2009年の217人のMDS、AML患者で、前処置にbusulfan、fludarabineでのRICを用いた末梢血幹細胞移植を血縁、非血縁のHLAマッチドナーから施行した。217人のうち135人はBu1(busulfan 3.2 mg/kg) 82人はBu2 (busulfan 6.4 mg/kg)を使用した。Fludarabineは30 mg/m2/dayを4日間投与した。RICの適応症例の選択基準は、その時代の標準治療、臨床研究への参加、主治医の選択によって決定されていた。また、2群の比較ではBu1の方が若く(median age 61 versus 64 years, P < . 001)、1抗原ミスマッチの非血縁ドナーの割合が高く(14.1% versus 1.2%, P <.001)、シロリムスによるGVHD予防の割合が高く(63% versus 45%, P < .0001)、GVHD予防のATGの使用率が低く(0% versus 22%, P < .001)、慢性GVHD治療のためのリツキシマブ使用の臨床研究に参加した割合が低かった(2.2% versus 11.0%, P=.011)。両群間で疾患状態は同様であった。平均のfollow-up期間はBu1群で4.4年、Bu2群で3.2年であった。2群間で背景に差を認めたため、propensity scoreを用いて両者の比較を行った。Day+200にけるgradeII to IVのaGVHDの発症率はBu1,17%, versus Bu2 8.5%; (hazard ratio [HR], .56; 95% confidence interval [CI], .22 to 1.41; P= .22)、 grades III to IVのaGVHDの発症率はBu1, 6.7%,、Bu2, 4.9%と同等であった。2年間の慢性GVHDの累積発症率は、2群間で大差はなかった(41.5% versus 28%, respectively; HR, .70; CI, .42 to 1.17; P=09). 2年間のNRMも両群間で大差はなかった(8.9% versus 9.8%, respectively; HR, .80; CI, .29 to 2.21; P=.67). 2年間のPFS及びOSも両者で似通っている(PFS: 40.6% versus 39.3%, respectively; HR, .82; CI, .57 to 1.30; P = .33; and OS: 47.4% versus 48.8%, respectively; HR, .96; CI, .64 to 1.44; P =.85)。疾患状態や予後不良遺伝子等で高リスクの患者のサブセット解析では、疾患リスクが高く予後不良遺伝子を有さない患者において、busulfanの量を増量することで予後にわずかに改善できるかもしれないという結果になった(2年PFS: HR, .54; CI, .29 to 1.03; P =062).しかしながら、busulfanとfludarabineで前処置を行うMDSやAML患者においては、busulfan3.2 mg/kgと6.4 mg/kgを比較すると、予後には大差がないという結論となった。

平成25年5月27日
長崎譲慈

 

Graft-versus-host disease and graft-versus-tumor effects after allogeneic hematopoietic cell transplantation.

同種造血幹細胞移植後のGVHDとGVT効果


<Purpose>年齢や重度の合併症により、強度の強い前処置に耐えられない進行期血液腫瘍患者に対し、筆者らは強度をかなり抑えた前処置レジメンによる幹細胞移植(hematopoietic cell transplantation: HCT)を計画した。これにより、前処置やgraft-versus-host disease(GVHD)の影響を大きく受けない、純粋なgraft-versus-tumor(GVT) effectを評価する。

<Patients and Methods>前処置は低用量total-body irradiation(TBI)±Fluで、HLA一致の血縁(611例)、非血縁(481例)に移植行い、GVHD予防はMMFおよびカルシニューリン阻害剤を使用した。患者年齢中央値は56歳(7-75歳)、45%の患者が併存症スコア(HCT-CI)≧3だった。観察期間中央値は5年(0.6-12.7年)。

<Result>disease risk、併存症、GVHDで層別化したところ、寛解維持は45-75%の患者で認められ、5年生存率は25-60%だった。Nonrelapse mortality(NRM)は24%、relapse mortalityは34.5%だった。NRMの最大原因はGVHDで、GVHDによるNRMの主要な要因は、重度の併存症と非血縁ドナーからの移植だった。大部分の再発は免疫システムが回復していない初期に起こっており、GVTは血縁、非血縁で同程度だった。慢性GVHDはGVTを高める効果があったが、急性GVHDには認められなかった。NRMの増加が慢性GVHDによる潜在的利益を上回った。

<Conclusion>GVTに頼った同種幹細胞移植は、一定の悪性腫瘍患者を完治に至らしめ、実現可能であった。移植後早期の腫瘍増殖を抑え、かつ効果的にGVHDを予防することで良好な結果が得られた。

平成25年5月20日
中嶋康博

 

Quantitation of hematogones at the time of engraftment is a useful prognostic indicator in allogeneic hematopoietic stem cell transplantation

同種造血幹細胞移植における生着時のヘマトゴンは予後予測になり得る


一過性の骨髄のヘマトゴンと呼ばれるB前駆細胞の増加が、同種造血細胞移植後にし ばしば観察される。この現象の臨床的意味を解析するために、我々は108例の同種造 血細胞移植患者(AML、進行期MDS, ALL, NHL)においてヘマトゴンを測定した。ヘマ トゴンの測定は完全ドナー生着確認時に行った(中央値はそれぞれ、骨髄25日、臍帯 血32日)。ヘマトゴンはポリクローナルB細胞で、頻度は末梢血のB細胞数と相関し、 ドナーの年齢に逆相関した。患者の年齢は関係なかった。ヘマトゴンは細胞内在的な ドナーB細胞へのポテンシャルを反映していることを意味する。興味深いことに、疾 患やソースの種類に関係なく、骨髄単核球の5%より多い症例は有意に生存期間が延 長し、再発率が低下した。さらに、5%より多い症例では急性GVHDの頻度が低く、こ のことが生存延長に寄与した可能性がある。ヘマトゴンの測定は同種造血細胞移植後 の予後予測に有用であるかもしれない。

平成25年5月13日
中前博久

 

Impact of a single human leucocyte antigen (HLA) allele mismatch on the outcome of unrelated bone marrow transplantation over two time periods. A retrospective analysis of 3003 patients from the HLA Working Group of the Japan Society for Blood and Marrow Transplantation

HLA一抗原不適合非血縁者間移植の成績


日本におけるHLA-A,B,DR血清マッチ非血縁骨髄移植(uBMT)の過去の報告では AやBのアリルミスは高い死亡率となるが、CミスやDRアリルミスは生存に関係ないと いう結果だった。 今回は1993-2009年の3003名のuBMT施行された成人患者でA,B,DR血清マッチuBMTの再解析を行った。 内訳は1966名の(A,B,C,DR)アリルマッチ、Aシングルアリルミス187名、Bシングル アリルミス31名、Cシングルアリル(or シングルアンチゲン)ミス524名、DRアリル ミス295名。 過去の報告と反して、HLA-Cミス(HR1.35, p<0.001)とDRのミス(HR1.45, p<0.001)が2000-2009年の移植(移植時期後期のコホート)において生存に悪影響を与えていた。アリルミスによるnegativeな影響に関しては、HLA-A, B, C,DRの間には 有意な差はなかった。(p=0.79) 交互作用解析によると、HLA-CとDRのミスはと移植時期(前期コホートと後期コホー ト)によって違っていた。(Cミス:p=0.032、DRミス:p=0.0072)。 結論として、シングルHLAアリルミスマッチの影響は移植時期によって成績が異な り、移植時期後期のコホートでCとDRのnegativeな影響が明らかとなった。

平成25年4月22日
中前美佳

 

Prospective evaluation of gene mutations and minimal residual disease in patients with core binding factor acute myeloid leukemia

CBF-AMLの遺伝子変異と微傷残存病変の前方向視的評価


全てのCBF-AML患者の予後が良いというわけではない。最新のrisk factorにはKIT and/or FLT3遺伝子変異、微少残存病変(MRD)レベルが含まれるが、各々の意義はこれまで前向きに評価されていなかった。全部で198人のCBF-AML患者が強化寛解導入療法群と標準的寛解導入療法群にランダマイズされ、3回の高用量シタラビンによる地固め療法が行われた。遺伝子変異は診断時に検査された。強化寛解導入療法後に早くMRDが減少したにも関わらず、寛解導入の違いはrelapse-free survival(RFS)に影響を与えなかった(両群とも64%;P= .91) 。WBC高値、KIT and/or FLT3-ITD/TKD変異、1回の地固め療法後のMRDが3-log減少未満はより高いspecific hazard of relapseに関連したが、多変量解析ではMRDが独立した予後因子として残った。36ヶ月の、累積再発率とRFSは3-log MRD減少を達成した人vsしなかった人では各々、22% vs 54%(P < .001)と73% vs 44%(P < .001)であった。これらの結果は遺伝子変異よりもMRDが将来の治療層別化に用いられるべきことを示している。

平成25年4月15日
廣瀬朝生

 

Bortezomib plus dexamethasone followed by escalating donor lymphocyte infusions for patients with multiple myeloma relapsing or progressing after allogeneic stem cell transplantation

同種移植後に再発、進行した多発性骨髄腫患者に対するVD療法後のDLI


同種移植後に再発した多発性骨髄腫の予後は極めて不良である。同種移植後の再発,進行した多発性骨髄腫患者に対するVD療法後のDLI治療の安全性,有効性を評価するために,前向きのphaseU試験を計画した。治療計画は3コースのVD療法を行った後,DLIによる奏効が得られるか少なくともSDの場合にdose escalatingなDLIを行った。19人が登録され,年齢の中央値は57歳(範囲 33~67歳)であり,14人がHLA一致同胞,5人が代替ドナーであった。19人のうち16人が治療を受けたが,3人は受けなかった。2人は病気の進行のため,1人は拒否した。VD療法後の奏効率は62%であり,1人がCR,6人がVGPR,5人がPR,2人がSD,5人がPDであった。DLI終了後の奏効率は68%であったが,反応の有意なup gradeを認めた。3人がstringent CR,2人がCR,5人がVGPR,1人がPR,4人がSD,1人がPDであった。フォローアップの中央値は40か月(範囲 29~68か月)で,3年PFSは31%,3年OSは73%であった。重篤な神経障害や急性GVHD flareといった有害事象は観察されなかった。同種移植後再発あるいは進行した多発性骨髄腫の症例に対してVD-DLIは安全な治療であり,効果的かもしれない。

平成25年4月8日
南野 智

 

Bendamustione plus rituximab versus CHOP plus rituximab as first-line treatment for patients with indolent and mantle-cell lymphomas: an open-label, multicenter, randomized, phase 3 non-inferiority trial

初発低悪性度リンパ腫、マントル細胞リンパ腫に対するベンダムスチン+リツキシマブ(R-B)とR-CHOPのランダム化比較試験


Background
リツキシマブ+化学療法(大半はCHOP)は進行期の低悪性度リンパ腫と高齢のマントル細胞リンパ腫において、第一選択の標準治療である。この疾患群でベンダムスチン+リツキシマブ(R-B)は再発、難治において有効である。本研究でR-BとR-CHOPを低悪性度リンパ腫、マントル細胞リンパ腫の初期治療で比較した。
Methods
前向き 多施設 ランダム化 非盲検 非劣性試験は2003/9/1〜2008/8/31でドイツの81施設で行われた。18歳以上のPS2以下、マントル細胞リンパ腫または以下のCD20陽性の低悪性度リンパ腫と組織学的に診断された新規発症、病期V〜W期の患者が適格基準であった。適格とされる亜型はGrade1-2の濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(Waldenstrom’sマクログロブリン血症)、小細胞性リンパ腫、marginal-zoneリンパ腫であった。R-B群(リツキサン 375mg/m2 day1+ベンダムスチン90mg/m2 day1, 2を4週毎)、R-CHOP群(リツキサン 375mg/m2 day1+標準量CHOPを3週毎)にランダムに振り分けられた。Primary endpointはProgression Free Survival、解析はper protocolで行われた。
Findings
274人がR-B群(261人が解析)、275人がR-CHOP群(253人が解析)であった。追跡期間中央値は45ヶ月(25-57)でPFSの中央値はR-B群69.5ヶ月(26.1ヶ月―未到達)、R-CHOP群31.2ヶ月(15.2−65.7ヶ月)とR-B群で延長していた。(HR 0.58, P<0.0001)
R-B群が化学療法耐容においてもR-CHOP群に勝っていた。血液毒性(77[30%] vs 173[68%]; p<0.0001)、感染(96[37%] vs 127[50%]; p=0.0025)、末梢神経障害(18[7%] vs 73[29%]; p<0.0001)、胃炎(16[6%] vs 47[19%]; p<0.0001)であった。皮膚の紅斑はR-B群がR-CHOP群で多かった。(42[16%] vs 23[9%])
Interpretation
低悪性度リンパ腫ではPFSの延長と有害事象が少ないことからR-CHOPよりもR-Bを初期治療として検討できる。

平成25年4月1日
稲葉晃子

 

Treatment of relapsed adult T-cell leukemia/lymphoma after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation:the Nagasaki Transplant Group experience

同種造血幹細胞移植後に再発したATLに対する治療


同種造血幹細胞移植後に再発したATLに対する治療は大きな課題である。本研究では 1997〜2010年の長崎県下3施設における、移植後に再発したATL35例について後方視的 解析を行った。免疫抑制剤が投与されていた29例に対して免疫抑制剤の減量・中止を 行ったところ、免疫抑制剤の減量・中止のみで2例がCRとなった。次に9例に対して腫 瘍量減少目的の化学療法とDLIを行ったところ、4例がCRとなり、このうち3例では3年 以上の長期間にわたってCRを維持していた。さらに、この3例全例で慢性GVHDの出現 または進行が認められた。一方、再発する前に免疫抑制剤がすでに中止されていたの は6例で、このうち局所再発した3例に対して局所治療を施行したところ3例ともCRと なり、19ヶ月以上CRを維持していた。35例全体における再発後の3年OSは19.3%であっ た。GV-ATL効果の誘導が、移植後再発のATL患者に対して長期にわたる寛解をもたら すと考えられる。

平成25年3月25日
萩原潔通

 

Randomized trial of myeloablative conditioning regimens: busulfan plus cyclophosphamide versus busulfan plus fludarabine.

BuCy vs BuFlu (ランダム化比較試験)


【目的】我々は、白血病とMDS患者における同種造血細胞移植 (HCT) の2つの骨髄破壊的前処 置レジメンを比較するためにPhase Vのランダム化臨床試験を行った。

【方法】ランダム化の後、64名の患者がbusulfan (3.2 mg/kg/day×4 days) / cyclophosphamide (60 mg/kg/day×2 days; BuCy)、62名の患者がbusulfan (同量・ 同スケジュール) / fludarabine (30 mg/m2/day×5 days; BuFlu)を投与された。

【結果】年齢の中央値は41歳 (17- 59)。BuFlu群の5名に生着不全 (1次; n=1、2次; n=4)を認 めた。HCT後4週で、患者造血キメリズムのパーセント中央値はBuFlu群で高く(0% v 5.5%; P<.001)、完全ドナーキメリズムはBuCy群で多かった(97.2% v 44.4%; P<.001)。grade 3以上の重症感染症と胃腸の有害事象はBuCy群で有意に多かったが、 肝臓の有害事象は2群で同様であった。非再発死亡は2群で同様であり、BuCy群の方で 良好なoverall survival (OS), relapse-free survival (RFS), event-free survival (EFS) を認めた (2年OS, 67.4% v 41.4%, P= .014; RFS, 74.7% v 54.9%, P=.027; EFS, 60.7% v 36.0%, P=.014)。

【結論】我々の結果は、BuFluレジメンは同種HCTの骨髄破壊的前処置の適応のある若年成人に おいてはBuCyレジメンの適切な代替にはならないことを示している。

平成25年3月18日
康 秀男

 

Hematopoietic cell transplantation with cord blood for cure HIV infections

臍帯血移植でHIV感染症を治す


CCR5-Δ32/Δ32幹細胞を持つドナーを用いたHCTはHIVを治療できる唯一の方法である。しかし、CCR5-Δ32/Δ32は非常にまれであり、またHLAがドナーとレシピエントでマッチする可能性がまれであるため、実現が難しい。対照的にCBTはHLAが多少ずれていても移植可能である。従って、我々の仮説はCCR5-Δ32/Δ32の臍帯血を数多く用いてHCTを行うことによりHIVを治療するというものである。この仮説を検証するために、CBのスクリーニングプログラムを発展させ、HCTに使用できるCCR5-Δ32/Δ32を有するCBの全リストを発展させてきた。300のCBのうち、73.6%がTNC2.5×107/kgで白人小児に使用することができ、また27.9%が成人白人に使用できる。TNCを1.0×107/kgとすると、白人小児は85.6%、白人成人は82.1%が使用できる。少数民族には恩恵が少ない。CBによるHCTは主にHIV患者ではなくAML患者に行われている。
CCR5-Δ32/Δ32をもつCBTはin vitroの研究で、移植後患者の末梢血単核細胞がHIV感染に抵抗性があることが示されている。


平成25年3月11日
吉村卓朗

 

T-Cell-Replete HLA-Haploidentical Hematopoietic Transplantation for Hematologic Malignancies Using Post-Transplantation Cyclophosphamide Results in Outcomes Equivalent to Those of Contemporaneous HLA-Matched Related and Unrelated Donor Transplantation

移植後Cyを用いたT細胞非除去ハプロ一致ドナーからの移植成績と従来のHLA一致 同胞およびHLA一致非血縁ドナーからの移植の比較


Purpose:移植後Cyを用いたT細胞非除去ハプロ一致ドナーは、alloHCTが必要であるが従来のド ナーがいない場合の解決策である。我々はハプロ一致ドナーからの移植成績を、従来のHLA一致 同胞(MRDs)およびHLA一致非血縁ドナー(MUDs)からの移植と比較した。 Patients and Methods:同時期に単施設で施行された血液悪性疾患に対するT細胞非除去で初回a lloHCTを受けた連続的な患者271人のoutcomeを比較した(53人:ハプロドナー、117人:MRDs、1 01人:MUDs)。OSおよびDFSは、stratified cox modelを用いて重要な患者、疾患、移植の因子 の効果で調整された。 Results:患者背景は3つのドナー群間で同様。MRD、MUD、ハプロ一致移植の24ヵ月NRMはそれぞ れ13%、16%、7%であり、再発率は34%、34%、33%(p=NS)。6か月時点での3-4度aGVHDの累積発症 頻度はそれぞれ8%、8%、11%(p=NS)、広汎型cGVHDは54%、54%、38%(p<0.05、ハプロvs MRD or MUD)。調整した2yrOSはそれぞれ76%、67%、64%、2yrDFSは53%、52%、60%であり、3群間で有意 差なし。 Conclusion:移植後Cyを用いたT細胞非除去ハプロ移植は同時期のMRDsやMUDsからの移植成績と 同等であった。従来ドナーがいない場合、ハプロ移植は有効な代用方法である。

平成25年3月4日
中根孝彦

 

Double-Hit Diffuse Large B-Cell Lymphoma


<症例> 72歳女性、生来健康、体重減少と腹痛で受診。FDG-PET陽性の3cm大の腸管を圧排する 腸間膜LN腫大を認めた。LN生検結果はDLBCLで、CD10+で、Ki-67は 80%であった。BCL2の免疫染色は陽性で、MYCの免疫染色は施行されていなかった。FISHでは、t(14;18) BCL2 translocationとt(8;14)ではないがMYC遺伝子再構成を認めた。BMの生検はリンパ腫 の病変なく、LDHは軽度上昇していた。このIPI 2点のdouble-hit DLBCL例の予後と 治療方針を議論する。

<まとめ> 同一細胞内に2種以上の遺伝子異常が認められるMLをdouble-hit lymphomaと呼ばれ、特にMYCとBCL2遺伝子の同時発現が主のパターンで、R-CHOPなどのDLBCLの標準治 療の治療予後が最不良である。また発症年齢中央値も高い(69歳)ことが特徴である。 double-hit lymphomaの診断として、MYCやBCL2を高コストで手間のかかるFISH法で示 さないといけなかったが、最近パラフィン切片からMYC蛋白を染色する簡便な免疫組 織染色法(IHC)が確立され(Plos One 2012)、その臨床的有用性と再現性は大規模研究 グループから示され、今後実臨床応用が予想され、double-hit lymphomaが次のWHO分 類の改訂で新しいentityとなると予想されている。 本例はまず臨床研究に参加すべきである。double-hit DLBCLは初回治療はR-CHOPでは 治療抵抗性であるが、そこで強化レジメンをするのかASCTまでするのかは、現段階は 報告もなく、Burkitt's lymphoma と DLBCLに安全性と有効性、さらに本例のような 高齢者に対して忍容性が示されているdose-adjusted R-EPOCH療法を選択する。

平成25年2月25日
寺田芳樹

 

Prognostic Impact of Posttransplantation Iron Overload after Allogeneic Stem Cell Transplantation

鉄過剰は同種造血幹細胞移植後の予後不良因子


同種造血幹細胞移植患者では、鉄過剰は高頻度で、合併症や死亡の増加に関連している。移植後 の鉄過剰の変化と移植後後期のイベントとの関係については分かっていない。我々は2000年から 2009年の間に骨髄破壊的移植を受けた290人の患者について調べた。血清フェリチン、トランス フェリン飽和度、トランスフェリン、鉄、可溶性トランスフェリン受容体を移植後1−60か月の 間測定し、移植予後との相関を調べた。 フェリチン値は移植後最初の3か月にピークを迎え、それから5年間で正常の値まで減少した。ト ランスフェリン飽和度と鉄は同様に動いたが、一方でトランスフェリンと可溶性トランスフェリ ン受容体は早期に減少した後増加した。ランドマーク生存解析では、高フェリチン血症は解析し たすべての期間で生存に対して有害な影響があった。(0〜6ヶ月 P < .001、6〜12ヶ月 P < .00 1、1〜2年 P = 0.02、2〜5年 P= 0.002)この影響は赤血球輸血依存や移植片対宿主病とは独立 していた。同様の傾向は他の鉄パラメーターでも見られた。これらのデータから、同種移植にお ける鉄パラメーターの自然な動きがわかり、鉄過剰が移植後急性期を越えても予後不良因子とし ての役割があることが分かった。それゆえ、過剰な体内鉄を減らすよう介入することは移植の前 後いずれにおいても利益があるかもしれない。


平成25年2月18日
康 史朗

 

Cord-blood engraftment with ex vivo mesenchymal-cell coculture

間葉系幹細胞を用いてex vivo培養した臍帯血の生着


背景
低細胞数による生着不良は臍帯血移植(CBT)の有用性を制限している。我々はex vivoで間葉系幹細胞(mesenchymal stromal cells, MSC)で増幅した臍帯血(CB)が、生着を改善する仮説を立てた。
方法
31人の成人血液悪性腫瘍患者で、片方をex vivoでMSCとの共培養で増幅した2つのCBによる移植の生着を調査した。結果は、無操作の複数臍帯血移植を受けた80人のhistorical controlと比較した。
結果
MSCによる共培養でTNCは中央値12.2倍、CD34+細胞数は中央値30.1倍に増幅した。片方を増幅しもう片方は無操作の臍帯血移植により、(以前の無操作の複数臍帯血移植より多い)TNC中央値 8.34×107/kg・CD34+中央値 18.1×106/kgの細胞数を移植した。生着が得られた患者で、CBを増幅した群では好中球生着の中央値は15日であったのに対し、無操作の群では24日であった(p<0.001)。血小板生着はそれぞれ42日と49日であった(p=0.03)。Day26での好中球の累積生着率はそれぞれ88%と53%(P<0.001)、day60での血小板の累積生着率は71%と31%(p<0.001)であった。
結論
MSCで増幅したCBTは安全かつ有効であった。増幅したCBと無操作のCBの移植は、無操作のCBのみと比較し有意に生着を改善した。


平成25年2月4日
相本瑞樹

 

Reduced-intensity conditioning versus standard conditioning before allogeneic haemopoietic cell transplantation in patients with acute myeloid leukaemia in first complete remission: a prospective, open-label randomised phase 3 trial.

AML 1stCR患者における移植前処置、RIC vs 標準的前処置の比較、 prospective, open-label, randomized 第3相試験


<背景> 強度を弱めた前処置レジメン(RIC)は、同種幹細胞移植後の早期の毒性や 死亡を最小限にするために、発達してきた。しかしながら、これらのレジメンの有効 性について、ランダマイズされた研究はなされていない。この前向き、open label、 ランダマイズされた第3相試験において、我々は1stCRのAML患者において、 fludarabine baseのRICレジメンとスタンダードレジメンを比較した。 <方法> intermediate、またはhigh riskの1stCRのAML(染色体による)で、HLA machのsiblingドナーか、少なくとも9/10でHLAが一致した非血縁ドナーを持ち、腎、 心、肺、神経機能の異常を認めない18-60歳の患者が登録された。2004年11月15日か ら2009年12月31日までに、患者はfludarabine150mg/m2とTBI2Gy×4回からなるRIC、 または、CY120mg/kgとTBI2Gy×6回からなるスタンダードレジメンのいずれかに、 computerに基づき、患者年齢、染色体リスク、寛解導入療法、ドナータイプを調整し た方法で、割りつけられた。全ての患者は、CsA+MTXによるGVHD予防を受けた。この studyにおいては、調査者も患者もblindではなかった。Primary endpointはNRMであ り、intention to treatで解析された。 <結果> この試験は、患者の登録が緩慢であり、2009年12月31日に早期に終了した。 99人の患者がRIC群に割り付けられ、96人の患者がスタンダード群に割り付けられ た。RIC群とスタンダード群に、NRMの発症率の有意差はなかった。(3年累積発症率 13%[95%CI 6-21] vs 18%[95%CI 10-26]; HR 0.62[95%CI 0.30-1.31])再発(3年累積 発症率 28%[95%CI 19-38] vs 26%[95%CI 17-36] ; HR 1.10[95%CI 0.63-1.90])、 DFS(3年累積発症率58%[95%CI 49-70] vs 56%[95%CI 46-67]; HR 0.85[95%CI 0.55-1.32])、OS(3年累積発症率61%[95%CI 50-74] vs 58%[95%CI 47-70]; HR 0.77[95%CI 0.48-1.25])も各群間で有意差はなかった。Grade3-4の口内炎は、スタ ンダード群よりRIC群で少なかった。(RIC群50人 vs スタンダード群73人)GVHDや Bil、Creの上昇といった合併症の頻度も各群で有意差はなかった。 <結論> RICはスタンダードレジメンと比較して、生存率に影響することなく、同等 のNRMであり、毒性を減らした。この結果、RICは、60歳より若いAML1stCRの患者に、 より好ましく用いられ得る。


平成25年1月28日
岡村浩史

 

HLA-C-dependent prevention of leukemia relapse by donor activating KIR2DS1

ドナー活性化KIR2DS1によるHLA-C依存性白血病再発予防


Background
同種移植により治療される癌においてAMLは最もNK細胞の反応性が高い疾患である。KIR2DS1はHLA-C2抗原に対して特異的なリガンドであり、HLAの種類によってNK細胞を活性化する。KIR2DS1とHLAによってコントロールされるドナー由来NK細胞は同種移植をおこなったAML患者に利益をもたらし得る。
Methods
我々はHLA-A、B、C、DR、DQ1ミスマッチまでの非血縁同種移植を施行したAML患者1277人を調査した。ドナーのKIR genotypingを行い、ドナーKIR genotypeとレシピエントHLA genotypeの臨床効果を評価した。
Results
KIR2DS1陽性ドナーから移植を受けた患者はKIR2DS1陰性ドナーから移植を受けた患者に比べて再発が低かった(26.5% vs 32.5%, HR0.76, P=0.02)。
KIR2DS1陽性ドナーから移植を受けた患者のうち、HLA-C2ホモのドナーからの患者はHLA-C1ホモまたはヘテロのドナーからの患者と違って、抗白血病効果がなかった(24.9%C1homo or hetero vs 37.3%C2homo, P=0.002)。
KIR2DS1陽性ドナーから移植を受けた患者でHLA-Cの1 locus不一致患者はKIR2DS1陰性ドナーから移植を受けた患者でHLA-Cの1 locus不一致患者に比較して再発が低かった(17.1% vs 35.6%, P=0.007)。
KIR3DS1では再発に対して効果はなく、しかし死亡率は減らした(60.1% vs 66.9% without KIR3DS1, P=0.01)
Conclusions
AMLに対する同種移植において、ドナー活性化KIRgeneが成績と関連していた。ドナーのKIR2DS1はHLA-Cの種類によって再発から守っており、KIR3DS1は死亡率の低下と関連していた。


平成25年1月21日
西本光孝

 

Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for adult T-cell leukemia-lymphoma with special emphasis on preconditioning regimen: a nationwide retrospective study

ATLに対する同種造血幹細胞移植〜前処置の重要性〜


成人T細胞性白血病(ATL)は難治性の成熟T細胞腫瘍である。我々はATLに対して日本国内で施行された造血幹細胞移植(HSCT)について、前処置の効果に焦点を当てて後方視的な研究を行った。この報告はATLに対するHSCTの報告の中で、最も規模の大きい報告である。レシピエント586人のうち、骨髄、末梢血幹細胞移植の平均生存期間(OS)は9.9ヶ月(95%信頼区間で7.4-13.2ヶ月)、3年生存率は36%(32−41%)であった。骨髄破壊的前処置(MAC;n=280)ではOSは9.5ヶ月、3年生存率39%である一方、骨髄非破壊的前処置(RIC;n=306)ではOSは10.0ヶ月、3年生存率は34%であった。多変量解析では、高齢、男性、非寛解、PS低値、非血縁ドナーからの移植という5つの因子が、予後を悪くするという結果になった。MACとRICの間には大きな違いは認めなかったが、高齢者においてはRICの方が予後がよい傾向があった。死亡率で見れば、RICはMACと比較して腫瘍関連死が多かった。従って、MAC, RIC共にATLに対して長期生存を導く治療であると言うことが結論付けられた


平成25年1月7日
長崎穣慈

 

 

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