最新文献紹介(抄読会)
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2014年

 

A breath fungal secondary metabolite signature to diagnose invasive aspergillosis

呼気中の真菌代謝産物による侵襲性アスペルギルス症の診断

[Background] 侵襲性アスペルギルス症(IA)は、依然、免疫不全患者における死亡の主原因であり、この事の一部には本感染症の診断が困難であることが起因している。 [Methods] 加熱脱着ガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いて、in vitroでIAのうち最も多い原因であるAspergillus fumigatusとその他の病原性アスペルギルス属の揮発性代謝産物プロファイルを明らかにした。われわれは、2011年から2013年まで、侵襲性真菌肺炎が疑われた患者から呼気サンプルを前向きに収集し、これら呼気サンプル中の真菌性揮発性代謝産物を直接検出することで、EORTC/MSGコンセンサス基準に従ったproven/probable IA患者とアスペルギルス症でない患者を識別できるかどうかを評価した。 [Results] モノテルペン類のカンフェン、α-とβ-ピネン、リモネン、ならびにセスキテルペン化合物類のα-とβ-トランス-ベルガモテンは、in vitroでA. fumigatusの特徴的な揮発性代謝産物であり、他の病原性アスペルギルス属と異なっていた。宿主リスク因子、臨床症状、画像所見に基づき侵襲性真菌肺炎が疑われた64名の患者のうち、34名がIAと診断され、30名が最終的に他の侵襲性真菌症を含む肺炎と診断され た。α-トランス-ベルガモテン、β-トランス-ベルガモテン、β-vatirenene様セスキテルペン、or トランス-ゲラニルアセトンが、IA患者を感度94% (95%CI, 81%-98%)、特異度93% (95% CI, 79%-98%) で同定した。 [Conclusions] 真菌肺炎が疑われた患者において、呼気中のアスペルギルス由来代謝産物の特徴によりIA患者を同定することが可能である。本結果は、肺炎の精確な原因微生物を同定する新規の病原体特異的アプローチとして、呼気中の外因性真菌代謝産物 を直接検出する手法は利用可能であるというコンセプトの実証を提供している。

平成26年12月22日
康 秀男

 

Chimeric antigen receptor T cells for sustained remissions in leukemia

CAR-T細胞療法による白血病の寛解持続

背景:再発ALLは可能な限りの積極的な治療をしてもコントロール困難である。CD19 キメラ抗原(CAR)受容体を発現させた遺伝子改変T細胞療法は、難治疾患を有する患 者において標準的治療の限界を突破し寛解をもたらす可能性がある。 方法:再発または難治性ALL患者に対し、CD19-CAR(CTL019)レンチウイルスベク ターを導入した自己T細胞を0.76-20.6x106/kg体重の量で投与し、治療反応、毒性、 患者体内の循環CTL019T細胞増加と割合について検討した。 結果 30人の小児および成人が投与を受けた。Blinatumomab(CD3+CD19抗体)に不応であっ た2人および移植歴のある15人を含む27人(90%)にCRが得られた。CTL019細胞は体内 で増殖し、反応を示した患者の血中、骨髄中、脳脊髄液中で検出可能であった。持続 的CRも得られ、6ヶ月EFSは67%(95%CI:51-88)、OSは78%(95%CI:65-95)であっ た。6か月時点でCTL019が存在している患者の割合は68%(95%CI:50-92)、無再発・B 細胞無形成は73%(95%CI:57-94)であった。全患者がサイトカイン放出症候群 (CRS)を発症した。重症CRS(27%で発症)は投与前の高腫瘍量と関連しており抗 IL-6抗体であるtocilizumab(アクテムラ)投与が効果的であった。 結論 CD19に対するCAR-T細胞療法は、再発・不応性ALLに対し効果的であった。CTL019は、 移植後症例であっても高い寛解率をもたらし、持続的寛解は24ヵ月まで観察された (Funded by Novartis et al)。

平成26年12月15日
中根孝彦

 

One-unit versus two-unit cord-blood transplantation for hematologic cancers.

血液腫瘍に対するsingle-cordとdouble-cordの比較

[BACKGROUND] 臍帯血移植は今まで30000ほど行われている。体格の大きい人にsingle-unitで臍帯血移植を行うと、血球回復遅延と高い致死率を引き起こすため、使用が制限されてきた。従ってdouble-unitの臍帯血を使用し、より多く幹細胞を輸注することにより、移植の成績を向上できないかどうかを検討した。

{METHOD} 2006年12月1日から2012年2月24日までの合計224人、年齢が1歳から21歳、疾患が血液腫瘍の患者、single-unitが111人、double-unitが111人、全例骨髄破壊的前処置、免疫抑制剤でGVHD予防を行った。主要評価項目は1年OS。

{RESULT} 2年間で年齢、性別、人種(white vs nonwhite)、PS、HLA一致度、疾患状態の項目を一致させた。1年OSはdouble-cordで65%(95%CI 56-74)、single-cordで73%(95%CI 63-80)、P=0.17 。DFS、好中球回復、移植関連死亡、再発、感染症、免疫再構築、Grade II-IV aGVHDの項目では2群間で差はなかったが、single-cordの方が、血小板回復が早く、Grade III-IV aGVHDおよびextensive cGVHDの発症率は低かった。

{CONCLUSION} 子供と青年期の血液腫瘍において、single-cordとdouble-cordの生存率は同じである。しかし、single-cordでは血小板回復とGVHDリスク減少の点で良好な結果であった。

平成26年12月8日
吉村卓朗

 

Ibrutinib treatment ameliorates murine chronic graft-versus-host disease

イブルチニブ治療はマウス慢性GVHDを改善する

慢性GVHDは同種移植後の生命に関わる障害で、依然として十分な予防および治療法はない。CD4+T細胞とB細胞がその病態に関わる故にこれらの集団を標的にすることで慢性GVHDを阻害できるかもしれない。IbrutinibはFDA認可後の薬剤で、Bruton's tyrosin kinase(BTK)とIL-2 inducible T cell kinase(ITK)の両方を不可逆的に阻害し、Th2細胞およびB細胞を標的として最小の毒性でB細胞系の悪性腫瘍に対して奏功を示す。今回、我々は2種類のマウスモデルを用いて、確立したcGVHDに対してIbrutinibが奏功するかどうかを吟味した。マウスモデルはそれぞれ、T cell-driven sclerodermataous cGVHDとalloantibody-driven multiorgan sysytem cGVHD model(BO病態を含む)である。

強皮症モデルでは、Ibrutinib投与により増悪が遅れ、生存が改善し、臨床的かつ病理学的所見が改善した。

抗体原性全身モデルではIbrutinib投与により肺機能が維持され、GC反応(germinal center reactions)が減少し、組織へのグロブリン沈着も減少した。BTKおよびITKの欠損マウスでは慢性GVHDは進展しなかったことからは、これらの分子が発症に重要な役割を持つことが示された。

さらに本剤により、活動性の慢性GVHD患者検体中のT&B細胞の活性化は減弱した。これらのデータは、T&B細胞の慢性GVHDを引き起こすことを示し、Ibrutinibがその治療薬剤として可能性があることを示唆している。ただし、臨床試験を考えるべきである。

平成26年12月1日
林 良樹

 

Pulmonary complications in hematopoietic SCT: a prospective study

造血幹細胞移植における肺合併症:前向き研究

造血幹細胞移植患者において肺合併症は一般的でしばしば致死的である。この前向き 介入研究の目的は造血幹細胞移植患者の1年のフォローアップで肺合併症の原因、診断方法、リ スク因子、アウトカムを評価することである。肺合併症を患っている患者に対して、非侵襲的方 法と気管支鏡検査を含む診断アルゴリズムを施行した。169人の患者で73人の肺合併症を同定し た。50人(68%)は肺炎、21人(29%)は非感染性合併症、2人(3%)は診断がつかなかった。ウ イルス(28%、特にライノウイルス)と細菌(26%、特に緑膿菌)は肺炎の最も一般的な原因であっ た。特異的な診断は83%の症例で得られた。非侵襲的な検査で、59%のepisodeで特異的診断が 得られた。気管支鏡による診断は67例(78%)で得られた。肺感染症に対して、早期の気管支鏡( ?5日)は後期の気管支鏡よりも診断率が高かった(78%対23%)。肺合併症による全ての重症者 のうち全死亡は22人(32%)であった。肺合併症は一般的で、死亡の独立したリスク因子であり、 適切な臨床マネジメントの重要性が強調された。

平成26年11月17日
康 史朗

 

Post-transplantation cyclophosphamide as single-agent GVHD prophylaxis after myeloablative conditioning and HLA-matched allografting for acute leukemias and myelodysplastic syndrome

急性白血病およびMDSに対する骨髄破壊的前処置を用いたHLAマッチ同種造血幹細胞移植後のpostCY単独GVHD予防

大量Post CYは同種HSCT後の重症GVHDを減らすが、長期の疾患別のposttCYの影響については不明な点が多い。我々はHLAマッチの血縁または、HLAマッチのT細胞非除去非血縁ドナーで、骨髄破壊的前処置を用い、GVHD予防はpostCY単独で行った209名の連続した成人移植患者(AML(n=138)、MDS(n=28)、ALL(n=43))の後ろ向き研究を企画した。移植時、患者の30%は血液学的に非寛解であった。Day100までのgrade2-4、3-4のaGVHDの累積発症率は、それぞれ45%と11%であり、移植後2年までのcGVHDの累積発症率は13%であった。43%の患者は、postCY以外の免疫抑制を必要としなかった。3年での再発は36%、DFSは46%、原疾患もGVHDもない生存率は39%、OSは58%であった。移植時に非寛解、予後不良染色体異常、グラフトの有核細胞が少ないこと、がAML患者における予後不良と関連した。t(9;22)以外のMRDがALL患者における予後不良と関連した。

平成26年11月10日
岡村浩史

 

Treatment of Patients with Adult T Cell Leukemia/Lymphoma with Cord Blood Transplantation: A Japanese Nationwide Retrospective Survey

ATLLに対するCBTの成績(全国調査)

同種造血幹細胞移植はGVL効果によりATLLを治癒できる治療法である。しかしながら、臍帯血移植(CBT)がaggressiveなATLLに対して治癒可能なGVLを発揮するかどうかは限られた情報しかない。我々はCBTのATLLに対する効果を検証するために175例の患者についてretrospectiveに解析した。2年生存率(OS)は20.6%(95%信頼区間:28.1-56.6%)であった。多変量解析でGVHDの発症がOSに対する予後良好な因子であった(HR:0.1、95%信頼区間0.01-0.94;P=0.044)。さらにgrade 1-2の急性GVHD患者の2年OS(42.7%)はGVHDなし患者(24.2%)より高かった(P=0.048)。しかしながら、TRMが高く(46.1%)、早期死亡が問題であった。結論としてCBTはGVL効果で一部のATLL患者を治癒できる。しかしながら、特に早期のTRMを減らし、適切なGVHDを出すように新たな介入が必要だろう。

平成26年10月27日
西本光孝

 

Core-binding factor acute myeloid leukemia in first relapse: a retrospective study from the French AML Intergroup

初回再発CBF-AML(後方視的解析)

CBF-AMLは細胞遺伝学的に予後良好なサブグループであるが、標準的な化学療法後に30-40%が再発する。新たに診断されたAML、特にCBF-AML患者に対するGO療法が有望な結果であったため、我々は後方視的にGOをベースとしたサルベージ療法の有効性を調査した。我々は145人の初回再発のAML患者(t(8;21)が59人、inv(16)/t(16;16)が86人)を後方視的に分析した。サルベージ療法として48人がGOをベースとした化学療法、97人が従来の化学療法を受けた。年齢中央値は43歳、1stCRの中央値は12.1ヶ月、全CR2比率は88%であった。再々発までのfollow up中央期間は3.5年で、5年DFS、OSは各々50%、51%と推定された。高齢や1stCR期間が短ければ、OSは悪かった。多変量解析ではGOベースのサルベージはDFS、OSの向上と関連していた。78人が2ndCRで同種造血幹細胞移植を受けたが、移植前GO投与は移植後のDFS、OSを向上させ、TRMは高くなかった。

平成26年10月20日
高桑輝人

 

In adults with t(8;21)AML, posttransplant RUNX1/RUNX1T1-based MRD monitoring, rather than c-KIT mutations, allows further risk stratification.

成人t(8;21)AMLの移植後早期のMRDモニタリン グは、c-KIT変異よりも迅速に再発高リスクの患者 を判別できる

RUNX1/RUNX1T1転写レベルによる微小残存病変(MRD)、さらにはc-KIT変異の有無が、同種幹細胞( allo)移植を受けたt(8;21)転座を持つ白血病患者の予後を評価で きるかについて解析を行った。 t(8;21)転座を持つ成人白血病患者で、完全寛 解状態でallo移植を受けた92人が登録された。移 植後1,2,3ヶ月後のMRDレベルが再発リスクと相関した(P=0.05, P<0.001,P=0.0001)。c-KIT変異 の有vs無により、2年での累積再発率(CIR)は32% vs 9%(P=0.01)、無病生存率(LFS)は55% vs 70% (P=0.12)だった。多変量解析では、c-KIT変異よりもむしろ、移植後3ヶ月でのMRDレベルがCIR(P =0.001)、LFS(P=0.001)の独立した因子だった。さらにMRD陽性患者17名に対し、ドナーリンパ球 輸注(DLI)が施行された。DLIの有vs無による、2年のCIRは24% vs 87%(P=0.001)、LFSは64% vs 0 %(P<0.001)であった。結論として、t(8;21)転座を持つ白血病患者の移植後早期のMRDモニタリン グは、c-KIT変異よりも迅速に再発高リスクの患者 を判別できる。

平成26年10月6日
中嶋康博

 

Intensified chemo-immunotherapy with or without stem cell transplantation in newly diagnosed patients with peripheral T-cell lymphoma.

新規末梢T細胞リンパ腫に対する造血幹細胞移植も考慮した強化化学免疫療法

末梢性T細胞リンパ腫は、通常の化学療法では予後不良である。我々は、若年(Clin A)および、60歳<かつ、75歳以下の高齢者(Clin B)の初発末梢性T細胞リンパ腫お いて、化学免疫療法(chemo-immunotherapy)の安全性、有効性を評価した。Clin A (n=61)では、CHOP21-alemtuzumab (30mg) 2コース後に、大量化学療法を2コース行 い、ドナーの有無で、同種あるいは、自家移植を行った。Clin B (n=25)では、 CHOP21-alemtuzumab (30mg) 6コース行った。Clin Aでは反応の得られた38例(62%) が、同種(n=23)あるいは、自家移植(n=14)を受けた。1例のCR例は移植を行わなかっ た。フォローアップの中央値40ヶ月で、4年OS、PFS、DFSはそれぞれ、49%,44%、 65%であった。Clin B 研究では、奏効率は72%であった。フォローアップの中央値 48ヶ月で、4年OS、PFS、DFSは、それぞれ、31%,26%,44%であった。結論とし て、同種あるいは、自家移植は若年者にとってDFSの改善に有用である。高齢者での alemtuzumabは、の奏効率の改善が得られたが、生存を延長しなかった。

平成26年9月29日
中前博久

 

ALK-negative anaplastic large cell lymphoma is a genetically heterogeneous disease with widely disparate clinical outcomes

ALK陰性未分化大細胞リンパ腫は遺伝子的に均一ではなく、予後も異なる

Anaplastic lymphoma kinase (ALK)陰性ALCLは、ALK陽性ALCLに組織学的に類似して いるが、ALK遺伝子再構成がないCD30陽性T細胞性NHLである。遺伝子的、臨床的に、 ALK陰性ALCLの多様性は不明である。 今回、免疫組織染色とFISHを73例のALK陰性ALCLと32例のALK陽性ALCLに施行し、病理 学的、遺伝子的評価と臨床アウトカムの関係を検討した。 ALK陰性ALCLの30%にDUSP22、8%にTP63の再構成が見られた。これらの再構成は相互 排他的(mutually exclusive)で、ALK陽性ALCLには見られなかった。 5年OSはALK陽性ALCLで85%、DUSP22再構成例で90%、TP63再構成例で17%、この3つが陰 性の例(トリプルネガティブALCL)では42%(P < .0001)であった。 この4グループの死亡のHRは、IPIと年齢で補正後、それぞれ1(reference)、0.58、 8.63、4.16 (p=7.10x10^-5)であった。 この結果はアントラサイクリンで治療を受けた患者だけに限っても同様で、非移植例 に限った検討でも同様だった。 このように、ALK陰性ALCLは遺伝子的に均一でなく、標準治療後の予後も幅広く異な る。DUSP22とTP63再構成は治療決定の助けとして予後予測マーカーとなり得る。

平成26年9月22日
中前美佳

 

Outcomes of lung transplantation after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.

同種造血幹細胞移植後の肺移植の成績

例えば閉塞性細気管支炎症候群(BOS)のような造血幹細胞移植(HCT)関連合併症に起因する末期肺疾患には、肺移植(LT)以外の特異的治療法は存在しない。我々は自施設でのレトロスペクティブケースシリーズや医学文献のレビューから血液疾患に対するHCT後にLTを受けた患者における適応とアウトカムを報告する。1990〜2010年にLTを受けた自施設9人の同種HCT患者を含む、HCT後のLT計70例を特定した。我々のコホートにおいて、HCT時点の年齢中央値は16歳(10〜35歳)、LT時点は34歳(17〜44歳)、HCTからLTまでの期間中央値は10年(2.9〜27年)。LTの適応症は肺線維症(n=4)、BOS(n=3)、GVHDに関連した間質性肺炎(n=1)と原発性肺高血圧症(n=1)であった。生存期間中央値は49ヵ月(2週〜87ヵ月)で、1人はLT後3年以上生存中であり、LT後の1年と5年生存は89%と37%であった。1992年〜2013年7月の医学文献で、米国、欧州、アジアの様々な施設からHCT後のLT61例を記載している20の論文を特定した。61例中26例(43%)はLT時に年齢が18歳未満、症例の大多数でBOSと肺GVHDはLTの適応であり(80%;n=49)、肺線維症と間質性肺疾患がそれに続いた(20%;n=12)。3症例以上報告している論文において手術直後から16年にわたる観察期間での生存率は71%(39/55)であり、死因の大部分は感染症とBOSを含む肺同種移植の長期合併症であった。2例は、血液悪性疾患の再燃または再発に関連していた。LTはHCT後の末期肺合併症で苦しむ一部の患者で、生存期間を延長することができる。長期アウトカムを改善させる可能性のある患者因子は、若年、原病の血液悪性疾患の再発が少なくともHCT後2年以上ないこと、他の末端臓器機能不全または免疫抑制剤での治療を必要とする慢性GVHDの徴候がないことである。

平成26年9月8日
廣瀬朝生

 

Engraftment syndromeafter allogeneichematopoietic cell transplantation predict poor outcomes

移植後の生着症候群は予後不良を予見する

生着症候群は、発熱、肺水腫、体重増加、肝臓や腎機能障害、脳症が造血幹細胞移植後に好中球回復の時期に起こる。この研究では初回移植を行った小児、成人を対象に発症率、臨床的特徴、リスク因子、アウトカムを評価した。927人の患者において、中央値10日(四分位範囲9〜12日)で119人(13%)が発症した。生着症候群の患者においては有意に100日時点でのGrade2〜4の急性GVHD発症率は高く(75% vs 34%、p<0.001)、2年の非再発死亡は高く(38% vs 19%、p<0.001)、2年の生存率は低かった(38% vs 54%、p<0.001)。2年の再発は有意差を認めなかった(26% vs 31%、p=0.772)。ST2、TNF-α。sIL2Rαは有意に生着症候群発症患者で高かった。我々の結果は移植における生着症候群の予後への影響や臨床的な意味を明らかにして。生着症候群の早期診断や適切なステロイド治療にもかかわらず、生着症候群の予後はきわめて不良である。生着症候群をより特徴づけるような検査データや臨床的な特徴を集めるために前向き研究を進める必要があると思われる。

平成26年9月1日
南野 智

 

Diagnostic and risk criteria for HSCT-associated thrombotic microangiopathy: a study in children and young adults.

移植後TMAの診断とリスク基準

移植関連TMAは血管内皮障害により生じ、多臓器不全に至ることもあり、重症例では移植後の予後不良因子となる。高リスク患者の同定は現在困難である。我々は、中等度・重症のTMAの発症率や予後不良と関連する因子を決めるために、前向きに100人の移植患者を評価した。39%が以前に報告されているTMAの基準を満たした。移植後1年のNRMはTMA群が非TMA群と比べて有意に高かった(43.6%vs7.8%)。LDH上昇、スポット尿での蛋白尿、高血圧が最も早期のTMAマーカーであった。TMA診断時の蛋白尿(>30mg/dL)と血中の補体活性化(sC5b-9上昇)が、予後不良と関連しており(1年生存率<20%)、両者がないTMA患者は全例生存していた。本研究では、重症TMAは移植患者の18%に発症すると結論付けられ、適切な臨床介入が有益であろう高リスク患者を同定するアルゴリズムを提示した。

平成26年8月25日
久野雅智

 

Prognostic factors and outcomes of severe gastrointestinal GVHD after allogeneic hematopoietic cell transplantation.

同種造血幹細胞移植後に生じる重症消化管GVHDの予後予測因子と予後について

重症(stage3or4)の消化管急性GVHDの予後不良群を同定するために有用である、GVH D発症後Day14までに同定することが出来るリスク因子について検討した。連続した同 種移植後の患者1462名で検討し、そのうち116名(7.9%)がstage3-4の消化管GVHDを 発症した。発症までの平均期間は移植後35日(4−135日)であった。85名(73%)は GVHD発症後2週間以内にステロイド抵抗性を認めた。死亡率に影響するリスク因子と してはステロイド抵抗性(HR=2.93 p=0.0005)、18歳以上(HR=4.95 p=0.0004)、血 清ビリルビン値の上昇(HR=2.53 p=0.0001)、明らかな消化管出血(HR=2.88 p=0.00 04)であった。リスク因子が2個以下の患者は予後がよく、3個以上であれば予後不良 であった。このスコアリングは今後、stage3-4の消化管GVHDの予後予測において考慮 されるべきである。

平成26年8月18日
幕内陽介

 

Plasma microRNA signature as a noninvasive biomarker for acute graft-versus-host disease

急性GVHDのバイオマーカーとしての血漿中microRNA

急性GVHD (aGVHD) は同種造血細胞移植 (HCT) 後の罹患と死亡の主要な原因である。HCTレシピ エントの約30−50%がaGVHDを発症するが, 臨床使用できるaGVHDの診断と予測の血中バイオマー カーで検証されたものはない。本研究において, 我々はaGVHD患者から得られた血漿サンプルが, 特徴的なmicroRNA (miRNA) 発現プロファイルを有している事を報告します。我々は, training とvalidation相において, 非GVHD患者 (n=52) と比較して, aGVHD患者(n=116) の血漿において 6 つのmiRNA (miR-423, miR-199a-3p, miR-93*, miR-377, miR-155, miR-30a) が有意に高発現 していることを見出した。我々は, aGVHDの発症を予測する, 4つのmiRNA (miR-423, miR-199a-3 p, miR-93*, miR-377) を含むモデルを開発し, そのarea under the curveは0.80であった。ま た, これらの上昇していたmiRNAはaGVHD発症前に検出された (中央値で診断16日前)。さらに, これらのmiRNAの値はaGVHDの重症度と正の相関があり, miRNAパネルの高発現は予後不良と関連 していた。aGVHDに特徴的なmiRNAは, 肺移植や非移植sepsis患者の血漿中には検出されなかった。 我々の結果は, aGVHDの発症予測, 診断, 予後における独立したバイオマーカーとなり得る, 特異的な血漿miRNAプロファイルを同定した。

平成26年8月11日
康 秀男

 

Sirolimus-based graft-versus-host disease prophylaxis promotes the in vivo expansion of regulatory T cells and permits peripheral blood stem cell transplantation from haploidentical donors

シロリムスによるGVHD予防はTregを増加させ、ハプロ一致ドナーからのPBSCTを可能にする

血縁HLA半合致移植は高リスク血液悪性疾患の有望な治療の1つである。我々は121人(多くが進行期疾患)の患者において、sirolimus-basedでカルシニューリン阻害剤なしでのGVHD予防でHLA半合致血縁ドナーからのunmanipulated PBSCTを施行した。前処置はtreosulfan+fludarabineで、GVHD予防としてATG-F、リツキサン+経口sirolimus+MMFを用いた。好中球および血小板生着中央日は移植後day17および19、患者骨髄の初回評価時点で完全ドナーキメリズムを達成していた。T細胞免疫再構築は早くsirolimus内服中の血中の機能的Tregの割合は高かった。II-IV急性GVHD頻度は35%であり、重症度とTregの割合は負の相関があった。慢性GVHD頻度は47%。3年TRMは31%、再発48%、OS 25%であった。結論として、sirolimus-MMF-ATG-F-Rを用いたGVHD予防はTregの割合が増える形での早い免疫再構築をもたらし、未操作の半合致PBSCグラフトの輸注を可能にした。

平成26年8月4日
中根孝彦

 

Erythropoietin therapy after allogeneic hematopoietic cell transplantation: a prospective, randomized trial

同種造血幹細胞移植後のエリスロポエチン治療

・我々は、HCT後に遺伝子組み換え人エリスロポイエチン(rhEPO)投与でHbがどれだけ上昇するかを評価する前向きランダマイズ試験を行った。
・131人の患者はcontrol armとrhEPO 500U/kg /week投与のEPO armで1:1に振り分けられた。
・患者はまた3つのコホートに振り分けられた。内訳は骨髄破壊的前処置(MHCT)で移植後day28から投与群、骨髄非破壊的前処置(NMHCT)で移植後day28から投与群、NMHCTで移植後day0から投与群。
・移植後day126でHb>13 g/dLとなったのはcontrol armで8.1%(median not reached)であったのに対し、EPO armでは63.1%(median day90)であったp<0.001。
・EPO armでHb値が高いほど、輸血量は減少したp<0.001が、day0からrhEPO投与を開始したNMHCT群において、最初の1か月で差はなかった。
・血栓症、その他の合併症はcontrol armとEPO armで差がなかった。
・この研究は、HCT後1か月目からrhEPO投与を行うと、赤血球回復が促進され、輸血が減少することを示した最初のランダマイズ研究である。
・NMHCT後にrhEPOをday0から投与しても、赤血球回復を促進することはなかった。

平成26年7月28日
吉村卓朗

 

Improved Survival After Transplantation of More Donor Plasmacytoid Dendritic or Naive T Cells From Unrelated-Donor Marrow Grafts: Results From BMTCTN 0201.

非血縁ドナー骨髄中のplasmacytoid dendritic cells (pDCs)および naive T cells (Tns)は移植後の生存に寄与する

Purpose:
BMTCTN0201試験で移植された患者について、非血縁ドナーから採取されたBMもしくはGCSFにて動員されたPBの特異的な細胞集団と、患者の臨床結果の関係を同定する。
Pts & Methods:
北米地域で採取された161例のBMと147例のPBグラフトの新鮮検体について、OS、再発、GVHDとの関連をみた。
Results:
グラフト評価の対象となった患者群は、すべてBMTCTN0201試験患者群と(背景、臨床結果とも)同様であった。HLA不適合、年齢、ATG使用の有無など患者およびドナーの背景因子を含む多変量解析の結果、BM内のplasmacytoid dendritic cells (pDCs)および naive T cells (Tns)細胞数が、OSと独立して関連していた。BMT患者のうち、pDCs、naive CD8 T cells (CD8Tns)、naive CD4 T cells (CD4Tns)の中央値を超える輸注を受けた群は3y-OSが優れていた(pDCs, 56% v 35%; P =.025; CD8Tns, 56% v 37%; P =.012; CD4Tns, 55% v 37%;P =.009)。BM-Tns輸注数が多いことは、grade3-4の急性GVHDの低下と関連していたが、再発率は同等であった。BM-pDCs輸注数が多いことは、GVHDおよび拒絶に関連した死亡の低下と関連していた。PBグラフトの解析では、細胞分画と臨床結果についての関連を同定できなかった。
Conclusion:
非血縁同種幹細胞移植の内、BMグラフトにおいて、免疫細胞と生存に関連がみられたが、PBでは認めなかった。同種移植におけるドナー免疫細胞のbiologic activityは、採取源により違いがある。BM由来のTnsやpDCsがより多く含まれるドナーグラフトは、移植後の免疫を都合よく制御する。

平成26年7月14日
林 良樹

 

TNT003, an inhibitor of the serine protease C1s, prevents complement activation induced by cold agglutinins

セリンプロテアーゼC1s阻害薬(TNT003)が寒冷凝集素による補体活性化を阻害する

補体古典経路の活性化は、自己抗体の出現と関係している自己免疫疾患の病態としばしば関連し ている。その疾患の一つが寒冷凝集素症で、自己抗体である寒冷凝集素が低温で赤血球に結合す る自己免疫性溶血性貧血である。貧血は赤血球表面の自己抗体介在性古典経路活性化の結果起こ り、補体オプソニンの沈着によって肝臓における血管外溶血を引き起こす。我々は古典経路特異 的なセリンプロテアーゼのC1sを標的とするマウスのモノクローナル抗体TNT003の、ヒト赤血球 上の寒冷凝集素による古典経路の活性化に対する働きを評価した。我々は40人の寒冷凝集素症患 者の検体を集め、TNT003が寒冷凝集素による補体オプソニン化を阻害することを示した。さらに、 TNT003は古典経路活性化を阻害することで、寒冷凝集素によるアナフィラトキシンの産生も予防 するということも示した。最後に我々は寒冷凝集素症における古典経路活性化が終末経路の活性 化の引き金であることを示した。この結果はこれらの患者において赤血球破壊の主な経路は血管 外溶血であるという仮説を指示する。我々の結果は寒冷凝集素症の治療として古典経路阻害を行 うことを支持する。

平成26年7月7日
康 史朗

 

18F-FDG PET/CT for the assessment of gastrointestinal GVHD: results of a pilot study.

消化管GVHDに対する18F-FDG PET/CTの有用性

消化管のaGVHDの早期診断に対するFDG PET/CTの意義を評価するため、この前向き 試験を計画した。42名の連続した同種造血幹細胞移植患者が含まれた。FDG PET/CTは 移植後中央値day28(24-38)で施行された。FDG PET/CTは、15例(36%)で陽性(9 例:真陽性、6例:偽陽性)、27例(64%)で陰性(26例:真陰性、1例:偽陰性)で あった。感度、特異度、PPV、NPVは、81%、90%、60%、83%であった。Grade1-2と grade3-4の消化管GVHDの間にSUVmaxの有意差はなかった。これらの所見は、消化管 aGVHDによる消化管の活動性炎症はFDG PET/CTで評価可能であり、非侵襲的なFDG PET/CTは消化管aGVHD病変を位置付け、特に症状のないFDG PET/CT陽性患者におい て、生検部位をガイドし、適切な内視鏡操作を導くために、内視鏡前に行うことので きる意義ある検査であることを示唆する。

平成26年6月30日
岡村浩史

 

Late-onset colitis after cord blood transplantation is consistent with graft-versus-host disease: results of ablinded histopathological review

CBT後の遅発性下痢は生検のblind reviewでGVHDと矛盾しない

Cord colitis syndrome (CCS)はCBT後のlate-onsetの下痢があり、GVHDや感染症の所見がなく、慢性活動性腸炎と肉芽腫性炎症(granulomatous inflammation)を認める抗生剤に反応する疾患である。我々はシアトルのlate-onset腸炎の移植患者でCBTおよび別の移植ソース(コントロール)でGVHDと腸炎を検証した。移植後Day70からday365に腸生検が行われた45例のCBTと45例のコントロール患者から153検体をblindでreviewした。下痢が主の症状であった患者はCBT10例、コントロール11例であった。すべてのコホートでCBTとコントロールで病理組織的な違いはなかった。両グループにおいてGVHDの“粘膜構造のゆがみ”や“apoptotic陰か細胞”は共通にみられた。Paneth cell の異形成や granulomaはめったに見られない所見であった。慢性活動性腸炎はCBT患者の58%、コントロールで62%にみられた。抗生剤で治療したCBT下痢患者はいなかった。すべての患者がステロイドに反応した。DAY70以降に発症したコントロール群の腸炎は急性GVHDに関連していた。我々はCBTあるいはコントロ―ルいずれのグループも組織学的cord colitis syndromeを証明できなかった。

平成26年6月23日
西本光孝

 

Treatment of High-Risk Philadelphia Chromosome-Negative Acute Lymphoblastic Leukemia in Adolescents and Adults According to Early Cytologic Response and Minimal Residual Disease After Consolidation Assessed by Flow Cytometry: Final Results of the PETHEMA ALL-AR-03 Trial.

若年および成人のPh陰性高リスクALLに対する治療成績は寛解導入療法に対する早期反応性と地固め療法後のFCMによるMRD残存に関連する

【Purpose】MRDは成人ALLの重要な予後因子であり、治療方針の決定に有用であると思われる。PETHEMA ALL- AR-03 trialは15−60歳の若年および成人ALL患者(high risk ALLは含むが、Ph陽性ALLは含まな い)を寛解導入療法後早期(day14)の反応性と地固め療法後のMRDレベルに応じて、それぞれ化 学療法群と同種移植群に割り付けた。

【Patients and Methods】寛解導入療法後の反応性が良く(day14で骨髄中blast<10%)、MRDレベルが5×10-4未満の患者 は化学療法群(地固め継続、維持療法)に割り付けられ、寛解導入療法後の反応が不良か、MRDレ ベルが5×10-4以上の患者は同種移植群に割り付けられた。

【Results】326人中282人(87%)がCRを達成し、内179人がITT解析され、71人が同種移植群、108人が化学療 法群に割り付けられた。DFS、OSは全体で37%、35%、同種移植群で32%、37%、化学療法群で5 5%、59%であった。多変量解析ではpoor MRD(寛解導入療法後に1×10-3以上、early consolida tion後に5×10-4以上)のみがOSおよびDFSに対する予後因子であった。

【Conclusion】若年および成人のPh(-)high-risk ALL(HR-ALL)の患者で、寛解導入に良好に反応し、かつMRDレ ベルが低い患者に対して同種移植を行なわないときの予後は極めて良い。本研究ではMRDのみがD FSとOSの予後因子であった。

平成26年6月16日
高桑輝人

 

Neutrophil granulocytes recruited upon translocation of intestinal bacteria enhance graft-versus-host disease via tissue damage

腸管細菌の組織移行により遊走された好中球により組織傷害をきたしGVHDがが増強する

急性GVHDによる致死的合併症の恐れがあるため、同種間細胞移植(allo-HCT)の適応拡大は制限されており、抗原提示細胞(APC)とTリンパ球がGVHDの主たる原因細胞と考えられている。好中球は体内で最も多い白血球であり、ケモカインや活性酸素(ROS)を分泌することでT細胞を活性化し、 同種免疫反応において好中球は、移植前処置により傷ついた組織ダメージを増幅している可能 性がある。筆者らは生体内でのミエロペルオキシダーゼ(MPO) in vivo imagingを用いて解析行い、同種移植後のマウス回腸への好中球の浸潤は、腸管微生物叢依存的に進行し、無菌状態(germ-free)では認められなかった。抗体や遺伝子操作により好中球を除去すると、GVHDによる死亡は低下し、好中球によるGVHDの増悪にはROSが必要であった。これはROS産生に必要なCybb遺伝子を除去すると、組織ダメージが軽減し、エフェク ターT細胞が減少し、GVHD関連死亡が低下する事から明らかとなった。またBcl-xL遺伝子強制発現により好中球の生存を延長させると、GVHD関連死亡は増加した。逆にToll-like receptor(TLR)-2,3,4,7,9を欠乏させることで、細菌叢への反応を減弱 させた好中球を移入すると、GVHDは軽減した。さらにヒトにおいて、重症の腸管GVHDは、炎症部位への好中球の浸潤数と強く相関していた。この研究ではマウス・ヒト両方のケースでGVHD病態における好中球の新たな役割について明らかとした。

平成26年6月9日
中嶋康博

 

T-cell infiltration of the human bone marrow during acute GvHD is associated with impaired B-cell reconstitution and function after allogeneic-HSCT

急性GVHDにおける骨髄へのT細胞浸潤が同種移植後のB細胞再構築および機能障害に関与している

 移植後のB細胞免疫異常は重症感染症のリスクである。B細胞免疫再構築遅延は全身 性GVHDの患者でみられ、骨髄抑制もしばしばみられる。骨髄のGVHDについて殆どわ かっていない。 今回の研究では、成人白血病患者での同種移植後6カ月までの患者のB細胞サブセット の再構築の動的変化を解析した。 B細胞減少は移植前から明らかだが、移植後さらに悪化する。B細胞再構築は transitional B細胞回復がearly onset(2-3カ月)である患者とlate onset(6カ月 以降)である患者がいる特徴があり、(フローサイトで測定した)B細胞サブセット はkappa-deleting recombi--nation excision-circles (KREC)のRT-PCR定量の値と 正方向に関連した。B細胞免疫回復の遅れは急性GVHDと骨髄破壊的前処置と関連して いた。BMトレフィン生検の病理学的検討で、late onsetの患者にはT細胞浸潤の増加 が見られ、骨芽細胞数の減少と関連していることが分かった。機能的には、late onsetの患者は、early onsetの患者よりも、ex vivoのB細胞活性化刺激に対する pneumococcal polysaccharide-specific IgM-産生B cellが少なかった。 まとめとして、今回の結果は同種移植後の急性BM GVHDがドナーT細胞浸潤と骨芽細胞 破壊を伴っているというエビデンスを提供した。そしてこれはB細胞の再構築遅延と 抗体反応障害と関連している。これらを考慮するとKRECはBMでの移植後B細胞産生量 をモニターするのに適した方法であると思われる。

平成26年6月2日
中前美佳

 

Endothelial vulnerability and endothelial damage are associated with risk of graft-versus-host disease and response to steroid treatment

血管内皮の脆弱性と傷害がGVHDのリスクとステロイド抵抗性に関連する

我々は近年、ステロイド抵抗性のGVHDにおいて、血管内皮の脆弱性を介するホルモンである、angiopoetin-2(ANG2)の血清レベルが上昇していることを報告した。血管内皮の脆弱性が、GVHD自体のリスク因子となるかを検討するため、あるいは臨床的に問題となるレベルのGVHDの発症に重要かを評価するためにANG2をsoluble thrombomodulin(sTM)、IL-8(CXCL8)、hepatocyte growth factor(HGF)、他の血清血管ストレスマーカーとともにGVHDのない患者、軽度、重度のGVHD患者で調べた。ステロイド抵抗性のGVHD患者においては、ANG2、sTM、IL-8、HGFが移植後有意に増加していた。移植前のANG2は、ステロイド抵抗性と死亡および、grade III-IVのGVHDに関与する唯一の因子であった。逆にANG2は、GVHDのなかった患者や軽度の患者では、GVHDの発症やNRMの予後因子ではなかった。今回の研究では、血管内皮の脆弱性はGVHDの発症の予測にはつながらなかったが、ステロイド抵抗性の病態形成への重要な関与をしていることがわかった。

平成26年5月26日
中前博久

 

Outcome of patients with abnl(17p) acute myeloid leukemia after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation

Abnl(17p)を有する急性骨髄性白血病患者の同種造血幹細胞移植後のアウトカム

AMLで染色体17pの異常(abnl(17p))を有する患者は、治療失敗のriskが高く、従来の化学療法では予後不良であることが報告されている。正確にabnl(17p)AML患者の同種造血幹細胞移植(HSCT)後のアウトカムを決定するために、我々はこの異常を持ち、2000年1月から2010年12月の間に、明確に定義されたコホートである4つ(Fred Hutchinson Cancer Research Center, Haemato Oncology Foundation for Adults in the Netherlands, Study Alliance Leukemia, German Cooperative Transplant Study Group)のうちの1つで同種HSCTを受けた患者のアウトカムを解析した。年齢中央値54歳で201人の患者のデータが評価可能であった。解析時に、30人の患者は30ヵ月の追跡期間中央値で生存していた。3年OSは15%(95%CI、10-20)、3年累積再発率は49%(95%CI、42-56)であった。注目すべきことに、全ての再発のほぼ70%が、HSCT後の最初の6カ月以内に発生した。初回完全寛解(CR1)時に移植された患者は、進行期で移植された患者と比較してOSは優れていた(22% vs 9%、P <0.001)。我々は、さらに、CR1での同種HSCT後でさえabnl(17p)AMLが治療失敗リスクが高いことを確認した。同種HSCTは、いまだCR1で妥当な選択肢であるが、代替治療戦略が後の患者のために必要とされる。

平成26年5月19日
廣瀬朝生

 

Plasma CXCL9 elevations correlate with chronic GVHD diagnosis

血漿CXCL9上昇と慢性GVHDの関連

慢性GVHDに対する検証されたバイオマーカーはない。我々は蛋白アレイとELISAを用いて治療抵抗性のde novo typeの慢性GVHD17人と同時期に急性GVHDも慢性GVHDも発症しなかった患者18人をコントロールとして慢性GVHD発症群と非発症群を鑑別するための5つの候補蛋白を確認した。CXCL9,BAFF,elafin,CD13,IL2Rαである。その後,検証コホートにおいて我々は各々の蛋白やコンポジットした蛋白の識別値を評価した(n=109人)。CXCL9のAUCは0.83 (95%CI 0.74-0.91)と最も高かった。血漿CXCL9の中央値が慢性GVHDの高頻度と関連していた。これは,慢性GVHD発症の因子として知られる年齢,病気,ドナーソース,HLAの一致度を補正しても関連していた (71% vs 20%; p<0.001).もう一つの異なる移植センターで別の検証コホート(n=211)を行い,先に述べた因子を補正した後,中央値を超えた血漿CXCL9濃度が新規発症の慢性GVHDに関連することを確認した(84% vs 60%; p<0.001)。我々の結果が示していることは新規発症の慢性GVHD患者において血漿CXCL9濃度は上昇するということである。

平成26年5月12日
南野 智

 

Oncogenetics and minimal residual disease are independent outcome predictors in adult patients with acute lymphoblastic leukemia

成人ALLにおいてoncogeneticsとMRDは独立した予後予測因子である

小児に準じて治療強度を上げた治療と遺伝学的疾患分類で,成人のALLの分野は最近進歩している.この状況で我々は,新規の遺伝子異常とIg/TCRを使用した微小残存病変(MRD)を用いた治 療への早期反応性という観点で,従来のリスク因子を再評価することとした.本研究は,比較的 若年の成人Ph陰性ALLでCR1の患者423人(B前駆細胞<BCP>ALL265人,T-ALL158人)を対象とし,累積再発率(CIR)を主要評価項目(PE)とした.従来のリスク因子に加えて,最も高頻度な遺伝的変 化で利用可能なものが解析に含まれた.寛解導入後のMRDレベル>10-4と,予後不良の遺伝的特徴 (例:BCP-ALLでのMLL遺伝子再構成,IKZF1部分欠失,T-ALLでのNOTCH1/FBXW7変異なし,N/K-RAS 変異,PTEN遺伝子異常)が独立して,高い疾患再発率と関連していた.二つの因子は,新しい リスク分類を定義し,この分類は高いCIRとより短いRFS,OSと強く関係していた.これらの結果は,遺伝的異常が,成人ALLの重要な予後予測因子であることを示しているが,遺伝的異常のみ で治療への早期反応は完全には決定できないことを示している.本研究では,多施設GRAALL2003 -2005試験で治療された患者が含まれた.両試験はClinicalTrials.govで登録された.

平成26年4月28日
久野雅智

 

HLA-haploidentical hematopoietic SCT from collateral related donors without in vitro T-cell depletion for hematological malignancies

傍系親族からのT細胞非除去HLA半合致骨髄移植

HLA半合致同種造血幹細胞移植(ハプロ移植)を用いることで、HLA一致血縁ドナーが いない患者であっても多くの場合移植のチャンスを得ることが出来る。特に、傍系親族(※おじ・おば・おい・めい・いとこなどHLA半合致の親族)におけるハプロドナー を用いることで、移植機会を更に増やすことが出来る。今回、血液悪性疾患に対する ハプロ移植において、ドナーを傍系親族にするか、直系親族(※親・子供・HLA半合 致の兄弟)にするかで臨床的なアウトカムを比較した(各、n=30 ,n=120)。傍系親族では29人(96.7%)の患者で血球の生着を認めた。傍系親族及び直系親族の各群に おいて、骨髄球系の生着に要した期間の中央値は、それぞれ13日(10−20日)、14日 (12−23日)であった。血小板の生着に要した期間の中央値は、それぞれ18日(7−2 70日)、15日(7−132日 p=0.027)であった。GradeU―Wの急性GVHDの発生頻度は それぞれ27.6%と39.4%(p=0.058)であった。2年間の追跡した慢性GVHDの累積発生率 は63.3%と57.8%(p=0.365)であった。このとき、特にextensiveに分類される慢性GVHD を認めた傍系親族の割合は直系親族と比較して特に多かった(36.7% vs20.2% p=0.03) 。傍系・直系それぞれにおける、2年間の再発率は26.7%vs14.8% p=0.17、3年間の全 生存率は56.7%vs70.4% p=0.224、3年間の無白血病生存期間は50.0%vs65.4% p=0.103 であった。本研究から、傍系親族からのハプロ移植でも安全な治療を行うことが出来 ることが示され、今後適切な直系親族のドナーがいない場合の代替案として用いるこ とが期待出来る。

平成26年4月21日
幕内陽介

 

The origin and evolution of mutations in acute myeloid leukemia.

がんゲノムのほとんどの変異は、ゲノム不安定性やclonal evolutionを引き起こす可 能性のあるinitiatingイベントの後に獲得されると考えられている。しかしながら、 AMLでは、正常核型が一般的であり、ゲノム不安定性もまれである。AMLにおける clonal evolutionをより良く理解するために、既知のinitiatingイベント(PML-RARA) を有するM3-AML検体のゲノムと正常核型M1-AML検体のゲノム、健常人の造血幹/前駆 細胞(HSPCs)のエクソン全体をシーケンスした。 まとめると、本データは、AMLゲノムで見つかる変異のほとんどは、実質的には、 initiating変異を獲得する前にHSPCsで起こっているランダム変異であることを示唆 しており、またその細胞の変異の過程はクローンが拡大するにつれて”獲得された” ものである。多くの場合、たった1つまたは2つの協働する変異の付加が悪性を生み 出すクローンを発生させるのに必要である。その創始クローンからの細胞は付加的に 協働変異を獲得し、疾患の進行や再発に寄与し得るサブクローンを生む可能性があ る。

平成26年4月14日
康 秀男

 

HLA-haploidentical donor lymphocyte infusions for patients with relapsed hematologic malignancies after related HLA-haploidentical bone marrow transplantation

HLA半合致骨髄移植後再発に対するHLA半合致DLI

PTCyでのハプロBMT後再発に対するhaploDLIでの治療の報告はない。2003年6月~2012年10月まで にPTCyを用いたhaploBMT後にDLIを受けた全患者を調べ、GVHDおよびoutcomeにつき評価した。4 0人が52回のDLIを受けた。AML16人、リンパ腫11人であり、34人が骨髄非破壊的前処置であった。 HaploBMTから再発までの中央値は183日(0-1399)、DLI時の年齢中央値は48歳(3-70)であった。 一回目のhaploDLI量は1x10*5CD3/kgで開始し漸増した。最も一般に用いられた初回量は1x10*6CD 3/kgであった。HaploDLI後のフォローアップ中央値は全体で7ヵ月(平均15.4か月、range: 5-96)、反応のあった群で17.5か月(平均28ヵ月、range:2.4-96)。Acute GVHDは10人(25%) で発症し、6人がIII-IV度だった。3人がchronic GVHDを発症。12人(30%)が中央値11か月(平 均22.5ヵ月、range:4-94)でCRを達成。最終フォローアップ時点で8人がCRで生存、6人が1年以 上経過している。ハプロBMT後再発に対するhaploDLIは許容できる毒性と持続する反応性をもた らしうる。

平成26年4月7日
中根孝彦

 

Idelalisib and rituximab in relapsed chronic lymphocytic leukemia

再発CLLに対するIdelalisib+rituximab治療

【背景】 CLL再発患者は合併症があるため、通常の化学療法は投与し難い、そのため、副作用が対処可能である効果的な治療法が必要とされている。

【方法】Idelalisib(PI3K阻害剤、150mgを1日2回経口投与)の効果と安全性評価をIdelalisib+リツキシマブとリツキシマブ+プラセボ群の2群比較を多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボコントロールのphase3試験で行った。腎機能低下、前治療による骨髄抑制または合併症を有する220名が登録された。 主要評価項目は無増悪生存期間。中間解析において、delalisib+リツキシマブ群で圧倒的な有用性が認められ、試験は早期に修了した。

【結果】PFSの中央値はプラセボ群で5.5ヶ月であったが、Idelalisib群では50%未満に達しておらず、中央値は算出できなかった(HR 0.15、P<0.0001)。 Idelalisib群とプラセボ群の治療反応率は81%vs13%(オッズ比29.92、P<0.0001)、12ヶ月時点の全生存率は92%vs80%(HR 0.28、P=0.02)。重篤な有害事象はIdelalisib群で40%、プラセボ群で35%。

【結論】Idelalisibとリツキシマブ併用療法は、化学療法困難な再発難治CLL患者において、PFS、反応率、OSを有意に改善した。

平成26年3月31日
吉村卓朗

 

Genetic variants in C5 and poor response to eculizumab

補体蛋白C5の遺伝子変異とエクリズマブに対する不良な反応

【背景】 エクリズマブは補体蛋白C5を標的として、発作性夜間血色素尿症(PNH)に関連する終末補体介 在性溶血を阻止するヒト化モノクローナル抗体である。エクリズマブの反応が乏しい日本人患者 における分子学的機序はこれまで分かっていなかった。

【方法】 エクリズマブへの反応が良いか乏しかったPNHの患者のC5をエンコードする遺伝子の塩基配列決 定をおこなった。また、これらの患者でエンコードされたC5の機能的特性を評価した。

【結果】 エクリズマブの投与を受けた日本人のPNH患者345人のうち、11人の患者で反応が乏しかった。全 ての11人の患者はC5に単一のヘテロミスセンス遺伝子変異(c.2654G→A、p.Arg885Hisの遺伝子 多型)を認めた。この遺伝子変異の頻度(3.2%)は健康な日本人のもの(3.5%)と同等であった。こ の多型は漢民族系中国人でも認められた。アジア系のアルゼンチンの反応の乏しい患者でかなり 類似した変異(c.2653C→T、p.Arg885Cys)を認めた。非変異型、変異型のC5はいずれも試験管 内で溶血を引き起こしたが、非変異型のC5のみがエクリズマブと結合し阻害された。試験管内の 非変異型と変異型のC5はN19-8(エクリズマブと異なる部位に結合する抗C5モノクローナル抗体) を用いて完全に阻害された。

【結論】 Arg885の変異を伴うC5変異型の機能的特性がこれらの変異を持つ患者のエクリズマブ投与への反 応が乏しいことの理由である。

平成26年3月24日
康 史朗

 

High-dose cytarabine in induction treatment improves the outcome of adult patients younger than age 46 years with acute myeloid leukemia: results of the EORTC-GIMEMA AML-12 trial.

46歳未満の成人急性骨髄性白血病患者において、大量シタラビンによる寛解導入療法 は予後を改善する:EORTC-GIMEMA AML-12試験の結果

<目的>  AraCはAML患者の治療において重要な役割を果たす。ほとんどの病院では寛解導入 療法として100〜200mg/m2/dayのAraCが7〜10日間使用されている。大量AraCの利点に ついてはコンセンサスが得られていない。 <対象患者と方法>  EORTCとGIMEMAのグループが15〜60歳の新規AML患者に対して、DNR、ETPに標準量の AraC(100mg/m2/day×10days)か、大量AraC(3000mg/m2を12時間毎、3時間投与を day1,3,5,7)のいずれかを加えた寛解導入療法を行い、両群の比較を行うランダム化 比較試験を指揮した。CRを得た患者には、DNRと中等量のAraC(500mg/m2を12時間毎 ×6days)による地固め療法を1コース施行し、引き続き幹細胞移植を予定した。主要 評価項目は生存である。 <結果>  中央f/u期間6年での全生存率は、標準量AraC群で38.7%、大量AraC群で42.5%であっ た。(log rank test P=0.06, 多変量解析P=0.009)46歳より若い患者においての全 生存率は、標準量AraC群で43.3%、大量AraC群で51.9%であり(log rank test P=0.09, 多変量解析P=0.003)、46〜60歳患者においての全生存率は、標準量AraC群 で33.9%、大量AraC群で32.9%であった。(P=0.91)寛解率は、標準量AraC群で 72.0%、大量AraC群で78.7%であり(P<0.001)、46歳未満では75.6%と82.4%(P=0.01)、 46歳以上では68.3%と74.8%(P=0.03)であった。染色体やFLT3/ITD変異による高リス ク患者や二次性AML患者においては、全ての年代で大量AraC群が優れていた。 <結論>  大量AraCは、特に46歳未満の患者で標準量AraCよりも高い寛解率と生存率を示す。

平成26年3月17日
岡村浩史

 

Single-unit cord blood transplantation after granulocyte colony-stimulating factor-combined myeloablative conditioning for myeloid malignancies not in remission.

悲寛解のMDS、AMLに対するG-CSF併用骨髄破壊的前処置を用いた臍帯血移植

AML、MDSに対する骨髄破壊的な同種造血幹細胞移植において高用量の腫瘍は悪い結果と関連している。静止しているleukemia stem cellはG-CSFによってcell cycleに入っていき、より化学療法に感受性をもつ可能性がある。我々は61例の非寛解のMDS、AMLに対してG-CSF併用高用量AraC、CY、TBI12Gyの前処置を用いたCBTの結果を報告する。フォローアップ期間中央値は97ヶ月で、7年OS 61.4%、7年再発率30.5%であった。多変量解析でCBT時のLDH高値が独立したリスク因子であった。今回のデータはG-CSF併用した骨髄破壊的前処置を用いたCBTが非寛解の骨髄性悪性腫瘍に対して有望な治療選択であることを示唆している。

平成26年3月10日
西本光孝

 

Azacitidine in untreated acute myeloid leukemia: A report on 149 patients

AMLに対するアザシチジンの効果

AMLに対するアザシチジン(AZA)治療および予後因子に関するデータは限られている。147人の未治療AMLの患者でintensive chemotherapyの適応にならない患者にNamed Patient Programの下、アザシチジンが投与された。AML type別にde novo 51人、post-MDS 55人、post-MPN 13人、治療関連AML 30人であった。年齢中央値は74歳、WBC中央値は3,200/μL、58%の患者が骨髄中に30%以上の芽球を有していた。予後不良遺伝子異常を伴う患者は60人、治療中央値は5サイクルであった。RR(CR,CRi,PRを含む)はinitial responseが27.5%、best responseが33%。治療奏功不良因子は遺伝子異常のみ。OS中央値は9.4ヶ月、2年OSはresponder群で51%、non-responder群で10%(p<0.0001)。予後不良遺伝子異常、WBC>15000/μL、ECOG-PS≧2はOS不良因子であったが、年齢、骨髄中の芽球数は大きな影響を与えなかった。MDS  IWG 2006 response criteriaでSDにあたる患者において、7ヶ月を基点にランドマーク解析を行ったが、血液学的な改善は生存率の改善に有意な影響を与えなかった。本研究のハイリスクAML患者に対するAZA治療の結果は、同等群に対して強度の高い治療を行う前向き試験を実施し、結果を比較検討する余地がある。

平成26年3月3日
高桑輝人

 

An enhanced International Prognostic Index (NCCN-IPI) for patients with diffuse large B-cell lymphoma treated in the rituximab era

リツキシマブ時代におけるびまん性大細胞リンパ腫の予後指標(NCCN-IPI)

The International Prognostic Index(IPI)は20年以上に渡り、aggressive non-Hodgkin lymphoma(NHL)患者の予後分類として使用されてきた。リツキシマ ブ時代のthe National Comprehensive Cancer Network(NCCN)の臨床データベー スを用いて、筆者らはより良いリスク層別化を目的に改良版IPIを構築した。 NCCNの7つのがんセン ターにて2000〜2010年に診断された、新規発症のdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)患者1650人の臨床所見か ら、年齢およびLDHを統 計学的にさらにカテゴリー化し、年齢・LDH・節外病変数・Ann Arbor分類・ performance status(PS)の5項目により、患者を最大8ポイントに点数化 した。 さらにそのリスクに応じて、low(0-1)、low-intermediate(2-3)、high- intermediate(4-5)、high(6-8)の4群に層別化した。5年生存率に関し て、従来 のIPIではlow90% vs high54%に比べ、NCCN-IPIでは96% vs 33%とより選別化が明 らかだった。the British Columbia Cancer Agency(BCCA)における1138人の患者 は、全く別コホートであるがやはりlow、highリスク共により選別化がはっきり した。NCCN-IPIは容易に使用で き、リツキシマブ時代の非常に強力な予後予測 となる。

平成26年2月24日
中嶋康博

 

Autologous or Reduced-Intensity Conditioning Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation for Chemotherapy-Sensitive Mantle-Cell Lymphoma: Analysis of Transplantation Timing and Modality

化学療法感受性のマントル細胞リンパ腫において、自家移植と同種RIC移植の比較

目的: 化学療法感受性のMCLに対しての初回移植の検討をするため、疾患経過における異なる時期に行われた、初回自家移植と初回同種RIC移植について比較。

患者背景&方法: 1996-2007年のIBMTRに報告された移植の519例の解析。早期移植コホートは、2ライン以下の化学療法にてPR1かCR1となった例と規定し、晩期移植コホートはそれ以外と規定。

結果:早期コホートでも晩期コホートでも、5年OSは自家と同種RICで同様であった (早期コホート:自家61%、RIC 62% (p=0.951)。晩期コホート:自家44%、RIC31% (p=0.202))。早期・晩期どちらののコホートでも、再発・増悪がRICで少なくTRMは RICで多い結果であった。OSとPFSで一番良かったのはCR1で自家移植をうけた群。多変量解析では、診断からの生存の解析では、晩期より早期コホートでの移植が、自家でもRICでもOSにおいて勝っていた。

結論: 化学療法感受性のMCLにおいて、移植の適切なタイミングは治療経過において早期である。CR1で自家移植を受けた人が最も好ましい結果となった。2ラインにてCRに達し ない例や再発した症例においては、長期の寛解の可能性や生存率は劣るものの、自家移植も同種RIC移植も効果的かもしれない。

平成26年2月17日
中前美佳

 

Impact of allele-level HLA matching on outcomes after myeloablative single unit umbilical cord blood transplantation for hematologic malignancy

悪性血液疾患における、単数の臍帯血移植でのHLAアレル一致の影響

1568例の悪性血液疾患における、単数の臍帯血移植でのHLA-A、-B、-C、-DRB1のアレルレベルの一致の影響を調べた。主要評価項目は非再発死亡であった。HLA-A、-B、-C、-DRB1のマッチの割合は7%、1アレルミスマッチは15%、2アレル26%、3アレル30%、4アレル16%、5アレル5%であった。一部のケースでは、データの補完を行いHLAマッチに割り振った。実際にHLAマッチしていた症例と、データの補完を行ってHLAマッチに割り振った症例において、予後との関係は一致していた。HLAマッチに比べて、好中球の回復が3,4,5アレルミスマッチで遅かったが、1,2アレルミスマッチでは差がなかった。NRMは、HLAマッチに比べて、1,2,3,4,5アレルミスマッチで高かった。これらの結果は細胞数や患者の年齢と独立しており、アレルレベルでのHLAマッチの臍帯血の選択を支持するデータと言える。

平成26年2月10日
中前博久

 

Changes in the Clinical Impact of High-Risk Human Leukocyte Antigen Allele Mismatch Combinations on the Outcome of Unrelated Bone Marrow Transplantation.

ハイリスクHLAアリルミスマッチの組み合わせが非血縁骨髄移植のアウトカムに与える臨床的影響の変化

日本の非血縁造血幹細胞移植患者の移植アウトカムの解析により、重症急性GVHDリスクの高い、いくつかのハイリスクHLAアリルミスマッチの組合せ(HR-MMs)が特定された。本研究では、3つの移植の時代におけるHR-MMsの影響を再解析した。初期の時代(1993-2001)では、HR-MMグループのgradeV-W急性GVHDの発症率が低リスク(LR)MMグループよりも有意に高いことを確認した(HR2.74; p < 0.0001)。しかし、HR-MMとLR-MM間のgradeV-W急性GVHD発症率の違いは、中期(2002-2007)と後期(2008-2011)においては統計学的に有意ではなかった(各々HR 1.06; p=0.85とHR 0.40; p=0.21)。同様に、初期ではHR-MMグループの生存はLR-MMグループより有意に劣っていた(HR 1.46、p=0.019)が、中期と後期では、2つのグループ間の生存の違いは統計学的に有意でなかった(各々HR 1.06; p=0.75とHR 0.82; p=0.58)。

結論として、HR-MMの悪影響は、時代によってそれほど有意ではなかった。一つのHR-MMをもつ非血縁移植は、HLAマッチか一つのLR-MMをもつ非血縁ドナーがいない場合に現実的な選択肢となりうる。
平成26年2月3日
廣瀬朝生

 

Etoposide-containing conditioning regimen reduces the occurrence of hemophagocytic lymphohistiocytosis after SCT

エトポシドを含んだレジメンは移植後の血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)の発症を減らす

血球貪食性リンパ組織球症はコントロールが不可能なほど活性化したリンパ球やマクロファージが増殖し、大量の炎症性サイトカインが分泌されることにより重篤な炎症をおこす致死的な疾患である。
移植後血球貪食性リンパ組織球症の診断は困難である。重篤な臨床症状と高い致死率をもつ。現在の治療アプローチにも関わらず予後不良のままである。我々は移植後血球貪食性リンパ組織球症の発症率とリスクを解析し、移植後血球貪食性リンパ組織球症を発症した患者の予後と治療への反応性をみた。移植後の累積発症率は4.3%であった。前処置へのエトポシド使用が移植後血球貪食性リンパ組織球症の発症を減らした(P=0.027)。自家移植をうけた全ての患者が治療に奏効した。肝機能異常をもった患者(例えば、高BIL血症、PT延長、低FIG血症)が血球貪食性リンパ組織球症の治療反応性が不良であった。エトポシドを前処置に含まないレジメンを使用した際に、医師は血球貪食性リンパ組織球症に注意すべきである。

平成26年1月27日
南野 智

 

Activation of the STAT3 Signaling Pathway Is Associated With Poor Survival in Diffuse Large B-Cell Lymphoma Treated With R-CHOP

STAT3シグナル伝達経路の活性化がR-CHOPで治療されたDLBCLのうち生存率が低いものに関連する

目的:我々は以前にSTAT3活性化が,活性化B細胞型DLBCL(ABC-DLBCL)の重要な特徴であると報告した.本研究では,STAT3活性化でDLBCL患者のリスク層別化ができるか調べた.
患者と方法:185人のR-CHOPで治療したDLBCL患者で,免疫組織化学法(IHC)によって,リン酸化STAT3(PY-STAT3)の発現を調べた.以前に報告した222人のDLBCL群を用いて、細胞系siRNAの実験が行われ、PY-STAT3活性化を示す11遺伝子を決定した.この2つと、STAT3mRNAレベルによって測定されたSTAT3活性化状態は,生存率と関連していた.
結果:PY-STAT3はDLBCLの37%に検出され,ABC-DLBCLで陽性率が高かった.PY-STAT3陽性は,低いOS,EFSと有意に関連していた.高STAT3mRNAレベルも同様の結果であった.この群において多変量解析では,PY-STAT3,IPI,BCL2発現が,OSの独立した予後因子であった.細胞起源別のサブグループで,PY-STAT3が低いEFSと関連していたのはnonGCB型のみであった。11遺伝子のSTAT3の活性化シグナルは,DLBCL群全体と、ABC-DLBCL型で低い生存率と関連していた.
結論:STAT3の活性化はR-CHOPで治療されたDLBCL患者,特にABC-DLBCL型の患者において,低い生存率と関連していた.

平成26年1月20日
久野雅智

 

Human herpes virus 6 reactivation: important predictor for poor outcome after myeloablative, but not non-myeloablative allo-SCT

HHV6は、骨髄非破壊的前処置でなく骨髄破壊的前処置を用いた同種移植後において、 不良な結果を予測する重要な因子である。

同種幹細胞移植ではしばしばウイルス再活性化に伴う合併症が生じる。今回行った後 ろ向きコホート研究では同種移植後におけるHHV6再活性化の予測因子と、再活性化と 臨床的なアウトカムの関係について研究された。HHV6のDNA量は毎週RT-PCRにて定量 的にモニターされ、主要評価項目であるHHV6の再活性化と副評価項目であるaGVHDやN RMはCoxの比例回帰モデルにて解析された。研究には計108人の患者がリクルートされ、 その内骨髄破壊的前処置を受けた患者は60人、骨髄非破壊的前処置を受けた患者は48 人であり、平均年齢は40歳、追跡期間は平均20ヶ月であった。骨髄破壊的前処置群の 27%において平均50323cp/mlとHHV6の再活性化を認めるも、骨髄非破壊的前処置群で は4%が平均1100cp/mlとわずかな再活性化を認めるに留まった。多変量解析にて骨髄 破壊的前処置であることのみがHHV6の再活性化を予測する因子となり、加えて、HHV6 の再活性化はgrade2-4のaGVHDやNRMに関係していることが分かった。骨髄破壊的前処 置を受けた患者においてHHV6の再活性化を標準的にモニターすることは患者の予後改 善に役立つと考えられる。

平成26年1月6日
幕内陽介

 

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