最新文献紹介(抄読会)
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2016年
Outcomes Of Unrelated Cord Blood Transplantation In Patients With Multiple Myeloma: A Survey On Behalf Of Eurocord, The Cord Blood Committee Of Cellular Therapy And Immunobiology Working Party, And The Chronic Leukemia Working Party Of The EBMT
多発性骨髄腫患者に対する臍帯血移植の成績 |
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同種移植はMMの標準治療ではないが、ある患者群においては利益がある。MMに対する臍帯血移植 後のアウトカムの報告は少数で、この治療の調査が必要である。我々は後方視的に95人の患者を 解析した。2001年〜2013年にシングルあるいはダブルの臍帯血移植を受けた患者が対象で、85人 がMMで、10人がPCLの患者である。フォローアップの中央値は41ヶ月であった。患者の大半はRIC regimenを受けていた。60日時点での累積の好中球生着率は97±3%で、100日時点でのgrade 2- 4のaGVHD発症率は41±5%、2年時点でのcGVHD発症率は22±4%、3年時点での再発およびNRMは47 ±5%、29±5%であった。3年のPFSとOSは24±5%、40±5%、ATGはaGVHDの発症率を減らすが、 TRMを増やし、OSやPFSを下げた。高リスクの細胞遺伝学的異常がある患者においてOSやPFSは悪 化した、結論としてMM患者にCBTは利用可能である。
平成28年12月26日
南野 智 |
Daratumumab, lenalidomide, and dexamethasone for multiple myeloma
多発性骨髄腫に対するダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン治療 |
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背景
再発・治療抵抗性骨髄腫(RRMM)患者に対する第1・2相試験において、ダラツムマブは単剤、又はレナリドミド・デキサメタゾン(RD)の併用で治療効果を示した。
方法
第3相試験において1コース以上の治療を受けた569例の骨髄腫患者をRD(C群)、あるいはダラツムマブ+RD(D群)に割り付けた。主要評価項目はPPSとした。
結果
観察期間の中央値13.5ヶ月で予定した中間解析を実施し、D群53/286(18.5%)例、C群116/283(41.0%)例、計169例の進行+死亡が観察された(ハザード比0.37、p<0.001)。
12ヶ月時点でのPFS(KM法による)はD群83.2%、C群60.1%であった。全奏効率はD群92.9%、C群76.4%、CR率はD群43.1%、C群19.2%、MRD陰性化率はD群22.4%、C群4.6%とダラツムマブ群で有意に多く、MRD陰性化は予後改善と関連した。
頻度の高いG3/4の副作用は好中球減少(D群51.9%、C群37.0%)、血小板減少(D群12.7%、C群13.5%)、貧血(D群12.4%、C群19.6%)であった。47.5%の患者でダラツムマブに関連する輸注反応が認められ、多くはG1/2であった。
結論
RRMM患者において、ダラツムマブ・レナリドミド・デキサメタゾンによる治療によりPFS延長を認めた。ダラツムマブは輸注反応と好中球減少に関連した。
平成28年12月19日
井根省二 |
TP53 and Decitabine in Acute Myeloid Leukemia and Myelodysplastic Syndromes
AML,MDSにおけるTP53とデシタビン |
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BACKGROUND AMLとMDS患者におけるデシタビン治療の反応性に関する分子学的因子は明らかになっていない
METHOD 84人の成人AMLまたはMDS患者が、体細胞変異とデシタビン治療に対する反応の関連を調べるために単施設研究に登録された。デシタビンは20mg/m2/日、10日間投与で1ヶ月1サイクルとした。67人で特定のエクソームまたは遺伝子パネルのシークエンスを行い、54人で変異のクリアランスのパターンを評価するために、経時的に複数回シークエンスを行った。異なった方法でデシタビンを投与された32人を拡大コホートとして含められた。
RESULT 全116人のうち、53人(46%)で骨髄中の芽球が<5%に減少した、奏効率は、予後不良の細胞遺伝学的因子を持つ患者の方が、予後中間または予後良好の細胞遺伝学的因子を持つ患者に比べて良好であった(29/43人(67%)) vs 24/71(34%)、p<0.001)。また、TP53変異型の患者の方が、TP53野生型の患者に比べて良好であった(21/21人(100%)、32/78(41%)、p<0.001)。既報告では、予後不良の細胞遺伝学的因子とTP53変異を有する患者に従来の化学療法を行うと予後不良であることが示されている。しかし、デシタビン10日間/1コース投与の本試験では、この2つの因子は、予後中間の細胞遺伝学的因子を持つ患者より全生存率が低いこととは関連しなかった。
CONCLUSION 予後不良の細胞遺伝学的因子とTP53変異の一方または両方を有するAMLまたはMDS患者では、1コース10日間のデシタビン投与で良好な治療反応と、明らかな(ただ不完全な)変異クリアランスが認められた。反応は持続的ではなかったが、これらの患者の生存率は、同様の治療を受けた予後中間の細胞遺伝学的因子をもつ患者と同等であった。
平成28年12月12日
久野雅智 |
Programmed Death 1 Expression on CD4+ T Cells Predicts Mortality after Allogeneic Stem Cell Transplantation
CD4陽性T細胞上におけるPD-1発現は、同種移植後の死亡率を予測する |
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慢性ウイルス感染や悪性腫瘍の患者における、ウイルスや腫瘍に特異的なT細胞の表面に過剰か つ持続的に発現しているPD-1受容体を介した経路はT細胞を疲弊させることにより免疫回避に関 与している。同種移植におけるPD-1の関与について評価すべく、CBT・MURD・MRDより移植した患 者42名において、T細胞のPD-1発現や分化傾向について検討した。 CD4陽性T細胞におけるPD-1の発現はどのドナーソースの移植でも増加しており、特にCBTで顕著 であった。また、PD-1の発現割合は(フォローアップ終了時までの)非生存患者において生存患 者よりも多く認められており(median 40.2% vs 23.6% ;p=0.01)、CBTに限ってはmedian 64.6% v s 34.1% ;p=0.01と、特に死亡率の増加と関連を認めた。また、central memory Tcell において PD-1の発現は、非生存患者では生存患者よりも明らかに増加しており(median 49.8% vs 24.8% ; p=0.002)、effector memory Tcellにおいても同様であった(median 69.1% vs 43.7% ;p=0.0003)。 今回の検討において、CD4陽性T細胞におけるPD-1受容体の発現増加は、移植患者(特にCBT)にお ける死亡率に関連していることが示唆された。
平成28年12月5日
幕内陽介 |
Cord-blood transplantation in patients with minimal residual disease
微少残存病変を有する患者における臍帯血移植 |
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Background
造血細胞移植を必要とする患者の多くはHLA一致血縁ドナーがいない。様々な代替ドナー源の中での選択に当たっての情報が必要である。
Methods
この後方視的解析において、急性白血病またはMDSで臍帯血(n-140)、HLA一致非血縁ドナー(n=344)、HLA不一致非血縁ドナー(n=98)から、初回骨髄破壊的同種移植を受けた582人の患者を連続的に集積し、移植outocomeを比較した。
Results
CB群と他の2つの非血縁ドナー群間において死亡および再発に対する相対リスクは、移植前のMRDの存在によって様々であることが判明した。死亡リスクは、MRD+の患者では、CB群よりHLA不一致群が有意に高かった(HR:2.92、95%CI:1.52-5.63、p=0.001)。HLA一致群でも高い傾向にあったが有意ではなかった(HR*1.69、95%CI:0.94-3.02、p=0.08)。MRDの患者では、HRは低かった(HLA不一致群:HR:1.36、95%CI:0.48-1.28、p=0.08)。MRD−の患者では、HRは低かった(HLA不一致群:HR:3.01、95%CI:1.22-7.38、p=0.02、HLA一致群:HR:2.92、95%CI:1.34-6.35、p=0.007)。MRD−患者では影響度は小さかった(HLA不一致群:HR:1.28, 95%CI:0.51-3.25、p=0.60、HLA一致群:HR:130、95%CI:0.65-2.58、p=0.46)。
Conclusions
我々の解析結果は、移植前MRDを有する患者では、CBTはHLA一致非血縁ドナーからの同種移植と同じくらい良好で、HLA不一致非血縁ドナーよりも有意に良いOSが期待できることを示している。更に、再発の可能性は、CBTの方が他の2群よりも低い
平成28年11月28日
中根孝彦 |
Hematopoietic, Mesenchymal, and Immune Cells Are More Enhanced in Bone Marrow than in Peripheral Blood from Granulocyte Colony-Stimulating Factor Primed Healthy Donors
G-CSFでプライミングされた骨髄は末梢血より造血幹細胞、間葉系細胞、免疫細胞が豊富 |
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G-CSFを用いたBM(G-BM)は近年、G−CSFでプライミングされたPB(G-PB)の代替として考えら れるようになってきている。本研究の目的は生体内でG-CSFでプライミングされたBMとPBで幹細 胞、間葉系細胞(MSC)、免疫細胞の効果を比較することである。40人の健常人ハプロドナーを 対象とし、G-CSF開始前のday-7と7日間皮下投与後のday0に、ドナーのBMとPBをハーベストした。 造血幹細胞と前駆細胞はG-CSF投与後、BMとPB両者で増加し、特にBMでCD34+CD38ーの分画が増 加していた。間葉系前駆細胞の著しい増加がBMで認められた。BMではそれぞれCD3+、CD4+、CD 8+、CD19+の細胞分画、ナイーブCD4+とCD8+細胞分画、そしてNK細胞と制御性T細胞分画が増 加していた、一方、PBではこれら細胞の増加は少しであった。骨髄系樹状細胞(DC1)はBMとPB の両者で上昇していたが、CD2はBMのみで上昇していた。結論としてG−CSFでプライミングされ たBMとPBでは、造血幹細胞と免疫細胞の両者に違いがある。さらにBMで見られるMSC前駆細胞の 有意な上昇は、今後臨床応用につながるかもしれない。
平成28年11月21日
吉村卓朗 |
Bone marrow-derived mesenchymal stem cells (JR-031) for steroid-refractory grade III or IV acute graft-versus-host disease: a phase II/III study
ステロイド抵抗性grade III-IV GVHDに対する骨髄由来間葉系幹細胞(JR-031)の投与:Phase II/III試験 |
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ステロイド抵抗性急性GVHD(grade IIまたはIII)に対する間葉系幹細胞(MSCs JR-031)投与のphase I/II試験に引き続き、grade IIIまたはIVのステロイド抵抗性急性GVHDに対し同製剤のと投与を行うphase II/III試験を実施した。MSCsの投与量及び投与回数は、phase I/II試験と同様であった。MSCsの投与期間中は、ステロイド抵抗性急性GVHDに対する他の免疫抑制療法は実施されなかった。対象患者は25名(grade III:22名。grade IV:3名)であった。MSCsの初回投与後4週の時点で、6名(24%)がCR、9名(36%)がPRを達成した。12名(48%)が24週時点でdurable CRを達成した。52週時点で、12名(48%)の患者がCRで生存していた(そのうち、6名がMSCsのみで加療され、6名がMSCs+追加治療を受けた)。4週時点でOR(CR+PR)を達成した患者群で、ORを達成した患者群と比較して有意に生存率が高かった。MSCs投与と関連した有害事象は認められなかった。まとめると、我々の2つの臨床研究は、ステロイド抵抗性GVHDに対して、JR-031が有効であることを示唆していると言えるだろう。
平成28年11月14日
林 哲也 |
Early natural killer cell reconstitution predicts overall survival in T cell-replete allogeneic hematopoietic stem cell transplantation
T細胞除去しない同種造血幹細胞移植において早期NK細胞再構築が生存率を改善する |
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移植後最初に回復を認めるリンパ球であるNK細胞はHSCTにおける重要な役割を担っている
HSCT患者の早期NK細胞再構築が臨床経過へ与える影響を評価した
2005-2013年にHSCTを行ったAML、ALL、MDS患者298人に対し免疫再構築を検討した
Day30のNK細胞数(NK30)>150 cells/μL群とNK30<150 cells/μL群を比較した。
NK30>150 cells/μLは、多変量解析でOSに関与する独立した因子であった(HR 0.79、95%CI 0.66-0.95、P=0.01)。Cumulative incidence analysisでTRMが有意に低かった(P=0.01)。重症感染症でCMVを含むウイルス感染の発症が有意に低い。再発率と関連性は認めなかった。
結論:HSCT患者では早期のNK細胞再構築がTRM、OSの改善に独立して影響を与える。
平成28年11月7日
長崎譲慈 |
Phase II Multicenter, Randomized, Double-Blind Controlled Study of Efficacy and Safety of Umbilical Cord-Derived Mesenchymal Stromal Cells in the Prophylaxis of Chronic Graft-Versus-Host Disease After HLA-Haploidentical Stem-Cell Transplantation
HLAハプロ一致幹細胞移植後の慢性GVHD予防としての臍帯血由来間葉系間質細胞の効果と安全性に関する第U相多施設ランダム化二重盲検対照試験 |
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目的:
MSC(間葉系間質細胞)は、免疫調節機能を持ち、cGVHDに対して有望な効果が期待されるが、HLA-ハプロ移植後のcGVHD予防としてのMSCの効果は知られていない。
患者と方法:
我々は、多施設、二重盲検、無作為割付試験において、MSCを繰り返し投与した患者のcGVHDの発症率と重症度、そして、T細胞、B細胞、NK細胞の変化を調査した。
結果:
2年cGVHD累積発症率はMSC群で27.4%(95%CI、16.2-38.6%)であり、MSC非投与群で49.0%(95%CI、36.5-61.5%)であった(P=0.021)。MSC非投与群では7名が重症肺cGVHDを発症したが、MSC群に肺cGVHD発症患者はいなかった(P=0.047)。 MSC投与後、メモリーB細胞とTregが増加し、Th1/Th2比も増加した。一方でNK細胞は減少した。
結論:
我々の所見は、MSCの反復投与はHLA-ハプロ移植後にcGVHDを予防できることを示唆しており、T細胞、B細胞、NK細胞の変化が免疫寛容を促しているのかもしれない。
平成28年10月31日
岡村浩史 |
Genomic Classification and Prognosis in Acute Myeloid Leukemia.
急性骨髄性白血病における遺伝子異常と予後 |
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Background
近年、AMLにおける遺伝子変異の詳細な結果が出てきている。我々の次の課題はこの遺伝子変異の多様性がAMLの病態生理をどのように決定し、臨床結果との関連を知ることである。
Methods
我々は3つの前向き研究の1540名の患者を調査した。111のガン遺伝子のDriver mutationと細胞遺伝的、臨床的データを組み合わせてAMLの遺伝子サブグループを定義し、臨床結果との関連を調べた。
Results
我々は76の遺伝子、遺伝子領域において5234のDriver mutationを見出し、86%の患者は2つ以上のDriver mutationを有していた。遺伝子変異のパターンによって11のクラスに分類され、それぞれが明確な診断的特徴と臨床的予後をもっていた。現在のAMLサブグループに加えて3つのヘテロな遺伝子カテゴリーが出現した。すなわち、chromatin, RNA splicing regulator, または両方の遺伝子に変異をもったAML(18%)、TP53, chromosomal aneuploidies,または両方の遺伝子に変異をもったAML(13%)、IDH2R172の遺伝子変異を持ったAML(1%)である。Chromatin-spliceosomeクラスおよびTP53-aneuploidyクラス AML患者は予後不良であり、様々なクラスで定義された遺伝子変異は独立に相加的に予後に影響を与えた。クラスで定義された障害に加えて他の同時に発生しているDriver mutationは生存率に相当な影響を及ぼした。それぞれの遺伝子変異はしばしば他の遺伝子変異が加わったり、欠如したりすることによって予後を変化させた。このようなgene-gene interactionは特にNPM1で顕著にみられ、共発現している遺伝子変異によって予後良好群と予後不良群に振り分けられた。これらの結果は前向き研究で確認する必要がある。
Conclusion
AMLにおけるDriver Landscapeによって、AMLの病態の進化における道筋を反映する明確な分子サブグループが明らかとなり、疾患の分類および予後の層別化がなされた。
平成28年10月24日
西本光孝 |
Late acute graft versus host disease: a prospective analysis of clinical outcomes and circulating angiogenic factors
遅発型急性GVHD:血管新生因子と治療成績の前方視的検討 |
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遅発型急性GVHD(LA-GVHD)は移植後100日以降にaGVHDが持続、再発または新規発症 したものを指す。この研究はLA-GVHDに関する発症時期、経過、合併症、死亡率、血 管新生因子を調べるため、前向きに909人の患者を対象として行われた。83人(11%)が LA-GVHDを起こし、中央値は160日(128-204日)であった。そのうち、51人(61%)は初期 治療が28日以内に奏功し、FFS中央値は7.1ヵ月(3.4-19.1ヵ月)、2年OSは56%であった。 aGVHDでは血管新生因子の変化が起きていることが知られており、LA-GVHDでも同様の 変化がないか検討した。まず、55人の症例と50人の対照を調べ、37人の患者で妥当性 の確認を行った。その結果、アンフィレグリン(AREG、EGFRリガンド)が上昇しており、 AREG/EGF比が中央値より高い患者はOSが低く、NRMが高かった。AREGの上昇はaGVHDで も同様に認めたが、cGVHDではみられなかった。これらの前向き研究の結果はLA-GVHD の臨床経過を特徴付け、血管新生因子の変化によってcGVHDとの違いが示された。
平成28年10月17日
高桑輝人 |
Rituximab in B-lineage adult acute lymphoblastic leukemia
B-ALLにおけるリツキシマブ |
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Background:リツキシマブ(R)による治療により非ホジキンリンパ腫患者の予後は大きく改善した。B細胞由来の急性リンパ性白血病(ALL)の細胞もRの攻撃指標であるCD20抗原を発現している。これまでALL患者に対するRの治療効果について単一グループの良好な結果が報告されているが、ランダム比較試験はこれまで施行されていない。
Methods:CD20陽性フィラデルフィア染色体(Ph)陰性ALL患者(18-59歳)を化学療法±Rのランダムに割り付けた。Primary end pointはevent-free survival(EFS)とし、Rは治療期間中全てのコースで投与され、計16-18回だった。
Result:2006-2014年にR群105名、コントロール(C)群104名の計209名が参加した。観察期間の中央値は30ヶ月で、EFSはR群で有意に良好だった(hazard ratio 0.66、95%信頼区間0.45-0.98、P=0.04)。2年EFSはR群65%、C群52%であり、多変量解析にてR追加治療がEFS延長と関連していた。重篤な副作用は2群に大きな差を認めなかったが、アスパラギナーゼに対するアレルギー反応はR群でより少なかった。
Conclusion:ALLの化学療法にRを追加する事により、やや若年の成人CD20陽性Ph陰性ALLの予後が改善した。
平成28年10月3日
中嶋康博 |
Infused total nucleated cell dose is a better predictor of transplant outcomes than CD34+ cell number in reduced-intensity mobilized peripheral blood allogeneic hematopoietic cell transplantation
骨髄非破壊的前処置による末梢血幹細胞移植においてCD34陽性細胞数より総細胞数の方が予後因子となる |
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末梢血幹細胞(PB)は強度減弱型前処置(RIC)での同種造血細胞移植で、最も頻度の 高い幹細胞ソースである。ドナーの細胞数と細胞構成が移植の主なアウトカムにどう 影響するかを評価する目的で、過去の報告では主にCD34+cell doseに焦点が当たって いるが、特に生存のエンドポイントにおいて矛盾した結果となっている。 総細胞数(Total nucleated cell: TNC)は評価がCD34+cell doseより評価が少ない が、入手できる報告では多い細胞数が生存アウトカムを改善すると示唆している。 RISTにおけるCD34+cell doseとTNCの関係をさらに探索するため、この研究では Dana-Farber Cancer Instituteの2000-2010年にてRICのPBSCTを受けた705名の血液疾 患患者の、移植グラフトの細胞数と構成が、移植アウトカムへ与える影響について検 討した。多変量解析で、多いTNC(注:not TNC/kg) (上位4分の1:≧10.8x1010 cells) が、overall survival (OS) [HR 0.69 (0.54-0.88), P=0.0028] と Progression Free survival (PFS) [HR 0.68 (0.54-0.85), P=0.0006] を改善した。 多いTNCは、再発の減少[HR 0.66 (0.51-0.85), P=0.0012]と高い慢性GVHD発症率[HR 1.4 (1.12-1.77), P=0.0032]とも、独立して関連が見られた。その一方、体重当たり のCD34陽性細胞数の多さ (CD34/kg上位4分の1:≧10.9x106 cells) は、慢性GVHDや 生存アウトカムに影響していなかった。これらのデータは、よく検討されているCD34 よりもTNCの方が、RISTの予後因子であると示唆する。
平成28年9月26日
中前美佳 |
IL-10+ regulatory B cells are enriched in cord blood and may play a role in protection against GVHD after cord blood transplantation
IL-10陽性制御性B細胞は臍帯血に豊富におり、GVHD予防に関与している |
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臍帯血移植は、HLAの不一致度が高くても慢性GVHDの頻度が低いなど、他の移植片に比べて多くの利点がある。最近の自己免疫疾患患者において、T細胞の免疫反応の負の制御に関わるIL-10 産生制御性B細胞(Bregs)が同定された。しかしながら、現時点でBregsに特異的なphenotypeのコンセンサスは得られておらず、臍帯血での頻度や機能は不明である。今回我々は臍帯血が免疫制御機能を有するB細胞を豊富に含み、Bregsがnaïve Bやtransitional Bの両分画に同定され、CTLA-4を介した cell-to-cell contactに加えて、IL-10の産生を通してT細胞のエフェクター機能と増殖を抑制することを示した。さらに、臍帯血のregsは、CD40-jigandシグナルを介して強化され、このことは炎症環境が、Bregsの機能を誘導する可能性を示している、最終的に臍帯血移植後はIL-10産生Bregsの十分な回復が認められ、移植前や健常人の末梢血に比べて、割合と絶対数ともに臍帯血移植後は高くなる。再構築したBregsは強力な、同種CD4+T細胞の抑制能力をin vitroで示すが、Bregsは慢性GVHD患者では欠損している。まとめると、これらの結果で、臍帯血移植は豊富なBregsを認め、慢性GVHDの抑制に大きな役割を担っていることが示された。この新たな知見によって、Bregsを基礎とした同種移植後の合併症予防戦略の開発につながる可能性がある。
平成28年9月12日
中前博久 |
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Haploidentical BMT and post-transplant Cy for severe aplastic anemia: a multicenter retrospective study
重症再生不良性貧血に対するPost Cyを用いたハプロ骨髄移植:多施設後方視的研究 |
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HLA一致血縁あるいは非血縁ドナーを持たない難治性重症再生不良性貧血の患者には新しい治療アプローチが必要である。ミスマッチドナーやハプロドナーからの同種移植が過去においてなされてきたが、GVHDや死亡のリスクを有意に増やした。最近、post Cyを用いたハプロ移植がGVHDを減らすことができる効果的な方法として注目されているが、主に血液悪性腫瘍の患者に焦点があてられている。我々はpost Cyを用いてRICでのハプロ移植を行った16人の結果を述べる。ドナーソースは骨髄(BM)が13人, 末梢血幹細胞(PB)が3人。好中球生着は94%で、血小板生着は75%であった。2人が2次生着不全となり、2度目の移植を行いサルベージに成功した。3人がGVHDを発症し、そのうち2人がgrade2 to 4のGVHDであった。5人の患者が死亡し、1年生存は67.1%であった(95%CI: 36.5-86.4%)。我々の小規模な集団で、再発難治の重症再生不良性貧血に対してpost Cyを用いたRICでのハプロ移植は高い生着率を認め、GVHDの発症率は低かった。
平成28年9月5日
南野 智 |
Phase II Multicenter, Randomized, Double-Blind Controlled Study of Efficacy and Safety of Umbilical Cord-Derived Mesenchymal Stromal Cells in the Prophylaxis of Chronic Graft-Versus-Host Disease After HLA-Haploidentical Stem-Cell Transplantation
HLAハプロ一致幹細胞移植後の慢性GVHD予防としての臍帯血由来間葉系間質細胞の効果と安全性に関する第U相多施設ランダム化二重盲検対照試験 |
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目的:
間葉系間質細胞(MSC)は、免疫調節機能を有し、慢性移植片対宿主病(cGVHD)に対して効果が見込まれている。しかし、HLA-ハプロ一致造血幹細胞移植後のcGVHDの予防におけるMSCの有効性についてはほとんど知られていない。
患者と方法:
この多施設二重盲検ランダム化対照試験において、我々はcGVHDの発症率と重症度、および繰り返しMSC輸注後の、T、B、NK細胞の変化を調べた。
結果:
MSC群のcGVHDの2年累積発症率は27.4%(95%CI、16.2-38.6%)、非MSC対照群では49.0%(95%CI、36.5-61.5%)(P=0.021)だった。非MSC群では7人が重症肺cGVHDを発症したが、MSC群では典型的な肺cGVHDを発症しなかった(P=0.047)。 MSC輸注後、メモリーBリンパ球と制御性T細胞、ならびに2型ヘルパーT細胞に対する1型ヘルパーT細胞比率の増加がみられた。NK細胞数は減少した。
結論:
我々の結果は、MSCの繰り返し輸注が、HLA-ハプロHSCT後の患者におけるcGVHDの症状を防ぎ、T、BおよびNK細胞の数とサブタイプの変化と伴に、免疫寛容の獲得につながる可能性を示唆している。
平成28年8月29日
廣瀬朝生 |
Addition of high-dose cytarabine to immunochemotherapy before autologous stem-cell transplantation in patients aged 65 years or younger with mantle cell lymphoma (MCL Younger): a randomised, open-label, phase 3 trial of the European Mantle Cell Lymphoma Network
65歳以下のマントル細胞リンパ腫患者に対する自家造血幹細胞移植前のシタラビン大量療法を加えた免疫化学療法:ランダム化比較試験 |
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Background
未治療マントル細胞リンパ腫に対して自家移植前の寛解導入療法にキロサイド大量療法を追加することで予後改善するかどうか検証する
Methods
65歳以下で病期II〜IVの未治療マントル細胞リンパ腫患者にR-CHOP 6コース後CY/TBIを前処置として自家移植を行う群と、交互にR-CHOP/R-DHAP 6コース施行しHDAC/Mel/TBIを前処置として自家移植を行う群にランダム化して比較試験を実施した。主要評価項目はランダム化から最低寛解導入療法4コース後のSD、PD。またはあらゆる死亡までのTTFとした。
Findings
2004年7月20日〜2010年3月18日までに497人の患者(年齢中央値55歳)が参加した。コントロール群234人(/249人)、シタラビン群232人(/248人)を解析した。追跡期間中央値6.1年でTTFはシタラビン群で9.1年(5年PFS 65%)、コントロール群で3.9年(5年PFS 40%)とシタラビン群で有意な延長が見られた(HR 0.56/P=0.038)。G3-4の血液毒性と発熱性好中球減少症、G1-2の腎障害はシタラビン群で多く、移植関連死亡は両群で同等。
Interpretations
65歳以下の未治療マントル細胞リンパ腫患者においてキロサイド大量療法を含む免疫化学療法とそれに引き続く自家移植は標準治療と考えられる。
平成28年8月22日
井根省二 |
Ovarian function after hematopoietic cell transplantation: a descriptive study following the use of GnRH agonists for myeloablative conditioning and observation only for reduced-intensity conditioning
造血細胞移植後の卵巣機能:骨髄破壊的前処置におけるGnRHアゴニスト使用の記述研究と骨髄非破壊的前処置における観察研究 |
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性腺機能障害は造血細胞移植後の長期生存における健康とQOLにおける問題である。骨髄破壊的前処置(MAC)後には卵巣機能不全はほぼ必発と言われているが、骨髄非破壊的前処置(RIC)後のリスクは明らかにされていない。GnRHアゴニストは化学療法後の卵巣機能不全を減らすと言われているが、移植における有用性はほとんど知られていない。我々は本研究において、leuprolideがMAC後の卵巣機能に与える影響を調べ、またRIC後の卵巣機能ををモニターした。移植前に十分な卵巣機能(FSHレベル<440mIU/mlと正常月経)をもつ、50歳以下の月経開始後の女性を適格とした。MACの前にleuprolideは投与され、RIC患者は観察された。FSHレベルはいくつかの時期に測定された。12-45歳の女性17人(介入群7人、観察群10人)が評価対象となった。MAC後の卵巣機能不全は既報告では高率に生じるとされているが、leuprolideを投与された患者では、移植後平均703日時点で3/7人が卵巣機能不全を生じた。RIC患者では平均追跡期間901日で1/10人が卵巣機能不全を生じた。結論として、leuprolideによってMAC後の卵巣機能を保護できる可能性がある。さらにCY、FLU、低用量TBIを用いるRICでは卵巣機能不全リスクは低いと考えられる。
平成28年8月15日
久野雅智 |
Gut microbiome-derived metabolites modulate intestinal epithelial cell damage and mitigate graft-versus-host disease
腸管微生物由来代謝物は腸上皮のダメージを改善し、GVHDを軽減させる |
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腸管微生物叢の変化が、微生物由来代謝物ならびにgraft-versus-host disease(GVH D)のような疾患の過程に影響を与えるかは不明である。我々は、同種骨髄移植(all o-BMT)後、胃腸微生物叢由来の短鎖脂肪酸(SCFAs)において、これまで確認されて いない変化を同定するためにバイアスの入らない解析を行った。唯一SCFAのbutyrate (酪酸)の量の変化が、腸管組織においてのみ認められた。Allo-BMT後のCD326+ int estinal epithelial cells(IECs)におけるbutyrateの減少は、ヒストンアセチル化 の減少につながったが、これは外因性butyrateの局所投与により回復した。Butyrate の回復は、IEC同士の密着性を改善し、アポトーシスを減少させ、GVHDを軽減した。 さらに、合理的に選択された17菌株の高butyrate産生クロストリジウム菌を有する常 在微生物の変化もGVHDを減少させた。本研究データは、微生物由来代謝物のこれまで に確認されていない役割を実証し、微生物代謝物の局所ならびに特異的な変化がGVHD 標的臓器に直接的に有益な効果を与え、疾患重症度を軽減させ得ることを示している。
平成28年8月8日
康 秀男 |
Proteome profiling in lung injury after hematopoietic stem cell transplantation
造血幹細胞移植後の肺障害におけるプロテオームプロファイル |
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感染および同種移植後非感染性肺障害であるIPSによる肺合併症は、しばしば移植関連死亡や合併症の原因となる。移植後IPSを他の感染性肺障害と区別できる蛋白および経路を明らかにするために、IPSのBAL液の蛋白発現について広範囲に調べることを目的とした。我々は、同種移植あるいは細胞治療輸注(NK細胞輸注)後180日以内に肺障害を起こした患者から30のBALF試料を得て検討した。成人サンプルはthe 2011 American Thoracic Society Statementで定義された基準により、IPSまたは感染性肺障害に分類された。BAL液はヘモグロビン及び高含量の蛋白質14個を除去し、トリプシ処理後アイソバリックタグで標識され、iTRAQ法(プロテオーム解析の代表的な手法の1つ。異なるサンプルを一度にかつ各サンプル内の蛋白質量を比較しながら定量解析できる)を用い、Orbitrap Velos systemを用いて二次元液体クロマトグラフィーおよびdata dependent peptide tandem mass spectrometry(LC-MS/MS)で解析された。蛋白同定は、ProteinPlotというソフトウエアのtarget-decoy strategyを用いて行った。相対的蛋白質存在量は、プールされている非移植患者の呼吸不全のBAL液のサンプルからなる包括的内部標準を参考に決定した。IPSと感染性肺障害で異なった発現を示す蛋白を同定するに当たり、False discovery rateを5%以下にコントロールするために、分散で重み付けをしたt検定を行った。これらの蛋白の生物学的関連は遺伝子オントロジー解析およびIngenuity Pathways Analysis(IPA)を用いて検討した。12のIPSと18の感染性肺障害のBAL液のサンプルで検討した。30サンプルを5回に分けて解析した結果、全1125種類、それぞれの回で845、735、532、615、594種類の蛋白が同定され、うち各回で共通した蛋白は368だった。IPSと感染性肺障害を比較した結果、96種類の蛋白の発現が両群で異なっていた。遺伝子オントロジー解析の結果、これらの蛋白のHSCT後の肺障害の進展に伴う、急性期反応シグナル、補体系、凝固系、肝臓X受容体(LXR)/レチノイドX受容体(RXR)、ファルネソイドX受容体(FXR)/RXR調整といった生物学的過程への関与が明らかとなり、TNFαによって調整されている2つの既知の経路(FXR/RXR調整およびマクロファージ中のIL12シグナリング)の関与を明らかにした。他、これらの蛋白は血液凝固、線溶、創傷治癒といった組織修復関連にも含まれていた。こうした蛋白のうち、細胞運動関連が多くの比率を占めていた。結論:移植後IPSでのBAL液においては、感染性肺障害とは異なる蛋白が発現しており、この違いから、肺障害活性化の機序の違いを考慮し、治療の標的を検討し、肺の修復を早めることができるかもしれない。
平成28年8月1日
中根孝彦 |
Ipilimumab for patients with relapse after allogeneic transplantation
同種移植後再発に対するIpilimumab |
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Purpose
HSCT後のドナー由来抗腫瘍免疫が失われると、血液腫瘍は再発しやすくなる。我々はCTLA4のチェックポイント阻害薬であるIpilimumabはGVT効果を通して抗腫瘍活性復元できると仮定した。
Patients and Methods
同種造血幹細胞移植後の血液腫瘍再発患者に対してIpilimumabの安全性と効果を見るため、phase 1/1bの多施設、研究者主導型臨床試験を計画した。患者は3or10mg/kgのIpilimumabを3週毎に4回投与され、臨床的効果が得られれば12週毎に60週まで追加された。
Results
28人が登録された。免疫関連AEは死亡した1人を含む6人(21%)に起こり、GVHDはIpilimumab投与前を除き4人(14%)に見られた。3mg/kg投与で全く効果が見られない患者が見られたため、22人の患者は10mg/kgが投与された。5人(23%)がCR、2人(9%)がPR、6人(27%)はSDであるが腫瘍量の減少が見られた。CRのうち4人はAMLの髄外腫瘍、1人はMDSovertAML患者であった。4人は1年以上の効果が持続している。治療効果は腫瘍へのcytotoxic CD8(+)T細胞の浸潤とregulatory T細胞活性を減少させ、血液中のeffector T細胞の部分集団をexpansionさせることによるものである。
Conclusion
我々のearly-phaseのデータでは、同種造血幹細胞移植後の血液腫瘍再発患者にIpilimumabを投与することは許容されるが、合併症として免疫関連毒性とGVHDがあった。治療効果が持続したのはAMLの髄外腫瘍を含む様々な血液疾患で確認された。
平成28年7月25日
吉村卓朗 |
Preemptive DLI without withdrawal of immunosuppression to promote complete donor T-cell chimerism results in favorable outcomes for high-risk older recipients of alemtuzumab-containing reduced-intensity unrelated donor allogeneic transplant: a prospective phase II trial.
アレムツマブ併用・骨髄非破壊的前処置を施行された高齢・高リスク非血縁同種移植患者に対し、免疫抑制剤の減量を行わないまま先行的にドナーリンパ球輸注を行うことでドナーT細胞キメリズムを促進し、良好な転機を得ることができる:前向きphase II試験 |
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移植前にアレムツマブを使用することで、同種移植後のGVHDを減らすことができるが、一方で、混合キメラや感染症のリスクを増加させるとも言われている。混合キメラを有した患者に対し、免疫抑制剤の減量を行わずに早期にDLIを行うことで、DLI後のGVHDのリスクを増やすことなく、再発リスクを減じることができるのではないかと、我々は仮定した。本phasrs II試験では、36名の患者(年齢中央値:59歳)が、アレムツマブの皮下投与(総投与量 43mg)を含んだ骨髄非破壊的前処置後に、HLA一致非血縁末梢血幹細胞移植を施行された。Day 60の時点でドナーT細胞キメリズムが50%未満であった25名全ての患者に対し、免疫抑制剤の減量を行わずにDLIを施行した。急性GVHD、慢性GVHDの合計リスクはそれぞれ42%、59%であった。また、day100、1年後の非再発死亡率はそれぞれ3%、14%であった。中央値2.4年間の追跡期間で、day100、1年後、2年後の生存率はそれぞれ97%、71%、57%であった。多変量解析において、急性GVHDの発症は死亡率の増加と関連していた。一方で慢性GVHDの発症は再発の減少と、非再発生存率の向上と関連していることが判明した。少量アレムツマブの併用と先行的ドナーリンパ球輸注は、非血縁同種移植を施行された高齢・高リスク悪性腫瘍患者において、低い非再発死亡リスクを含んだ良好な転帰に結びつくと言えるだろう。
平成28年7月11日
林 哲哉 |
Clinical activity of azacitidine in patients who relapse after allogeneic stem cell transplantation for acute myeloid leukemia
同種造血幹細胞移植後再発した急性骨錐税白血病に対するアザシチジンの有用性 |
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AMLやMDS患者の移植後再発は治療失敗の主な原因だが、その後の治療選択はきわめて限られている。アザシチジンは高リスクMDSやAMLに対して重要な新規薬剤であるが移植後再発に対する効果は明らかではない。我々はAML 116人、MDS 65人を含む181人の移植後再発患者においてAZAの耐用性と効果を検証した。患者の69人はDLIを受けた。157人中24人(15%)がCR、22人がPRとなり計46人(25%)の患者にAZAの有効性を認めた。治療効果はCRでの移植患者とMDS患者で有意に高かった(p=0.04, p=0.023)。CR達成患者の2年OSは48%であったのに対し、全体では12%であった。OSは再発までの期間が移植後6ヶ月以上の群および再発時の骨髄芽球比率によって差を認めた(p=0.001, p=0.01)。AZA投与群ではDLIの有無はOSに影響しなかった。Azacitidine relapse prognostic score(ARPS)を作成し、そこでは2年OS 3.37%の層で層別化することができた(p=0.00001)。AZAはAML/MDSの移植後再発患者の一部に対して重要な新規治療となる。前向き試験での検討が必要である。
平成28年7月4日
長崎譲慈 |
Myeloma cell dynamics in response to treatment supports a model of hierarchical differentiation and clonal evolution
骨髄腫細胞の治療反応性は分化ヒエラルキーモデルとクローナルエボリューション モデルで説明できる |
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目的:多発性骨髄腫(MM)の腫瘍量定量測定による臨床予後推定や腫瘍増加速度のモ デル化がなされてきた。しかし現代の化学療法レジメンの大規模試験のデータを用い た、そのような定量的な分析はなされていない。
デザイン:我々はBortezomibをベースにした3つのランダム化試験の大量なデータを 解析し(全患者数:1469例)、MM細胞の数理モデルの構築、及びvalidateを行った。
結果:新規発症患者の治療動態はtwo tumor cell subpopulations(progenitor cells & differentiated cells)のモデルによく一致した。Differentiated cellへ の有意な殺細胞効果とprogenitor cellへの殺細胞効果の異なる治療反応が認められ た。また、我々は新規MM患者を対象とした2つ目の臨床試験と難治MM患者を対象とし た3つ目の臨床試験を用いて、このモデルのvalidateを行った。再発患者に我々のモ デルを適応したとき、我々は分化ヒエラルキーモデルとクローナルエボリューション モデルを融合したハイブリッドモデルで、最もよく治療反応パターンを説明すること ができることを認識した。
結論:数理モデル及び臨床データから、Bortezomibをベースにした治療は疾患の型を 形作るMM細胞に選択圧をかけ、その結果患者内に変動をもたらす可能性が示唆され た。このモデルは病態生物学や治療反応の理解を深めることに対して有用なツールで あるかもしれない。
平成28年6月27日
岡村浩史 |
Biomarker Panel for Chronic Graft-Versus-Host Disease
慢性GVHDのバイオマーカー |
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Purpose
慢性GVHDの診断および予後予測マーカーを探索する
Patients and Methods
我々は慢性GVHDあり患者35例となし患者18例について移植後(中央値103日目)保存していた血漿を用いてバイオマーカーを比較した。
少なくとも1.25倍以上変化していた105の蛋白のうち、22の蛋白がELISAなどで解析可能であった。CXCL9、ST2も測定された。2つの独立したコホートで(N=391)GVHDとの関連を調べるために蛋白濃度が測定された。
Results
1つ目のコホートでは、24の蛋白のうち9つの蛋白が慢性GVHDと関連していた。ST2、CXCL9、MMP3、オステオポニン(OPN)の4つだけがROC曲線のAUC0.89のバイオマーカーパネル構成に必要であり、慢性GVHDの診断、重症度、NRMと有意な関係があった。2つ目のコホートではこのバイオマーカーパネルが慢性GVHDに対してAUC0.75であり、Day100時点でのバイオマーカーパネルによる慢性GVHD発症予測は臨床リスク因子との組み合わせの有無によりそれぞれAUC0.67、0.79であった。
Conclusion
慢性GVHDの診断時または移植後Day100時点でのバイオマーカーパネルは慢性GVHDのリスクを層別化できる
平成28年6月20日
西本光孝 |
Impact of dual expression of MYC and BCL2 by immunohistochemistry on the risk of CNS relapse in DLBCL.
DLBCLにおけるMYCとBCL2のdual expressionはCNS再発の高リスク |
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DLBCLにおいて免疫染色(IHC)でのMYCとBCL2のdual expressionは予後不良と関連している。MYCとBCL2のdual translocation(double-hit lymphoma)は以前よりCNS再発の高リスクと考えられていたが、dual expressionのCNS再発のリスクに関しては知られていない。R-CHOPで治療された428人のDLBCL患者に対してdual expressionの有無によるCNS再発のリスクを評価した。follow-up中央値6.8年でdual expression群は有意にCNS再発が多かった(2年で9.7% vs 2.2%、p=0.001)。ABC type、non-GCB typeもCNS再発が多かったが、多変量解析ではdual expressionとCNS-IPIのみが残った。dual expressionはCNS-IPIやcell of originによらずCNS再発の高リスクとなる可能性があり、予防的治療の戦略を考慮すべきかもしれない。
平成28年6月13日
高桑輝人 |
Increased GVHD-related mortality with broad-spectrum antibiotic use after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation in human patients and mice
比とおよびマウスモデルにおいて同種造血幹細胞移植後の広域抗生物質投与はGVHD関連死亡を増加させる |
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腸内細菌は、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の感染や移植片対宿主病(GVHD)のリスク因子となりうる。移植患者はしばしば好中球減少性の発熱(FN)をきたし、腸内の嫌気性菌をターゲットとした抗菌剤で治療される。筆者らは857人の移植患者を後方視的に調査し、FNに対しIPM/CSまたはTAZ/PIPCで治療された患者では、移植後5年のGVHD関連死亡が高い事を明かとした(IPM/CS治療21.5% vs IPM/CS非治療13.1%、P=0.025、TAZ/PIPC治療19.8% vs TAZ/PIPC非治療11.9%、P=0.007)。しかしFNに用いる他の2剤AZTとCFPMでは、いずれもGVHD関連死亡の増加を認めなかった(それぞれP=0.78、P=0.98)。移植患者の糞便を解析したところ、TAZ/PIPC投与により腸内細菌叢の組成の変化を認めた。マウスの系では、AZT投与群に対し、IPM/CSもしくはTAZ/PIPC投与群で有意にGVHD死亡が悪化していた(それぞれP<0.01、P<0.05)。IPA/CS投与マウスではGVHD増悪の病理学的な証拠を認めたが、短鎖脂肪酸の濃度やTregの数に変化は見られなかった。とりわけGVHD発症マウスをIPM/CS投与を行うと、大腸の粘膜内層の保護作用の低下 (P<0.01)、腸のバリア機能不全(P<0.05)を有意に認めた。マウス糞便のシークエンスの結果、粘液を分解する作用を持つ共生細菌の一種Akkermansia muciniphilaの有意な増加(P<0.001)が確認され、粘液減少がマウスGVHDに寄与している可能性が示唆された。以上より筆者らは、allo移植患者に対する抗菌剤使用のリスクが過小評価され、結果として腸管GVHDを増悪させる可能性がある事を示した。
平成28年6月6日
中嶋康博 |
Unbalanced recovery of regulatory and effector T cells after allogeneic stem cell transplantation contributes to chronic GVHD
同種造血幹細胞移植後のregulatory T細胞とeffector T細胞の不均衡な回復は慢性GVHDに関与する |
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同種移植後の免疫寛容の発達と維持には、エフェクターCD4T細胞(conventional CD4T cells[CD4Tcons])とCD8T細胞とともに、ドナー由来のCD4regulatory細胞(CD4Tregs)も含めたバランスのとれた再構築が必要である。T細胞集団の不均衡な免疫回復につながる複雑なメカニズムを明らかにするために、T細胞非除去の骨髄非破壊的(RIST)移植を受けた107名の成人患者を検討し、CD4Treg、CD4Tcon、CD8Tの免疫再構築を2年間モニターしした。CD3T細胞数は2年間で徐々に正常レベルに回復したが、CD8TはCD4regsやCD8Tconsよりも早く回復した。再構築しているCD4TregsとCD4Tconsは主にcentral memory(CM)とeffector memory(EM)細胞であり、CD8Tは主にterminal EMであった。naive CD4TconとCD8Tの胸腺での生成は維持されていたが、CD4Tregの増殖は著明に減少しており、2年間でほとんど回復しなかった。T細胞の増殖は、特に移植後6ヶ月から12ヶ月後の期間で、CD4Tcon-CM、CD4Tcon-EMとCD8Tに偏っていた。BCL2の細胞内発現はCD4TconとCD8Tで移植後3から6ヶ月で増加していた。移植後3ヶ月での各T細胞分画でのnaiveとCM分画の早期回復は、続いて起こる慢性GVHDの発症に強く関連していた。これらの動的な不均衡状態は、CD4Tregsよりもeffector T細胞の生成、増殖、維持の方に傾き、そしてそれは慢性GVHD発症に関連する。
平成28年5月30日
中前美佳 |
Primary graft failure after myeloavlative allogeneic hematopoietic cell transplantation for hematologic malignancies
造血器悪性腫瘍に対する骨髄破壊的同種造血幹細胞移植後の一次生着不全 |
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Primary graft failure(PGF)の予後は現在も不良である。PGFを防ぐ目的で、ハイリスクの患者を早期に同定するために、我々は大規模な(n=23,272)後ろ向き研究を行った。初回の骨髄破壊的移植を受けた血液悪性腫瘍患者において、1,278例(5.5%)のPGFが報告された。末梢血と骨髄を用いた場合で顕著な違いがあった(2.5 vs 7.3%、P<0.001)。骨髄増殖性疾患では急性白血病に比べ4倍、PGFが多かった。 その他のPGFの危険因子は、患者年齢30才未満、HLA不一致、女性ドナーから男性への移植、ABO不一致、Bu/Cyによる前処置や凍結保存であった。タクロリムスによる免疫抑制やG-CSFの使用はPGFのリスクを軽減させた。これらのデータは、臨床家に移植片、ドナー選択、前処置、免疫抑制剤のPGFを減らすための選択において有用な情報となる。さらに、移植後day21での新規のリスクスコアが再移植ソースの早期の要求根拠にできる可能性がある。
平成28年5月23日
中前博久 |
Impact of Donor Epstein-Barr Virus Serostatus on the Incidence of Graft-Versus-Host Disease in Patients With Acute Leukemia After Hematopoietic Stem-Cell Transplantation: A Study From the Acute Leukemia and Infectious Diseases Working Parties of the European Society for Blood and Marrow Transplantation
ドナーのEBV血清学的状態がHSCT後の急性白血病患者のGVHD発症に与える影響:EBMTの急性白血病と感染症ワーキングパーティーからの報告 |
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目的:我々はEBV serostatusがallo-HSCTの予後に与える影響を調査した。
患者と方法:本研究は1997-2012年にallo PBSCTまたはBMTを受けた急性白血病患者11,364人を対象に、ドナーと患者のEBVの血清学的状態が移植後のOS、RFS、再発率、NRM、GVHD発症率に与える影響を解析した。
結果:EBV血清陽性ドナーから移植を受けた患者はEBV血清陰性ドナーから移植を受けた患者と同様のOSであった(HR, 1.05; 95%CI,0.94-1.12; P= .23)。陽性ドナーはRFS、再発率、NRMにも影響を与えなかった(RFS:HR 1.04; 95% CI 0.97 - 1.11; P = 0.31), (再発率:HR 1.03; 95% CI 0.94 -1.12; P = .58), (NRM:HR 1.05; 95% CI 0.94 - 1.17; P = .37)。
しかしながら、単変量解析では、EBV陽性ドナーから移植を受けた患者は、陰性ドナーからと比べ、慢性GVHDのリスクが高かった(40.8% v 31.0%; P< .001; HR 1.42; 95%CI 1.30-1.56)。交絡因子を調整すると、急性・慢性GVHDとも高リスクと同定された。EBV陰性患者と陽性ドナーの組み合わせでは、慢性GVHDのHRは1.30(95%CI 1.06-1.59; P= .039)。陽性患者と陽性ドナーのHRは急性GVHDで1.24(95%CI 1.07-1.45; P= .016)、慢性GVHDで1.43(95%CI 1.23-1.67; P< .001)であった。陽性患者と陰性ドナーではGVHDのリスクは増加しなかった。
結論:我々のデータは、ドナーEBV statusは有意に急性および慢性GVHDの発症に影響を与えることを示唆する。
平成28年5月16日
廣瀬朝生 |
The clinical significance of EBV DNA in the plasma and peripheral blood mononuclear cells of patients with or without EBV diseases.
血漿中EBVと末梢単核球中EBVのどちらが臨床的に重要か |
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EBVは普遍的なウイルスで宿主に潜伏感染を起こし、時々、EBV関連の悪性リンパ腫やリンパ増殖性疾患、HLHや固形腫瘍、その他の病気を引きおこす。5年間でのEBVのPCR検査を行うためにJohns Hopkins病院の臨床検査部に送られた2146人の血液検体でPBMCと血漿のEBV DNAを検出することの臨床的な重要性に関して研究を行った。
免疫低下患者と入院患者の大規模なコホートで535人(25%)の患者で血漿あるいはPBMCにEBVを検出することができた。EBVはEBV diseaseがない患者(402人)に検出され、69%はPBMCのみ陽性であった。免疫低下患者ではEBV diseaseがない患者でPBMCより血漿でEBVが検出される可能性が低い。活動性全身EBV diseaseを発症した患者は105人で、99%が血漿にEBVが検出されたが、PBMCでは54%であった。コピー数のカットオフ値に関わらず、血漿中のEBVはPBMC中のEBVより、EBV disease診断の特異度および感度が高い。
血漿EBVコピー数は無治療EBV陽性リンパ腫と寛解EBV陽性リンパ腫とEBV陰性リンパ腫を判別できた。また、EBV陽性PTLDと寛解EBV陽性TPLDとEBV陰性PTLDを判別できた。EBVコピー数の定量は免疫低下患者においてEBV diseaseの種類にかかわらず、診断マーカーとなり、PBMCより血漿の方がEBV diseaseのよいマーカーになる。
平成28年5月9日
南野 智 |
Allogeneic T Cells That Express an Anti-CD19 Chimeric Antigen Receptor Induce Remissions of B-Cell Malignancies That Progress After Allogeneic Hematopoietic Stem-Cell Transplantation Without Causing Graft-Versus-Host Disease
抗CD19 CAT T細胞は同種造血幹細胞移植後進行性B細胞性腫瘍(GVHDがない症例)の効果 |
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Purpose 同種造血幹細胞移植後の一番の死因は腫瘍進行再発である。同種移植後、B細胞性腫瘍はドナーリンパ球輸注(DLI)で治療されることが多い。DLIはしばしば腫瘍に対して効果がなく、また患者の正常組織に対する致死的な免疫反応であるGVHDを引きおこす。
Methods B細胞抗原CD19を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)を発現させた同種T細胞を用いた臨床試験を行った。同種移植後に進行性のB細胞腫瘍性腫瘍の患者がCAR T細胞の単回輸注治療を受けた。化学療法などほかの治療はなし。T細胞はそぜぞれのドナーより得た。
Results 20人の対象患者のうち、8人が寛解(6人がCR、2人がPR)に達した。奏効率はALLが最もよく、5人中4人がMRD陰性CRに達した。最も長くCRを維持したのはCLLの患者で30ヶ月以上であった。CAR T細胞輸注後に新規発症の急性GVHDはなかった。毒性は発熱、頻脈、低血圧であった。ピークの血中CAR T細胞レベルは寛解を達成した患者が達成しない患者に対して高かった。PD-1の発現がCAR T細胞輸注後に有意に上昇した。CAR T細胞輸注前の血液中のB細胞の存在が、輸注後のCAR T細胞のレベルと相関していた。
Conclusion 同種抗CD19 CAR T細胞は同種移植後の進行性B細胞性腫瘍に対して効果的であると思われる。同種移植において抗原特異的T細胞を用いた治療は今後重要な役割を果たすだろう。
平成28年5月2日
久野雅智 |
Wilms Tumor 1 Expression and Pre-emptive Immunotherapy in Patients with Acute Myeloid Leukemia Undergoing an Allogeneic Hemopoietic Stem Cell Transplantation.
同種造血幹細胞移植を受けたAML患者におけるWT1発現と先制的免疫治療 |
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血液学的寛解期の同種移植後AML患者で、pre-emptiveな免疫療法(IT:CsAの減量中止やDLI)を行 うための指標として、骨髄中のWT-1発現量と予後を評価した。207人の患者で調べ、初めの122人 ではWT-1≧180copy/104 abelson cellsをカットオフ(以降、WT-1-180)、続く85人では100copyを カットオフ(以降、WT-1-100)とした。ITを受けた患者では、WT-1-180の群(n=17)、WT-1-100の群 (n=23)それぞれの累積再発率は76% vs 29%(p=0.006)、DFSは23% vs 74%(p=0.003)であった。患 者全体では、4年の累積移植関連死亡率(TRM)は両群共に13%であった。累積再発率はWT-1-180で3 8%、WT-1-100では28%であり(p=0.05)、 DFSは48% vs 56%であった(p=0.07)。同種移植後のAML患 者において、WT-1の発現量を閾値とした免疫療法は有効であり、WT-1発現量がより少ない時期に 免疫療法を施行することでより高い再発予防効果が期待できる。 。
平成28年4月25日
幕内陽介 |
Isavuconazole versus voriconazole for primary treatment of invasive mould disease caused by Aspergillus and other filamentous fungi (SECURE): a phase 3, randomised-controlled, non-inferiority trial.
アスペルギルスなどの糸状菌による侵襲性真菌感染症の初期治療Isavuconazoleとvoriconazoleの比較 |
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Background
Isavuconazole(ISC)は, 広域抗真菌活性を有する新規トリアゾールである。SECURE trialは, 侵襲性糸状菌症(IMD, invasive mould disease)患者において, ISCとvoriconazole (VCZ)の有効性と安全性を評価した。
Methods
本試験は, phase 3, double-blind, 国際多施設比較試験で行われた。IMD疑い患者がinteractive voice–web response systemを用いて, 地域, 同種移植(alloHSCT), ベースラインでの悪性疾患の活動性で層別化され, isavuconazonium sulfate 372 mg(プロドラッグ; ISC 200 mgに等価; day 1, 2に1日3回静注, 以降は静注 or 経口で1日1回), またはVCZ(6 mg/kgをday 1に1日2回静注, 4 mg/kgをday 2に1日2回静注, day 3以降は4 mg/kgを1日2回静注 or 経口で200 mgを1日2回)の投与を受けるように, 1対1にランダム化された。我々は, study drugを少なくとも1回投与された患者において(intention-to-treat [ITT] 集団), 初回投与からday 42までの全死亡をprimary efficacy endpointとして, 10%の非劣性マージンを用いて, 非劣性検証を行った。安全性はstudy drugの初回投与を受けた患者において評価された。本試験は, ClinicalTrials.gov, number NCT00412893で登録されている。
Findings
2007/3/7から2013/3/28の間で, 527名の成人患者がランダムに割付された(各群あたり258名が治療薬投与を受けた)。ITT集団における初回投与からday 42までの全死亡は, ISC群19%(48名), VCZ群20%(52名)であり, 調整死亡率の差は −1.0 %(95% CI, −7.8 to 5.7)であった。95% CIの上限5.7%は10%を超えなかったので, 非劣性が示された。ほとんどの患者(ISC群 247 [96%], VCZ群 255 [98%])が治療後に有害事象(AE)を発現し(p=0.122), 最も多かったものは消化管障害(174 [68%] vs 180 [69%]), 感染症および寄生虫症(152 [59%] vs 158 [61%])であった。
system organ classによる治療後AEを認めた患者比率は全体で同様であった。しかしながら, ISC群で肝胆道障害(23 [9%] vs 42 [16%]; p=0.016), 視覚障害(39 [15%] vs 69 [27%]; p=0.002), 皮膚または皮下組織障害(86 [33%] vs 110 [42%]; p=0.037)の頻度は低かった。薬剤関連AEはISC群で109名(42%), VCZ群で155名(60%)に認められた(p<0.001)。
Interpretation
ISCはIMD疑い例の初回治療として, VCZに対して非劣性を示した。ISCはVCZに比較して忍容性が良く, 薬剤関連AEも少なかった。我々の結果は, IMD患者の初回治療としてISCの使用を支持する。
平成28年4月18日
康 秀男 |
Graft-versus-Host Disease Prophylaxis in Unrelated Peripheral Blood Stem Cell Transplantation with Post-Transplantation Cyclophosphamide, Tacrolimus, and Mycophenolate Mofetil
非血縁PBSCTにおけるpost-CY、タクロリムス、MMFによるGVHD予防 |
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GVHD予防としてのPTCyの臨床的効果は血縁ハプロ一致および血縁HLA一致骨髄において示されてきているが、非血縁末梢血幹細胞移植ではまだであり、ATG、カルシニュ−リン阻害薬にMTXやMMFを加える標準的予防法との直接的な比較はもちろん未報告である。86人のAMLおよびALLの成人患者(年齢中央値34歳(18-59))がPTCy、Tac、MMFでのGVHD予防で非血縁末梢血幹細胞移植を受けた(単施設前向き研究)。対照群はATG、Tac、MTXorMMFの投与を受けた125人の連続的なヒストリカルコントロールとした。Grade II-IV(19% vs 45%(p=0.0003))、III-IV(4% vs 27%(p<0.0001))、慢性GVHDの累積発症率(16% vs 65%(p<0.0001))は、ATG群よりPTCy群で有意に低かった。PTCy群はNRM(16% vs 36%(p=0.005、HR:0.55(95%CI:0.34-0.89))、OS(69% vs 40% p=0.0007 HR:0.43(0.26-70))、EFS(65% vs 38% p=0.0006 HR:0.49(0.31-78))、GVHD relapse free survival(52% vs 12% p<0.0001)においてATG群より良好であった・また、PTCy群はVODやCMV再活性化、深在性真菌症、粘膜障害の重症度といった安全性の点でもATG群より良好であった。ヒストリカルコントロールとの比較という制限はあるものの、本研究はuPBSCTにおいてATGよりPTCyを用いたGVHD予防が優れていることを示唆している。
平成28年4月11日
中根孝彦 |
Cause of mortality after haploidentical hematopoietic stem cell transplantation and the comparison with HLA-identical sibling hematopoietic stem cell transplantation
HLAハプロ一致移植とHLA一致同胞移植の死因の比較 |
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この研究の目的は、ハプロ移植後の生死に影響を与えるイベントや原因、要因を調べることと、ハプロ移植とHLA一致血縁移植間の違いを比較することである。患者は2000年1月から2011年6月、1411人の急性白血病とMDS患者を対象にした。571人がHLA一致血縁、840人がハプロ移植。ハプロと血縁一致で全死亡率とTRMの累積発症率はそれぞれ、38.7%対33.3%、p=0.012、27.5%対19.9%、p=0.002と有意差があったが、再発関連死亡(RRM)は15.4%対16.7%、p=0.943と二群間で有意差がなかった。多変量解析の結果、ハイリスク疾患状態(HR 1.845、p<0.0001)とハプロ移植(HR 1.249、p=0.019)が全死亡率と高率に相関していた。さらにハプロ移植において、ハイリスク疾患状態のみが高い全死亡率と相関していた(HR 1.845、p<0.0001)。我々の研究では、ハプロ移植は高い全死亡率とTRMに関連するが、RRMはHLA一致血縁と同等であった。従って、HLA一致血縁移植の第一選択となるが、HLA一致ドナーがいない時、ハプロ移植は有益な選択肢となる。
平成28年4月4日
吉村卓朗 |
Autologous stem cell transplantation for relapsed/refractory diffuse large B-cell lymphoma: efficacy in the rituximab era and comparison to first allogeneic transplants. A report from the EBMT Lymphoma Working Party
再発難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する、リツキシマブ時代における自家造血幹細胞移植の有効性と初回同種移植との比較 |
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免疫化学療法の時代において、再発難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する最適な治療法は試されてきた。我々はこの20年における自家造血幹細胞移植による標準的救援療法(AutoSCT)および、この10年における同種移植の結果を調査した。1992年から2002年の間に診断された自家移植患者(n=2732)を2002年から2010年に診断された患者(n=3980)と比較した。2002年移行に診断された患者は有意に非再発死亡(NRM)と再発率(RI)が低く、無進行生存率(PFS)と全生存率(OS)が優れていた。2002年から2010年の間に診断された、4210人の患者が、初回の自家移植か同種移植を施行された。230人の患者が同種移植を施行され、骨髄破壊的移植(MACalloSCT)がn=132、強度減弱移植(RICalloSCT)がn=98であった。4年のNRMはAutoSCT、RICalloSCT、MACalloSCTでそれぞれ7%、20%、27%であった。4年のRIは45%、40%、38%であった。(NS)4年のPFSは48%、52%、35%であった。4年OSは60%、52%、38%であった。交絡因子の補正後もNRMはalloSCTで悪く、RIは差はなかった
平成28年3月28日
康 史朗 |
Colonoscopy and Sigmoidoscopy are Equally Effective for the Diagnosis of Colonic Acute Graft-versus-Host Disease in Patients with Diarrhea after Allogeneic Stem Cell Transplantation: A Prospective Controlled Trial
大腸内視鏡検査とS状結腸内視鏡検査は同種造血幹細胞移植後下痢の患者の腸管GVHD診断に同等に有効である |
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腸管のaGVHDは同種移植患者の10%に発症する。下痢が主な臨床症状であるが、これは移植患者において一般的な症状である。従って、腸管の病理学的な検査が診断において重要であるが、生検に適した腸管部位に関しては議論の余地が残っている。この研究の主要な目的は、腸管aGVHDの病理学的診断能に関して、全大腸内視鏡とS状結腸内視鏡を比較することである。下痢を伴う37例の同種移植患者全例が全大腸内視鏡検査を施行された。下行結腸から採取された全ての生検はS状結腸内視鏡で採取可能とみなし、それより口側の結腸(横行結腸や上行結腸)から採取された全ての生検は全大腸内視鏡によってのみ採取可能とみなした。全大腸内視鏡とS状結腸内視鏡による生検の結果、それぞれ25例(68%)がGVHD腸性であった。S状結腸内視鏡は下痢を伴う同種移植患者の腸管aGVHD診断において、全大腸検査と同等に有効であった。
平成28年3月14日
岡村浩史 |
Phase 3 trial of defibrotide for the treatment of severe veno-occlusive disease and multi-organ failure
重症VODおよびMOFに対するデフィブロタイド治療ー第3相試験 |
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VOD/SOSは移植後致死的合併症である。多臓器不全(MOF)を伴った肝VOD/SOSは80%以上の致死率 である。Phase2 studyではMOFを伴った肝VOD/SOSに対してデフィブロタイドは良好な結果が得ら れた。MOFを伴った肝VOD/SOSに対するデフィブロタイドの安全性及び有効性について評価するた めに今回のPhase3 studyが行われた。2mg/kg/dayを用いた102例をヒストリカルコントロールの3 2例と比較した。Day100の生存率について比較したところ、デフィブロタイド群で38.2%、コン トロール群で25%であった。Day100のCR率は25.5%と12.5%であった。デフィブロタイドの毒性 は許容範囲内であった。毒性としては出血および血圧低下であったが、特に2群間で有意差は認 められなかった。デフィブロタイドはDay100の生存率及びCR率を有意に改善した。
平成28年3月7日
西本光孝 |
Reduced-intensity transplantation for lymphomas using haploidentical related donors vs HLA-matched unrelated donors
リンパ腫に対するRIC移植:血縁ハプロドナーvsHLA一致比血縁ドナー |
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917人の成人リンパ腫患者に対してRICを用いてハプロ移植(185人)、MUD(ATGなし 491人、あり 241人)移植を行った。ハプロ移植のGVHD予防にはPTCYを、MUD移植ではカルシニューリン阻害薬を主に用いた。観察期間中央値は3年、移植後100日時点でのgrade III-VIのaGVHD発症率は各々8%、12%、17%、移植後1年時点でのcGVHDの発症率は13%、51%、33%、多変量解析ではgrade III-IVのaGVHD発症率はハプロと比し、MUDで有意に高かった。cGVHDでも同様の結果が得られた。再発・増悪は3年時点で36%、28%、36%、3年OSは60%、62%、50%であった。多変量解析では各群間の生存、NRM、PFSに有意差は認めなかった。これらの結果よりPTCYを用いたハプロ移植はMUDと比し、生存率を悪化させるものではなく、また、cGVHDの危険性を減じる可能性が示唆された。
平成28年2月29日
高桑輝人 |
High-dose dexamethasone vs prednisone for treatment of adult immune thrombocytopenia: a prospective multicenter randomized trial
成人ITP治療における大量デキサメタゾンとプレドニンの比較:前向き多施設ランダム化試験 |
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新規診断の成人免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する初期治療戦略として、大量デキサメタゾン(HD-DEX)と従来のプレドニン(PSL)の有効性・安全性の比較を、これまでで最大のコホートで調査した。患者は、DEX 40mg/dayを4日間(n=95、反応不良患者にはDEX投与4日間追加)、もしくはPSL 1.0mg/kg/dayを4週間内服、以後漸減(n-97)にランダムに割り付けられた。HD-DEX群で全初期奏功率(82.1% vs 67.4%、p=0.044)、完全奏効率(50.5% vs 26.8%、p=0.001)ともに、PSL群より有意に高い結果となった。奏効までの期間はHD-DEX群で有意に短く(p<0.001)、長期奏効率はHD-DEX群、PSL群で差が見られなかった(40% vs 41.2%、p=0.884)。初期治療での完全奏効が長期奏効率の良好因子であった。逆に抗血小板抗体は長期奏効率の不良因子だった。また。baseline bleeding score≧8が低い奏効率と関連があった。HD-DEXは概してより耐容であり、著者らは、成人ITPに対する第一の治療戦略として、HD-DEXがより好ましいステロイド治療であろうと結論づけた。
平成28年2月22日
中嶋康博 |
Post-transplantation cyclophosphamide for prevention of graft-versus-host disease after HLA-matched mobilized blood cell transplantation
PTCTによるHLA一致PBSCT後のGVHD予防 |
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HLA一致の血縁・非血縁ドナーからのG-CSF併用末梢血幹細胞移植の、免疫抑制剤全身 治療を要するNIH定義の慢性GVHD累積発症率は、移植後1年時点で約35%である。今 回、G-CSF併用末梢血幹細胞移植に対し、移植後シクロフォスファミド(Cy)をGVHD予 防を用いることで、慢性GVHDを15%以下に減らせる仮説を立てた。対象は43名のハイ リスク白血病患者(年齢中央値43歳、2011年12月〜2013年9月移植、12名(28%)血 縁ドナー、31名(72%)非血縁ドナー)。移植前処置は2種類で、フルダラビン+ ターゲット(薬剤濃度調整)ブスルファンが25名、TBI12Gy以上が18名。移植後のCy は50 mg/kg/dayがday3とday4に投与。シクロスポリンはday5から開始され、急性GVHD がなければday56からday126にかけて減量された。
結果、NIH定義の慢性GVHDの1年累積発症率は16% (95% CI, 5% to 28%)。グレード II-IVとIII-IVの急性GVHDの累積発症率はそれぞれ77%と0%だった。非再発死亡と、疾 患増悪死亡の2年累積発症率は、それぞれ14%と17%で、推定OSは70%だった。42名が 少なくても1年フォローアップされ、その半数(21名)は、1年後に免疫抑制剤全身治 療なしで非再発生存であった。このように、骨髄破壊的前処置は移植後高容量Cyと安 全に併用でき、HLA一致末梢血幹細胞移植の慢性GVHDリスクは十分に減少させる可能 性がある。
平成28年2月15日
中前美佳 |
Discontinuation of dasatinib in patients with chronic myeloid leukaemia who have maintained deep molecular response for longer than 1 year (DADI trial): a multicentre phase 2 trial
ダサチニブで1年以上深い分子寛解を維持した慢性骨髄性白血病患者でのダサチニブ中止 |
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Background
慢性期CMLにおいて、イマチニブによるfirst lineの治療後に、少なくとも2年の間、深い分子寛解を維持した症例でイマチニブの中止が可能な症例がある。我々は2nd lineの治療でのダサチニブ投与で少なくとも1年間(通常は2年)深い分子寛解を維持できた症例でダサチニブ中止が安全に可能かを調べた。
Methods
The Dasatinib Discontinuation trial(DADI)は、日本での前向き多施設研究で行われた。2011年4月から2012年3月までにダサチニブが可能で深い分子寛解に到達した患者を登録した。すべての患者で少なくとも1年間の地固めとしてダサチニブの投与を行った。持続的な深い分子寛解を維持できた症例でダサチニブを中止した。1年目は毎月、2年目は3ヶ月毎、3年目は6ヶ月毎にフォローを行い、免疫学的なプロファイルも評価した。主要評価項目は、ダサチニブ中止後6ヶ月での無治療分子寛解率とした。分子再発は深い分子寛解の消失とした。
Findings
88例を地固めフェーズに登録して、24例はBCR-ABL1 transcript levelsが変動したため除外した。1例はmajor、minor BCR-ABLの両方陽性が判明したため除外した。63例がダサチニブを中止。フォローアップの中央値は20ヶ月で、30例は深い分子寛解を維持、一方、33例はすべて7ヶ月以内に分子再発した。無治療寛解率は6ヶ月で49%であった。再発例の33例は治療を再開した後、全例ですみやかに分子寛解が得られた。29例(88%)は3ヶ月以内の分子寛解、残り4人も6ヶ月までに分子寛解となった。
Interpretation
ダサチニブは1年以上、深い分子寛解を維持している症例で中止は可能であることが分かった。
平成28年2月8日
中前博久 |
Antilymphocyte globulin for prevention of chronic graft-versus-host disease
ATGによる慢性GVHD予防 |
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●背景:cGVHDは同種造血幹細胞移植後の晩期合併症や死亡の原因となる。我々は、急性白血病患者でATGを含めた骨髄破壊的前処置はHLA一致同胞間同種PBSCTにおける2年後のcGVHDを減らすと仮説を立てた。
●方法;前処置レジメンとしてATGを用いた前向き多施設非盲検無作為化第III相試験を行った。全部で27施設、168人が登録された。患者は施設と疾患リスクの分類により1:1でATG投与群と非投与群に無作為に割り付けられた。
●結果:中央値24ヶ月の観察で、cGVHDの累積発症率はATG群で32.2%(95%CI 22.1-46.7)、非ATG群で68.7%(95%CI 58.4-80.7)であった(p<0.001)。2年の無再発生存率はATG群と非ATG群で同等であり(59.4%[95%CI 47.8-69.2] vs 64.6%[95%CI 50.9-75.3]、p=0.21)、全生存率も差がなかった(74.1%[95%CI 62.7-82.5] vs 77.9%[95%CI 66.1-86.1]、p=0.46)。また、再発、感染性合併症、aGVHD、有害事象は2群間で有意差はなかった。2年の無cGVHD生存と無再発生存の複合エンドポイントの発生率は有意にATG群で高かった(36.6% vs 16.8%、p=0.005)
●結論:ATGを含めることは、ATG非投与に比べ有意に移植後のcGVHDの発症率を低下させた。2群間の生存率は同様であったが、無cGVHD生存と無再発生存の複合エンドポイントの発生率は有意にATG群で良かった。
平成28年2月1日
廣瀬朝生 |
A Two-Step Haploidentical Versus a Two-Step Matched Related Allogeneic Myeloablative Peripheral Blood Stem Cell Transplantation.
2段階骨髄破壊的末梢血幹細胞移植法:ハプロ群と血縁HLA一致群の比較 |
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ハプロ移植はHLA一致ドナーがいない患者の移植法である。我々はハプロ群あるいは血縁HLA一致群での2 stepアプローチによる骨髄破壊的前処置による移植法を開発した。この方法において,移植片におけるリンパ系,骨髄系の細胞が,T細胞量を固定するために2つに分割されて投与された。CyがT細胞の免疫寛容に用いられた。前処置法,T細胞量,GVHD予防戦略は固定し,2stepハプロ群と2stepHLA一致血縁群(MR群)の免疫再構築,臨床経過に関して比較した。我々は後方視的に2stepハプロ群(50人)と2stepMR群(27人)の血液悪性腫瘍および再生不良性貧血のPB移植患者を比較した。両群ともTBIによる骨髄破壊的前処置を受けた。免疫再構築データはFCMによるDay28とDay90にT細胞のサブセットを含んだ。両群でCD3/CD8細胞カウントの中央値を除いて全てのT細胞サブセットの同等の免疫再構築であった。CD3/CD8細胞カウントはハプロ群と比較してMR群で早期の回復を認めた。3年でのOSはハプロ群で70%,MR群で71%(P=0.81)。
3年でのPFSがハプロ群で68 %,MR群で70%(P=0.97) 。3年でのNRMはハプロ群で10%,MR群で4%(P=0.34)。3年での累積再発率はハプロ群で21% ,MR群で27%(P=0.93)。
100日における累積のGrade2 to 4GVHDがハプロ群で40% vs MR群で8%であった(P<0.001),一方で,100日時点でのGrade3 to 4急性GVHDはハプロ群で6%,MR群で4%(P=0.49)と統計学的に有意差は認めなかった。累積のCMV再活性化はMR群よりハプロ群でより再活性化がおきやすかった(ハプロ群67% vs MR群19%, P<0.001)。両群ともGVHD死亡はなかった。同等の前処置,移植片中のT細胞数,GVHD予防法を使用した場合,2stepハプロおよび血縁HLA一致同胞ドナーでは同等の早期免疫再構築および臨床結果を得られた。 平成28年1月25日
南野 智 |
The addition of sirolimus to the graft-versus-host disease prophylaxis regimen in reduced intensity allogeneic stem cell transplantation for lymphoma: a multicentre randomized trial
RISTにおけるシロリムス追加のGVHD予防効果:多施設ランダム化試験 |
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mechanistic target of rapamycin(mTOR)経路を阻害することはリンパ腫に効果があることはすでに知られているが、mTOR阻害剤であるラパマイシン(=シロリムス)はGVHD予防にも用いられている。RICレジメンを用いた同種移植においてシロリムスをGVHD予防の一部として用いることで低い再発率を達成できることはすでに後ろ向き研究で明らかになっていることから今回、リンパ腫に対する一般的なRICレジメンを用いた同種移植について、シロリムス・タクロリムス・メソトレキセートの併用をGVHD予防として用いる方法での効果を標準的な予防方法と比較して有効性を検討する、多施設前向きランダム化比較試験を設定した。結果、ランダム化された患者は139人であり、2年OSやPFS、NRM、慢性GVHDの発症率に差はなかったが、シロリムス群においてgradeU-Wの急性GVHDが少なかった(9% vs 25% ;p=0.015)。特にこの傾向はMUDで明らかであった。この研究より、シロリムスはRICでの移植に用いることで、OSを改善させないが有害性を加えることもなく、急性GVHDのリスクを減じうることがわかった。シロリムスは今後、RICの移植におけるGVHD予防の選択肢になりうるだろう。
平成28年1月18日
幕内陽介 |
Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation for Acute Myeloid Leukemia: Time to Move Toward a Minimal Residual Disease-Based Definition of Complete Remission?
AMLに対する同種造血幹細胞移植:MRDに基づいた完全寛解の定義に移行する時期 |
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目的:
一般には同種移植時の治療選択において、形態学的寛解のAML患者は、活動性病変(例えば芽球が形態学的に5%以上)を持つ患者とは、移植予後が異なるという事から区別されている。形態学的寛解の患者において、移植時MRD陽性が移植予後不良と関連していることが良く知られれtる。FHCRCにおいて骨髄破壊的移植前処置での同種移植をうけたMRD陽性寛解患者と、活動性病変を有するAML患者を連続的に集積し比較した。
患者と方法:
2006-2014年に骨髄破壊的前処置で同種骨髄又は末梢血幹細胞移植を受けた成人患者359人を後方視的に連続的に検討した。移植前患者状態は10カラーFCMで評価した。疾患の残存はそのレベルによらずMRD陽性と判断した。
結果:
形態学的寛解でMRD陽性の76人、active AMLの48人での3年再発率はそれぞれ67%、65%であり、一方MRD陰性寛解の235人では22%であった。これら3群の3年OSはそれぞれ26%、23%、73%。多変量解析での調整の結果、MRD陽性寛解およびactive AMLと比べ、MRD陰性寛解はOS、PFS、再発共に有意に改善したのに対し、MRD陽性寛解とactive AMLでは同等の結果であった。
結論:
MRD陽性寛解とactive AMLでの移植予後の同等性は、形態評価よりもMRDに基づいた疾患評価を使った治療方針決定のアルゴリズムを用いることを支持している。
平成28年1月4日
中根孝彦 |
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