最新文献紹介(抄読会)
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2017年

A propensity score matching analysis of dasatinib and nilotinib as a frontline therapy for patients with chronic myeloid leukemia in chronic phase

慢性期慢性骨髄性白血病の初期治療としてのニロチニブとダサチニブのプロペンシティスコアをマッチさせた比較

<背景>ダサチニブとニロチニブは共にイマチニブと比較したランダマイズ研究の結果に基づき、CML-CPの初回治療薬として承認される。しかし、新規CML−CP患者においてダサチニブとニロチニブを直接比較した研究はない。
<方法>我々は、それぞれに並列して行われたphase2試験において、初回治療でダサチニブまたはニロチニブのいずれかを投与されたCML−CP患者をプロペンシティスコア(PS)でマッチングした上で比較することとした。(ダサチニブ:n=102、ニロチニブ:n=104)
<結論>PSマッチングの結果、それぞれ87例の患者が治療前の特徴に基づいてマッチされた。3ヶ月でのBCR-ABL/ABL1<10%の達成率はダサチニブで93%、ニロチニブで94%(p=0.25)であり、12ヶ月でのMMR達成率はダサチニブで77%、ニロチニブ85%(p=0.13)、36ヶ月でのMR4.5達成率はダサチニブで66%、ニロチニブで64%(p=0.96)であった。他の全ての治療反応も両群で同様であった。ダサチニブの3年EFSは89%、ニロチニブの3年EFSは87%(p=0.99)であり、ダサチニブの3年OSは99%、ニロチニブの3年OSは93%であった(p=0.95)。他のどの生存エンドポイントにおいても両群間で有意差は認めなかった。治療中止率も両群で同等であった。(ダサチニブ18%、ニロチニブ19%:p=0.82)
<結論>新規にCML-CPと診断された患者のPSマッチングコホートにおいて、ダサチニブとニロチニブは同等の治療反応と生存を示した。いずれの薬剤もCML-CP患者の初回治療薬として妥当な標準的選択肢と考えられる。

平成29年12月25日
岡村浩史

 

Donor-lymphocyte infusion following haploidentical hematopoietic cell transplantation with peripheral blood stem cell grafts and PTCy

末梢血幹細胞を用いたPTCyハプロ移植後のDLI

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移植後エンドキサン(PTCy)を用いたHLA半合致幹細胞移植(ハプロ移植)後の再発に対するドナーリンパ球輸注(DLI)は、移植ソースが骨髄細胞の患者では報告があるが、G−CSFで動員した末梢血幹細胞(PB)移植では報告がない。筆者らは、PTCy−PBハプロ移植後の再発もしくはキメリズム低下(LOC)に対して、DLIを施行した患者を後方視的に解析した。12人(57%)が血液学的再発に対して、7人(33%)が髄外再発に対して、2人(10%)がLOCに対して施行された。17人(76%)にDLI前に化学療法を受けたが、治療反応性には関係しなかった。初回投与は多くの症例で1x10^6 CD3+/kgで、DLI後の急性GVHD発症は、2人がgradeI、1人がgradeII、2人がgradeIIIだった。1人の患者はDLI後1361日目に軽症皮膚慢性GVHDを発症した。DLI前のaGVHD既往がDLI後aGVHDと有意に関連した(p=0.025)。DLI後、6人の患者が血液学的再発から寛解に至り、1人がLOCからフルドナーキメリズムに到達した。髄外再発とLOCの患者では、DLI後RFSが有意に優れていた(p=0.029)。PTCy—PBハプロ移植後のDLIは、再発・LOCに対して実用可能な救援治療であり、GVHDリスクはそれほど高めない。幹細胞採取時にドナーリンパ球を同時に回収しておくことで、再発ハイリスク患者に対して治療介入を迅速に施行できる可能性がある。

平成29年12月18日
中嶋康博

 

Phase 1 clinical trial using mbIL21 ex vivo-expanded donor-derived NK cells after haploidentical transplantation

ハプロ移植後に膜結合型IL-21によって生体外増幅したNK細胞を投与する第1相試験

再発は同種造血幹細胞移植における治療不成功の最も重要な原因であるが、NK細胞が再発を減少させうるという仮説を検証するために、膜結合型IL-21(mbIL21)によって増幅したNK細胞をハイリスク血液悪性疾患にHLA半合致移植前後に輸注を行うa phase I dose escalation studyを開始した。研究の目的は安全性、忍容性の確認と最大耐容量の設定であった。患者はGVHD予防に移植後大量シクロフォスファミドを用いて、メルファランベースの骨髄非破壊的前処置を受けた。NK細胞は移植後、day-2, +7, +28に輸注した。全例で必要量のNK細胞を増幅できた。Infusion reactionを認めず、用量制限毒性も生じなかった。全例でドナー細胞の生着を確認できた。7例(54%)でグレード1−2のGVHDが生じた。グレード3−4のGVHDや慢性GVHDを生じた症例はなかった。ウイルス感染症の頻度は低かった。1例が非再発死亡、1例が再発した。最終フォローアップ期間まで、全例が生存していた(中央値14.7ヶ月)。NK細胞の再構築は絶対数、表現型および機能の点でNK細胞輸注を受けていない症例よりも優れていた。結論として、この研究から、HLA一半合致移植後の生体外増幅した大量NK細胞輸注はGVHDの増加や死亡率の増加などがなく、安全と忍容性が確認でき、NK細胞数や機能を改善させ、ウイルス感染症や再発の低減につながった。

平成29年12月11日
中前博久

 

Optimal Threshold and Time of Absolute Lymphocyte Count Assessment for Outcome Prediction after Bone Marrow Transplantation.

骨髄移植後の予後予測に最適なリンパ球絶対数と評価時期

ALC(全リンパ球球数)の回復の早さは造血細胞移植予後因子である。過去の報告では アウトカムを予想するのに様々なカットオフと時期で評価している。このグループ は、骨髄移植(BMT)後のアウトカム予測において適切なALC値の設定を目的とし、 518名のBMT患者(AML, ALL, MDS, 1999-2010年の移植)をトレーニングセットとtest setに二分し、時期についてはdays 30, 60, 90, 120, 180、ALC値については100, 200, 300, 400, 500, 1000/μlで最適な値を検討した。トレーニングセットではOS, RFS, NRMはday60が最も良い予測因子となった。全体の患者コホートでは多変量解析 でOS・RFS・NRM、そして GVHDの発症率の低さにおいて(GVHDをday60以前に発症した 患者を含めても除外しても)、day60でALC>300/μlが有意に良い結果であった。患 者や疾患などの移植関連の因子を解析したところ、両コホートで、ブスルファンベー スの前処置のみがday60でのALC高値と関連していた。BMTの結果予測の適正ALCは300/ μlでday60時点である。

平成29年12月4日
中前美佳

 

Prospective, Randomized, Double-Blind, Phase III Clinical Trial of Anti–T-Lymphocyte Globulin to Assess Impact on Chronic Graft-Versus-Host Disease–Free Survival in Patients Undergoing HLA-Matched Unrelated Myeloablative Hematopoietic Cell Transplantation.

抗Tリンパ球グロブリンのHLA一致非血縁骨髄破壊的造血細胞移植における慢性GVHDフリー生存率に対する影響を評価する前向き無作為化二重盲検第III相臨床試験

目的:いくつかのオープンラベル無作為試験によって、抗Tリンパ球グロブリン(ATLG;以前のATG-Fresenius)によるin vivo T細胞除去が、生存を損なうことなく慢性GVHDを減少させることが示唆されている。我々は、慢性GVHDのない生存に関するATLG(Neovii Biotech、Lexington、MA)の効果を調べるための、前向き二重盲検第III相試験を報告する。
患者と方法:骨髄破壊的HLA一致非血縁造血細胞移植(HCT)を受けた18?65歳の急性白血病またはMDS患者254人を無作為に27施設でプラセボ(n = 128)またはATLG(n = 126)治療に割付けた。患者は、GVHD予防としてタクロリムスおよびMTXに加えて、day-3、-2、-1にATLGまたはプラセボいずれか20mg/kg/dayを投与した。主要エンドポイントは、中等度-重度cGVHDフリー生存率であった。
結果:ATLG群ではgrade2-4のaGVHD(23% v 40%; P=0.004)および中等度-重度cGVHD(12% v 33%; P<0.001)の減少にもかかわらず、ATLGとプラセボで中等度-重度cGVHDフリー生存率の違いはみられなかった(2年推定:48% v 44%、P=0.47)。また、無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)ともATLG群で低かった(2年推定:それぞれ47% v 65%[P=0.04]および59% v 74%[P=0.034])。多変量解析により、ATLGはPFS(HR 1.55; 95%CI 1.05-2.28; P=0.026)およびOS(HR 1.74; 95%CI 1.12-2.71; P=0.01)の低下と関連していた 。
結論:非血縁骨髄破壊的HCTにおけるATLGの前向き無作為化二重盲検試験において、ATLGの組み込みは、中等度-重度cGVHDフリー生存率を改善しなかった。中等度-重度cGVHDはATLG群で有意に低かったが、PFSおよびOSも低かった。HCTにおけるATLGの適切な役割を理解するためには、さらなる分析が必要である。

平成29年11月27日
廣瀬朝生

 

BDR in newly diagnosed patients with WM: final analysis of a phase 2 study after a minimum follow-up of 6 years

原発性マクログロブリン血症に対するBDR治療

Phase 2多施設研究において、我々は未治療WMの59人の効果を評価した。患者のほとんどが高齢で予後不良因子を持っていた。BDRはBortezomib 1.3mg/m2をDay 1,4,8,11に投与した後、週1回のBが1.6mg/m2でDay 1,8,15,22で35日サイクルで4回行い、DXM 40mgとR 375mg/m2をCycle 2と5に投与し、合計23週の治療期間であった。ITT解析において、85%の奏効率(3%のCR、7%のVGRO、58%のPR)であった。6年のフォローアップで、PFSの中央値43ヶ月で少なくともPR以上の奏効をえられた患者の中央値は64.5ヶ月であった。OSは7年で66%、2次性MDSはいなかったが、BDR後に免疫化学療法をうけた3人が高悪性度リンパ腫にトランスフォームした。BDRは長期間の毒性プロファイルも好ましいものであり、持続的な反応を得られ、持続的に化学療法フリーの期間が得られるよいregimenである。

(参考)

Primary therapy of Waldenstrom macroglobulinemia (WM) with weekly bortezomib, low-dose dexamethasone, and rituximab (BDR): long-term results of a phase 2 study of the European Myeloma Network (EMN).

平成29年11月20日
南野 智

 

Post-Transplantation Cyclophosphamide-Based Haploidentical Transplantation as Alternativeto Matched Sibling or Unrelated Donor Transplantation for Hodgkin Lymphoma: A RegistryStudy of the Lymphoma Working Party of the European Society for Blood and Marrow Transplantation.

ホジキンリンパ腫に対する血縁同胞またはHLA一致非血縁ドナーの代替ドナーとしてのPTCY-ハプロ移植

Purpose :ホジキンリンパ腫(HL)に同種移植を施行した患者について,PTCyを用いたHLA半合致移植(ハプロ)と,従来の方法によるHLA一致血縁移植(SIB)あるいはHLA一致非血縁移植(MUD)の成績を後方視的に比較した。
Patients/Methods :EBMTのレジストリーデータからHLの患者709人を対象とした。ハプロは98人,SIBは338人,MUDは273人。
Results :生存期間のフォローアップ中央値は29ヶ月。急性/慢性GVHDの発生には差を認めず。ハプロは慢性GVHDの発生リスクがMUDより低かった(26% vs 41%, p=0.04 )。1年のNRMはハプロ,SIB,MUDでそれぞれ17%, 13%, 21% 2年の累積再発率は39%, 49%, 32%。多変量解析では,SIBと比較してハプロではNRMが同等(P=0.26),MUDではNRMが高く(P=0.003),ハプロ・MUDでは再発率が低かった (P=0.047, P<0.001)。2年のOSとPFSはそれぞれ,ハプロでは67%と43%, SIBでは71%と38%, MUDでは62%と45%であり,差はなかった。extensiveの慢性GVHDと無再発生存期間の複合エンドポイント(cGRFS)ではハプロが40%,SIBで28%(P=0.049),MUDで38%(P=0.59)であった。
Conclusion  :PTCyハプロはSIB,MUDと遜色ない生存期間を認め,代替ドナーとして妥当である。また,MUDに比べて慢性GVHDが少ないことも特徴と言える。

平成29年11月13日
幕内陽介

 

NK cell recovery after haploidentical HSCT with post-transplant cyclophosphamide: dynamics and clinical implications

PTCY-ハプロ移植後のNK細胞回復

GVHD予防としてのPTCYの使用はハプロ移植に革命的変化をもたらし、未処理のT細胞非除去でのgraftの安全な輸注が可能となった。PTCYは、増殖している同種反応性T細胞を選択的に除去するが、NK細胞およびその同種反応性にどう影響しているかについては良く知られていない。今回我々は2つの移植施設においてPTCYをベースとして成熟NK細胞を十分に含んだハプロドナーからの同種移植を受けた17人における、NK細胞の動態を確認した。両群において我々は移植後ドナー由来のNK細胞が著明に増殖し、CY輸注後、増殖していたNK細胞は顕著な減少を認め、この結果は分裂細胞が選択的にパージングされることを示唆している。この仮説を裏付けることとして、増殖しているNK細胞はaldehyde dehydrogenaseを発現しておらず、in vitroでCYにより死滅した。成熟NK細胞の破壊の後、移植後day15から、患者血漿中のIL-15の上昇と共に、輸注した幹細胞由来と思われる未熟なNK細胞(CD62L+NKG2A+KIR-)を高頻度に認めた。重要なこととして、おそらく同種反応性と考えられるsingle KIR+NK細胞も同様にPTCYにより排除され、移植後day30時点での数および抗白血病効果は減じられていた。その結果、99例に拡張したPTCYハプロのコホートにおいてNK同種反応が期待される群とそうでない群ではDFSに差がなかった(42%vs52%@1yr)。我々のデータは、この移植条件では、未処理のグラフトと共に輸注された成熟NK細胞のほとんどはPTCY投与により失われ、NK細胞の同種反応を抑制することを示唆している。

平成29年11月6日
中根孝彦

 

Midostaurin plus Chemotherapy for Acute Myeloid Leukemia with a FLT3 Mutation.

FFLT3変異を有する急性骨髄性白血病に対するミドスタウリン+化学療法

(背景)
FLT3変異を有する急性骨髄性白血病患者の転帰は不良である。我々は、この集団の全生存期間がFLT3変異を有する患者で活性を示す複数標的キナーゼ経口阻害薬ミドスタウリンを標準化学療法に追加することで延長するかどうかを明らかにするために第3相試験を行った。
(方法)
新たにAMLと診断された18-59歳の患者3277例を対象に、FLT3変異のスクリーニングを行った。標準化学療法(ダウノルビシン+シタラビンによる寛解導入療法、および高用量シタラビンによる地固め療法)にミドスタウリンを追加する群と、プラセボを追加する群とに患者を無作為に割り付けた。地固め療法後に寛解状態にあった患者は、ミドスタウリンまたはプラセボを投与する維持療法に移行した。無作為化は、FLT3変異のサブタイプで層別化して行った。FLT3サブタイプは、チロシン。キナーゼドメイン(TKD)の点変異と、野生型アレルに対する変異型アレルの割合が高い(>0.7)または低い(0.05-0.7)遺伝子内縦列重複(ITD)変異(それぞれITD[高]、ITD[低])とした。同種移植は施行可能とした。Primary End Pointは全生存期間とした。
(結果)
717例が無作為化され、360令がミドスタウリン群に、357例がプラセボ群に割り付けられた。FLT3サブタイプはITD[高]が314例、ITD[低]が341例、TKDが162例であった。治療期間で年齢、人種、FLT3サブタイプ、細胞遺伝学的リスク、血球数に偏りはなかったが、性別には偏りがあった(女性の割合はミドスタウリン群51.7%に対してプラセボ群59.4%、p=0.04)。全生存率は、ミドスタウリン群の方がプラセボ群よりも有意に長く(死亡のハザード比0.78、片側p=0.009)、無イベント生存期間についても同様であった(イベントまたは死亡のハザード比0.78、片側p=0.002)。主要解析、および患者が移植を受けた時点でデータを打ち切った場合の解析のいずれにおいても、ミドスタウリンの有効性は全FLT3サブタイプで一貫して認められた。重度の有害事象の発現率は2群間で同程度であった。
(結論)
FLT3変異を有するAML患者において、複数標的キナーゼ阻害薬ミドスタウリンを標準化学療法に追加することで、全生存期間と無イベント生存期間が有意に延長した。

平成29年10月30日
巽 尚子

 

Linezolid versus vancomycin or teicoplanin for nosocomial pneumonia: meta-analysis of randomised controlled trials

院内肺炎に対するリネゾリド、バンコマイシン、テイコプラニンの効果:メタ解析

MRSAは、院内肺炎の重要な原因微生物である。グリコペプチド系と比較して、リネゾリドは肺サーファクタントに高濃度に分布し、このことは院内肺炎患者における治療で有利に働くかもしれない。この研究の目的はリネゾリドの、バンコマイシンまたはテイコプラニンに比較した院内肺炎治療の効果および安全性を評価することである。Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびEMBASE、MEDLINEデータベースからデータを収集した。院内肺炎患者におけるリネゾリド対バンコマイシン、テイコプラニンを比較したRCTを集めた。12のリネゾリドを用いた試験を含んでいる。院内肺炎の治癒率に統計学的有意差はなかった(RR=1.08、95%CI=1.00-1.17、p=0.06)。リネゾリドはグリコペプチド系抗菌薬と比較して院内肺炎患者において優れた微生物根絶率を示した(RR=1.16、95%CI=1.03-1.31、p=0.01)。全死亡率に差はなかった(RR=0.95、95%CI=0.83-1.09、p=0.46)。しかしながら、発疹と腎機能障害のリスクはグリコペプチド系で高かった(RR-0.41、95%CI=0.27-0.64、p<0.0001)。リネゾリドは院内肺炎患者でグリコペプチド系に比較して高い微生物根絶率を示すにも関わらず、高い治癒率は示さなかった。発疹と腎機能障害の発生率はグリコペプチド系群で高かった。

平成29年10月23日
田垣内優美

 

CD33 Splicing Polymorphism Determines Gemtuzumab Ozogamicin Response in De Novo Acute Myeloid Leukemia: Report From Randomized Phase III Children's Oncology Group Trial AAML0531

CD33 splicingの多型がde novo急性骨髄性白血病におけるゲムツズマブ・オゾガマイシンの反応性を決定する

Purpose
ゲノツズマブ・オゾガマイシン(GO)はCD33をターゲットにした免疫性複合体であり、AMLに対する治療として再登場している、CD33のsplicing enhancer領域にある一塩基多型rs12459419 C>Tはalternative splicingによってexon2の欠損したCD33アイソフォーム(D2-CD33)の発現を制御している。かくしてCD33のIgVドメインが欠損する。IgVドメインは診断的表面形質抗原パネルやGOで使用されている抗体の結合部位である。我々はGOを含む化学療法で治療されるAML患者におけるこのsplicing多型genotypeの重要性を決定することを目的とした。
Patients and Methods
AAML0531試験の通りCD33 splicingに関連した一塩基多型は新たに診断されたAML患者で評価され、標準的5コースの化学療法(No-GOアーム408例)と化学療法に加えて寛解導入療法中と強化療法中にGOの2回追加(GOアーム408例)にランダム割付された。
Results
Rs12459419 genotypeはCC群415例(51%)、CT群316令(39%)、TT群85例(10%)、マイナーアリル頻度は30%であった。TアリルはD2-CD33の高い転写レベルと有意に関連しており(p<0.000001)、診断時の白血病芽球のCD33 の低い発現強度とも有意に関連していた(p<0.000001)。genotype CC群では、再発リスクがGOアームでNo-GOアームと比較して有意に低かった(26% vs 49%、p<0.001)。しかし、genotype CTまたはTT群では、GO投与によって再発リスクは影響を受けなかった(39% vs 40%、p=0.85)。無病生存率はgenotype CC群ではGOアームがNo-GOアームと比較して高かったが(65% vs 46%、p=0.004)、このGO追加による治療成績の向上はgenotype CTまたはTT群では見られなかった。
Conclusion
我々の結果はrs12459419 genotype CC群はGOに対する十分な反応性を有しており、GOに対して有意に反応する見込みのある集団を抽出する潜在的なバイオマーカーになることを示唆している。

平成29年10月16日
井戸健太郎

 

Risk factors and prognosis of hepatic acute GvHD after allogeneic hematopoietic cell transplantation

同種造血幹細胞移植後の急性肝GVHDのリスク因子と予後

急性肝GVHDは免疫抑制療法への反応性の乏しさから高死亡率と関連している。肝GVHDの病因は他部位のGVHDとは異なり、移植前の肝臓の状態と関連する特異的なリスク因子が解明されるべきである。日本の移植施設のデータベース(N=8378)を用いてコホート研究を施行した。この研究では、造血幹細胞移植(HCT)前の段階で1.5%がHCV抗体陽性で、9.4%が肝機能障害(トランスアミナーゼ上昇もしくはビリルビン上昇)を有していた。HCT後急性肝GVHDの累積発症率は6.7%であった。多変量解析によると進行期のHCT、非血縁ドナー、HLAミスマッチ移植、GVHD予防としてシクロスポリンの使用と同様にHCV抗体陽性(hazard ratio:1.93;p=0.02)と肝機能障害(hazard ratio:1.85;p<0.01)が急性肝GVHDの意義のあるリスク因子であった。一方で、HBs抗原陽性はリスク因子とならなかった。急性肝GVHDは全ての急性GVHDのgradeで全生存率を低下させ、治療関連死亡率を上昇させる重要なリスク因子であった。この研究は委嘱前の肝機能障害と急性肝GVHDの関連を示した最初の報告である。この研究結果の検証を元にした前向き研究により、ハイリスク患者に対応した新たな治療戦略の確立が待たれる・

平成29年10月2日
原田尚憲

 

Comparison of Conditioning with Fludarabine/Busulfan and Fludarabine/Melphalan in Allogeneic Transplant Recipients 50 Years or Older.

50歳以上の同種移植患者におけるフルダラビン/ブスルファンとフルダラビン/メルファランによる前処置の比較

高齢者に対する同種移植における最適な前処置レジメンは判明していない。我々は2007-2014年の期間に、フルダラビン/ブスルファン(FB)またはフルダラビン/メルファラン(FM)を用いて同種移植を施行された50歳以上のAML、ALL、MDS症例1607例を後方視的に解析した。我々は、FB2(ブスルファン6.4mg/kg iv, n=463)、FB4(ブスルファン 12.8mg/kg iv, n=721、FM(メルファラン140mg/m2), n=432)間の臨床成績を比較した。非再発死亡例(NRM)は、FB2群と比較して、FB4群、FM140群において高率であった(ハザード比(HR) 1.63、p<0.001、及びHR 1.71、p<0.001)。対照的に、再発率については、FB2群と比較して、FB4群、FM140群において低かった(ハザード比(HR) 0.73、p=0.011、及びHR 0.56、p<0.001)。3群間で、全生存率(OS)に有意な差を認めなかった。FM140群におけるハイリスクAML及びMDS症例の3年OS(37.0%、60.2%)は、FB2群(24.4%、45.5%)、及びFB4群(24.6%、40.6%)よりも優れていた。一方で、その他の患者群では、3群間OSに有意差を認めなかった。結論として、FB4群及びFM140群における低い再発率は、より高い非再発死亡率により大部分が相殺される。しかしながら、FM140レジメンは、ハイリスクAML及びMDS症例において、より優れたOSに結びつく可能性はあるかもしれない・

平成29年9月25日
林 哲哉

 

 

Post-transplant cyclophosphamide versus anti-thymocyte globulin as graft-versus-host disease prophylaxis in haploidentical transplant.

ハプロ移植におけるGVHD予防:PTCYvsATG

重症GVHDはT細胞非除去のハプロ移植における主要な問題であるが、最適なGVHD予防方法については一定のコンセンサスはない。この研究ではEBMTの成人AML患者において、最もよく使用されている2つのGVHD予防レジメンであるpost CY vs ATGの比較を行った。全部で308例の患者を解析した。GVHD予防法は193例がpost CYレジメンであり、115例がATGレジメンであった。post CY群でグラフトソースは骨髄が多かった(60% vs 40%;P=0.01)。post CY群はATG群に比べて有意にgrade 3-4のaGVHDが少なかった(5% vs 12%;P=0.01)。多変量解析では、NRMがpost CY群で低く(22% vs 30%、HR 1.77(95%CI:1.09-2.02), P=0.02)、再発は2群で有意差はなかった。Post CY群はATG群よりも有意にGRFS、LFSが良かった。多変量解析ではpost CY群においてOSが良い傾向が示された(HR 1.43(95%CI:0.98-2.09); P=0.06)。注目すべきことに、施設の移植経験数もNRM、GRFSと関連した。GVHD予防としてのpost CYレジメンは成人AML患者において、ATGレジメンよりも優れたLFS、GRFSを示し、GVHDとNRMの発症は少ない。

平成29年9月11日
岡村浩史

 

Ex vivo fucosylation of third-party human regulatory T cells enhances anti-graft-versus-host disease potency in vivo

フコース化したTregはGVHD抑制効果を増強

GVHDを防ぐためのTregを用いた養子免疫治療は炎症サイトへのhomingを改善させることで利益が得られる。我々は、ヒトTregをフコース化することによりP-selectin glycoprotein ligand-1であるSialyl Lewis Xを形成し、tracking patternが改善されると仮説した。セレクチンpathwayのrecruiterであるα1,3fucosyltransferase-VI enzymeはTreg表面のフコース化を有意に増加させた(66% vs 8%)。Xenogenic GVHDマウスモデルにおいて、フコース化したTregはin vivoにおいて持続性が延長することを示した。処理していないTregに比較して、フコース化したTregを与えられた移植マウスは、より少ないdoseで、体重を維持でき、GVHDを改善し、生存を改善させた(70% vs 30%, P<0.0001)。これらのpreclinical dataはフコース化したTregがGVHD予防に有効な戦略であり、将来的な臨床研究が考慮されることを示唆する。

平成29年9月4日
西本光孝

 

PD-1 blockade for relapsed lymphoma post-allogeneic hematopoietic cell transplant: high response rate but frequent GVHD

同種移植後再発リンパ腫に対するPD-1阻害薬:高い有効性とGVHDの増加

allo移植後の再発リンパ腫に対する治療選択肢は少ない。一方、古典的Hodgkinリンパ腫(cHL)に対するPD-1阻害の有効性を受けて、移植後再発リンパ腫患者への抗PD-1抗体の適応外使用が増えている。このようなPD-1抗体の使用法の安全性・有効性を検証するため、筆者らは移植後再発リンパ腫に対して、PD-1抗体治療を受けた31人の患者の多施設後方視的研究を実施した。29人(94%)がcHL患者で、27人が移植後PD-1抗体投与前にsalvage療法を受けていた。移植後最初のPD-1抗体投与後からの観察中央期間は428日(133-833日)、評価可能な30人の患者の内、全奏効率は77%(CR 15人、PR8人)。最終フォローアップ時、31人中11人が病気進行、21人(68%)が生存しており、8人(26%)がPD-1抗体投与後の新規のGVHD発症により死亡した。17人(55%)がPD-1抗体投与後GVHDを発症(急性6人、overlap4人、慢性7人)し、それぞれのGVHD発症までのPD-1抗体投与回数中央値は1回、2回、2回だった。gradeV-Wの急性GVHDまたは重症慢性GVHDは9名だった。この17患者の内2例だけがGVHD治療でCRとなり、17名中14名が2種類以上の全身治療を要した。結論として、移植後再発のcHL患者に対するPD-1抗体治療は、効果は見込まれるが、治療後早期かつ治療難治性のGVHDがしばしば発症する。移植後PD-1抗体治療は、臨床試験外の通常治療としては推奨できず、さらなる検討が必須である。

平成29年8月28日
中嶋康博

 

Selective graft-versus-leukemia depends on magnitude and diversity of the alloreactive T cell response

選択的GVL効果は同種反応性T細胞の強度と多様性に関連する

T細胞除去移植後に遅れてDLIを受けた白血病患者にはGVHDリスクが低い状態でGVL反応が出現しえる。移植後DLIでGVLが出現した患者11名を、アロ反応性CD8T細胞の反応強度・多様性・特異性について GVHD有り(GVL+GVHD5名)・無し(選択的GVL6名)で比較検討した。選択的GVL患者では、GVL+GVHD患者に比べてマイナー組織適合性抗原(MiHAs)特異的CD8T細胞の反応強度と多様性が少ないことを観察した。
さらに、選択的GVL患者から得たMiHA特異的T細胞クローンは、炎症性サイトカインで前処置しても非血液細胞(fibroblast)へ低い反応性を示した。広く(血液細胞と非血液細胞)に発現する遺伝子にコードされたMiHAはGVL+GVHD患者で多く認識されたが、GVL+GVHD・選択的GVL両方の患者で(fibroblastへの認識能で分類した)タイプは類似しており、GVHDとGVLを特異性では厳密には区別できなかった。組織特異性は必ずしも選択的GVL効果の主な決定因子ではなかったが、炎症環境はGVHD発症への閾値を超えるのに貢献した。炎症環境では非血液細胞がT細胞認識を受けやすくなる。
そのような環境を予防することがGVHDのない選択的GVL反応を誘導するのに有利となる。

平成29年8月21日
中前美佳

 

Circulating dsDNA, endothelial injury, and complement activation in thrombotic microangiopathy and GVHD

TMAとGVHDにおける血清dsDNA、血管内皮障害、補体の活性化

TA-TMAは、おそらく内皮細胞障害を機転として、過剰な補体の活性化が関与した、主な移植後の合併症であるが、十分には認識されていない。内皮障害と補体の活性化の間の関係をつなぐピースがかけている状態である。我々は、neutrophil extracellular traps(NETs)が機序として、補体の活性化を伴う内皮障害とそれに続くTA-TMAに関係しているという仮説を立てた。好中球の活性化は、double stranded DNA(dsDNA)を含む、顆粒タンパク質を放出し、NETsとして知られている細胞外線維を形成する。NETsは補体を活性化し、ヒトでは血清のdsDNAとして定量できる。我々はNETsの代用マーカーとして、103例の小児の同種造血幹細胞移植患者で移植後のday 0、+14、+30、+60および、day+100にdsDNAレベルを測定した。dsDNAレベルのピークは、生着時期のday+14で、その後のTA-TMAの進展に関係していた。day+14付近のdsDNAの産生は、IL-8による好中球回復と関係していた。Day+30、+60および、day+100のdsDNAの増加は消化管GVHDと死亡とも相関があった。NETsは機序として内皮障害と補体の活性化に関わっている可能性がある。NETsの形成は、臨床的なGVHDとTA-TMAのオーバーラップにも機序の1つとして関係している可能性がある。

平成29年8月14日
中前博久

 

An endpoint associated with clinical benefit after initial treatment of chronic graft-versus-host disease

慢性GVHDの初期治療後の臨床的有益性に関連するエンドポイント

慢性GVHDの初期治療の試験で主要エンドポイントとして確立されたゴールドスタンダードはなく、これまで提案された主要エンドポイントと臨床的有益性との関連性を示すエビデンスには決定的なものはない。このギャップに対処するため、我々は、慢性GVHDの診断後3カ月以内に前向き多施設観察研究に登録された328人の患者コホートにおける結果を解析した。慢性GVHDの臨床試験の基準に関する2014年NIHコンセンサス開発会議に従ってCR、PR、SD、PDを定義した。「成功」は、登録後1年で二次全身治療または悪性腫瘍再発のないCR or PRと定義した。「成功」は患者の20%未満であった。このカテゴリーの患者では、1年目の疾患症状の負担はSD/PDの患者よりも少なかった。また、全身治療は早期に終了し、その後の死亡率は、CR/PR患者の方が、SD/PD患者と二次全身治療を受けた患者よりも低かった。
我々は、初期全身治療後1年目にCR or PRで、二次全身治療または悪性腫瘍再発がない患者の生存は臨床的有益性、つまり重要な臨床試験における主要エンドポイントとして考慮すべき重要な特性に関連していると結論する。この前向き観察研究は、www.clinicaltrials.govに#NCT00637689として登録されている。

平成29年8月7日
廣瀬朝生

 

Allogeneic Blood or Marrow Transplantation with Post-Transplantation Cyclophosphamide as Graft-Versus-Host Disease Prophylaxis in Multiple Myeloma

多発性骨髄腫に対するPTCY同種造血幹細胞移植

同種移植は多発性骨髄腫(以下MM)の患者において長期の病勢コントロールを誘導するかもしれない。しかしながら、歴史的にMMの患者に対する同種移植は主にGVHDによる高いNRMによって制限されてきた。我々は過去にPT-CYが急性や慢性GVHDの毒性をへらすという報告を過去におこなってきた。ここで我々はJohns Hopkins HospitalにおいてMM患者にPT-CYを用いた際の予後を確認した。2003年〜2011年において、39人のMM患者が同種移植を行った。ドナーソースは血縁、非血縁、ハプロのいずれか、前処置は骨髄破壊的・非破壊的前処置のいずれか、移植片はBMあるいはPBのいずれかでおこなった。GVHD予防はPT-CYをDay3, 4に投与した(その際、MMFやFKの投与は使用した群と使用しなかった群があった)。
好中球および血小板はDay15,16にそれぞれ生着した。急性GVHDの累積発症率はGrade2 to 4が0.41、Grade3 to 4は0.08であった。累積の慢性GVHD発症率は0.13であった。1人の患者のみNRMでなくなった。

BMT後の、ORRは62%で、それぞれCR 26%, VGPR 21%, PR 15%であった。PFSの中央値は12ヶ月で、細胞遺伝学的なリスクではなく、寛解の深さに関連した。累積の再発率は1年で0.46 (95% CI: 0.32-0.62)、2年で0.56(95% CI: 0.41-0.72)であった。最終フォローアップ時に患者の23%が同種移植後10.3年で病気の証拠がない状態にとどまった。OSの中央値は4.4年で5年OS、10年OSはそれぞれ0.49 (95% CI: 0.35-0.67)、0.43 (95% CI: 0.29-0.62)であった。MM患者のPT-CYの使用は可能であり、NRMとGVHDの発症率は低かった。このアプローチの安全性は長期病気のコントロールを改善させるための戦略として新規の移植後維持療法の開発により許容されるかもしれない。
平成29年7月31日
南野 智

 

Hematopoietic Cell Transplantation in Myelodysplastic Syndromes after Treatment with Hypomethylating Agents

脱メチル化薬で治療したMDSに対する造血幹細胞移植

脱メチル化剤(HMA)での治療が失敗した骨髄異形成症候群(MDS)患者の予後は不良であり,同 種造血幹細胞移植(HCT:同種移植)が唯一有効な治療方法である。しかしこういった患者群で の移植成績は現在まで明確にされていない。そこで我々は,HMAでの治療後に同種移植を受けたM DS患者125名を同定した。これらのうち68人がHMAでの治療に抵抗性を認め,57人が治療に反応性 を認めた。治療への抵抗性があるとは,MDSの悪化やAMLへの転化, 4コース目後以降において血 液検査所見の改善を認めないこと,または一度改善した後に悪化した場合と定義された。治療へ の反応性があるとは,少なくとも血液検査所見が改善したことと定義された。結果はCoxの回帰 モデルを用いて比較された。全体的に125人のうち73人(58%)が、最後のフォローアップまで に死亡した。生存者の追跡期間の中央値は,移植から41.9ヶ月(2.7-98.5)であった。HMAでの 治療抵抗群,反応群それぞれについて, 3年再発率は56.6%,34.2% (HR2.1, 95%CI ;1.2-3.66, p <0.01),3年無再発生存率(RFS)は 23.8%,42% (再発or死亡についてのHR1.88, 95%CI ;1.19-2.95 , p<0.01)であった。非再発死亡率(NRM)は同等であった(HR1.12, 95%CI ;0.52-2.39, p=0.77)。 HMA抵抗群は反応群に比べて移植後再発をきたす可能性が高かった。これらを踏まえ,移植前にH MAでの治療に抵抗性を認めた群について前処置や移植後の維持療法の効果を検討するために前向 き試験を行う必要がある。

平成29年7月24日
幕内陽介

 

Conditioning intensity in middle-aged patients with AML in first CR: no advantage for myeloablative regimens irrespective of the risk group-an observational analysis by the Acute Leukemia Working Party of the EBMT

40-60歳の初回寛解AML患者に対する前処置強度:リスクに関係なく骨髄破壊的レジメンの優位性はない-EBMT-AMLグループの後方視的解析

第一寛解期(CR1)の急性骨髄性白血病(AML)に対する同種造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者において、高齢の患者には強度減弱前処置(RIC)が施行される一方で、若年の患者には骨髄破壊的前処置(MAC)が行われる。40歳から60歳の患者において、遺伝学上高リスクのAML患者では、MACがRICよりも優れているかどうかを分析した。患者群は2974人で、1638人がMAC、1336人がRICを行った。染色体異常は予後不良型が508人、中間型が2297人、予後良好型が169人であった。全生存率(OS)は予後良好型ではRICの方が高かったが、中間型・予後不良型では差を認めなかった。再発率は中間型・予後不良型では、MACの方で有意に低かった。非再発死亡(NRM)は全ての染色体型でMACの方が高かった。多変量解析によって、予後良好型に対してRICを選択した場合、有意に白血病非再発生存(LFS)およびOSが延長することが明らかになったが、中間型および予後不良型に対してMACを選択した場合は特に利点を認めなかった。40代から60代の患者においてはRICよりもMACが優れているということはなかった。MACでは再発率は低かったが、NRMは高かった。MACは高リスクの遺伝子異常を有する患者においてRICよりも優れておらず、低リスクの遺伝子異常を有するAMLの患者においてはRICよりも劣っていた。

平成29年7月10日
中井久実代

 

Mobilized Peripheral Blood Stem Cells Versus Unstimulated Bone Marrow As a Graft Source for T-Cell-Replete Haploidentical Donor Transplantation Using Post-Transplant Cyclophosphamide.

PTCTハプロ移植(PBSCTvsBMT)

Purpose : T細胞非除去でのHLAハプロ一致ドナーからのPTCyを用いた同種移植は原法ではBMを用いていた。PBの使用が増加してきており、 PBとBMの比較を行った。
Pt&Methods : 2009‐2014 で米国で移植を受けた血液悪性疾患患者 681人(BM481人、PB190人)が対象。
Graft タイプ毎の移植予後の違いを調べる為にcox回帰モデルを用い、患者、疾患、移植内容で調整した。
Results:血球回復は両者で同等(BMvs PBでday28 での好中球回復は 88%vs93%(p=.07)、 血小板回復は88%vs83%(p=. 33))。2・4度aGVHDおよびcGVHDリスクはPBよりBMで低かった(aGVHD: HR 0.45; p<.001、cGVHD: HR, 0.35; p<.001)。2年OSはBMとPBで有意差無し(HR,0.99; p=.98、2yrOS: BM5 4%、PB57%)。 NRMは有意差なかった (HR: 0.92 , p=.7 4)が、再発はBMで多かった (HR, 1. 49; p=.009)。追加解析でBMでの再発リスクは白血病に限定して有意に高いことが分かった(白血病:HR,1.73; p=.002、非白血病:HR,0.87, p=.64)。
Conclusion : PBおよびBMはPTCyでのハプ口移植でのアプローチに対し共に適しているものの、治療失敗のパターンは異なっている。我々の知る限り今回の研究は最も包括的な比較であるが、これらの知見は適切なフォローアップの元で無作為化での比較により検証されなければならない。

平成29年7月3日
中根孝彦

 

Efficacy of transfusion with granulocytes from G-CSF/dexamethasone-treated donors in neutropenic patients with infection.

感染を伴う好中球減少患者に対するG-CSFとデキサメタゾンを用いたドナーからの顆粒球輸血の効果

高用量の顆粒球輸注療法は20年間行われてきたが、その臨床的有効性は決定的に実証されたことはない。我々は、この問題に取り組むために、多施設ランダム化比較試験であるRING(Resolving Infection in Neutropenia with Granulocytes)を計画し、その結果をここに報告する。対象となる症例は、好中球減少症(好中球絶対数<500/μL)があり、感染症を有する症例であった。対象者は、(1)標準的な抗菌療法または(2)標準的抗菌療法および、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)とデキサメタゾンを用いたドナーからの毎日の顆粒球輸注のいずれかを受けるように無作為化された。Primary end pointは、無作為割り付け後に42日後における生存および治療効果でとした。治療効果は、盲検化された調査員によって判断された。56人が顆粒球輸注群に、58人がコントロール群に割り付けられた。顆粒球輸注群の被験者は、中央値5回の輸注を受けた。平均輸注量は54.9×10^9個であった。全生存率は、顆粒球輸注群およびコントロール群でそれぞれ42%および43%であり(P>.99)、プロトコルに規定された治療を受けた被験者での全生存率は、両群でそれぞれ49%および41%であった(P=.64)。顆粒球輸注群およびコントロール群での治療成功率は、いずれの感染タイプにおいても差はなかった。事後解析では、1回あたり平均0.6×10^6個/kg以上の顆粒球を投与された患者は、より低用量の患者よりも良好な転帰を示す傾向があった。結論として、顆粒球輸注はprimary outcomeには影響を及ぼさなかった。しかし、本研究の症例登録件数が予想の半分であったため、真の有効性の検出力は低かった。

平成29年6月26日
巽 尚子

 

Allogeneic haematopoietic SCT for natural killer/T-cell lymphoma: a multicenter analysis from the Asia Lymphoma Study Group

NK/T細胞リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植:後方視的検討

18人のNK/T細胞リンパ腫(男14,女4 CR1;9,CR2;7,PR;1,PD;1)の同種造血幹細胞移植(骨髄破壊的前処置;14,骨髄非破壊的前処置;4)を解析した。
平均追跡期間は20.5ヶ月で、5年OSは57%、5年EFSは51%であった。同種移植前にSMILEレジメンを施行したことはもっともOSとEFSの改善に寄与した(p<0.01)。
aGVHDは重要な予後不良因子であった(p=0.03)。CR1およびCR2の患者は同様の生存率であったが、非寛解での移植患者は死亡した。cGVHD、IPI、病期、原発巣、前処置や移植ソースは予後に関連しなかった。
NK/T細胞リンパ腫に対する同種移植は生存率を改善するが、同疾患患者におけるL-アスパラギナーゼを含むレジメンの成績と比較する必要がある。同種移植が検討される
High-risk患者を同定するための、血中EBV DNAなどのBiomarkerを組み入れた新たな予後予測モデルが必要である。

平成29年6月19日
田垣内 優美

 

Allogeneic Stem Cell Transplantation for Patients Age ≥ 70 Years with Myelodysplastic Syndrome: A Retrospective Study of the MDS Subcommittee of the Chronic Malignancies Working Party of the EBMT

70歳以上の骨髄異形成就航群に対する同種造血幹細胞移植:EBMT後方視的検討

この後方視的研究において我々は70歳以上で同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けたMDS(n=221)と二次性AML(n=92)の患者でEBMTに登録された313例のアウトカムを評価した。血縁ドナーが79例で非血縁ドナーが234例であった。HSCT実施年齢中央値は72歳であった(range 70-78)。前処置はnonmyeloablative(NMA)が54例、reduced intensity(RIC)が207例、standard intensity(MAC)が52例であった。70歳以上のMDSに対するHSCTの実施は年々増加していた。2000-2004年の5年間では16例しかHSCTを受けていなかったが、2011-2013の3年間では181例が受けていた。1年非再発死亡率(NRM)は32%、3年再発率は28%、3年全生存率(OS)は34%であった。Karnofsky performance status(KPS)がgoodであることによて推定3年OSは43%(p=0.01)、レシピエントのサイトメガロウイルス(CMV)陰性であることによって3年推定OSは46%(p=0.002)であった。前処置強度の違いは生存率に対する影響がなかった。慎重な患者セレクションによって、HSCTは70歳以上のMDS患者にも提供できる可能性がある。

平成29年6月12日
井戸健太郎

 

Allogeneic hematopoietic cell transplantation for patients with mycosis fungoides and Sézary syndrome: a retrospective analysis of the Lymphoma Working Party of the European Group for Blood and Marrow Transplantation

菌状息肉症およびSezary症候群に対する同種造血幹細胞移植:後方視的検討

(目的)
菌状息肉症/セザリー症候群(MF/SS)に対する同種移植のNRM、REL、PFS、OSを解析し、またoutcomeに関する要素を同定する。
(患者と方法)
1997年から2007年の間にEuropean Group for Blood and Marrow Transplantation databaseに登録された初回の同種造血幹細胞移植を受けた36人のMF患者、24人のSS患者が対象とされた。
HLA適合血縁間移植(mRD)が45人、HLA適合非血縁間移植(mUD)が15人であった。37人が男性で、23人が女性であった。
年齢中央値は46.5歳(range : 22-66)
移植時点で44人はTNMstageWで、40人はadvanced phaseであった。
44人はRICレジメンで、25人はT細胞除去(TCD)が行われた。
(結果)
MF/SSの同種移植での1年生存率/3年生存率は66%/54%であった。
RICは再発率を上昇させることなく、NRMを低下させ、(relative risk[RR]=4.7; P=.008)より高いOSを示した。(RR=2.8; P=.03)
Advanced phaseでは再発率が高く、PFS(RR_2.7; P_.006)とOS(RR_3.5; P_.023).が低下した。
mRDはmUDよりもPFS(RR_2.7; P_.006)とOS(RR_4.0; P_.001)に優れた。
再発リスクはTCDで増加した。(RR_3.2; P_.005)
再発した患者の中でDLIを施行することで治療に成功し得た患者も存在した。
(結論)
進行期MF/SSのハイリスク患者に対して同種造血幹細胞移植は選択可能な治療法である。我々のデータもMF/SSに対してGVL効果が臨床的に存在することを示唆している。

平成29年6月5日
原田尚憲

 

Eltrombopag versus placebo for low-risk myelodysplastic syndromes with thrombocytopenia (EQoL-MDS): phase 1 results of a single-blind, randomised, controlled, phase 2 superiority trial

血小板減少を有する低リスクMDSに対するエルトロンポパグ治療

Background: 骨髄異形成症候群(MDS)において、血小板減少は死亡率と関連するが、治療方法に 乏しい。我々はエルトロンポパグ(トロンボポエチン受容体作動薬)が、重症血小板減少症を有 する低リスクMDSにおいて、血小板減少症を改善させるのに有効かどうかを試験した。 Methods: EQoL-MDSは、重度の血小板減少を有した低リスクあるいはIPSS intermediate-1リス クのMDS成人患者を対象とした、単純盲検ランダム化比較第二層優越性試験である。血小板数3万 /μL未満、18歳以上、他の治療法に対し抵抗性を示すあるいは不適格、または他の治療を実施さ れている間に再発をきたした患者が本試験に組み込まれた。患者は2:1の比でエルトロンボパグ (50-300mg)またはプラセボを投与される群に単純盲検下で無作為に割り付けられ、最短24週間ま たは疾患が進行するまで投与された。今回、我々は、24週以内の血小板数の増加と安全性を主要 評価項目とした、第一層試験の全例解析の結果を報告する。ここに報告されている中間解析は、 プロトコールに規定されているものであり、0.001の両側有意水準を採用し、いずれの主要評価 項目についてもこの範囲以下のp値を示した場合には、試験の早期終了を指示することとした。 血小板輸血依存期間、反応期間、全生存率、無白血病生存率、そして薬物動態が、第二層試験終 了時に報告されるだろう。本試験は、EudraCT、number2010-0022890-33に登録されている。 Findings: 2011年6月12日から2016年6月17日の期間に、我々は90例の患者を第一層試験に登録し た。血小板の反応を評価するための平均追跡期間は11週であった(IQR4-24)。 血小板数の増加は、エルトロンボパグ群28/59例(47%)で認められ、プラセボ群中では1/31例(3%) のみ認められた(odds ratio 27.1[95% CI 3.5-211.9],p=0.0017)。追跡期間中、21例の患者が 少なくとも1回の出血イベントを認めた(WHO出血スコア2)。エルトロンボパグ群(8/59例(14%)) よりも、プラセボ群でより多くの出血例を認めた(13/31例(42%))。 52例のGrade3-4有害事象が発生し、エルトロンボパグ群の29/59(46%)例、プラセボ群の5/31(16%) 例であった(x=7.8 <>、p=0.053停止規制に達さず)。急性骨髄性白血病の発症、または疾患の 進行はエルトロンボパグ群の7/59例(12%)で発生し、プラセボ群の5/31例(16%)で発生した(x=0 .06、p=0.81)。 Interpretation: エルトロンボパグは重度の血小板減少を有する低リスクMDSに対し、忍容性良 好であり、血小板数を増加させ出血イベントを減じるのに臨床的に有効である。エルトロンボバ グの長期使用の安全性や有効性、及び生存率への影響を評価するための第二層試験は現在進行中 である。

平成29年5月29日
林 哲哉

 

Validating the positive impact of in-hospital lay care-partner support on patient survival in allogeneic BMT:a prospective study

ケアーパートナーの存在は同種骨髄移植患者の生存に寄与する

この前向き研究は、同種造血幹細胞移植においてケアパートナー(CP)のいる患者はより良い生存に関連するというレトロスペクティブ研究の所見を検証するものである。CPなし患者(n=76)と比較して、CPあり患者(n=88)は有意によいOS(p=0.017)とRFS(p=0.02)を示した。CPあり患者における4年RFSは39%、RFS中央期間は25ヶ月であり、CPなし患者における4年RFSは23%、RFS中央期間は7ヶ月であった。さらに、より良い生存率とRFSは、CPの来院時間(1日あたり3時間以上かどうか)と関連し(p=0.005、0.007)、CPの来院頻度(入院期間の75%以上かどうか)とも関連した(p=0.004、0.01)。CPサポートプログラムは、CPの存在を推奨するだけでなく、患者の生存によい影響をもたらしうるCPの来院時間や頻度に関しても働きかけるべきである。

平成29年5月22日
岡村浩史

 

Genetic abnormalities in myelodysplasia and secondary acute myeloid leukemia: impact on outcome of stem cell transplantation

骨髄異形成症候群および二次性急性骨髄性白血病における遺伝子異常が造血幹細胞移植成績に与える影響

変異やCopy-number alterations(コピー数多型)を含む遺伝子変化がMDSや関連疾患の発病において中心的であるが、同種移植におけるそれらの役割は大きなコホートでは十分に検討されていない。我々は日本骨髄バンクプログラムのデータを用いてMDSと診断され、同種移植を受けた767人について調べた。コピー数多型を含む69遺伝子の変異を同定し、移植への影響について調査した。我々は617人の患者において(77.4%)、1776の変異と927の異常copy segmentを見出した。Cox比例ハザード回帰モデルで、遺伝子要因は全生存率(OS)に対して全ハザードの30%を説明し、臨床因子が70%であった。Complex Karyotype(従来の染色体異常およびsequencing-based analysisどちらも)を伴ったTP53とRAS-pathway変異は臨床因子と独立して移植後OSにnegativeな影響を及ぼす因子であった。Disease subtypeにかかわらず、Complex Karyotypeを伴ったTP53変異患者は特有の遺伝的特徴を特徴づけられ、しばしば早期再発が見られ、極めて予後不良であった。一方で、Complex Karyotypeを伴わないTP53変異患者はよりよい予後が得られた。それとは逆にRAS-pathwayの変異の影響はDisease subtypeに依存しており、MDS/MPNに限られていた。我々の結果ではComplex KaryotypeとMDS/MPNの場合、TP53変異、RAS-pathway変異はそれぞれに予後不良である。しかしながら、TP53変異またはComplex karyotype単独であれば移植の恩恵を受けることができるかもしれない。Clinical sequencingが移植における正確な予後予測に関する重要な情報を提供する。

平成29年5月15日
西本光孝

 

Eltrombopag Added to Standard Immunosuppression for Aplastic Anemia

再生不良性貧血に対する免疫抑制療法+エルトロンボパグ

background:後天性再生不良性貧血(AA)は、骨髄の免疫学的な破壊によって起こる。免疫抑制治療は効果を認めるが、幹細胞が少数しか残存しないため、その有効性を減弱させる。トロンボポエチン受容体作動薬であるエルトロンボパグは、免疫抑制療法に抵抗性のAA患者の約半数において、臨床的な血球増加を見込める。筆者らは未治療の重症AA患者に対し、標準的免疫抑制療法にエルトロンボパグを併用した治療を計画した。
Methods:前向きphase1-2 studyに92人の連続した患者が登録された。エルトロンボパグの開始時期・投与期間によって3コホートに分けられ、コホート1はday14〜6ヶ月、コホート2はday14〜3ヶ月、コホート3はday1〜6ヶ月にエルトロンボパグが投与された。主要評価項目は6ヶ月時点での血液学的完全寛解(CR)で、その他全血球反応率・生存・再燃・血液腫瘍への進展を評価した。
Results:6ヶ月時点でのCRは、コホート1から3の順にそれぞれ、33%・26%・58%であり、全反応率は80%・87%・94%だった。自験例の過去の治療効果は、CR10%・全反応率66%であり、今回の併用療法が有意に高い効果を示した。中央フォローアップ2年において生存率は97%であり、1人の患者が血液疾患以外の原因で死亡した。骨髄中の全細胞数、CD34+細胞、前駆細胞いずれも明かな増加を認めた。再燃・血液腫瘍の発生率は過去の報告と大差無く、重度の発赤が2例の患者で認めたため、早期にエルトロンボパグが中止された。

Conclusions:免疫抑制療法にエルトロンボパグを併用することにより、重症AA患者で有意に血球の増加が得られた。
平成29年5月8日
中嶋康博

 

Early and Long-Term Impaired T Lymphocyte Immune Reconstitution after Cord Blood Transplantation with Antithymocyte Globulin

ATGを用いた臍帯血移植後のT細胞免疫再構築

免疫再構築は同種造血細胞移植の成功にとって重要だが、臍帯血移植(CBT)は免疫再構築遅延と関連する。この研究では225名(男性, n = 126; 年令:中央値15歳; 範囲0.3 〜60歳; 四分位範囲IQR 4〜35歳)の成人・小児で2005-2015年に連続して骨髄破壊的前処置のシングルCBTを受けた腫瘍性・非腫瘍性疾患患者において、免疫再構築の動態を明らかにするとともに、主なリンパ球のサブセットの回復に影響するリスク陰性の探索を行った。
CBT12カ月後までCD4+とCD8+細胞の低値が観察された。一方、B細胞とNK細胞は移植後速やかに回復した。多変量回帰モデルでの解析で、CD4+T細胞の回復が200cells/ul以上に達するのに有利な因子は、ATG低用量 (HR3.93, 95%CI 2.3-5.83; p=0.001)、レシピエントCMV陰性 (HR3.76, 95%CI 1.9-5.74; p=0.001)、若年(HR2.61, 95%CI 1.01-3.47; p=0.03)であった。CD8+T細胞の回復が200cells/ul以上となるのに有利な因子は、ATG低用量 (HR3.03, 95%CI 1.4-5.1; p=0.03)、レシピエントCMV陰性 (HR1.9, 95%CI 1.63-2.15; p=0.01)であった。この結果では、前処置ATGのリンパ球回復に対する明確な悪影響を示す。ATGを減量するか投与しないことで、免疫再構築を改善し、CBT後の日和見感染を減らせる可能性がある。

平成29年5月1日
中前美佳

 

The genetic fingerprint of susceptibility for transplant-associated thrombotic microangiopathy.

造血細胞移植関連TMAを起こしやすい遺伝子変異

移植関連TMA(TA-TMA)は同種造血細胞移植後にしばしば生じ、主な合併症で死因となる。TA-TMAへの個々の患者の発症のしやすさを調べたデータはない。我々は、補体の活性化において重要な役割が知られている、17の遺伝子の仮説に基づく解析の前向き研究の一部として行った。我々は遺伝子発現解析を用いて、遺伝子変異の機能解析を行った。遺伝子解析を行った77例のうち34例がTMAを発症した。TMAの非発症例の9%と比べて、TMAの症例の65%で少なくとも1つの遺伝子変異を有していた(P < .0001)。すべての人種において、TMA患者で遺伝子変異が増加していたが、有色人種でより変異が多かった(2.5 [range, 0-7] vs 0 [range, 0-2]; P < .0001)。3種類以上の変異はTMA発症例の有色人種でしか見つからず、高い死亡率(71%)と関係していた。移植前検体のRNA sequencing 解析では、コンピュータアルゴリズムで非病原性と判断できる遺伝子を含め、遺伝子変異を有するTMA患者において、遺伝子変異を有しない非TMA患者と比較して、複数の補体系の活性の上昇が認められた。我々のデータは、患者の遺伝子型をベースとして、造血細胞移植関連TMAに発症のしやすさの重要な違いを示した。これらのデータは前向きにリスク評価して、ハイリスク患者での予防的介入を可能にする。我々の発見は、少なくとも部分的に、過去に移植患者で言われていた、人種差を説明できるかもしれないし、予後改善のための治療戦略につながるかもしれない。

平成29年4月24日
中前博久

 

Myeloablative Versus Reduced-Intensity Hematopoietic Cell Transplantation for Acute Myeloid Leukemia and Myelodysplastic Syndromes.

AMLとMDSに対するMAC vs RICによる造血細胞移植

・目的:同種造血細胞移植(HCT)前処置の最適なレジメン強度は不明である。我々は、RICによるTRMの低下は、MACと比較してOSを改善すると仮定した。この仮説を検証するために、AMLまたはMDS患者におけるMACとRICとを比較する第III相無作為試験を行った。
・患者と方法:年齢18-65歳、HCT-CIが4以下で移植前の骨髄芽球が5%未満の患者が無作為にMAC(n=135)またはRIC(n=137)群に割り付けられ、HLA適合血縁または非血縁ドナーからHCTを施行された。プライマリーエンドポイントは、intent-to-treat解析に基づき、無作為割り付け後の18ヶ月のOSで、セカンダリーエンドポイントには、RFSおよびTRMとした。
・結果:予定登録数は356人だったが、MACに対するRICの再発率が高かったため登録は272人で終了した。(RIC: 48.3%; 95%CI, 39.6-56.4%, MAC:13.5%; 8.3-19.8%; P <.001)18ヶ月時点でRIC群のOSは67.7%(59.1-74.9%)、MAC群では77.5%(69.4-83.7%)(差:9.8%; -0.8〜20.3%; P =0.07)。TRMはRICで4.4%(1.8-8.9%)、MACで15.8%(10.2-22.5%)(P = .002)。RFSはRICで47.3%(38.7-55.4%)、MACで67.8%(59.1-75%)であった(P <.01)。
・結論:OSはMACの方が良かったが、これは統計学的に有意ではなかった。RICはMACと比較してTRMは低いが再発率が高く、RFSは統計学的に有意にMACで良かった。これらのデータは、AMLまたはMDSの適切な患者で、標準治療としてMACを使用することを支持する。

平成29年4月17日
廣瀬朝生

 

Efficacy and tolerability of nivolumab after allogeneic transplantation for relapsed Hodgkin's lymphoma

再発ホジキンリンパ腫に対する同種造血幹細胞移植後のニボルマブの有効性と耐容性

同種移植は再発難治のホジキンリンパ腫において適応がある。長期間病気がコントロールできる一方、再発もしばしば認められる。PD-1阻害薬であるニボルマブは同種移植を行っていない再発難治のホジキンリンパ腫患者において十分な治療効果と許容できる安全性をもつ薬剤であることをしめした。しかしながら、マウスモデルにおいてPD-1阻害薬はGVHDの発症リスクを上昇させる。我々は後方視的に同種移植後に再発した20人のホジキンリンパ腫の患者においてニボルマブの効果と安全性について評価をおこなった。GVHDはニボルマブ投与開始後6人(30%)におこった。すべての患者で急性GVHDの既往があった。これらのニボルマブ誘発のGVHDは標準的なGVHD治療を行った。2人の患者がGVHDで死亡し、1人がPDで。1人は2回目の移植に関連した合併症で死亡した。
ORRは95%であった。フォローアップ中央値370日時点で、1年時点でのPFSは58.2%(95%CI, 33.1-76.7)、OSは78.7%(95%CI, 52.4-91.5)であった。13人の患者において現在も反応がえられており、そのうち6人の患者がニボルマブの投与を1回だけ投与され、7人は現在もニボルマブの治療をうけている。この患者群においての標準的な治療選択肢と比較して、我々の結果においてニボルマブは効果的で許容できる安全プロファイルをもつことを示した。

平成29年4月10日
南野 智

 

Derivation and external validation of the PLASMIC score for rapid assessment of adults with thrombotic microangiopathies: a cohort study

成人の血栓性微小血管障害症患者を迅速に評価するための、PLASMICスコアの導出と外的検証: コホート研究

TMAの一病型であるTTPは、重篤なADAMTS13酵素の欠損が特徴である。治療は緊急の血漿交換であ るが、ADAMTS13活性を評価する試験は一般的に時間がかかるため、重篤なADAMTS13欠損の可能性 を迅速に判定する方法が必要である。2004年1月8日から2015年12月6日までの間にボストンにあ る3つの大学病院を受診した、TMAの診断を受け、TTPの可能性がある全ての成人患者が多施設レ ジストリに登録された。重篤なADAMTS13欠損(=活性が10%以下)を予測できる共変量を同定し、 スコアリングシステムを作った。診断性能を内的および外的検証コホートを用いて評価して臨床 診断と比較した。214人のTMA患者が誘導コホートに含まれた。重篤なADAMTS13欠損を予測するた めの7項目からなるスコアリング(:PLASMICスコア)が開発され、十分信頼できる検査前確率を 提示できると判断した(C統計値0.96;95%CI:0.92-0.98)。これは、内的(0.95;95%CI:0. 91-0.98)と外的(0.91;95%CI:0.85-0.95)の検証コホートの両方において再現可能な正確性 を示した。標準的な臨床診断よりも重篤なADAMTS13欠損によるTMAを診断できた。PLASMICスコア は臨床診断に加えると有意に識別能を向上させた(統合判別改善度:0.24;95%CI:0.11-0.37) 。 PLASMICスコアはTMAを診断する上で標準的な臨床診断より優れていることが示され、臨床診断と 併用することで、ADAMTS13活性の結果がすぐに得られない患者の治療決定が容易になる可能性が 示された。

平成29年4月3日
幕内陽介

 

Cytogenetic evolution in myeloid neoplasms at relapse after allogeneic hematopoietic cell transplantation: association with previous chemotherapy and effect on survival

骨髄系腫瘍における同種造血幹細胞移植後再発時の細胞遺伝学的進化:前治療との関連および生存への影響

同種造血幹細胞移植後再発した骨髄系腫瘍患者における細胞遺伝学的進化(cytogenetic evolution:CGE)に関してはほんのわずかしか検討されてきていない。再発した移植患者の生存に対し、CGEが影響するかについても未だ明らかではない。また、この患者集団において、移植前に受けた化学療法がCGEの誘導に影響するかという点も検討されてきていない。この研究の目的は(1)allo-HCT後再発した骨髄系腫瘍患者における細胞遺伝学的変化のパターンを特徴付けること、(2)CGEの生存に対する影響を評価する事、(3)移植前の化学療法(サルベージのライン数、寛解導入療法のタイプ、移植前処置)をCGEの関連性を検討する事である。Allo-HCT後に再発した49人の骨髄系腫瘍患者(AML:27、MDS/MPN:19、CML:3)のうち、CGEは25人(51%)で認め、一方で24人の患者では再発時細胞遺伝学的変化は認めなかった。CGE群では元の診断時により多くの細胞遺伝学的異常を有していた。最も多かった細胞遺伝学的変化は、3つ以上の新たな染色体異常の獲得であり、続いて不均衡型異常の獲得、異数体、元のクローンとは無関係な新たなクローンの出現、であった。CGE群はMDSおよびMPNの割合が高く、de novo AMLは少なかった。疾患リスクのカテゴリー評価では、統計学的有意差はないもののCGE群において高リスクの頻度が高まった。診断から移植までの期間や移植から再発までの期間はCGE群と非CGE群で差異は認めず。また、CGE群と非CGEで、サルベージ治療、寛解導入療法、前処置ともに差がなく、CGE発症の誘因となるような特定のタイプの化学療法は見いだせなかった。CGEは非CGEと比べて、移植後生存及び再発後生存期間を有意に短縮した(p=0.004, P=<0.001)。我々の結果はallo-HCT後の骨髄系腫瘍の進行におけるCGEの重要性を示している。

平成29年3月27日
中根孝彦

 

Comparable post-relapse outcomes between haploidentical and matched related donor allogeneic stem cell transplantation

HLAハプロ一致移植と血縁完全一致移植における再発後の成績は同等

造血器悪性腫瘍に対する初回同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後に再発をきたした85例の患者において、再発後生存(PRS:post relapse survival)に対するドナーの種類の影響を解析した。生存者の平均フォローアップ期間は64ヶ月であった。3年全生存率(OS)、3年再発後生存率(PRS)とも、ハプロドナーと血縁HLA一致ドナーからの移植で類似した結果であった(13.0%±4.7% vs 19.4%±7.1%、P=0.913、7.7%±3.9% vs 9.7%±5.3%、P=0.667)。再発後のgrade II-IV及びIII-IV急性GVHD発症率はハプロ移植例でより高かった。再発後の全身型慢性GVHDの発症率もハプロ移植例でより高かった。多変量解析において、DLIを含んだ治療の実際、移植後1年以上経過してからの再発、移植時第一寛解期であることが、より優れた再発後生存率に関連していることが証明された(p=0.012,HR=0.527(0.320-0.866)、p=0.033、HR=0.534(0.300-0.952)、p=0.046、HR=0.630(0.400-0.992) 。本研究の結果は、再発後の予後・転帰について、ハプロドナーからの移植はHLA一致血縁ドナーからの移植と同様なものであること、ハプロ移植後再発をきたした患者に対するドナーリンパ球輸注は安全に実施しうるもであることを示している。

平成29年3月13日
林 哲哉i

 

Impact of post-brentuximab vedotin consolidation on relapsed/refractory CD30+ Hodgkin lymphomas: a large retrospective study on 240 patients enrolled in the French Named-Patient Program.

再発/難治性CD30陽性ホジキンリンパ腫におけるBrentuximab-vedotin治療後の地固め治療の重要性

Brentuximab-vedotin(BV)は難治/再発ホジキンリンパ腫に対し有効性と安全性が報告されている。我々は2011から2013に登録された2040人の難治/再発ホジキンリンパ腫に対してBVを使用したフランスでの治療経験を後方視的に解析し報告する。74%は難治あるいは早期再発。中央値で3レジメンの化学療法を行った後、BVは1.8mg/kg、3週毎に経静脈的に投与された。プライマリーエンドポイントは最良効果とした。患者は中央値で6サイクルの治療を受け、その後68人は地固め療法が行われた。145人(60.4%)において最良効果を認め、中央値で4サイクル後だった。33.8%はCRあるいはCRu、26.7%はPRだった。60歳以上の28人においては、ORRは39.3%と低かった。奏効期間の中央値は8.4ヶ月、観察期間中央値16.1ヶ月において、無増悪生存期間中央値は6.8ヶ月で、無増悪生存期間中央値はBV後に移植を行った患者で顕著に延長した(無増悪生存期間中央値は18.8ヶ月)。BVの毒性による死亡はなかった。最も一般的な有害事象は末梢性の感覚神経障害(29.3%)と血液毒性で、この結果は、有害事象はマネージメント可能でBVの有効性を示唆する過去の報告を支持する。殆どの患者で効果が短く、responderにはSCTを併用した大量化学療法を可能な限り早く行うべきである。

平成29年3月6日
橋本由徳i

 

Chemoimmunotherapy with methotrexate, cytarabine, thiotepa, and rituximab (MATRix regimen) in patients with primary CNS lymphoma: results of the first randomisation of the International Extranodal Lymphoma Study Group-32 (IELSG32) phase 2 trial.

原発性中枢神経リンパ腫な対するメトトレキセート、シタラビン、チオテパ、リツキシマブ(MATRix)を用いた免疫化学療法

背景:中枢神経原発悪性リンパ腫の標準治療は定まっていない。積極的治療はしばしば血液学的、または神経学的毒性のリスクを増加させる。この試験で、我々はMTX-AraC療法にThiotepaとRituximabを加えた場合の忍容性と有効性を調査し、地固め療法として全脳放射線治療または自家移植のランダム化比較試験を行った。
方法:HIV陰性で新規に中枢神経原発悪性リンパ腫と診断され測定可能病変がある患者が登録され(年齢18-70歳、デンマーク、ドイツ、イタリア、スイス、イギリスの53施設)、3群(group A:MTX 3.5mg/m2+AraC 2g/m2x4回、group B:group ARituximab 375mg/m2x2回。gruop C:groupB+thiotepa 30mg/m2x1回、全ての群において1コース3週間で計4コース)に1:1:1にランダムに割り当てられた。治療に反応がある、またはSDの患者はその後、全脳放射線治療群と自家移植群にランダム化された。主要評価項目は化学療法のCR率であり、修正ITT解析を行った。
結果:2010年2月19日から2014年8月27日までで、227例の患者が登録された。227例中219例が評価可能であった。f/u中央値は30ヶ月で、group CのCR率は49%(95%CI:38-60)であり、group AのCR率は23%(95%CI:14-31、HR:0.46、95%CI:0.28-0.74)、group BのCR率は30%(95%CI:20-42、HR 0.61、95%CI*0.40-0.94)であった。Grade 4の血液毒性はgroup Cでより多く見られたが、感染症イベントは3群で同様であった。最も多かったgrade 3-4のイベントは好中球、血小板減少、貧血、発熱性好中球減少症、感染であり、13例(6%)が毒性により死亡した。
結論:ランダム化比較phase 2試験としての制限はあるものの、この結果は高いエビデンスレベルで、MATRixレジメンが70歳以下の新規中枢神経原発悪性リンパ腫患者への新しい標準治療であることを支持している。

平成29年2月27日
岡村浩史i

 

Pre-transplantation minimal residual disease with cytogenetic and molecular diagnostic features improves risk stratification in acute myeloid leukemia

急性骨髄性白血病における細胞遺伝学的及び分子診断学的特徴と同種移植前の微少残存病変を用いて予後予測を改善

我々の目的はAML患者において診断時のcytogenetic/molecularデータおよび移植時のマルチカラーフローを用いたMRDを用いて移植後の予後予測を改善させることである。AMLの1stCRの患者で移植時にMRDの評価がなされた患者が本研究に含まれ、European Leukemia NETの予後予測分類によってカテゴライズされた。Primary outcomeは1年再発率である。152人の患者のうち48人が移植時MRD陽性であった。MRD陽性患者は高齢であり、CRに至るケモ数が多く、血球が十分に回復していないCRが多く、細胞遺伝学的に高リスクのものが多かった。1年での再発率はMRD陽性患者群で有意に高く、LFS、OSはいずれもMRD陽性患者群で低かった。多変量解析においても移植時MRDは1年再発率に影響する独立した因子であり、特にELN分類の中間群において予後不良因子であった。AMLにおいてcytogenetic/molecularデータに加えた移植時のMRD評価は強力な独立した予後予測因子であり、移植時におけるより詳細なリスク分類および個々の治療アプローチの助けになるだろう。

平成29年2月20日
西本光孝i

 

Safety and efficacy of allogeneic hematopoietic stem cell transplant after PD-1 blockade in relapsed/refreactory lymphoma

再発/難治性リンパ腫に対するPD-1治療後の同種造血幹細胞移植の安全性と有効性

進行期リンパ腫患者において抗PD-1抗体が広く用いられるようになってきたが、これらの患者は同種造血幹細胞移植の適応となる可能性が高い。しかし、抗PD-抗体の投与歴のある患者に対する移植の安全性および有効性は良く分かっていない。我々は中央値で移植前62日(7-260日)に抗PD-1抗体の治療を受けた39人の患者を後方視的に分析した。12ヶ月の中央値追跡調査の後、グレード2-4およびグレード3-4急性移植片対宿主病(GVHD)の年間累積発生率はそれぞれ44%および23%であったが、慢性GVHDの年間発生率は41%であった。治療関連死亡は4人(肝中心静脈閉塞症1人、急性GVHD早期3人)で、7人の患者が移植直後に長期間のステロイド投与を必要とする非感染性発熱を認めた。1年OSおよびPFSは、89%および76%であった。1年間の再発率および非再発死亡率は、それぞれ14%および11%であった。循環リンパ球サブセットを17人の患者で分析した。対照と比較して、過去にPD-1抗体の治療を受けた患者では、PD-1+T細胞が有意に少なく、Tregの割合が少なかった。結論として、抗PD-1抗体の移植は再発率が低いが、早期の免疫毒性が増加する危険性があり、PD-1阻害薬による持続的な免疫変化を反映している可能性がある。

平成29年2月13日
高桑輝人

 

A17-gene stemness score for rapid determination of risk in acute leukemia

急性白血病のリスクを迅速に決定する17の遺伝子による幹細胞スコア

AML治療における最たる障害は、寛解導入に対する抵抗性および寛解後の再発である。標準的な寛解導入療法の後、細胞遺伝学的および分子生物学的な異常に基づいて、予後のリスクを、不良、中間、良好と大まかに分類され、患者は各々異なる寛解後療法に割り当てられる。しかいs、寛解導入療法に抵抗性の患者もいれば、予後不良因子がないにもかかわらず最終的には再発してしまう患者も存在する。このような高リスク患者を寛解導入療法前に明らかにして、臨床試験で別の寛解導入療法を検討するできるように、より良いバイオマーカーを見いだす事は急務である。AMLの再発率が高いのは、白血病幹細胞(LSC)が残存しているためであり、LSCは治療抵抗性と関連する静止状態など、幹細胞の多くの特性を持つ。今回著者らは、幹細胞特性に関連する予後予測バイオマーカーを開発するため、異種移植の系により78人のAML患者に由来する138のLSC+細胞分画の間で発現に差がある遺伝子のリストを作成した。臨床転帰に影響する主たる転写因子群を抽出するため、大規模なトレーニングコホートにおいて生存に対するLSC遺伝子発現のsparse回帰分析を行い、17遺伝子よりなるLSCスコア(LSC17スコア)を作成した、このLSC17スコアは、さまざまなAMLサブタイプの患者(n=908)から構成される独立した5つのコホートにおいて予後予測に優れており、初回治療抵抗性を正確に予測する上で、非常に役に立った。LSC17スコアが高い患者は、同種造血幹細胞移植を含めた現在の治療では予後不良であった。LSC17スコアは、標準的な治療では恩恵を受けられない患者や、新しい最先端の戦略あるいは寛解後療法を評価する臨床試験に登録すべきAML患者を明らかにするために、臨床医にとって迅速かつ強力なツールになる。

平成29年2月6日
中嶋康博

 

Significance of recurrence of minimal residual disease detected bymultiparameter flow cytometry in patients with acute lymphoblastic leukemia in morphological remission

形態学的CRのALL患者における、マルチパラメーターフローサイトメトリーにより検出されたMRD再発の意義

寛解導入と地固め治療後にMRD陰性化したALL患者がMRD再発することの意義を判断する為の検討。2003年1月〜2014年9月の647例の新規患者が(Hyper CVAD-based(n=531); Augmented BFM (n=116))で治療を受け、601 名(93%) がCRに達し、546名(91%) がMRD陰性化した。その後にMRD再発(形態的にはCR維持)した患者55名[HyperCVAD-based (n=49); Augmented BFM (n=6)]がこの研究の対象。6カラー(2009年より前は4カラー)のマルチパラメーターフローサイトメトリー(MFC)にてCR到達時と到達後複数回、MRD評価された。年齢中央値44歳(範囲18-72歳)、初発時の白血球数中央値は7300/ul (範囲600-303800 /uL)、骨髄中芽球中央値が88%(26-98%)。MRD再発までの期間中央値が14カ月 (範囲3-58カ月)。
55名中44名(80%)がMRD再発後、続いて形態学的に再発(MRD出現後3ヶ月(中央値、範囲<1〜33カ月))。MRD再発患者(55名)は形態学的再発前に、16名が維持化学療法、15名が強度の強い化学療法、9名が同種移植を受け、9名が化学療法を変更し、6名がそれ以降の治療はうけなかった。MRD再発後は6名のみがCR1で生存し、形態学的再発後生存は9名。CR到達後のMRD再発は形態学的再発のハイリスクである。移植はいくらかの患者には長期の寛解をもたらしえる。MRDを消失させる毒性の低い治療戦略と合わせての前向きの長期MRD評価の検討が必要である。

平成29年1月30日
中前美佳

 

Safety and efficacy of the combination of pegylated interferon-α2b and dasatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia patients

新規発症慢性骨髄性白血病に対するペグインターフェロンとダサチニブの併用療法の安全性と有効性

ダサチニブとインターフェロンαはいずれも抗白血病効果と免疫効果を有し、CMLを深い分子寛解に誘導する。我々は40例の無治療の慢性期CMLにおいてダサチニブ100mgとそれに続いて、ベグインターフェロン(Peg-IFN)の投与を3ヶ月後に開始した。Peg-IFNはスタート用量を15μg/週として、6ヶ月時点で25μg/週に増量して15ヶ月まで継続した。併用の忍容性は良好で、副作用は十分対応可能であった。患者の84%は12ヶ月時点でPeg-IFNの投与を継続しており、91%はダサチニブを、73%はPeg-IFNを予定通りに投与できた。最初の1年間で1例のみ、2年間でさらに3人に胸水が見られた。Peg-IFNの導入後に反応率の急速な増加を認めた。MMRはそれぞれ、3ヶ月で10%、6ヶ月で57%、12ヶ月で89%に達した。12ヶ月時点でMR4.0は46%、MR4.5は27%に認められた。病期進行は1例も認めなかった。結果として、併用療法は安全で非常に期待できる効果であった。ダサチニブ±Peg-IFNの無作為化試験が待たれれる。

平成29年1月23日
中前博久

 

Immunomodulatory Effect of Vitamin D after Allogeneic Stem Cell Transplantation: Results of a Prospective Multicenter Clinical Trial

同種幹細胞移植後のビタミンDの免疫調節効果:多施設共同前向き試験の結果

目的:同種移植を受けた患者のアウトカムにday-5からday+100のビタミンD(VitD)投与が与える影響を評価した前向き多施設第I/II相試験の結果を示す(EudraCT:2010-023279-25; ClinicalTrials .gov:NCT02600988)。
試験計画:合計150人の患者を、各群50人の3つの連続コホートに含めた:対照群(CG、VitDを投与しない);低用量群(LdD、VitD 1,000IU/日投与);高用量群(HdD、VitD 5,000IU/日投与)。移植後のVitD、サイトカインおよび免疫細胞サブ集団のレベルを測定した。
結果:全体およびgrade2?4のaGVHD累積発生率、再発、非再発死亡率、全生存率に関して有意差は認められなかった。しかし、全体および中等度+重度cGVHDの1年累積発生率がCG(67.5%、44.7%)と比較して、LdD(37.5%、19.5%)およびHdD(42.4%、27%)で有意に低かった(P <0.05)。多変量解析では、VitD治療は、cGVHD全体(LdD:HR = 0.31、P = 0.002; HdD:HR = 0.36、P = 0.006)および中等度+重度cGVHD(LdD:HR = 0.22、 P = 0.001; HdD:HR = 0.33、P = 0.01)のリスクを有意に低下させた。VitDは免疫応答を改変し、CD40L発現の低下とともに、B細胞およびナイーブCD8 T細胞の数を減少させた。
結論:これは、移植後のVitDの効果を解析した最初の前向き試験である。VitD投与患者のcGVHD発生率が有意に低いことが観察された。興味深いことに、VitDは同種SCT後の免疫応答を改変した。

平成29年1月16日
廣瀬朝生

 

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