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研究の紹介

Ca2+, H+, K+, Na+, Cl-.......いずれも細胞や組織そして個体が生命現象を営むのに不可欠のイオンです。また無機イオンだけでなく、アミノ酸やさまざまな代謝産物、生理活性物質もイオンとして存在しています。これらのイオンは分化・増殖・分泌・運動・など多様な細胞機能を調節するシグナルとして重要な役割を担っています。私達はイオンシグナルがどのように分子、細胞や組織の機能に関わり、またその破綻がどのような病態を招くかを解明していこうと考えています。現在、取り組んでいるテーマは、1)プロトンシグナリング、2)骨代謝とイオンシグナル。3)ミクログリアの機能とイオンチャネルです。これらの研究は相互に深く関連しています。

現在の主な実験手法: パッチクランプ、画像解析・共焦点顕微鏡を用いたイオン蛍光シグナル測定、遺伝子発現細胞の機能解析。



現在の研究テーマ

1. プロトンシグナリング
 「プロトン(H+)シグナリング」は未開拓の領域です。H+は、チャネル、トランスポータ、酵素などに作用してその働きを変えます。そこで、H+濃度の増減は細胞や組織の機能を調節し、感染初期の自然免疫過程、痛みの発生、炎症性骨吸収など多様な組織病態とも深く関ります。生体にはH+を調節する多様な機構が備わっています。その中でも、膜電位依存性H+チャネルと起電性H+ポンプがプロトンシグナリングの概念を実体化していく上での良い手がかりとなります。H+チャネルは、脱分極によって開口し、一旦開くと大量のH+を短時間に細胞外に排出する能力があり、一種のH+シグナルを作り出す可能性を秘めています。H+チャネルの分子実体は長らく不明でしたが、最近有力な候補分子が発見されました。どのようにH+が膜を通ってくるのかなど、わかならいことは沢山ありますが、今まさに新しい局面を迎えているところです(サイエンストピックス参照)。一方、H+ポンプはエネルギーを用いて膜を介するH+勾配を作り出し、物質輸送の原動力となったり、細胞内小胞の酸性化や細胞内での移動などをコントロールしています。私達は、こうしたH+チャネルやH+ポンプを手がかりに、H+シグナリングの概念を具体的に理解していくことを目指しています。

2.骨代謝とイオンシグナル
 骨はCa2+の貯蔵庫として生体内のCa2+代謝を担う他、成長・運動・免疫など多くの機能に関わっています。骨では、骨形成と骨吸収によるリモデリングが常時行われており、その破綻は骨粗しょう症などさまざまな障害を引き起こします。この骨リモデリングにはイオンの働きが極めて重要です。例えば、破骨細胞は大量のH+や酵素を分泌し骨を溶解しますが、その結果、高濃度のCa2+、pH環境の激変、骨基質から溶け出すミネラルなどによる特殊な微小イオン環境に曝されることになります。私達は、高濃度のCa2+に暴露されるとCl-チャネルが活性化されるという発見に基づいて、破骨細胞のCa2+センシング機構を調べてきましたが、Ca2+、H+、Cl-などのイオンシグナルは非常に密接に関連してコントロールされていることがわかってきました。私達はこれまでの研究を更に進めて、イオンチャネル・トランスポータによってコントロールされるイオンシグナルが破骨細胞のユニークな機能と形態をどのように制御しているかを明らかにしていきたいと考えています。

3.ミクログリアの機能とイオンチャネル
 ミクログリアは中枢神経系における免疫細胞です。感染、脳虚血、変性疾患などが起こると,ミクログリアは活性化され、サイトカインを分泌したり、活性酸素を産生し、組織を防御するように働きます。また一方でミクログリアの過剰な動員は組織障害をもたらす可能性もはらんでいます。これらの神経病変は、しばしばpH、浸透圧、イオン環境の変化を伴い、ミクログリアにはこうした微小環境の変動に敏感に応答する機構が備わっていると考えられています。私達は、ミクログリアの多様な機能がどのようにイオンシグナル・イオンチャネルによって制御されているかを明らかにしていきたいと考えています。これまでにアシドーシス環境下でミクログリアが膨化し、H+チャネルを強く活性化することが明らかになりました。現在、ミクログリアの細胞応答の引き金となるH+センシング機構の存在を検討しています。




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