初代の阪本教授の時代は精神病理学的研究、中教授の時代からは神経化学を基礎にした生物学的精神医学の研究が行われ、川北教授、山上教授の時代に引き継がれた。その後大阪市内唯一の大学病院である特色から、切池教授の時代より摂食障害の、また井上教授になり産業精神医学(職場のうつ病等)都市型精神疾患の研究が行われている。
 統合失調症やうつ病などの内因性精神病の因子分析による成因の研究、摂食障害における神経内分泌学的研究、我が国で開発された自然発症てんかんモデルのE1マウス脳における遺伝子発現機構の研究や神経ペプチドの研究、抗精神病薬や抗うつ薬効評価尺度の研究、過食の脳内機序を明らかにするために過食の動物モデルをラットで作製し、リバウンドによる過食に種々のストレスをかけた時の脳内におけるセロトニンやドパミンなどの神経伝達物質の動態をマイクロダイアリシス法によって検討するなど多彩な研究がなされてきた。
 さらに産業精神医学的立場より勤労者のストレスとうつ病などのメンタルヘルスに関する研究、摂食障害などの病態や治療に関する研究、精神疾患の神経画像的研究、認知症の問題行動や精神症状に関する臨床的研究、統合失調症の神経精神薬理学的研究、児童精神医学など多方面に行っている。

産業精神医学グループ

職場においてうつ病などのメンタルヘルス不調が増えています。我々は精神科専門医ですが、認定産業医資格も取得し実際に現場で産業医活動も行っています。これらの経験を生かし、働いている患者様個人への外来治療とともに、スムーズに職場に再適応できるような職場介入を適宜行っています。方法としては、職場ストレスに関する質問紙と他の心理テストを組み合わせて実施することにより、より短時間で効率的に職場ストレスの評価や個人の認知的側面等の評価を試みています。それらの結果を元に、患者様とは症状と関連する性格やものの考え方などを話し合い、職場とは職業性ストレスを軽減して患者様が長く元気で働ける職場環境作りや対応方法を話し合います。また、メンタルヘルス不調を予防するために、職場での新人研修や上司研修時のメンタルヘルス講習や心理アセスメントをお引受けしています。厚生労働省の班研究などにも複数参加し、職域のうつ病予防や復職支援方法の開発、職業性ストレスの軽減理論などについて学術的研究を行っています。

老年精神医学、神経画像研究グループ

  本研究グループはMRI, SPECT, PETなどの神経画像検査を用いて認知症に伴う行動心理症状(BPSD)や老年期精神障害の補助診断や臨床評価を行う研究を行っています。最近は統計学的脳画像解析ソフトを利用してBPSDと脳内障害部位の関連性について検討し、アルツハイマー型認知症のうつ症状と前頭葉における血流低下が関係していることを報告しました。さらに、大阪市立弘済院附属病院や大阪市立総合医療センターなどの関連施設とも連携して共同研究を行っています。一方、診療においては他診療科、他職種と協力しあって多方面からアプローチすることに重点をおいています。

児童グループ

  小学生と中学生を中心に診療しています。子どものこころの問題の増加や“軽度発達障害”への注目の影響もあり、児童精神科へのニードは高まっています。そのためか、大阪の児童精神科の初診待機期間は長く、数ヶ月以上となっている機関もあります。当院も例外でなく、かなり混み合っておりますが、『精神医学的評価および治療を要する子どもを、できるだけ待機なく診療する』という方針をとっています。そのため、医療の必要性が低いと予想される方などは学校や児童相談所などへの初期相談をすすめるなどして、なんとかこの方針の維持に努めているところです。
 診断分類では、分離不安障害、社交不安障害などの不安障害、場面緘黙、醜形恐怖、自己臭妄想、チック障害~トゥレット症候群、抜毛癖などの習癖異常、強迫性障害、児童期解離(転換)性障害、摂食障害、児童期うつ病、双極性障害、統合失調症など精神病性障害、高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)、ADHDなど多彩な患者さんの診療を行っています。
 今後は、子どもも大人も診ることができる、"バランスの取れた精神科医”になるように、またそのような後輩を育成できるように精進していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

摂食障害グループ

  当院では摂食障害患者に対して外来治療を中心に行っています。外来では主に食生活日誌を用いた食行動の自己観察をすすめ、患者さんの食事状況に応じた個別の食事療法や環境調整を行うことで食事の自己コントロールを高めるよう工夫しています。加えて、体重や体型、栄養についての偏った考えや摂食障害による身体的影響などに対して心理教育を行うと同時に、一般診療の枠組みの中で認知行動療法的アプローチを基本にその他精神療法を組み合わせて治療を行っています。また、当院での治療関係が確立し外来通院を続けていながら、治療意欲はあっても自宅環境で自己努力のみで食生活を改善することが出来ない患者さんに対しては、原則1ヶ月間の教育的入院治療を行うことがあります。この教育入院では、入院期間中に病院食を規則正しく全量摂取することにより、退院後の食生活が正常化するきっかけをつくることを第一の目的としています。
 研究面では、外来通院中の患者さんを対象に、摂食障害の発症誘因について性格傾向や併発精神疾患といった個人要因や生活環境における様々なストレス要因の関連について調査研究を行っています。また、近年の女性の社会参加にも着目し、働く女性の摂食障害の実態や就労ストレスの影響についても研究を進めています。