item6b
item6b

大学院医学研究科

item6b
item6b

大阪市立大学

item6b
item6b
item6b

核医学教室

item6b
item6b

Osaka City University

Department of Nuclear Medicine

item6b
item6b
item6b

医学部附属病院

item6b
item6b

核医学科

item6b
item6b
item6b

核医学教室 教授 塩見 進

PET検査とは

はじめに

 核医学検査とはさまざまな薬剤にアイソトープをラベルして体内に投与し、これら薬剤の動態を体外からトレーサーし画像化する検査法です。従来から行われているX線、CT、超音波、MRIなどは対外からX線、超音波、電磁波などを当ててその減衰を画像化するもので、主として形態学的情報を提供する検査です。一方、核医学検査は形態学的情報以外に生理学的あるいは生化学的情報を含んでおり、用いる放射性医薬品により異なった情報を得ることができます。従来の画像診断の解像度は核医学検査に比べ優れており、形態学的異常を検出するには有用であす。しかし、多くの疾患において形態学的変化が出現する前に機能的な変化が起こっていることが多く、患者にとって形態学的にどう見えるかよりも機能がどう変化しているかを知ることの方がより重要です。この核医学検査の一つとして近年positron(陽電子)を放出する核種を用いる陽電子放射断層撮影(positron emission tomography:PET)装置が開発され注目を集めています。

 

PETの原理と特徴

 従来の核医学検査で用いられるガンマカメラは各種放射性医薬品から放出されたγ線を検出して画像化する装置です。一方、PETはポジトロン核種から放出された陽電子(ポジトロン)が瞬時に2本の放射線を放出し消滅するが、その放射線を計測して画像化する装置であり、原理的に異なっています(図1)。

図1.PET検査の原理

PET検査には、ポジトロン核種を生産するためのサイクロトロン(加速装置)、PET用の放射性薬剤を合成するための自動合成装置、そして体内に投与された放射性薬剤の動態を画像化するためのPET撮影装置など大掛かりな設備が必要となるため、大学病院や研究所でのみ研究が進められていました(図2)。

図2.PET検査に必要な機器

最近ではサイクロトロンもコンパクトになり、操作も簡便化され、またPET装置もカメラの視野が広くなるなど性能が向上し、PETは急速に普及してきています。

 PET検査に用いるポジトロン核種を表1に示します。ポジトロン核種は酸素、窒素、炭素、フッ素など生体を構成している元素を用いるために、体内での自然の動態を観察することができます。しかし、半減期が極めて短いために、院内で核種を生産するためのサイクロトロンが必要となります。

表2は自動合成装置で作られるPET用製剤です。たとえば、糖代謝を画像化するにはFDG、アミノ酸代謝を画像化するにはメチオニン、核酸を画像化するにはチミジンなどそれぞれ画像化したい目的により使用されるPET用製剤が違います。PETの応用範囲は広く、現在では大きく分けて脳領域、心臓領域、がん領域の3つの領域に使用されています。

表1.ポジトロン核種

表2.PET用製剤

脳領域におけるPET検査

 PETは脳の生理学的画像化の研究から始められました。例えばF-18 FDGを用いて経年的脳のブドウ糖代謝の経年的変化、視覚や聴覚の刺激に対する脳の反応領域の画像化などです。図3は視覚と脳の反応領域の関係を示したものです。視覚の刺激が目から入ると後頭葉の糖代謝が上昇し、この部分で脳が認識していることが分かります。

図3.視覚刺激と脳内糖代謝

さらに図4は聴覚と脳の反応領域の関係を調べたものです。言語を聞くときは主として左の側頭葉が反応し、音楽を聴くときは右の側頭葉が反応し、音楽と言語の両方を聞くと両側頭葉が反応します。このことより音の刺激は側頭葉で認識しますが、さらに言語と音楽とでは認識する部位が左右逆になっていることが分かります。

次いで臨床応用として、痴呆の早期診断、てんかんの焦点の検索、脳梗塞など脳血管障害の診断などの有用性についての報告が多く見られるようになりました。図5は初期のアルツハイマー患者のFDG-PET像ですが、健康な人と比べるとアルツハイマー病の患者では脳の側頭葉の部分の糖代謝が低下していることが分かります。その患者はMRI検査やCT検査など他の画像検査では脳の萎縮などの変化が認められておらず、PET検査は脳の解剖学的変化が出現する早期にアルツハイマー病を診断することができます。すなわちPET検査によりアルツハイマー病など痴呆症の早期診断ができるため、早い時期から治療が可能です。そのためPET検査を用いることにより、これら疾患の発症予防にも繋がるものと期待されています。

図4.聴覚刺激と脳内糖代謝

図5.アルツハイマー病の脳内糖代謝

心臓領域におけるPET検査

近年、本邦においても虚血性心疾患が増加しています。PET検査では、N-13[アンモニア]やO-15[水]を用いることにより心筋血流の異常を診断し、F-18FDG用いることにより心筋の糖代謝の異常を観察することができます。正常心筋のエネルギー代謝は主に脂肪酸であるが、虚血心筋では脂肪酸代謝は低下し、代わって糖代謝が主となります。更に虚血が進むと心筋は壊死に至り、代謝もみられなくなります。従って、心筋血流の低下あるいは欠損を示す領域にFDGの集積がみられる場合には虚血心筋はviable(生きている)と判定し、FDGの集積がみられない場合は壊死になっていると診断することができます。

図6は心筋梗塞の患者でFDG-PETにより心筋のブドウ糖代謝をみたものです。左は心臓全体にFDGの集積を認め心筋が生存していることが分かります。一方、右は心臓の一部でFDGの取り込みを認めない部位がありその部分では心筋が生きていない(壊死している)と考えられます。すなわち左のような心臓であれば治療すれば回復しますが、右のように心筋が壊死している場合、治療による回復があまり望まれない症例と考えられます。

図6.心筋梗塞における心筋内糖代謝

癌領域におけるPET検査

 腫瘍診断に用いられているのは腫瘍の増殖に関する代謝情報を反映する薬剤であす。癌細胞は他の正常組織に比べ増殖能が高く、糖、アミノ酸、核酸などの代謝が盛んなため、それらを反映する薬剤を用いることにより癌の診断が可能です。癌の診断についての詳細は次回に講義する予定です。

この様にPET検査は多くの方面に応用されていますが、その被爆量は図7に示すように約2.4mSVであり、胃のレントゲン検査が約4mSv、CT検査が約10mSvであることと比較するとあまり多くありません。

図7.PET検査と被曝量 (PET検査Q&A(日本核医学会より掲載許可いただいています)より引用)

item6a