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大学院医学研究科

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大阪市立大学

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核医学教室

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Osaka City University

Department of Nuclear Medicine

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医学部附属病院

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核医学科

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I-131による甲状腺癌転移に対する
放射性ヨード内用治療

甲状腺と甲状腺ホルモンについて

甲状腺とは、前頚部の鎖骨付近からやや上の正中に存在する
臓器です。

正常の甲状腺の働きは?

甲状腺は、食物中のヨード成分を選択的に取り込んで、それを材料にし、甲状腺ホルモンを作ります。

もっと詳しく説明すると、

甲状腺には、濾胞(ろほう)と呼ばれる小さな袋がたくさんあり、その袋は、瀘胞(上皮)細胞とよばれる細胞が集まって出来ています。(右図参照:赤い点は細胞の核、実際には各細胞間に細胞膜があるが省略している)

瀘胞細胞に吸収されたヨードは、濾胞の中に放出されます。また、瀘胞細胞で、サイログロブリンという巨大な糖蛋白質が合成されコロイドとして、濾胞に蓄積されます。

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濾胞の中で、ペルオキシダーゼという酵素の働きにより、サイログロブリンのチロシン基と呼ばれる部分にヨードが付加されます。

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ヨード化された、サイログロブリンは濾胞から瀘胞細胞に取り込まれ、細胞の中のリソゾームというところで、ヨード化されたところが切り離されます。これが、甲状腺ホルモンであります。

甲状腺ホルモンには2種類あり、

ヨード化されたチロシン基の数が3つのものがT3、4つのものがT4と呼ばれます。

もちろん、チロシンの数が1つ、2つのものも有るのですがこれらは、分解されて機能しません。

生理的活性はT3の方がT4より圧倒的に高いのですが、体で作られる甲状腺ホルモンはT4の方がT3よりずっと多いといわれています。

脳に有る視床下部・肝臓・腎臓等でT4がT3に変換されています。

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甲状腺ホルモンのフィードバック

体内における甲状腺ホルモンの量を一定に保つため、フィードバック機構が構築されています。
血液中の甲状腺ホルモンが不足すると、

それを感知した視床下部から、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌されます。すると、下垂体前葉が刺激され、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、その結果、甲状腺におけるホルモン合成が盛んになります。

一方、甲状腺ホルモンが多すぎると、
視床下部からのTRHの分泌が低下し、下垂体前葉からのTSHの分泌も低下します。こうして、甲状腺への刺激がなくなるわけです。

甲状腺癌(がん)とは?

甲状腺に出来る上皮由来の悪性腫瘍で、大きく分けると4つのタイプがあります。

 乳頭癌:一番多いタイプ。リンパ節転移が多い。

 濾胞癌:血行性転移が多い。

 この2つのタイプは、分化型甲状腺癌とよばれる。
 ヨードを取り込む、などのもとの甲状腺組織の性質を持っているものが多い。
 進行がゆっくりである。
  未分化癌:乳頭癌や濾胞癌が変異するといわれる。進行が速い。

 髄様癌:分化型甲状腺癌とは異なったタイプ。

I−131治療は、甲状腺癌のうち、乳頭癌や濾胞癌による転移(リンパ節・肺・骨など)を対象としています。甲状腺癌そのものは外科的切除が必須で、同時に癌以外の甲状腺も全摘出する必要があります。

I-131による甲状腺癌転移治療

分化型甲状腺癌の転移は、正常の甲状腺組織ほどではないがヨードを取り込み性質をもっています。またサイログロブリンも合成することができます。この性質を利用して行われているのが、この治療です。下のグラフは、正常甲状腺と転移のヨードの取り込みを比較したものです。
甲状腺癌の転移のヨードの取り込みは、印象として数分の1〜10数分の1程度という感じです。また、個人差が非常に大きくて、患者さんごとに取り込む度合いは大きく異なっています。

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分 かりやすくするために、模式図で表しますと、正常の甲状腺には、ヨード(I-131)がびっしり取り込まれるのに対し、癌の方は正常組織ではないのでヨー ドの取り込みが低下するのです。人間の体は、普通のヨードもI-131も区別することはありませんから同じことがI-131についても言える訳です。
したがって、個人差もありますが、I-131治療を行っても、この治療で完全に癌が無くなるということはなく1回目はアブレーション(下記参照)目的でもあり、複数回行うことが多いのであります。

また、病変の大きさについては、大きい病変よりも小さい病変に対する方が効果が上がると考えられます。

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すなわち、大きな転移病変は、I-131治療よりも外科的切除の方が効果が高い、ということです。ですから大きな転移病変は、できるだけ外科的に取り除いてもらっています。

アブレーションとは?
甲 状腺癌より正常の甲状腺の方がI-131の取り込みが大きいということについては、何度も触れていますが、そのために、I-131治療を行う際、正常甲状腺があってはI-131は正常甲状腺に集まってしまうので、甲状腺癌転移の治療になりませんから、癌ごと甲状腺組織をすべて切除してしまいます。しかし、 術後わずかに甲状腺組織が残ってしまいます。I-131治療1回目はこの正常甲状腺を破壊するということも大きな目的になります。これをアブレーションと いいます。

 

I-131治療の施行基準は?

1回目、2回目と治療を複数回行うのはよく分かりましたが、2回目を行うかどうかの基準はどうなっているのですか?とここまで説明していると患者さんから  よく質問されます。これは非常に重要なポイントですね。

ここで出てくるのが前述のサイログロブリンなんです。

甲状腺癌細胞もサイログロブリンを合成しますので、甲状腺を全摘出したあとに血液検査で測定されるサイログロブリン値は、すべて癌細胞からのものと考えられます。そこで、このサイログロブリン値を癌細胞の活動性の指標として用いることができると考えられます。

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このように、もしサイログロブリン値が上昇してきたとしたら、甲状腺癌の転移部は活発化してきているのではないかと考えられるわけですね。

そ こで、甲状腺癌転移の患者さんはI-131治療前後でサイログロブリン値を測定して、サイログロブリン値の変化を比較して治療効果判定を行うことになりま す。当院においては、I-131治療後のサイログロブリン測定は3ヶ月目に行っています。2回目の治療は、その時のサイログロブリン値を見て決めることに なります。I-131治療は前回から最低6ヶ月以上の間隔を空けるべきとされています。2回目の治療を中止もしくは延期することになった場合、サイログロブリン値測定を6ヶ月後に行い再評価します。また経過観察も6ヶ月間隔でサイログロブリン値を測定して行っています。

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だいたい上の図のような時間経過となっていきます。
サイログロブリン値がある程度高くても安定しているのであれば経過観察となりますが、数値が上昇傾向を示したり、高い数値を示す場合、他の条件も考慮して3回目、4回目の治療を行う場合もあります。

経過観察中で大事なこと

この放射性ヨード内用治療を行っても転移病変が完全に無くなることはないのですから、ヨード治療を行った後の患者さんにとっての一番の関心事は、転移がおとなしくしてくれることになります。そして、それを観察するのは血中のサイログロブリン値の変動ということになります。
転移病変におとなしくしてもらう、すなわち、できるだけ病変を刺激しないようにするには、TSH(甲状腺刺激ホルモン)をできるだけ低値にしておくことが重要であることは何度も申し上げました。では、TSHを低値に保つためには何をすればいいのでしょうか。

答えは、

甲状腺ホルモン(T4 製品名:チラージンS)を普通より多めに投与し、血液中の甲状腺ホルモン値を高めに誘導することです。こうすると、血中のTSHは、低値となり必要以上に転移病変が刺激されることはないでしょう。

そこで、患者さんには、毎日、甲状腺ホルモン剤(T4製剤チラージンS)を
150mg程度(血液検査と症状で判断する)服用していただいています。
甲状腺ホルモンは確かに正常値よりも高くなりますが、患者さん自身で特に自覚症状が無い場合や不整脈などの所見が無い場合にはそのまま続けるのがよいと考えています。
甲状腺ホルモンと骨粗しょう症の関係

チ ラージンSを多めに服用して、甲状腺ホルモンを正常よりも高い状態にすると体の代謝が亢進して、その結果、骨の代謝が進み、骨粗しょう症の原因の一つにな る可能性があるといわれています。それでなくても、多くの場合、副甲状腺まで切除してカルシウムやビタミンD製剤を服用している場合が多いので、外来でそ れを心配されておられる方が多いのも事実です。しかし、日常生活でTSH値が高くなるとそれも心配です。主治医の先生は、患者様の年齢や状態に合わせて対 応されているというのが実状だと思います。

 

文責(核医学教室 河邉讓治)