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大学院医学研究科

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大阪市立大学

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核医学教室

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Osaka City University

Department of Nuclear Medicine

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医学部附属病院

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核医学科

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核医学教室 教授 塩見 進

PETを用いた癌の診断

表1.癌の診断に用いるPET製剤

現在、最もよく用いられているのはF-18 フルオロデオキシグルコース(FDG)です。FDGはグルコースの類似化合物であり、グルコースと同様に細胞内に取り込まれ、ヘキソキナーゼによりリン酸化されます。FDG-6リン酸はグルコース6リン酸と異なり、それ以上解糖系で代謝を受けず、細胞内に蓄積していきます。癌細胞では正常組織に比しブドウ糖代謝が亢進しているため高集積像として描出されます(図1)。

図1.FDGの集積機序

癌診断のためのPET検査の役割としては1)悪性腫瘍の早期診断、2)腫瘍の良・悪性の鑑別診断、3)腫瘍の悪性度、拡がりの診断、4)治療方針の決定、5)治療効果の判定、6)再発と壊死、肉芽などとの鑑別診断、7)予後の推測などがあげられます。画像上の集積の程度から視覚的に診断は可能ですが、PETは定量性が優れていることから、腫瘍部におけるFDGの集積の程度を定量的に測定することができます。すなわち異常集積部のカウントを体重当りの投与量のカウントで徐した値であるStandardized Uptake Value(SUV)が客観的評価として用いられています。通常は、FDGを静注して40〜60分後に撮影し、その病巣のSUVが高値であれば悪性腫瘍、低値であれば良性と診断します。この定量的評価は、良・悪性の鑑別診断、治療効果判定や再発の診断などに有用です。2002年5月よりFDGを用いたPET検査が保険適応になりましたが、その対象疾患は限られており、癌に関しては表2に示す10疾患です。

表2.保険適応疾患

PETによる癌の臨床例

頭頸部腫瘍:

図2.

治療効果判定:

図3.

直腸癌再発:

図4.

PETの全身撮影

図5.

PETによる癌検診

 癌はサイズが小さい時期は長い年月をかけて徐々に増殖しますが、ある程度の大きさに達すると急速にサイズが大きくなります(図6)。

図6.がんの成長図(PET Link! No1. Vol1. より転載。掲載許可を得ています。)

すなわち、早い時期に癌を診断することができると簡単な手術で済み、入院期間や通院も短くて済み、早く通常生活に戻ることができます。それに対して、自覚症状が表れてから発見されると、手術も大規模になり、入院期間や通院も長くなります。そのため、自覚症状のない早い時期に癌を発見することによりその人のQOLを向上させることができます(図7)。

図7.がん患者の経過

近年、PET装置の進歩により全身撮影が短時間で可能となり、癌診断のスクリーニングに用いようと試みられています。PET装置による癌検診の特徴は苦痛を伴わないこと、標的臓器を持たないこと、存在診断と同時に進行度の診断(転移の有無など)が可能であることなどがあげられます。わが国において早くからPET装置を用いたがん検診を行っている山中湖クリニックの報告によると、7,109名に対し16,287回の検診を行い、FDG-PETにより93名に癌を診断しており、その種類も肺癌、大腸癌、甲状腺癌、乳癌などあらゆる種類の癌を発見しています。PET以外にて診断できた癌も84名あり合計177名(2.49%)において癌を発見しています。従来から行われている厚生省の集団検診での癌の診断率は胃癌検診0.14%、乳癌検診0.09%、肺癌検診0.05%、大腸癌検診0.15%などであり、従来の検診に比べ高い診断率を誇っています。さらに、従来の検診では多くの検査を組み合わせる必要があり、一回の撮影で全身の癌をスクリーニングできるPETを用いた検診は今後さらに普及すると思われる有望な検診方法と思われます。

PET診療の将来

 最も広く用いられているFDGは、F-18の半減期が110分とポジトロン核種の中でも比較的長いため、欧米ではFDGの供給体制ができています。本邦においても2005年秋にはFDGが製薬会社から販売される予定です。そのためサイクロトロンや合成装置など大掛かりな設備なしにPET検査を行うことができるようになり、FDG-PET検査は飛躍的に増加するものと思われます。現在、FDG-PETは10種類の癌に対し保険適応が認められていますが、食道癌や婦人科腫瘍に対してもその有用性が報告されており、これらの疾患にも適応を拡げることが必要です。さらにFDGは癌だけなく炎症性疾患にも集積することや尿中に排泄されるため腎、膀胱など泌尿器系腫瘍の診断は難しいなどの欠点があるため、アミノ酸や核酸を描出するPET薬剤(C-11メチオニン、C-11サイミジン)に対する保険適応の拡大も必要です。最近ではPETの欠点である解剖画像を補うためCT装置を内装したPET-CT装置が開発されています(図8)。

図8.PET-CT装置

図9は肝癌患者のPET-CTの画像です。CTで認めた腫瘍性病変にFDGの取り込みが認められ、この病変が悪性であることが分かります。また、CTとの融合画像が得られるため、病変の正確な位置を把握することができ、治療を行う時に有用です。このPET-CTはアメリカでは数年前より急速に台数が増加しており、わが国でも将来癌診断の有力な診断手段になるものと期待されています。

図9.PET-CT装置

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