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大阪市立大学肝胆膵外科の歴史、現状と未来

大阪市立大学肝胆膵外科の歴史、現状と未来

大阪市立大学医学部(医学研究科)は、1944年設立の大阪市立医学専門学校、1947年の大阪市立医科大学を前身とします。1948年4月に外科学講座が開設され、澤田平十郎教授(初代:1948年~1961年)および鈴木忠彦教授(第2代:1962年~1972年)によって築かれました。1952年9月に外科学第2教室(第2外科)が白羽弥右衛門教授(初代教授:1952年~1978年)によって開設されました。このなかで、外科学第1教室(第1外科)では鈴木教授および梅山 馨教授(第3代:1973年~1991年)の下、脾臓の外科や門脈圧亢進症の病態解明と治療に取り組みました。また、1969年から糖尿病疾患の外科的治療となる膵島移植をこの研究分野の黎明期から開始するとともに膵炎の病態解明に努めました。さらに、曽和融生教授(第4代:1991年~1998年)および平川弘聖教授(第5代:1998年~2016年)の下では膵癌の診断・治療に応用可能な新しいモノクローナル抗体の開発に努めました。SPan-1(エスパンワン)は平川教授がカリフォルニア大学サンフランシスコ校へ留学中にSPan-1抗体を開発し、現在ではこれを用いた血中SPan-1抗原測定が膵胆道癌の診断の腫瘍マーカーとして臨床で広く使用されています。その後、膵癌の病態解明と分子標的治療薬を含む抗癌剤治療への応用のために膵癌の遺伝子解析を含めた分子生物学的研究を大平雅一教授(第6代:2017年~)の下で行っています。多発肝転移症例に対しては化学療法と手術の併用療法を行い、切除不能とされる腹腔動脈や肝動脈などに浸潤した膵癌に対しては抗癌剤治療と放射線照射に血管合併膵切除を組み合わせることで治療成績の向上を目指しています。

一方、外科学第2教室(第2外科)は酒井克治教授(2代教授:1979年~1989年)の下で、1969年から木下博明教授(第3代:1989年~2015年)が胆道外科に取り組みました。次いで、1981年より広橋一裕教授(前総合医学教育学教授)が中心となり、本格的に肝臓外科への展開が図られました。特に、当時治療成績が不良であった肝細胞癌の病態解明と治療法の開発、改善に取り組み、1983年11月には最初の経皮経肝門脈枝塞栓術が施行されました。この方法により大量肝切除の安全性が飛躍的に向上し、現在では本法は我が国のみならず世界的に施行されるようになっています。また、肝細胞癌治療後にインターフェロンなどの抗ウィルス療法を併用することにより、その治療成績が飛躍的に向上しました。さらに2000年には生体部分肝移植も開始しました。現在は、末廣茂文教授(第4代:2003年~2015年)および柴田利彦教授(第5代:2015年~)の下で肝胆膵外科に取り組み、最近では、1,2-ジクロロプロパンやジクロロメタンが要因となった職業性胆管癌について、全国の拠点として臨床と研究に取り組んでいます。肝細胞癌に関しては久保正二病院教授が原発性肝癌取扱い規約や肝癌診療ガイドラインの作成に携わっています。

2000年4月に大学院改組により肝胆膵外科学が発足しました。しかし、前述にように肝胆膵外科領域の診療、研究や教育は旧第1外科と旧第2外科によって担われてきましたが、2018年4月に外科学の再編・統合が行われ、旧第1外科と旧第2外科のスタッフが集まり、新たな肝胆膵外科学としてスタートしました。現在では、肝切除や膵切除において積極的に腹腔鏡下手術を行っています。安全性を重視し、低侵襲手術の開発と化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療による高度な医療に取り組んでいます。本邦をリードする診療、研究および教育の拠点としてさらなる発展を目指しています。