癌分子病態制御学講座は難治性癌を主たる研究対象にしています。難治癌は増殖進展が速く高頻度に転移するため根治手術が困難であり、その治療成績向上には新しい治療法や診断法の開発が必要です。われわれは、このような治療困難な癌の性質を研究することにより、その難治性の原因を分子生物学的レベルで解明し、その病態機序に立脚した分子標的治療を開発するトランスレーショナルリサーチ(基礎データーを臨床応用する研究)を行っています。具体的な研究プロジェクトとして、①エキソソーム、②癌転移前病変、③分子標的治療、④リキッドバイオプシー、⑤オートファジー、⑥がんゲノム、⑦癌微小環境構築、などの研究などに取り組んでいます。また、平成28年度に難治がんトランスレーショナルリサーチ(TR)センターが設立されました。本講座は癌の基礎研究と臨床の橋渡しを実践すべく、TRセンターの関連講座としても活動しています。これらの研究活動により難治癌の病態を解明し、その機序に基づいた新規治療法を開発に取り組んでいます。
本教室は外科臨床医が多く在籍しています。臨床における経験を生かし、臨床の問題点を基礎研究で解明しその成果を臨床に還元するTranslational Researchを特色とする教室です。外科手術が困難な症例の研究を発展させることが、外科治療成績向上につながると考えています。難治性の病態解明と治療法開発の実現に向けて、大学院生や研究生を積極的に受け入れ、外科臨床と基礎との橋渡しとなるトランスレーショナル研究を発展させたいと考えています。 現在までに、50名の大学院生や研究医の学位指導を行っています。博士課程および修士課程では、臨床へのフィードバックを常に念頭に置いた教育に力をいれています。また、がんプロフェッショナル ”ゲノム医療に対応する革新的腫瘍外科専門医”コースも担当し、がんプロフェッショナル医の育成に取り組んでいます。また、現在までに国内および海外の多くの研究機関とも新規治療薬開発を目的として共同研究を行っており、産学連携に基づく研究にも力を入れています。
癌分子病態制御学講座 担当
八代正和 研究教授 (2019年6月)
大学院生が中心となり研究を行っています。私どもの研究に興味ある学生の方は是非ご連絡下さい。
連絡先: 八代正和 m9312510@med.osaka-cu.ac.jp
出願期間 2019年7月29日(月)~8月2日(金)【消印有効】(出願書類提出前に、八代までご相談下さい)。
博士課程 (4年間コース):選抜試験 2019年8月23日(金)
修士課程 (2年間コース):選抜試験 2019年8月31日(土)
(研究教授1名、講師1名、大学院 博士課程7名、大学院 修士課程1名)
八代正和 | 研究教授 | m9312510@med.osaka-cu.ac.jp |
福岡達成 | 講師 | k-naoshi@med.osaka-cu.ac.jp |
黒田顕慈 | 大学院 4年(博士課程) | kuroken1985@yahoo.co.jp | 栂野真吾 | 大学院 4年(博士課程) | shingo5262@gmail.com |
西村貞德 | 大学院 3年(博士課程) | d17mb038@vx.osaka-cu.ac.jp |
櫛山周平 | 大学院 3年(博士課程) | m2037860@med.osaka-cu.ac.jp |
杉本敦史 | 大学院 2年(博士課程) | hark.atsushi56@gmail.com |
櫛谷友佳子 | 大学院 2年(博士課程) | |
瀬良知央 | 大学院 1年(博士課程) | seratio911@gmail.com |
山本百合恵 | 大学院 1年(修士課程) | m9563702@med.osaka-cu.ac.jp |
笠島裕明 (Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute:米国 サンディエゴ 2016年6月~)
三木友一朗(Karolinska Institutet Biomedicum:スウェーデン ストックホルム 2018年4月~)
オートファジー(Autophagy)とは、細胞内のタンパク質やオルガネラを分解するシステムの一つです。様々な生理的役割を担っており、腫瘍の発生や増殖にも関わっているとされます。また癌細胞の中には、自己複製と多分化能をもち、腫瘍形成や転移再発の根源となる癌幹細胞の存在が推察されています。そこでわれわれは癌幹細胞におけるオートファジーや、その周囲微小環境におけるオートファジーを検討し、難治癌における治療標的分子の研究を行っています。
がん細胞がもっている特定の遺伝子やタンパク質をターゲットとして作用する分子標的薬開発が進んでおり,がん治療成績の向上に寄与しています。我々の教室では、FGFR2が難治性スキルス胃癌細胞のドライバー分子であることを明らかにしており,新たな治療標的分子として注目しています。現在、胃癌を含め難治癌において、FGFR2シグナルなどの増殖因子受容体の意義や標的分子としての治療効果を研究しています。
次世代シークエンサー(NGS)の登場により,がんゲノム解析の技術が飛躍的に向上し,数々のドライバー遺伝子が同定されましたが,スキルス胃癌を含めた難治性がんに関してはまだ未同定なドライバー遺伝子の存在や遺伝子レベルでの腫瘍内heterogenityの関与が示唆されます.そこで我々はNGSを用いた網羅的ながんゲノム解析をすることで,スキルス胃癌を含めた難治性がんの新規ドライバー遺伝子の同定,腫瘍内heterogenityの解明を中心に研究しております.
スキルス胃癌は間質組織の増生を伴いながら急速に進展し、予後不良な難治性の癌です。スキルス胃癌間質に存在する癌関連線維芽細胞(CAF)は癌細胞との相互作用によりスキルス胃癌増殖進展の一因となっております。CAFの起源細胞の一つとして骨髄由来間質細胞が癌組織に遊走し線維芽細胞に誘導されることが示唆され、また癌幹細胞もCAFの起源細胞の可能性が示唆されます。スキルス胃癌の微小環境構築機序およびその機序に基づいた治療法の開発を研究しています
癌周囲微小環境におけるエキソソームの役割は未だ十分に解明されておりません。スキルス胃癌は高頻度に腹膜転移するため極めて予後不良です。我々は、スキルス胃癌細胞から産生される因子が癌細胞周囲の微小環境を増殖や転移しやすい環境に変化させていることを明らかにしてきました。細胞が分泌する50ー300 nmの小胞であるキソソームにはDNA, RNA, microRNA, proteinなどが内包され、このキソソームが癌微小環境の細胞間相互作用に関与していることがわかってきました。我々は、癌細胞や間質細胞のエキソソームがどの様に癌環境形成に関与しているかを解明し、新規癌治療法を開発する研究を行っています
腫瘍内不均一性の原因は癌細胞のみならず周囲微小環境にあると考えられる。そこで、癌細胞の腫瘍内不均一性の検討を、間質線維芽細胞の不均一性の観点からも検討し、その相関生を明らかにするする研究を行っています。
次世代型シークエンサーを用いて、RNA-seq、DNA-seq、Single cell seq解析をおこなって、スキルス胃癌遺伝子異常を検討し、スキルス胃癌のドライバー遺伝子を同定する研究を行っています。また、世界の胃癌遺伝子の網羅的データーベースを用いて、In silico analysisにてもスキルス胃癌のドライバー遺伝子の同定の試みを行っています。
アンメットメディカルニーズの高いスキルス胃癌や胆道癌、膵癌などの難治癌に対し有効な治療薬を開発する。CXCL1-CXCR2シグナルは難治性癌組織のdesmoplastic reactionに関与することを報告してきた(AJP2016, BJC2015, PLOS ONE 2017)。この研究成果を基に、難治癌の治療薬の開発研究に取り組んでいる。
以上の研究に関しては患者様から文書もしくは口頭で説明・同意を得て、実施をしております。既に研究にご参加頂いている患者様におかれましても研究の拒否をご希望される方は下記までご連絡下さい。
担当者:八代正和 : m9312510@med.osaka-cu.ac.jp
また上記の研究とは別に、患者さまへの侵襲や介入もなく診療情報等の情報のみを用い研究や、余った検体のみを用いるような研究については、国が定めた指針に基づき「対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得る必要はありません」が、研究の目的を含めて、研究の実施についての情報を公開し、さらに拒否の機会を保障することが必要とされております。今後当研究室で行っている研究でオプトアウトを用いた臨床研究についても本ホームページを用いて公開させて頂きます。