大阪公立大学大学院医学研究科
整形外科学Dept. of Orthopedic Surgery, Osaka Metropolitan University Graduate School of Medicine

脊椎外来

脊椎外来のご案内

脊椎外科クリニックについて

腰椎椎間板ヘルニア

特徴

大阪公立大学整形外科の脊椎クリニックは体に負担の少ない低侵襲治療を心掛けて、手術用顕微鏡を使用した脊椎手術を中心に行ってきました。近年は、内視鏡技術の進歩により脊椎手術にも応用できるようになって、平成10年から全国に先駆けて脊椎内視鏡下手術を導入しています。現在、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの手術治療は主に内視鏡を用いており早期退院、早期社会復帰が可能となっています。
高齢化社会にともない、骨粗鬆症性椎体骨折に対する早期治癒のための低侵襲手術手技として、経皮的に骨セメントを注入しており、早期離床ならびに高齢者のQOL向上を可能としています。
また、脊椎インストゥルメンテーションを併用した手術も数多く行っており、脊柱側弯症や脊椎脊髄腫瘍に対しては脊髄モニタリングやナビゲーションシステムを用いて安全に愛護的な治療を行っています。他施設から難易度の高い手術症例の紹介も多く、三次元造形モデルとナビゲーションを併用した手術も行っています。

3D再構築画像による術前プランニング
3D再構築画像による術前プランニング

対象疾患

頭頸移行部病変

軸椎亜脱臼、垂直亜脱臼、歯突起骨、歯突起後方偽腫瘍、
環軸椎回旋位固定など

頚椎

頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、頸椎後縦靭帯骨化症、頚椎症性筋委縮症、頚椎症性神経根症など

胸椎

胸椎黄色靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、胸椎椎間板ヘルニア、骨粗鬆症性椎体骨折など

腰椎

腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄、変性すべり症、分離症・分離すべり症、変性側弯症など

脊柱変形

特発性側弯症、先天性側弯症など

脊髄腫瘍

神経鞘腫、神経線維腫、髄膜腫、上衣腫、海綿状血管腫、脂肪腫、脊髄空洞症など

脊椎腫瘍

転移性腫瘍、脊椎原発腫瘍

炎症性疾患

化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎(脊椎カリエス)、透析性脊椎症など

脊椎脊髄損傷

先天奇形 脊髄係留症候群など

代表的疾患に対する治療

環軸椎亜脱臼

頸椎は7個の骨で構成されていますが、第1頚椎である環椎が第2頚椎である軸椎に対して前方にずれてしまう病態です。関節リウマチ、ダウン症候群、歯突起形成不全、後頭環椎癒合症などに合併します。手術加療は神経症状が高度な場合や頑固な後頸部痛が持続する場合に適応となります。手術の基本は金属を用いた固定術ですが、環軸椎近傍を通る椎骨動脈の走行は個人差があるため、術前に血管造影の検査が必要です。

血管造影CT
血管造影CT

環軸椎亜脱臼に対する環軸椎固定術:術前後のレントゲン側面
環軸椎亜脱臼に対する環軸椎固定術:術前後のレントゲン側面

頚椎症性脊髄症

頸椎に加齢性変化が生じ(頸椎症)、これにより脊髄の症状(脊髄症)を生ずるという意味です。症状が進行すると、手の細かな運動が困難(箸が持ちにくい、字が書きにくい、ボタンがはめにくい等)になったり、脚が突っ張って歩きにくい、階段を下りるとき足ががくがくする、上肢の筋萎縮、脱力、上下肢および体幹のしびれなど、全身に症状が出現します。手術は後方法と前方法の2種類がありますが、それぞれ一長一短があり、画像所見や臨床症状によってどちらを選択するか決めています。特に前方法を選択する場合には手術用顕微鏡を用いて神経に対して愛護的操作を心がけ、可能な限り安全な操作を心がけています。

頚椎MRI矢状断 左:術前 右 術後
頚椎MRI矢状断 左:術前、右:術後

片開き式椎弓形成術:人工骨(ハイドロキシアパタイト:矢印)スペーサーを使用して脊柱管拡大を保持しています。
片開き式椎弓形成術:人工骨(ハイドロキシアパタイト:矢印)
スペーサーを使用して脊柱管拡大を保持しています。

頸椎後縦靭帯骨化症

頸椎後縦靱帯とは頸椎骨の後方に存在し上下の椎骨と連続している靱帯で脊髄から見ると前方に存在します。頸椎後縦靱帯骨化症とは柔らかい靱帯が骨に置き換わって、徐々に厚さを増し、脊髄を圧迫するという病気です。女性よりも男性に多くみられます。症状は頸椎症性脊髄症と同じく脊髄の症状が主ですが、この後縦靱帯の骨化は徐々に起こるため症状が出現しにくく、非常に高度に脊髄が圧迫されて、初めて症状が出現する場合があります。症状が軽度な場合には、保存的加療(投薬、安静、リハビリテーションなど)で経過観察していますが、症状が進行性の場合には手術加療の適応となります。当科では病巣範囲に応じて前方法か後方法を選択してします。病巣範囲が少なければ、前方法で手術用顕微鏡下に骨化靱帯を摘出する方法を選択し、その存在、範囲が広ければ後方法を選択しています。

胸椎後縦靭帯骨化症

後縦靭帯の骨化が胸椎レベルに生じる病気です。男性よりも女性に多くみられ初期症状は下肢の脱力やしびれです。進行すると歩行障害、排尿障害が出現します。胸椎後縦靭帯骨化症に対する手術方法はさまざまありますが、脊椎手術の中でも治療に難渋する疾患の一つです。最近は後方から単独で除圧固定術を行うことで安定した成績が得られています。

左:術前CT(矢印:後縦靭帯骨化)、中:術後レントゲン正面、右:術後レントゲン側面
左:術前CT(矢印:後縦靭帯骨化)、中:術後レントゲン正面、右:術後レントゲン側面

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎には通常5つの椎骨が存在しますが、これらの椎骨の間の前方には椎間板があり、クッションの役目をしている軟骨の一種です。何らかの外力でこの一部分が後方へずれると、腰痛や下肢の疼痛、下肢のしびれが生じます。MRIを利用するとその診断は容易となります。急性期には安静が治療の主たる方法となり、痛みを抑えるために鎮痛剤や筋肉が柔らかくなる筋肉弛緩剤を服用したりします。安静や内服薬で症状が軽快しない場合には、硬膜外注射、神経根ブロックといった方法で2~3ヶ月経過を見た後、どうしても症状の軽減が得られない場合には最終的に手術療法の適応となります。当クリニックでは内視鏡視下にヘルニアを摘出しています。手術創も小さく、術後の創部痛も最小限に抑えられ、術後のリハビリテーションも早期にまた円滑に行うことが出来ます。

モニターを見ながらの内視鏡手術の実際
モニターを見ながらの内視鏡手術の実際

腰椎MRI 腰椎椎間板ヘルニア 左 術前(矢印がヘルニア) 右 術後
腰椎MRI 腰椎椎間板ヘルニア
左:術前(矢印がヘルニア)、右:術後

腰部脊柱管狭窄(腰椎変性すべり症含む)

腰脊椎骨の後方部分には脊柱管と言われる神経の通り道が存在します。この通り道が狭くなる病態を腰部脊柱管狭窄症といいます。特徴的な症状として、一定の距離を歩くと足から下腿、大腿にかけてしびれや痛みが出現し、少し前屈みで休憩すると症状が軽快し、また同じ距離を歩けるようになるという間歇跛行が現れます。治療は、痛みの程度に応じて消炎鎮痛剤の投与や、末梢循環改善剤の内服や点滴、注射を行い、同時に理学療法を始めます。こういった保存治療を行っても症状の改善が得られない場合には手術加療が必要となる場合があります。一般的に腰部脊柱管狭窄症の手術は狭窄している神経の通り道を、左右から骨を削ることにより広げる手術を行いますが、当クリニックでは内視鏡を用いて、片側だけ骨を削ることにより反対側も通り道を広げる方法を行っています。また、不安定性を伴わない変性すべり症にも適応しています。このやり方ですと、腰椎の背中側に付着している背部筋肉を片側しかはずさずに済むので、背部の筋肉に対してやさしく、手術後に持続する腰痛を軽減出来ます。

内視鏡手術の図 片側から骨を削り両側の神経圧迫を取り除きます
内視鏡手術の図 片側から骨を削り両側の神経圧迫を取り除きます

腰部脊柱管狭窄に対する内視鏡手術:術前後のレントゲン
腰部脊柱管狭窄に対する内視鏡手術:術前後のレントゲン

傷は約2㎝です(1椎間の場合)
傷は約2cmです(1椎間の場合)

腰椎分離すべり症、変性すべり症(不安定性のあるもの)

腰椎すべり症は椎骨が前後にずれているために、神経の通り道が狭窄し、腰痛や下肢痛、しびれを引き起こす腰部脊柱管狭窄症の一病態です。保存的治療は腰部脊柱管狭窄症に準じて行われます。腰椎分離すべり症や不安定性の強い変性すべり症は固定術の適応となります。

腰椎後方椎体間固定術 椎間板に移植骨を詰めたケージを挿入する
腰椎後方椎体間固定術 椎間板に移植骨を詰めたケージを挿入する

スクリューとロッドによるチタン金属固定することで強固な初期固定が得られます
スクリューとロッドによるチタン金属固定することで強固な初期固定が得られます

L4.L5分離すべり症に対する固定術のレントゲン
L4.L5分離すべり症に対する固定術のレントゲン

脊柱変形(側弯症)

側弯症などの脊柱変形の手術は強い矯正力のあるさまざまなインプラントを用いて行っています。当科では、椎弓根スクリューを使用してより高い矯正を目指して治療しています。また、電気生理検査を用いた脊髄機能モニタリングを併用し、手術による神経損傷(脊髄損傷)を未然に防ぐ対策を行っております。

椎弓根スクリューを用いた矯正
椎弓根スクリューを用いた矯正

術前後のレントゲン
術前後のレントゲン

骨粗鬆症性椎体骨折

骨の密度が基準値以下になると骨粗鬆症という病気になり、容易なことで骨折する可能性が生じます。骨の密度が低下すると軽微な外傷や知らず知らずのうちに脊椎が潰れてきます。胸部の脊椎である胸椎や腰椎、その移行部に多く見られ、骨粗鬆症性椎体骨折といいます。非常に強い痛みがありますが、通常は潰れた脊椎は潰れたままの状態で骨が癒合し、少し変形を残す程度で治癒し、疼痛も軽減していきます。しかし、一部骨の癒合状況が悪く骨がつかない偽関節という状態になることがあります。当クリニックでは全身麻酔下にレントゲン透視しながら経皮的に骨セメントを注入して偽関節を生じている部分の固定を行っています。また、骨折の形態により使用できないこともあり、脊椎短縮骨切り術や前方固定術を行う場合があります。

経皮的椎体形成
左図 経皮的にカテーテルを挿入し先端のバルーンを拡張させて椎体の復元をはかります。右図 バルーンで拡張した椎体内にセメントを注入します左図:経皮的にカテーテルを挿入し先端のバルーンを拡張させて椎体の復元をはかります。
右図:バルーンで拡張した椎体内にセメントを注入します

術前後のCT
術前後のCT

脊椎短縮骨切り術
骨折椎体の後方要素を短縮し後弯変形を矯正
骨折椎体の後方要素を短縮し後弯変形を矯正

左:術前 右:術後
左:術前 右:術後

術前MRI(第8胸椎椎体骨折)および術前CT
術前MRI(第8胸椎椎体骨折)および術前CT

術後CT
術後CT

脊髄腫瘍(硬膜内髄外腫瘍、硬膜外腫瘍)

硬膜内髄外腫瘍は神経鞘腫や髄膜腫が多く、上位頚髄発生例もみとめます。術中モニタリングやCUSAなどを駆使して、顕微鏡下に安全な摘出を行い良好な成績を得ています。また、脊柱管内外に拡がるダンベル腫瘍摘出では、脊柱安定化に関係する椎間関節を切除することもあり、そのような場合は固定術も併用しています。

硬膜内神経鞘腫の術中写真
硬膜内神経鞘腫の術中写真

硬膜外腫瘍のMRI(矢印:腫瘍)
硬膜外腫瘍のMRI(矢印:腫瘍)

摘出腫瘍の写真と術後レントゲン
摘出腫瘍の写真と術後レントゲン

化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎

安静と抗生剤(抗結核剤)投与による保存療法にても軽快しない場合や神経脱落症状があったり、巨大な膿瘍形成をみとめていたり、脊柱変形(後弯変形)が進行性の時に手術加療を行います。当科では症例により後腹膜鏡や経皮的内視鏡を用いた低侵襲手術も行っています。

後腹膜鏡で使用する道具
後腹膜鏡で使用する道具

バルーンによる後腹膜の拡大
バルーンによる後腹膜の拡大

手術映像(結核性脊椎炎):大腰筋を切開し排膿している
手術映像(結核性脊椎炎):大腰筋を切開し排膿している

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