大阪公立大学大学院医学研究科
整形外科学Dept. of Orthopedic Surgery, Osaka Metropolitan University Graduate School of Medicine

スポーツ外来

スポーツ外来のご案内

スポーツを愛するすべての人へ
「スポーツをしたい気持ちはプロからお年寄りまでみんな同じです」

近年、健康増進法が制定され、より幅広い年齢層がスポーツに親しみやすい環境になっていると思います。それと同時に一生懸命に頑張りすぎて、怪我や痛みが生じるケースも出てきています。つまり、若者のオーバーユース症候群と同じ状況が高齢者にも出現しているということです。よって我々スポーツクリニックとしては若いトップアスリートのみならず、ママさんバレーやウイークエンドプレイヤーまで幅広く対応いたします。当クリニックでは手術的加療が主体となっていますが、当然手術が必要のない方はたくさんおられます。そういう方には予防医学としてのストレッチ、コンディション作り、筋力トレーニングの指導が大切になりますので、島田病院、ダイナミクスポーツ医学研究所と連携し、徹底的な運動療法をして頂いております。
同時に専門的な徒手検査手技、MRI(磁気共鳴画像)、CT、ストレス撮影など、詳細な検査によって手術が必要となると考えられる方については関節鏡を用いるなどできるだけ低侵襲手術を行い、早期スポーツ復帰をめざします。

対象疾患

前十字、後十字靭帯損傷、内側側副靭帯、外側側副靭帯損傷、半月板損傷、円板状半月、離断性骨軟骨炎、膝蓋骨脱臼、軟骨損傷、オスグット病、ジャンパー膝、色素性絨毛性滑膜炎、滑膜性骨軟骨種、関節内遊離体

股関節

股関節唇損傷、Femoral acetabulum impingement、関節内遊離体、早期変形性股関節症

足関節外側靭帯損傷、離断性骨軟骨炎、フットボーラーズアンクル、外脛骨障害、関節内遊離体

野球肘、離断性骨軟骨炎

代表的疾患

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷はスポーツ膝障害のうちもっとも手術療法を要する重大な障害です。ジャンプの着地、切り返し動作、直接の外傷で損傷します。

前十字靭帯損傷

前十字靭帯再建術

このような動作をする競技としてバスケット、バレーボール、サッカー、ラグビー、柔道などがあり、やはりこれらのスポーツで断裂することが多いです。ほとんどの人がプレー続行不能となり、翌日には膝が「パンパン」に腫れます。関節の中は血でいっぱいになっています。ただし約1ヶ月で通常の日常生活が可能となるため、わからないまま後日症状を来すことがあります。
この靭帯は関節の中の靭帯なので、切れたら元通りにつながりにくいと言われています。このままスポーツを続けると、しばしば関節が亜脱臼し、軟骨や半月板が傷つき、2次的な障害(長期的には変形性膝関節症)をもたらすことがあります。スポーツレベルを下げて、しっかり筋肉トレーニングすれば、日常生活レベルは保存療法で症状が出現する頻度は少ないと言われています。

前十字靭帯再建術

手術適応はスポーツ復帰を望む方、日常生活で不安感がある方、半月板の症状が出現している方です。手術前には十分な可動域を獲得し、筋力回復して頂きます。残った靭帯を使用する方法もありますが、より安定した術後成績を得るために、健常部分から腱を採取し、それを新しい靭帯として使用する、靭帯再建術を行っています。実際には大腿部内側の半腱様筋、薄筋を利用します。膝の前の骨と腱(膝蓋腱)を用いる事もあります。半月板損傷を伴う場合同時に処置を行います。生体力学的観点、解剖学的観点から大腿骨、脛骨に2つずつ骨孔を作成し、そこに2本の移植腱を通す、2重束再建術が成績向上の可能性があることから日本を中心に盛んに行われており、当院でも5年前から2重束再建術を行っております。

半月板温存する術式

手術翌日から松葉杖を使用してリハビリ開始します。ニーブレス1週間装着後、装具に変更します。退院は2~3週間後です。術後4~6週間は松葉杖歩行です。

ジョギングは4ヶ月後、ダッシュ6ヶ月、スポーツ完全復帰は10ヶ月から1年になります。 現在島田病院と連携し、骨孔の位置を詳細に検討することにより、よりよい手術術式の開発を行っています。

半月板損傷

半月板は荷重の伝達やショックアブソーバーとしての役割、膝の安定性、関節運動の潤滑に寄与しています。半月板損傷としては

  1. 先天性(円板状半月)
  2. 靭帯損傷を伴ったもの
  3. 加齢的変化によるもの

に分けられます。若年者は上記1.2.に当てはまることが多いです。伸展障害を伴う円板状半月は手術適応になります。また靭帯損傷に伴う場合も手術になることが多いです。ただし、切除するのか温存手術(縫合術)かは難しい判断が必要です。現在は出来るだけ半月板温存する術式を選択しています。

壮年期の半月板損傷は内側半月後節水平断裂が多いですが、痛みの原因が半月板だけとは限らないため、慎重な判断が必要です。内側半月後節水平断裂に対する切除術術後もリハビリを丹念に行わないと、膝回りの痛みが残存することあり、リハビリの重要性をあらためて感じます。
円板状半月については意外と幼少時から症状を訴える方がいますので、小児整形外科グループと協力体制を整え、円板状半月の疫学調査を行っています。

関節唇損傷

従来股関節痛は骨の変形、軟骨の擦り減った変形性股関節症に対して治療していました。つまりレントゲンで問題なければ経過観察されていました。最近FAI(femoral-acetabular impingiment)という概念が普及しています。当院でも、骨の小さな変化、股関節唇損傷を3D-CT, 造影MRIなど専門的な診断を行い、しっかりとしたリハビリ加療をして頂きます。それでも疼痛が軽減しない方には手術適応となりますが、手術方法は関節鏡を用いることによって、低侵襲手術が可能となります。

当院には股関節鏡に必要な器具をそろえています。

肘離断性骨軟骨炎

野球肘には内側型と外側型があります。一般的には内側型が先に発症し、かつ多く見られます。投球フォームの問題、股関節、体幹の堅さ、などの原因で過度に肘関節にストレスがかかり、内側の靭帯損傷や剥離骨折する状態です。ほとんどの場合保存的によくなります。外側の骨まで痛んでしまうのが肘離断性骨軟骨炎です。この状態では場合によっては手術を行わなければならないケースがでてきます。
現在島田病院と連携し、離断性骨軟骨炎の詳細な分類を行い、病期に適した手術療法を行っています。

下肢骨折後変形治癒に対する術前3Dシミュレーションを用いた矯正骨切り術

膝周囲骨折は高エネルギー外傷が多く、強固な固定を行うことで早期のリハビリが可能となり、術後成績は比較的良好な報告がありますが、時として、矯正不足や術後転位によって変形することがあります。変形したままでは機能障害を来すことがありますので、再度手術を行うことがあります。当院では変形治癒を両下肢CTから正常と患側を重ね合わせることによって、正確な変形評価と骨切りシミュレーションを術前評価し、術中に正確に変形矯正します

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