大阪市立大学 大学院医学研究科 分子生体医学講座 病態生理学

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研究紹介Research topics

研究テーマ①:腸内細菌代謝物が関与する肥満関連がんの発症メカニズム

 近年、肥満人口は世界中で増加の一途をたどっています。肥満は糖尿病や心筋梗塞のリスクを高めるだけでなく、様々ながんの発症率を高めることが明らかになっています。
 私たちは、がん細胞周囲に存在しがん細胞を育てやすくするがん微小環境と呼ばれる細胞群や生体内物質の変化に着目して研究しています。最近の私たちの研究成果として、肥満により腸内細菌の構成が大きく変わり、肥満で増えた腸内細菌が産生する物質、デオキシコール酸が肝臓に到達して、組織微小環境を構成する線維芽細胞で細胞老化にともなうSASP(senescence-associated secretory phenotype)という現象が生じ、発がん促進的ながん微小環境に変化する現象を見出しました(Yoshimoto et al. Nature 2013, Loo et al. Cancer Discovery 2017)。この現象は一部のヒトのNASH肝がんでも見られることが明らかになり、臨床研究も行っています。本研究室ではこのマウスモデルを基軸に、肥満誘導性肝がんのさらなる分子メカニズムの解明に迫っていきます。また、このマウスモデル以外にも大腸がん、転移性肝がん等の疾患モデルで、遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの実験ならびに分子細胞生物学的アプローチを用いて、がんの発症メカニズムと効果的な発がん予防法の開発を目指しています。

研究テーマ②:常在細菌叢が関与する病態メカニズム

 私たちの体には皮膚、口腔、消化管、膣など様々な場所に常在細菌が存在しており、宿主を病原体から守るバリア機能を発揮したり、宿主にとって消化吸収しやすい栄養素へ食べ物を分解するなどの役割を担い、我々宿主とバランスよく共生しています。しかし、ひとたびバランスが崩れると、ディスバイオーシス状態となり、様々な病態の原因となることがあります。当研究室では、皮膚科、耳鼻科、消化器外科、肝胆膵内科、産婦人科等と共同研究を行い、様々な常在細菌が産生する代謝物や常在細菌関連物質と疾患の関係を調べています。

研究テーマ③:細胞老化随伴分泌現象(SASP)関連因子の機能、役割、制御機構の解明

 正常な哺乳動物細胞には、異常な細胞の増殖を防ぐための様々な恒常性維持機構が備わっています。このような恒常性維持機構のひとつが、不可逆的細胞増殖停止である「細胞老化」の誘導です。細胞老化はDNAダメージなど発がんの危険性が細胞に生じた場合に発揮される、アポトーシスとならぶ重要ながん抑制機構と考えられています。しかし、アポトーシスとは異なり、細胞老化を起こした細胞はすぐには死滅せず、生体内で長期間生存し続ける可能性があります。最近、細胞老化を起こすと、次第に炎症性サイトカインやケモカイン、細胞外マトリクス分解酵素など、炎症や発がんを促進する様々な因子を分泌するSenescence-associated Secretory Phenotype (SASP) (細胞老化随伴分泌現象)と呼ばれる現象を起こすことが明らかになりました。このことは生体における細胞老化の蓄積が、慢性炎症やがんを進展させる、生体に不利益な微小環境を形成する可能性を示唆しています。
 当研究室ではこのSASPという現象に着目しSASPが生体内でどのような役割を持つのか、またどのような機構で、多岐に渡るSASP因子が同時に発現上昇するのか、そのメカニズムについても調べています。

研究テーマ④:老化や発がんにおける細胞外基質の役割

 発がんにおいて腸内細菌代謝物やSASP因子のような生理活性因子が重要な役割を果たす事が広く認知され、そのメカニズムの解明が進む一方で、細胞外基質については構造的な機能以上の役割は十分に調べられてきませんでした。ところが最近、発がんや老化に関わる細胞外基質の新規機能が判明したり、細胞外基質の硬化が発がんや老化に重要な役割を果たす事などがわかってきました。その他のシグナル伝達分子とは大きく性質を異にする細胞外基質の構造物として以上の機能を深く追求してゆく事で、老化や発がんの新たな側面を見出し、その予防法を開発する事を目指しています。

研究テーマ⑤:骨格筋内異所性脂肪形成とサルコペニア肥満

 肥満は糖尿病や心血管性疾患、がんのリスクであるだけでなく、個体老化を促進し、健康長寿を脅かす原因になると言われています。当研究室では整形外科との共同研究で、肥満のために骨格筋がやせるサルコペニア肥満という病態について調べています。骨格筋を構成する組織微小環境を詳細に解析し、サルコペニア肥満における骨格筋内異所性脂肪形成のメカニズム解明を目指しています。

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