疲労神経回路(仮説)
   
 
   
   私達は,下のような健常人の精神作業疲労の研究結果と,後の頁に挙げるような慢性疲労症候群の患者さん達に対する研究から,私達の脳内で起こっている疲労の神経回路についての仮説を立てています。

 このような仮説に基づき,さらに研究を進め,仮説の修正・肉付けを行いながら,確かなものに仕上げていくやり方です。この仮説について簡潔に説明しておきましょう。

 下図の研究結果から,意欲や情動と関わり,うつ病の病態時にも活動変化が観察される前頭皮質ブロードマン(BA) 10野は,疲労感を感じている最初の中心であると考えます。

  この部分は,新しい計画を考えたり新たな行動の意欲を燃やす部分である前頭前野のBA9/46d野といわれる部分の活動低下と関連しています。

  また,集中力や注意を担っている脳部位であり自律神経中枢でもある前帯状回(BA24, 33野)とも密接なつながりをしていて,これらのトライアングルは,セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質により働く神経細胞の多い部位です。

  脳の様々な神経回路は,どこかが働くと,他の多数の部分に連絡を送り,それらの相手方を活性化したり沈静化したりするのです。つまり,肉体疲労による脳への信号伝播と精神疲労による脳内変化が,脳のどこかで共通の回路を使用し,集中力や意欲の低下を起こしたり,視ることと運動との協調バランスをくずす(フラフラする)ことが起こったりすることがこういう神経回路で説明されるのです。


  疲労に関わる脳の部分

         
   

健常人ボランティアに前頁のATMTを2時間ほど連続して実行してもらい、その際の自覚的疲労感と脳のたくさんの部位の血液量の変化で、《疲れを多く感じるに従い、血流が上昇する(神経活動が上がる)脳の部位》を見出しました。

それが、この写真のような前頭葉
(前頭皮質)の一部(図中赤でしめした部分)です。

 
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