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主な病名と治療方法

がんの治療について

がんの治療には大きく分けて、4つの治療法があります。

  1. 内視鏡治療、
  2. 手術、
  3. 抗がん剤治療
  4. 放射線治療(食道がん、直腸がん)

1)内視鏡治療

内視鏡治療は、胃カメラや大腸カメラで見ながら消化管の内側からがんを含む粘膜を切り取る方法です。この方法を行うにはがんが粘膜までにとどまっていることとリンパ節転移のないことが必要です。但し、切除した組織を顕微鏡で検査した結果、治療前の診断と異なりがん病巣がより深くに及んでいれば、外科手術や他の治療を追加する必要があります。

内視鏡的胃粘膜切除術の実際
1) のどにゼリーを含んで麻酔をした後、胃カメラを挿入します。
2) 胃カメラで見ながら切除する範囲を決定し、電気メスで病変の周囲に印をつけます。
3) 次にその部位の粘膜の下に注射針を刺して生理食塩水を注入し、病変を含む粘膜を浮き上がらせます。
4) 一度胃カメラを抜き、先端に透明フードがついた別の胃カメラを挿入します。このフードを病変に押し当てて吸引することで病変を含む粘膜をフード内に引っ張り込みます。
5) 胃カメラの外に装着したスネア(金属製の投げ縄)を吸引した粘膜の根っこにかけ、電気を流して焼き切ります。一度で取りきれない場合は何回かに分けて切除することになります。

病変を含む粘膜が切除されたところは大きな潰瘍となります。治療は切除する回数にもよりますが、通常1時間以内で終わり、翌日から食事(潰瘍食)もでき、入院も切除後4日間程度で済みます。退院後は治療前と同じ生活ができます。万一、周囲にわずかの取り残しができた場合やのちに再発してきた場合は再度、内視鏡的粘膜切除術をおこなったり、特殊な電気メスで焼き切る治療を行うこともあります。

2)手術

手術は身体からがんを切りとってしまう方法で、がんに対する現在最も一般的な治療法です。がんの手術の基本は原発巣の切除と原発巣周囲のリンパ節の切除(リンパ節郭清と言います)です。リンパ節転移の有無については、手術前の検査で確実に診断することは難しいため、実際には、決まった範囲のリンパ節を切除し、そのリンパ節のひとつひとつを顕微鏡で調べてリンパ節転移の有無を診断します。消化管を切除した後には食物の通る新しい道を作ります。

3)抗がん剤治療(化学療法)

抗がん剤はがん細胞を殺す薬でいろいろな飲み薬や注射薬があります。抗がん剤は血液の流れにのって全身に行き渡るので、

  1. 手術後の再発予防、
  2. がんが他の臓器に転移するなど手術で取りきれない場合

どの種類の抗がん剤を使用するかは、がんの種類や使用目的により異なります。1種類だけでなく数種類の抗がん剤を組み合わせて使用することも多いです。最近の抗がん剤治療は、効果を上げて副作用は抑えるように工夫されていますので、比較的、楽に受けて頂けるようになっています。また、多くの抗がん剤治療が入院することなく外来通院で行えるようにもなっています。最も注意が必要な副作用は血を作っている骨髄というところが抗がん剤によって障害され、白血球、赤血球、血小板が減少します。白血球が減少すると感染に対する抵抗力が低下し、肺炎などを引き起こします。赤血球減少は貧血、血小板減少は出血しやすくなります。

4)放射線療法(化学放射線療法)

食道がんや直腸がん、肛門がんでは放射線療法も行っています。放射線療法は抗がん剤治療と同時に行うことで(化学放射線療法)、より効果があることがわかっていますので、通常は化学放射線療法を行っています。当科のデータでも食道がんの患者さんに化学放射線療法を行うと、7〜8割のがんが半分以下の大きさになります。この治療を行うのは、原発巣のがんが周囲に広がって手術では取りきれない場合、手術をのりきれるだけの体力がない場合、手術を望まない場合、手術後の再発予防などです。

●再発について

最初の手術で見た目にはできものを完全に取り除いたようにみえても、目に見えないがん細胞ができものから離れてからだのどこかに潜んでいる可能性があります。このわずかに残っていたがん細胞が徐々に増えて再びできものを形成した状態を再発といいます。再発する時期はさまざまですが、通常は手術後5年以内に起こるとされています。再発した場合には、再発部位、症状、初回の治療法などを考慮して治療法を選択しますが、もう一度手術を行うことは少なく、多くの場合は抗がん剤治療となります。

●頸部食道がんの治療

がんが小さく頸部の食道にとどまり、周囲へのがんの拡がりもない場合は、のどと胸の間の頸部食道のみを切除し、同時に頸部のリンパ節郭清を行います。切除した食道のかわりに腹部より小腸の一部(約10cm)を移植して再建します。なお、移植小腸の血管は頸部の血管とつなぎ合わせます。のどの近くまで拡がったがんでは頸部食道とともに喉頭(声帯のあるところ)も切除するため声が出せなくなります。

●胸部食道がん

手術は右胸からアプローチし、右肺をよけて奥にある食道とまわりのリンパ腺を切り取ります。がんが食道の上の方にあっても下の方にあっても、胸の中の食道は殆ど切り取ります。食道を切り取ると、のどと胃の間の食べ物の通り道がなくなります。そこで、腹部の手術とさらに首にも切開を加え、胃を首まで引き上げて首に残った食道とその胃をつなぎ直します。これで、食べ物の通り道がつながります。胃が使えない時には大腸を使います。このように胸部食道癌の手術は胸部、腹部、頸部の手術操作が必要となります。胸部ならびに腹部の手術は胸腔鏡下および腹腔鏡下手術という新しい手術を行っています。胸腔鏡下手術はまず、右胸に直径4cm程度の穴を開けてテレビカメラを挿入し、胸のなか(胸腔内)をテレビに映します。このテレビ画面を見ながらさらに直径1cm程度の穴を3個開け、その穴から特殊な長いハサミや鉗子を挿入して、食道切除ならびにリンパ節郭清を行います。腹腔鏡下手術はお腹に7cm程度の切開を加え、ここに術者の左手だけを挿入します。その後は胸腔鏡下手術と同じでテレビ画面を見ながら手術を行います。これらの手術では従来の開胸、開腹手術よりも傷が非常に小さいので、痛みが少なく治りが早いのが特徴です。

●腹部食道がん

腹部食道のがんに対しては、みぞおちからおへそまでの腹部切開と右側または左側の胸部切開を行います。食道の下部と胃の噴門部(入り口に近いところ)を切除し、残った胃を持ち上げてつなぐ方法と、食道の下部と胃の全部を切除し、小腸を持ち上げてつなぐ方法があります。

●化学療法(抗がん剤治療)、化学放射線療法

現在、食道がんに対してよく用いられている抗がん剤は5-FU、シスプラチン、ネダプラチン、ドセタキセルなどです。

●ステント治療

がんによって食道の内腔が狭くなり食べ物が通らなくなった場合に、金属の網でできたパイプ状のもの(金属ステント)を食道の中に留置して食物が通過できるようにする方法です。がんの進行で食道に穴があいて食物が外に漏れて肺炎などをおこす場合にも、穴をおおうためにもこのステントを挿入することがあります。この治療は胃カメラを用いて行います。

●逆流性食道炎の治療方法

まずは薬を飲むことです。胃・十二指腸潰瘍で用いられている胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤)が有効で、ほとんどの場合、これで症状は治まります。しかしながら、この薬は症状を抑えるためのもので、食道裂孔ヘルニアを根本的に治すものではありません。また、薬はずっと飲み続ける必要があります。薬で症状が改善しない場合や薬をやめたい場合は、食道裂孔ヘルニアを根本的に治すための手術をお勧めします。手術は、脱出している胃を腹腔内に引きもどし、広くなった食道裂孔を縫い縮め、さらに逆流を防止する工夫を行います。食道のまわりに胃底部を全周性に巻きつけるNissen法や亜全周性に巻きつけるToupet 法などがあります。最近では腹腔鏡下でこれらの手術が行われています。腹腔鏡下手術は腹部に1cm程度の創を4か所つけるだけで行えるため、手術の後も痛みが少なく、回復が早いのが特徴です。

■胃癌外科療法

手術は身体からがんを切りとってしまう方法で、胃がんに対する最も一般的な治療法です。手術ではがんが存在する部位の胃を切除します。切除する範囲によって局所切除術・分節切除術・幽門側胃切除術・噴門側胃切除術・胃全摘術に分けられます。

1) 手術

(ア) 局所切除術・分節切除術

術前診断においてがんが胃の粘膜にとどまりリンパ節へ転移している可能性がほとんどない症例のうち、以下の理由で内視鏡的切除術の対象にならなかった症例に対しおこないます。_病変が内視鏡的切除術を行うには大きすぎる、_潰瘍を伴うため内視鏡的に粘膜を生理食塩水で浮かせることができない病変である、_がん細胞の顔つき(組織型)が分化型でない、などです。当科では腹腔鏡補助下におこなわれることがほとんどです。この術式はセンチネルリンパ節(みはりリンパ節)生検と併用しておこなわれることもあります注:センチネルリンパ節生検とは,リンパ節転移の有無は肉眼的に判断することは難しく、摘出したリンパ節を顕微鏡で調べて、初めてそのリンパ節に転移があるか無いかがはっきりします。しかしながら、胃周囲の多くのリンパ節を取って(リンパ節郭清)、顕微鏡で調べた結果、がんが見つからなければ、結果的にはリンパ節郭清の必要はなかったということになります。そこで、がんが最初にたどり着くと考えられるリンパ節(みはりリンパ節)をみつけて、そのリンパ節のみを摘出し、転移の有無を手術中に顕微鏡で調べるという検査が生まれました。実際には、全身麻酔がかかった後に胃カメラを挿入して、リンファゾリンという青い試薬を病変周囲に注射し、染まったリンパ節をみはりリンパ節として検査します(色素法)。この検査で、みはりリンパ節に転移がみとめられない場合はリンパ節郭清を省略し、もし転移が見つかれば通常通りのリンパ節郭清を行います。

(イ) 幽門側胃切除術

胃の幽門側2/3から4/5を切除し、さらに周囲のリンパ節を郭清する手術で、胃がんの多く(約8割)は胃体部から幽門部(胃の幽門側2/3)に発生しますので最も多く用いられる術式です。食べ物の通り道を再建する方法としては残った胃の断端と十二指腸の断端を寄せて直接つなぐ胃十二指腸吻合法(ビルロート1法)が最も多く、十二指腸断端を縫合閉鎖して胃断端と小腸をつなぐ胃空腸吻合法(ビルロート2法)が用いられることもあります。

(ウ) 腹腔鏡補助下幽門側胃切除術

当科では、リンパ節転移が軽度である早期胃がんに対し用いている新しい術式です。傷を小さくすることおよび、腹腔内の臓器を乾燥や温度変化から保護することで、患者さんの体への手術による悪影響をできるだけ小さくすることを目的としています。腹腔鏡下手術は、まずお腹に直径1cm程度の穴を開けてテレビカメラを挿入し、腹腔内をテレビに映します。テレビ画面を見ながらさらに数カ所穴を開け、その穴から特殊な長いハサミや鉗子を挿入して、開腹しておこなっている手術と同じことをおこなうものです。ある程度手術を進めた時点で、お腹に4cm程度の切開を加え、切除する胃を取り出すとともに吻合をおこないます。安全に手術をおこなうことが最も大切ですから、腹腔内の癒着が強かったり、その他の理由で腹腔鏡下での手術には危険が生じる可能性があると判断した場合は、開腹術に切り替えます。

(エ) 胃全摘術

がんが小さくても噴門(胃の入り口)に近いところに存在したり、胃全体にがんが広がっている場合には胃全摘術が必要となります。広い範囲のリンパ節を郭清するために、多くの場合、胃の左側に隣接する脾臓を合併切除します(後述)。当科でよく用いる再建法は小腸を一カ所切離し、その下方の小腸を持ち上げて食道断端とつなぎ、さらにそこから約40cm下方でもう一方の小腸断端とつなぐ方法(Roux-Y吻合)と小腸を約40cmの長さで両端を切って持ち上げて食道断端と十二指腸断端の間につなぐ方法(空腸間置術)があります。どちらの再建法が良いのかは、まだ結論が出ておらず、術者の慣れなどによって決定されます。

(オ) 噴門側胃切除術

胃の入り口側(噴門側)1/3にできた主に早期胃がんに対し用いられる術式です。できるだけ胃を残して胃の貯留能を残そうとする術式ですが、食道と残った胃の断端を直接つなぐと、食べたものや腸液が食道に逆流して逆流性食道炎が起こり、強い胸やけが生じます。このため消化管の再建としては、小腸の両端を切って持ち上げて食道断端と残った胃の断端の間につなぐ方法(空腸間置術)が用いられます。

(カ) 試験開腹術およびバイパス術

高度の肝転移や腹膜播種性転移をともなっている場合やがんの他臓器への浸潤が強く切除困難であった場合には、胃を切除しないでそのまま手術を終えたり、食べ物ががんの部位を通らないように新しい通り道を作る手術(バイパス術)のみをおこなうことがあります。これは胃切除によって体力を低下させるよりは、早く食事ができるようになって抗がん剤などの他の治療を早く始める方が患者さんにとって良いからです。(ただし、がんからの出血が続いているような場合は、高度な転移があっても胃を切除することがあります。)             

 
 
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