大阪公立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室

(旧 大阪市立大学)

頭蓋底外科治療
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主な対象疾患

  • 良性脳腫瘍  (髄膜腫、神経鞘腫(聴神経鞘腫、三叉神経鞘腫)、頚静脈孔腫瘍、
    下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫など)
  • 頭蓋底悪性腫瘍 (脊索腫、頭蓋咽頭腫など)
  • 脳血管障害 (超深部動脈瘤 、巨大動脈瘤)

良性脳腫瘍

髄膜症

  • 髄膜腫が代表的腫瘍です。
  • 良性脳腫瘍のひとつで、脳を包む膜(髄膜)から発生し、脳を局所的に圧迫します。多くは良性で、女性に多く発症します。髄膜は脳の全周を包んでいますから、脳表の何処からでも発生します。
  • しかし、髄膜腫の中にも組織学的に悪性型があります。悪性型では、多臓器にも転移することがあり注意が必要です。
  • しかし、髄膜腫の中にも組織学的に悪性型があります。悪性型では、多臓器にも転移することがあり注意が必要です。
  • 治療方針
  • 髄膜腫は見つかればすぐ手術するわけではありません。何らかの症状がある場合には、個人の社会的背景、神経症状の程度等を全体的に考慮します。症状がなくても、徐々に大きくなっている場合、小さくても脳深部にある場合には、症状がなくても手術適応となります。
  •  手術治療による腫瘍切除が最も効果的な治療方法です。腫瘍サイズ、部位、正常血管(動脈および静脈)との関係などにより、手術難易度が異なります。特に、頭蓋底に発生した髄膜腫は治療困難です。手術にて腫瘍が完全に切除できない場合には、術後に定位放射線治療を追加する場合があります。

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神経鞘腫(聴神経鞘腫、三叉神経鞘腫)

頚静脈孔腫瘍腫

下垂体腫瘍

  • 下垂体腺腫が代表的腫瘍です。
  • 脳下垂体は、脳の中心部下面から下方に垂れ下がり、頭蓋骨のくぼみ(トルコ鞍といいます)に収まっている内分泌ホルモン系の司令塔です。大きさは僅か0.5g程度のものですが、重要な役割を果たしています。脳下垂体は前葉と後葉とからなり、下垂体腺腫は前葉から発生します。
  • 前葉から分泌されるホルモンは、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモン等で、後葉からは尿の量を減らす抗利尿法ホルモンが分泌されます。
  • 下垂体腺腫にはホルモンを分泌するタイプ(機能性下垂体腺腫)とホルモンを分泌しない非機能性下垂体腺腫とがあります。
  • 機能性下垂体腺腫は内分泌障害として発症します。分泌されるホルモンにより症状は異なります。
  • 非機能性下垂体腺腫は大きくなることにより、下垂体機能を低下させ、さらに上方にある視神経を圧迫して症状(視力・視野障害を出します。
  • 治療方針
  •  無症状の場合には、下垂体機能検査を行い定期経過観察することがあります。しかし、腫瘍が大きく、視神経への影響が心配される場合には手術治療を考慮します。
  •  手術治療では、脳下垂体を傷つけないように腫瘍を丁寧に切除して完全治癒させることができます。腫瘍の性状、大きさあるいは進展範囲などにより、経鼻的下垂体腫瘍摘出術か開頭腫瘍摘出術を選択します。手術によっては、神経内視鏡あるいはコンピューターナビゲーション装置を使用します。
  • 薬物治療は、機能性下垂体腺腫の中でも乳汁ホルモンあるいは成長ホルモン分泌下垂体腺腫に有効です。その他の下垂体腺腫には有効な薬物治療はありません。
  • 放射線治療はすべての脳腫瘍に有効ですが、周囲の脳組織に障害を併発するため、第一選択の治療にはなりません。特に良性脳腫瘍では避けるべきです。但し、どうしても切除できない部位の腫瘍には行います。 
  • 定位放射線治療と言ってピンポイントで腫瘍に放射線を照射することが可能です。下垂体腺腫の場合には、手術では切除困難な部位に術後照射を予定します。

頭蓋咽頭腫、ラトケ嚢胞、コロイド嚢胞

  • 頭蓋咽頭腫が代表的腫瘍です。
  • 頭蓋咽頭腫とは脳正中部の下面に生ずる良性腫瘍で、視力・視野障害あるいは内分泌障害などで発症します。
  • 頭蓋咽頭腫は、頭蓋底正中部に発生するため、重要な神経や血管に挟まれています。脳神経外科の領域ではもっとも手治療が難しい脳腫瘍のひとつです。腫瘍の上面には視床下部という、人間が生きるに必要な機能を司る脳があります。視床下部の役割は、体温の調節、体内時計、モルモンの中枢、記憶の中枢、食欲の中枢、性欲の中枢、意欲の中枢等です。腫瘍の下には脳下垂体があり、視床下部に連続してつながっています。脳下垂体は、ホルモンの司令塔です。また、腫瘍の前方には視神経が、側方には頚動脈、後側方には動眼神経(眼球を動かし、瞼を持ち上げます)、後交通動脈(視床下部を養う血管です)、後方には脳幹部、脳底動脈が走っています。
  • 治療方針
  • 外科切除が一番です。手術困難な例や、取り残した場合には放射線治療で対応できることもあります。手術は何回かに分けて行うこともあります。
  • 外科切除:第1選択の治療方法です。しかし、手術による合併症を十分に理解しておく必要があります。
  •  手術だけでは治せないときには、放射線手術を組み合わせます。しかし、腫瘍の周囲の脳組織は重要なものばかりであり、放射線によるこれらの脳組織の障害が懸念されます。
  • 定位放射線治療:周囲の正常神経組織にできるだけ障害が加わらないように、腫瘍にのみ放射線を照射する方法を採用します。放射線による一定の抗腫瘍効果は期待できます。放射線治療の合併症は、周囲の正常脳組織への障害です。照射後に徐々に出現し、一旦生じると放射線障害を治すことはできません。具体的には、視力視野障害、痴呆症などが出現する危険性があります。

頭蓋底悪性腫瘍

脊索腫、軟骨肉腫

  • 脊索腫が代表的腫瘍です。
  • 脊索腫は胎生期における脊索組織の遺残組織から発生する腫瘍であり、発生頻度は0.05−0.08/10万人程度と極めて稀な腫瘍です。
  • 発生部位としては、脊索が遺残する可能性がある神経軸のどの部位でも発生する可能性がありますが、多くは頭蓋底あるいは脊椎(特に仙骨)に発生します。
  • 緩徐に発育する腫瘍ですが、一般的には手術治療を行っても完全治癒させることは難しく、局所再発を繰り返します。
  • 治療方針
  • 手術治療による摘出が第1選択とされています。しかし、骨浸潤性に発育する腫瘍であり、全摘出は困難です。残存した腫瘍からの再発が多く、予後は決して良好ではありません。従って、初回手術で完全に切除できない場合には、術後に放射線治療あるいは重粒子線治療を追加します。

神経膠腫、上衣腫、乏突起星細胞腫、髄芽腫

  • 神経膠腫(グリオーマ)と総称され、成人大脳に発生する星細胞腫(アストロサイトーマ)が代表的腫瘍です。
  • 星細胞腫は、脳組織の神経細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍で、脳浸潤度により悪性度が異なります。
  • 成人脳腫瘍では、比較的頻度の高い腫瘍です。好発年齢は25-49歳とされています。約3割は前頭葉に発生し、残りは側頭葉、頭頂葉、後頭葉の順番です。
  • 緩徐に発育する腫瘍ですが、一般的には手術治療を行っても完全治癒させることは難しく、局所再発を繰り返します。
  • 治療方針
  • 画像診断で神経膠腫が疑われた場合には、腫瘍を可能な限り摘出あるいは部分摘出します。腫瘍発生部位により、手術摘出度が異なります。摘出した腫瘍を組織解析し、腫瘍悪性度を決定します。
  • 腫瘍悪性度に従い、術後放射線治療あるいは化学療法を組み合わせて治療計画を立てます。放射線治療は、放射線治療専門医と相談の上で計画します。

脳血管障害

超深部動脈瘤

巨大動脈瘤