大阪公立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室

(旧 大阪市立大学)

未破裂脳動脈瘤
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基本的な情報

概要

脳動脈瘤が破裂すると頭の中に出血(くも膜下出血、脳内出血)を起こし、30−50%の死亡率があります。破裂した後で治療を行い、良好な回復を得ることが出来るのは全体の約10-20%の方だけです。
 未破裂脳動脈瘤はおよそ一年に1%の割合で破裂すると考えられています。
 また、動脈瘤の形が不整なもの一部に突出を認めるものは破裂しやすいと考えられています。

治療基準と方法

 日本脳ドック学会では治療のためのガイドラインが定められています。
 脳動脈瘤の大きさが5mm前後以上、年齢が70歳以下、その他の条件が手術を妨げない場合には、開頭手術、あるいは血管内手術のどちらかによる破裂予防を行うことが推奨されています。どちらが適切かは患者さまの状態、脳動脈瘤の形状などにより異なります。

さらに詳しく知りたい方へ

脳動脈瘤頚部クリッピング術

 手術は全身麻酔で行います。全身麻酔導入後に頭部に専用の3点ピンを装着し、頭部および体全体を手術台に固定します。基本的には創部周囲のみ剃毛する部分剃毛で手術を行います。皮膚を切開し、手術用のドリルで頭蓋骨を開け、その下にある硬膜を切開します。脳のしわを分けて、その奥にある脳動脈瘤を確認し、周囲の組織と剥離します。錆びない金属で出来たクリップを掛け、脳動脈瘤の中に血流が通わない様にします。なんらかの状況によってクリップを掛けることが出来ない場合には動脈瘤壁の補強を行う場合もあります。動脈瘤の処置が終了すれば脳をつつむ硬膜を縫合して閉鎖します。頭蓋骨を特殊なプレートとスクリューで固定し、皮膚を閉じて手術を終了します。

下記のような合併症の危険性があります。場合によっては生命に関わったり、重篤な神経症状を来たすことがあります。

1)脳動脈瘤の術中破裂 2)脳組織、神経の損傷、重要脳血管の損傷 3)術後出血   

4)感染症 5)創の痛みや痺れ感、創痕など


血管内手術(コイル塞栓術

 局所麻酔下に大腿の動脈から管(カテーテル)を頚部の血管まで挿入します。次にマイクロカテーテルという直径約1mm位の細いカテーテルを動脈瘤内に挿入します。その管を介してコイル(プラチナ製)を挿入していき、動脈瘤を閉塞します。動脈瘤頚部(入り口の部分)の径がドーム(動脈瘤本体)径に比較して狭いものが適しています。

局所麻酔で行えますので、全身麻酔が行えない方でも治療を行うことが出来ます。

頭皮をきったり、頭蓋骨を開けたりはしませんので、傷は穿刺部のものだけです。

血管内手術は開頭手術と違い、病変部位を直接観察することができず、透視画像という血管の影を見ながらの操作であることが短所であります。

血管内操作により、血栓を形成したり、コイルが正常血管に流れ込むようなことが起こると脳血管を閉塞し、脳梗塞を引き起こす危険性があります。その時には閉塞部の虚血による神経症状(麻痺、言語障害、意識障害等)が出現します。また動脈瘤の血管壁をカテーテルワイヤーで穿通して出血させる可能性があり、神経症状の出現および生命にかかわる状況に至る可能性があります。

これらの合併症が起こった場合、緊急開頭手術になることがあります。

治療直後の経過が順調でも、症例により、期間が経つとコイルが動脈瘤の中に押し込まれて、動脈瘤が部分的に再開通する(コイルコンパクション)ことがありますので、定期的に血管造影を含めた検査が必要です。またカテーテルの留置が困難な場合や血管の分岐状況により、治療を行えない場合もあります。

治療成績

94個の動脈瘤(90例)
死亡例 1例
重篤な神経障害を残したもの  3例
術中マイクロガイドワイヤーなどで穿通し出血させたもの 3例
急性血栓をきたしたもの 3例
コイルコンパクション 3例(1例は経過中破裂、1例は再治療後経過観察中(9ヶ月)、1例は4年間の経過観察中問題なし)
手技に関連した死亡率 1/90
手技に関連した有病率 4/90



クリッピングとコイル塞栓術にはそれぞれに長短所があり一人一人の患者さまに合った方法を選ぶことが大切です。