大阪公立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室

(旧 大阪市立大学)

髄膜腫
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基本的な情報

概要

 脳組織は、神経細胞(ニューロン)とそれを保護する神経膠細胞(グリア細胞)から構成されています。このグリア細胞から発生してくる腫瘍を神経膠腫といいます。この腫瘍の発育様式はその他の腫瘍(髄膜腫や神経鞘腫)のように脳の外から脳を圧迫しながら大きくなる(膨張性発育)のではなく、神経細胞が腫瘍化するため脳内にしみこむよう(浸潤性発育)に成長します。腫瘍の境界が不鮮明であり、手術単独による完全摘出は不可能です。このため術後に化学療法や放射線治療を追加して残存する腫瘍細胞の増殖を抑制します(後療法)。この後療法を効果的に行うためには、まず手術によって出来るだけ腫瘍を摘出することが大切です。当施設の特徴はこれらの神経膠腫に対して手術ナビゲーションシステムを用いて摘出率を上昇させていることです。



 左頭頂葉の神経膠腫(左:脳内の白色の部分)を、神経ナビゲーションシステム使用下に
摘出した像(右)

 神経膠腫の一部は正常脳と非常によく似た組織であり、手術中の切除範囲決定が困難な状況となる。安全に腫瘍の切除を行うために、手術用の顕微鏡での所見とナビゲーションのデータを総合的にみて、切除範囲を決定します。

診断・検査

 腫瘍を適切に診断するためには、適切な画像検査が不可欠です。大阪市大病院では、3テスラのMRI、64列のCTによる詳細な画像検査を行います。さらに、脳腫瘍の性質を知るための、PET(ペット)検査を行います。脳腫瘍の広がりや、悪性度を知るためには、アミノ酸を核種として用いたメチオニンPET (Methionine PET)が有用であり、我々も重視しています。画像検査によって、おおよその診断がつくと、各々の疾患に対して、適切な治療方針を呈示いたします。脳腫瘍の性質や、大きさなどにより、手術が好ましい場合や、放射線療法、化学療法との組み合わせが好ましい場合などがあります。手術をおこなう場合には、必要に応じて、トラクトグラフィー(図3)、functional MRI(ファンクショナルMRI)、脳磁図(MEG)を行い、手足の運動や、言語機能の把握をおこない、腫瘍摘出による障害が極力起こらないように手術計画を立てております。

手術

 手術は、手術用顕微鏡や、神経内視鏡を用いて行っております。腫瘍の位置を正確に把握するためのナビゲーションシステムや、神経機能への影響を手術中に測定する神経モニタリングなどの手術支援機器を用いながら安全、確実に腫瘍が摘出するよう心がけています。
 最近では、患者さまが手術中に麻酔から覚めていただくアウェイクサージェリー(awake surgery)という手術も行っています。患者さまと直接会話をしたり、手足を動かしてもらったりしながら、腫瘍を切除しますので術後の合併症を予防することが可能です。
 手術では、腫瘍の完全摘出を目指しますが、完全摘出を行うと重要な脳機能が損なわれてしまう場合には、腫瘍を意図的に残存させる場合もあります。

化学療法、放射線療法

  手術の後、必要に応じて、化学療法(点滴や内服)、放射線療法をおこないます。化学療法は、外来でも内服治療が行えうるテモゾロミド(テモダール)で行う場合や、入院での点滴治療を行う場合があります。放射線療法には、通常の全脳照射や、局所照射のほかに、最近注目されている、定位放射線療法があります。ガンマナイフ(γナイフ)が、一般的には有名ですが、当院では、放射線の線量分布をより腫瘍のみに絞る事に主眼をおいたマイクロマルチリーフという機器を用い、強度変調型の放射線治療が可能です。