大阪公立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室

(旧 大阪市立大学)

顔面けいれん
ホーム > 機能性疾患(顔面けいれん)
Contents
研修体験記
研究業績
研究業績
過去のイベント

基本的な情報

概要

 顔面痙攀(けいれん)は、顔面神経の異常活動によって顔面筋(眼の周り、頬の辺り、口の周りなど)がピクピクと勝手に動く病気です。頭蓋骨内で脳血管が顔面神経を圧迫することによって生じます。原因のほとんどは脳血管による顔面神経圧迫ですが、脳動脈硬化、解離性動脈瘤、動静脈奇形、脳腫瘍等による圧迫も原因になります。
 発生する機序については2つの説が報告されています。
  •  顔面神経を覆う髄鞘(電線を覆うビニールに相当)が血管の圧迫によりはがれ、血管拍動で直接異常電流が流れるために顔面痙攣が生じる。

  • 髄鞘がはがれた部分から異常刺激が顔面神経の神経核(電流を流す中枢)に働き、異常電流が流れるために顔面痙攣が生じる。

治療方針

顔面痙攣は、命を脅かす病気ではありません。しかし、患者さまの日常生活を不快にさせる疾患です。
  • 保存的治療:抗痙攣剤の投与あるいはボツリヌス毒素の局所注射が可能です。投薬による治療には限界があり、また完全に顔面痙攣を消失させることはできません。投薬による改善が得られない場合、あるいは投薬による副作用(多くはふらつき)がでる場合には、手術について検討します。ボツリヌス毒素注射は非侵襲的ですが、おおよそ3ヵ月毎の注射が必要なことと多数回の注射により効果が減弱することが欠点です。

  • 手術治療:顔面神経への圧迫を解除します。そのためには、全身麻酔による開頭術が必要となります。(1)脳血管と脳幹との間に特殊な人工補綴物を挿入して顔面神経から血管を浮かせる方法(挿入法)と、(2)脳血管を直接移動させる方法(吊り上げ移動法)とがあります。手術しないで放置した場合、改善することはありません。手術治療では、開頭術に伴う合併症発生の危険が伴います。当科では、手術適応について患者さまと十分に相談し、適応があると判断されたときは安全確実な手術治療を行っています。

さらに詳しく知りたい方へ

顔面痙攣や三叉神経痛の再発とその予防

顔面痙攣や三叉神経痛に対する神経血管減圧術の手術後に、一旦改善した症状が再発することが知られています。患者さまも担当医師もがっかりします。この再発は、血管と神経との間に直接人工補綴物を挿入した場合(挿入法)に生じやすいことが知られています。この手術方法では、挿入した人工補綴物が経時的に変形・癒着し、血管の圧が再び神経に加わるようになるため再発します。現在、理想的とされている手術は、圧迫している血管を吊り上げて移動させる、吊り上げ移動法です。この方法では、神経には何も接しないため、癒着も生じようがなく、再発の可能性は極めて低いものになります。しかし、この手術には高度な技術が必要です。当施設では、三叉神経痛ではほぼ全例に、顔面痙攣には安全にできうる限り、この理想的な手術を行っています。

<吊り上げ移動法>