三叉神経は脳幹から出る脳神経の一つで、顔面の感覚と咀嚼運動を担当しています。この神経が脳幹を出たすぐのところで、脳血管により圧迫を受けることで、耐え難い顔面の痛みが生じます。また脳腫瘍で生じることもあります。食事の際、洗顔時、冷気にあたったときなどに、短期間の激しい痛みが顔面に走ります。誤診で歯を抜くこともあります。命を落とす病気ではありませんが、痛みが強くなると日常性に大変な障害を起こします。
顔面痙攣や三叉神経痛に対する神経血管減圧術の手術後に、一旦改善した症状が再発することが知られています。患者さまも担当医師もがっかりします。この再発は、血管と神経との間に直接人工補綴物を挿入した場合(挿入法)に生じやすいことが知られています。この手術方法では、挿入した人工補綴物が経時的に変形・癒着し、血管の圧が再び神経に加わるようになるため再発します。現在、理想的とされている手術は、圧迫している血管を吊り上げて移動させる、
吊り上げ移動法です。この方法では、神経には何も接しないため、癒着も生じようがなく、再発の可能性は極めて低いものになります。しかし、この手術には高度な技術が必要です。当施設では、三叉神経痛ではほぼ全例に、顔面痙攣には安全にできうる限り、この理想的な手術を行っています。
<吊り上げ移動法>