「体は何でできているか」、こういう質問をすると、様々な観点から答えることができますから、答えは一つになりません。物質的、精神的、はたまた社会的、哲学的に考えるかによっても答えはまちまちでしょう。医学を学ぶということですから、少し「カガク」的に、物質という観点で考えてみますが、それでも複数のレベルで考えることが可能です。
 たとえば、原子レベル、化合物レベル、細胞内レベル、細胞レベル、組織レベル、臓器・器官レベルがあります。
 原子レベルで考えると、H、C、O、N、S、Na、Cl、K、P、Ca、Mg、・・・などで構成されています。最初の4つの原子(元素というべきですが)で95%以上を占めていると言われています。数として最も多いのはHです。考えてみたら当たり前ですね。水も有機物もHが最も多いので。ただし、質量換算では、Hの約12倍の原子量を持つCが最多となります。なお、60〜70kgの体重の人の場合、およそ1万モル*(6〜7x1027個)の原子でできていると考えられています。
*概数は次の式によって、大きく外れていないことがわかります。1モル=6.02x1023なので、1万モル=6.02x1027です。Hが1モルで約1gなので、全てがHでできていると1万モルは10kgとなります。また、Cが1モルで12gなので、全てがCでできていると1万モルは120kgとなります。10kgと120kgの中間になるはずなので、60kgが約1万モルであることは妥当であると考えられます(少なくとも桁は外れていない)。

 ちなみに、その他のレベルで考えると、以下のようになります。



 このような考え方は、検査の値を見る際にも役に立ちます。

原子化合物細胞内細胞組織臓器・器官
H
C
O
N
S
Na
Cl
K
P
Ca
Mg



蛋白
脂質

核酸
ミネラル


細胞膜
生体膜

染色体
ミトコンドリア


血球
内皮細胞
幹細胞
肝細胞


血管
リンパ節
涙腺
筋肉

上皮




心臓
胃腸
肝臓
膵臓
脾臓
腎臓