動物が動くのに必要な要素を簡略化すると以下の3つになります。

 逆に、関節、筋肉、神経のいずれか一つでも異常があれば、動かすことが困難になります。これは病気を考える上で重要です。
 関節は、骨と骨とのつなぎ目です。硬い骨どうしが直接触れないように、関節部分の表面は、軟骨で覆われています。軟骨には神経や血管がありません。また、滑膜という膜から関節液が分泌され、潤滑油の役割を果たしています。健康な時には気づきませんが、それらが異常を起こすと痛みが出たり、動きが悪くなったり(可動域が制限されたり)します。
 骨についている筋肉を、骨格筋と呼びます。筋肉の性状から、横紋筋とも呼ばれます。ちなみに、胃などの動く内臓は平滑筋という筋肉からできています。ただし、心臓は心筋という特殊な筋肉でできています。話を戻します。骨格筋は、縮むことによって骨をひきつけます。こうすることで関節が動くわけです。骨格筋は、対になっていることが多く、片方が縮めば、もう片方が緩むことによって、うまく関節を動かしています。両方とも弛緩した状態、もしくは両方とも縮んだ状態では関節をうまく動かすことができません。たとえば、ボツリヌス毒素というのは、神経に作用して筋肉を弛緩しっぱなしにします。一方、破傷風毒素は逆に神経をずっと興奮させて、筋肉を縮みっぱなしにします。
 最後に、神経について説明しておきます。神経は、中枢神経、末梢神経、運動神経、感覚神経、自律神経などのように、いくつかの分類法がありますが、運動に関係する神経として運動神経をメインに説明します。運動神経(厳密には下位運動ニューロン)は、末梢神経の一つです。運動神経の神経細胞は、脳もしくは脊髄にあり、そこから延びる軸索の末端が筋肉につながっています。脳からの刺激が、上位運動ニューロンを経て、下位運動ニューロンに伝わり、筋肉を動かします。下位運動ニューロンが障害を受けると、筋肉が動かなくなります。なお、上位運動ニューロンやその上の司令塔である脳や脊髄が障害を受けた場合も、運動に支障をきたします。ただし、下位運動ニューロンが障害を受けた場合とはやや異なり、少し複雑です。
 以上、簡単に説明しましたが、骨、筋肉、神経についてもう少し詳しく別のところで説明したいと思います。
*別の観点から  体は何でできているか、のところでも説明しましたが、なぜ動くかという問いに関しても、複数のレベルで考えることができます。例えば、個体レベル、組織・器官レベル、細胞・分子レベルです。歩く、ということについて考えてみましょう。  歩くとは、足を前に出すことですが、重心を移動させる必要があります。これが個体レベルでの動きになります。では、重心を移動させるにはどうすればいいかというと、筋肉の収縮と弛緩を繰り返して関節を動かす必要があります。これが、組織・器官レベルになります。では、どうやって筋肉を動かしているのでしょうか。かなり話を端折ると、化学エネルギーを運動エネルギーに変換するということになります。これが細胞・分子レベルです。では、どのようにして化学エネルギーを生み出しているのでしょうか。これは、代謝のところで説明することにします。