白血球数(White Blood Cell, WBC)は、5000/μLで覚えておくと理解しやすい。尚、国家試験では、血球数の単位はしばしば省略されるので、本項でも省略する。
 白血球は、ご存知の通り、免疫細胞であり、敵の攻撃から体を守る働きをしている。したがって、白血球数の上昇は、敵からの攻撃に抵抗している状況と理解できる。このような状況を「炎症*」と呼んでいる。つまり、白血球数は炎症を反映する指標(炎症マーカー)である。血液中の白血球の70%?80%が好中球と呼ばれる細胞である。好中球は、特に、細菌を食べてやっつける細胞であり、細菌感染症で上昇しやすい。白血球数の上昇の多くは好中球の増加に起因する。白血球数が、10,000を超えるようであれば、細菌感染症を強く疑う根拠となる。同様に炎症マーカーとして、CRPとESRがある。一般に、CRPは急性感染症で上昇しやすく、ESRは慢性感染症で上昇しやすい。ただし、細菌感染症でも、超重症例では、逆に白血球数が減少することがあるので、注意が必要である。 また、白血球が少ないと、感染症を起こしやすい。したがって、白血球数が元々少ない場合には、炎症マーカーとしての意義はなくなる。白血球の中で最も多い好中球が500を切ると有意に細菌感染症を起こしやすくなる。白血病の治療などで好中球が減少すると、しばしば発熱が見られ、発熱性好中球減少症(Febrile Neutropenia, FN)と呼ぶ。FNの際に、抗菌薬を投与すると改善することが多いことから、発熱の原因は細菌感染症が多いと考えられている。好中球減少期間が長くなると、細菌感染症だけでなく、アスペルギルス*などの糸状菌(真菌の一種)による呼吸器感染症を起こしやすくなる。
 末梢血(一般には静脈血を指す)に見られる好中球は、通常、桿状核球と分葉核球に分類でき、正常では後者がほとんどである。前者の方が幼若な好中球で、後者は最後まで分化した好中球である。細菌感染症では、骨髄での白血球の産生と末梢への動員が行われるため、幼若な好中球、つまり桿状核球が増加する。これを核の左方移動と呼ぶ(細胞の分化は通常、左から右へと分化するように記載するため)。

*炎症の元々の定義とは異なるが、理解しやすいように上記のように表現した。詳細は成書を参照のこと。
*アスペルギルスは、糸状菌の代表であり、いわゆる「かび」である。環境中に多く存在し、人は環境中の沢山の胞子(菌の卵)を吸い込むことで感染するが、好中球によって貪食されやすいこと、至適温度が低い(通常は25〜30℃)ことから、健常な人に感染することは稀である。しかしながら、好中球が少ない状況が続くと、好中球による貪食を免れた胞子が成長し、菌糸を伸ばすことに成功すると感染が成立し、感染症を起こす。35℃以上で発育可能な菌種は少ないが、Aspergilllus fumigatusは50℃以上でも発育可能であり、FNにおける侵襲性肺アスペルギルス症の原因として最多である。
*白血球数は、4000を切ると少ない印象があり、2000以下だと明らかに異常である。また、喫煙者などではたまに10,000くらいまで上がることがある。