旅と言っても本当に出かけるわけではない。「なぜこんな名前?」と思ってネットサーフィン、つまり、ネットの旅をしている。時に怪しげな情報もあるが、記憶の助けということで、ご容赦願いたい。  第一弾は、アミノ酸amino acid。アミノ基amineとカルボン酸carboxylic acidを持っているからアミノ酸。カルボン酸は次回に回すとして、アミノ基についてさらに調べてみる。窒素一つの周りに、水素hydrogenがくっついている。だからアンモニアammoniaと関連していることは、容易に想像がつく。どちらが先かであるが、アンモニアが先である。
 ではアンモニアは?これは、古代の太陽の神、アンモーンammonに由来するらしい。神殿の近くから、アンモニア塩が取れたことに由来している。アンモーンがなぜアンモーンかは不明であるが、ここまで行き着けば十分だろう。
 でも、やっぱり気になるので、さらに調べてみる。アンモーンは、アメンamen、アムンamunとも書かれている。隠れた者という意味らしい。amenは、お祈りのアーメンと同じつづりだ。偶然だろうか?
 アンモーンは羊の角(くるくる巻いた形)を持っている。ということで、アンモナイトammoniteの語源も同じらしい。
ちなみに、「待つわ」で有名な「あみん」は、amingとつづられる。元はさだまさしさんの曲に出てくる喫茶店の名前「安眠」からとったらしい。
 アミノ酸とあみんはさすがに関係ないかと思ったが、アミノ酸の中には安眠に良いものがあるらしい。おー、最後に一周したぞ。
では、お後がよろしいようで、、、

語源を巡る旅1の続き〜カルボンさん いらっしゃい!
 前回の続きで、アミノ酸の片割れカルボン酸carboxylic acid。カルボン酸は、カルボキシcarboxyl基(以前はカルボキシル基とも)を持った酸である。カルボキシル酸もしくはカルボキシ酸と訳してくれたらよかったのにと思うのは私だけだろうか。
 それはさておき、カルボキシ基は、カルボニルcarbonyl基とヒドロキシhydroxyl基を合わせたものである。カルボニル基とは、炭素と酸素が二重結合した官能基で、ヒドロキシ基は酸素と水素が結合した官能基である。
カルボニル基のカルボcarbo-は、炭素carbonに由来する。carbonは、元々、炭、すす、という意味らしい。木などを燃やしてできる木炭charcoalも関連語である。charcoalの方が言葉としては先らしいので、元々はcharcoalに由来することになる。
 次に、ヒドロキシ基について調べてみよう。水素hydrogen、酸素oxygenに由来することはすぐわかる。hydrogenは、水hydroを産生generateさせることに由来する。つまり、水素を燃焼させると水になるので、文字通り「水の素」である。ヒドロの語源は、どうもギリシア神話に出てくる湖に住む9つの頭を持つ蛇、ヒドラと関係してそうだ。ただし、ヒドロに由来して、ヒドラかもしれないので、どっちが先か分からない。でもなんとなく、怪獣みたいな名前のヒドラが先っぽい気がする。うーむ。これ以上は無理か。ちなみに、ヒドラって言う生き物がいることがわかった(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ヒドラ_(生物)…)。ギリシャ神話に出てくる怪獣のような生物である。
 なお、炭素が4つ以上ある直鎖のカルボン酸は、中性脂肪に含まれる成分なので、脂肪酸fatty acidとも呼ばれる。炭素が6以下を短鎖脂肪酸short chain fatty acid(SCFA)と呼び、最近、腸内細菌叢(腸内フローラ。今風に呼ぶならmicrobiomeといってもいいかもしれない)との関連が注目されている。ギ酸formic acid(メタン酸methanoic acid)は炭素1、酢酸acetic acid(エタン酸ethanoic acid)は炭素2、プロピオン酸propionic acid(プロパン酸propanoic acid)は炭素3、酪酸butylic acid(ブタン酸buthanoic acid)は炭素4、吉草酸valeric acid(ペンタン酸pentanoic acid)は炭素5、カプロン酸capronic acid(ヘキサン酸hexanoic acid)は炭素6である。なので、この定義なら、最後の2つだけが短鎖脂肪酸となるはずであるが、酢酸まで短鎖脂肪酸に含めている場合もある。分類は意外といい加減である。 カルボン酸のことを考えていたら、カルボナーラが食べたくなってきた。「カルボン酸とカルボナーラは関係ないよね」と思いきや、カルボナーラは炭焼き職人というような意味らしい。語源は奥が深いね。