アミノ酸各論編、グリシンglycineとアラニンalanine。グリシンは最も単純なアミノ酸で、アラニンはその次に単純なアミノ酸である。そして、単純な私が最初に覚えたアミノ酸でもある。
 グリシンは、甘いという意味の、gl-が接頭語についているように、甘いアミノ酸である。語源的には、グルコースとも関連している。
アラニンは、プロピオン酸の2位のところがアミノ基に置換されたものであるとも言えるので、2-アミノプロピオン酸2-aminopropionic acidとも呼ばれる。アラニンのal-は、アルデヒドaldehydeに由来し、アミノ酸っぽく変形したものらしい。天然に発見される以前に、アセトアルデヒドacetoaldehydeから合成されたためである。アルデヒドはアルコールalcoholから脱水dehydroしたものという意味である。アルコールの語源は、諸説あるので、深めないことにする。悪しからず。
 フェニルアラニンphenylalanineはご推察の通り、アラニンにフェニル基がくっついたアミノ酸である。フェニルアラニンが蓄積して精神障害を起こす病気が知られている。フェニルケトン尿症と呼ばれる先天性の疾患である。フェニルアラニンからは、チロシンtyrosineが合成されるが、この合成がうまくいかないためである。したがって、フェニルアラニンが蓄積するだけでなく、チロシンが不足する病気でもある。チロシンが不足するということは、チロシンから合成されるカテコラミンも不足することになる(語源を巡る旅2を参照)。ちなみに、チロシンは、4-ヒドロキシフェニルアラニン (4-hydroxyphenylalanine) とも呼ばれる。チロシンは、ギリシア語でチーズを意味するtyriに由来するらしく、チーズのカゼインcaseinから発見されたアミノ酸である。カゼインは元々は乾いた乳という意味でチーズcheeseと語源的にもつながる。カゼインが出たところで、乾酪壊死caseous necrosisも関連語として紹介しておこう。ご存知の通り、結核に特徴的な病理像で、チーズのように黄白色の壊死を起こすことに由来する。なんとなく、自分の専門の細菌学に結びついた。しかも、フェニルアラニンとチロシンまで制覇してしまった!!!
 各アミノ酸の語源は下記にも多く記載されていたので、参考までに。なお、内容は十分確認できていませんので、あくまで参考です。
http://blog.livedoor.jp/route408/archives/51975574.htm