学域名 | 臓器器官病態内科学講座 腎臓病態内科学 (英語表記)Nephrology |
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代表者 |
![]() 兼任教授 繪本 正憲
- Masanori Emoto
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場所 | 学舎 10階 |
連絡先 |
TEL:06-6645-3806 MAIL:interm2@med.osaka-cu.ac.jp |
ホームページ |
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/interm2/ ![]() |
概要 | <講座由来> 腎臓病態内科学は大阪市立医科大学・第二内科講座を起源としています。第二内科は1950年に石井潔初代教授によって開講後、第二代和田正久教授(糖尿病学)、第三代森井浩世教授(骨・カルシウム代謝学、内分泌学)、第四代西澤良記教授(代謝内分泌学、腎臓病学、透析医学)へと引き継がれました。 2000年4月には大学院医学研究科博士課程の再編に伴い、第二内科は大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学(附属病院では、生活習慣病・糖尿病センター(糖尿病、脂質異常症などの代謝疾患)、内分泌・骨・リウマチ内科(内分泌疾患、骨代謝疾患、関節リウマチ))と、大学院医学研究科腎臓病態内科学(附属病院では腎臓内科(腎炎・ネフローゼ症候群、慢性腎臓病、透析医学、などを担当))となっています(なお同時期に、老年医科学大講座/老年血管病態学も第二内科から派生しております。)。 腎臓病態内科学教授は代謝内分泌病態内科学教授が兼任し、西澤良記教授から、現在は稲葉雅章教授へと引き継がれております。石村栄治准教授が腎臓病態内科学(附属病院腎臓内科)を稲葉雅章兼任教授のもとに担当しています。この間、腎臓内科学の分野で、腎臓内科学のみならず、代謝内分泌学とも関連付けた特徴的な研究・診療・教育活動を行って参りました。 すでに前身の第二内科講座出身の医師は約400名を超えており、大学病院をはじめとする中核病院で指導医として、地域医療をささえる勤務医・開業医として、あるいは大阪市関連保健所等の行政機関で活躍する医師として、幅広く活躍しております。 <領域とその特徴> 腎臓病態内科学・腎臓内科として最も特徴的かつ得意な診療領域は腎炎・ネフローゼ症候群です。 特に診療においては、安全なエコー下腎生検を行い(年間約120例)、病理学的診断(光学的顕微鏡、蛍光抗体法、電子顕微鏡)を正確に行ったうえで、免疫抑制療法の専門的治療を行っております。 大阪市内のみならず、大阪府下から多数の紹介患者を第三次医療機関として受け入れており、大阪府下の有数な腎臓内科中核医療機関としての責務を果たしております。また、特に糖尿病性腎症、解質・酸塩基平衡の異常などの疾患(わけてもカルシウム代謝異常)については、腎臓内科のみならず、生活習慣病・糖尿病センターや内分泌代謝科、内分泌・骨・リウマチ内科とも密接に連携して診療と教育と研究を行っており、全身をみる内科学の中枢的な重要な領域を担当しております。 <近年の臨床、研究の動向> 近年、糸球体腎炎やネフローゼ症候群の治療においては、副腎皮質ホルモン治療に加えて、数々の新しい免疫抑制剤(シクロスポリン、プログラフ、ミゾリビン、リツキシマブ、さらに新薬、など)や血液浄化療法(選択的吸着療法、LDL吸着療法、血漿交換療法など)が臨床使用されており、その的確な治療法の確立の臨床研究、全国治験研究への参加、など当科でも最先端の臨床と研究を積極的に行っております。 近年は肥満増加、高齢化等の社会情勢の変化に伴い、従来の「保存期腎不全」と称さていた疾患概念が、慢性腎臓病(CKD)として見直され(2002年より)、CKDは日本で1300万人の患者がいると報告されています。また、統制導入疾患の第一原因疾患である糖尿病腎症も年々増加しております。 腎臓内科は、増加しているCKD、糖尿病性腎症などの腎疾患も臨床診療と臨床研究の対象としており、その診療分野の社会的ニーズもますます高まっており、腎臓内科の果たす役割は今後さらに大きくなっております。 最近の研究は臓器毎ではなく、臓器間ネットワークが生体における恒常性維持に重要であることを示唆しており、「心腎連関」を基本概念とするCKDは、まさにその典型例であります。腎臓病態内科学は腎臓固有疾患のみならず、糖尿病・脂質異常症などの代謝性疾患、内分泌疾患、骨粗鬆症などの骨代謝性疾患、および関連する膠原病などリウマチ疾患も対象としております。 その特色を生かした独自の病態解明、診断・治療の臨床応用を目指し、研究を行っております。 主な研究対象は、糸球体腎炎・ネフローゼ症候群、慢性腎臓病・透析ではありますが、上述の如く、糖尿病腎症をはじめとする代謝異常、動脈硬化症、骨ミネラル代謝異常、また最近では睡眠障害なども加味した臨床研究にも注視し、国内外での学会活動をおこない、英文誌への論文掲載の実績も多数あげています。 基礎研究も、メサンジウム細胞や尿細管細胞の研究にとどまらず、CKDにおける尿毒症毒素とリン代謝異常・血管石灰化をテーマに若手医師を中心に精力的に行っております。 <私たちの使命> 1)腎臓内科学を通して、常に臨床医学・医療をみすえた学術的研究をおこない国内外に情報発信していくこと、2)腎臓病学に加え、内科学全般の知識、経験、技術をもち科学的思考のできる内科医(Physician’s scientist)を育成していくこと、3)一般内科管理を安全に遂行することを基本とし、腎臓内科による高度専門診療もおこなうことにより、大学病院にふさわしい高度先進医療を提供すること、の3つを重要な使命と考えています。 |
概要 | 近年、CKDの概念の普及に伴い、腎機能の評価法も注目されています。臨床で頻用されるeGFRに対し、当院腎臓内科ではイヌリンクリアランスを用いることにより真のGFR測定を行っています。このアプローチにより上述のように糖尿病患者ではeGFRがGFRと解離することを報告し注目されました。ヒトにおけるイヌリンクリアランス、並びに、バラアミノ馬尿酸クリアランスの同時測定により計測される腎内血行動態の計測解析の研究を続けており、尿酸が腎内血行動態に及ぼす影響、境界型耐糖能異常患者における腎内血行動態異常の存在、甲状腺ホルモンや各種ホルモンや代謝異常が腎内血行動態異常に及ぼす影響、などにつき、現在精力的に研究を行っています。 |
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概要 | 透析患者のCKD-MBDにつき、関連透析施設との共同研究で、マグネシウムに注目して、その関連を研究しています。その一部は、論文化されており(Ishimura
E, et al. Mag Res 2007, Ishimura E, et al.
Clin Nephrol
2007)、さらに近年では低マグネシウム状態が腎性貧血を増悪させることも見出しており、学会発表し、論文化を目指しています。現在、至適マグネシウム濃度と考えられる
1.25
mEq/Lの濃度の透析液開発を検討しています。また、新しい骨代謝マーカーであるTNF-related
apoptosis-inducing
ligandの骨代謝への影響につき検索中です。また、サルコペニアやフレイルに関連する臨床的指標となり得る新しい指標であるMuscle
quality
(筋力をDXAで計測される筋肉量で除した値)とリン、鉄代謝、マグネシウム、などとの関連を学会発表を精力的に行い、現在その論文化をしているところです。サルコペニアやフレイルにおける糖尿病やリンの影響を研究し、学会発表し、論文化を目指しています。睡眠障害も透析患者で多くみられる状態であり、透析患者のQOLを悪化する病態です。現在、透析患者の睡眠障害の実態を検討し、血清リン、低栄養との関連を研究し、学会発表し、研究を進めているところです。 糖尿病腎症の進行防止への対策は非常に重要です。近年は糖尿病腎不全・透析患者では低血糖を生じさせず、適切な血糖コントロール行うことの重要性が指摘されております。以上のことから、腎臓病態内科学では代謝内分泌病態内科学のスタッフと共同で現在、最適な血糖コントロールを探るため、最新テクノロジーで臨床応用可能となった持続血糖モニター(CGM)等を導入し、様々な臨床研究を行っております。腎不全におけるインスリン療法、さらに発展の目覚ましい経口血糖降下薬についても、多くの当講座に関連する透析病院・クリニックとも連携し、積極的に介入試験を行い、糖尿病腎不全・透析患者の予後改善を目指した研究に挑んでおります。 当科に関連する多くの関連透析病院・クリニックと連携し、これまで多くの透析患者における栄養・糖尿病・代謝障害、骨・カルシウム・リン代謝、動脈硬化などの研究成果を上げてきました。現在も新たな約1700名の透析患者からなるコホート研究を立ち上げ、データを集積中です。時代・社会のニーズに応えるべく、腎臓病学に留まらず、認知症やサルコペニアなど、将来を見据えたテーマにも取り組んでおります。 |
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概要 | 糖尿病腎症をはじめとするCKD、透析患者で生じる代謝異常、動脈硬化・血管石灰化の機序を解明するための基礎研究も行っております。ヒトの糸球体サンプルを用いたプロテオーム解析により糖尿病腎症の進展にnephronectinが関与する可能性を報告し、さらにnephronectin発現は他の原発性糸球体腎炎と比較し糖尿病腎症に特異性が高いことも示しております(Nakatani
S, et al. Nephrol Dial Transplant 2012, Nakatani S, et al. Nephron Clin Pract 2014)。尿中Nephronectinが新規バイオマーカーとなりうるかどうか、ヒトと動物で検討中です。尿中のプロテオーム解析をつうじて、さらに新規のバイオマーカーがあるか、検討予定であります。 また、尿中アンジオテンシノーゲンが糖尿病性腎症悪化ともに、また、血糖コントロール不良状態とともに上昇していることを発見していますが(Nakatani S, et al. Diabetes Res Clin Pract 2014)、腎内レニン・アンジオテンシン系の亢進が腎症の進展、ならびに、腎症進展のマーカーになるか検討しているところです。 またインスリン抵抗性惹起作用や石灰化抑制作用を有する多機能糖蛋白質fetuin-Aは、腎臓病学・透析医学と栄養代謝学をつなぎ、さらに生命予後に影響する因子であるため、積極的に研究をすすめています。これまで尿毒症毒素であるインドキシル硫酸がfetuin-A発現を抑制するため、透析患者における予後悪化につながる可能性を報告しております(Ochi A. et al. Nephrol Dial Transplant 2015)。現在はfetuin-Aとカルシウム・リンで構成されるコロイド粒子の生体内での意義について培養細胞を用いた研究をすすめており、将来は、実臨床における意義につき検証をすすめる予定です。 |
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概要 | 上述しましたが、当科では、腎エコー検査法、わけてもドプラーエコー法の臨床的有用性を世界に先駆けて確立し、これらの報告は、教科書にも引用されており、実臨床に役立つ検査法として用いられてきています。現在、このエコー法を用いて、腎臓の線維化を非侵襲的に評価する方法を開発検討中です。肝臓内科で用いられる、フィブロスキャン法(Shear wave法)であり、肝胆膵病態内科学と共同開発をしています。数年中には、この方法の李腎臓内科における臨床的意義を確立させるべく、臨床研究中です。 |
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概要 | 近年注目されてきた、新しいCKD-MBDのマーカーである、血清Klotho, FGF-23濃度を非透析CKD患者と、透析患者で測定し、その臨床的意義を確立する研究をスタートしております。まだ、予備解析の段階ですが、新しい臨床的意義づけが近年中に確立できるものと考えております。また、尿酸代謝に関係するXanthine oxidaseの血清中濃度が、動脈硬化症に関与する可能性に付き注目しており、非透析CKD患者と、透析患者で測定し解析を準備しております。さらに、尿中メガリンが非透析CKD患者で減少しており、特に糖尿病性腎症患者で減少している可能性があり、現在、その測定とビタミンD代謝への関わりにつき、予備的解析をしています。 |
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教授 | 繪本 正憲 |
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講師 | 森 克仁 |
他、明治橋病院院長の石村栄治特任教授、代謝内分泌病態内科学所属の講師(津田昌宏講師、仲谷慎也講師)、後期研究医、大学院生、また、老年血管病態学で研究している大学院生など、10数名が「垣根を越えて」臨床、 研究、教育を担当しています。 |